地獄谷西尾根からマンサク綻ぶシェール道
 
平成17年 3月13日(日)
【天候】晴時々雪
【同行】別掲
春を呼ぶシェール道の満開のマンサク


 今週も週末は寒波襲来。数日前は最高気温17℃と、桜の頃の暖かさであったのを考え
ると、今年は寒暖の差がことに激しいようだ。そんな気まぐれな気候にめげず、早春を告
げるマンサクの花が盛りだという六甲からの便りがなかいさんからあって、土曜にドタサ
ンを決めた小生である。

 翌朝。目を覚ますと窓は明るい。「こりゃ、いかん。寝過ごしたか!?」慌てて手元の
時計を確かめると6:03。「ふぅー。」安堵の溜息。窓を開けると快晴。山日和だなと
喜んだがこれが大きな間違いだったのに気づいたのはその日の午後になってからである。

 予め調べておいた十三駅7:33発の特急に乗る。これに乗れば集合地の神鉄大池駅に
は十分間に合う。ところが地下鉄三宮駅で降りたホームが西神中央方面。谷上方面は別の
階なのだった。行き慣れぬ者にとってはややこしいことこの上なし。しかも、慌てて谷上
方面のプラットフォームへ行けば、電車がスーッと動き始めているではないか。
「あれぇー。返せぇ〜、戻せぇ〜。」
しばらく口は開いたまま。(^^; おまけに次の電車は新神戸止まり。ああ、ついていない。
次の電車で谷上駅着8:28。遅刻ですと連絡を入れる。ドタサンなのにご迷惑をおかけ
して申し訳ありません。m(_ _)m

 今日も10名が集まる盛況オフ。ワイワイ、ガヤガヤ、住宅街を抜けて山手に向かう。
『地獄谷行』なるおどろおどろしい標識が立つ、3ヶ月前に歩いた勝手知ったる道だ。阪
神高速北神戸線の高架の下を潜って神港学園のグラウンド横から地獄谷コースの取付きへ。
そして地獄谷の流れを渡った所にあるコース案内板の前に集まる。前回来た時から面白そ
うだと思っていた地獄谷西尾根コース。熟練コースとあるがアップダウンは多いけれどい
い道らしい。但し、「花はないよ」となかいさん。それでも展望がよさそうだし、今日の
本命のマンサクはシェール道にあるというので、ダイヤモンドポイント近くで合流するこ
とにして、小生ともぐさんは地獄谷遡行グループと別れ、西尾根へ向かわせてもらうこと
にする。

 案内板の取付きから、ほんのしばらく歩けば右手に踏み跡が分かれて延びる。案内プレ
ートもあったらしいが引きちぎられたような痕跡がある。私有地でマツタケ山でもあり、
山主が敢えて進入を勧めないようにしているらしい。それもものかわ、「それでは、合流
点で」というわけで勇躍踏み込む2名である。

 尾根の先端から登り始める感じで、取っ付きからなかなかきつい登り。が、尾根を忠実
に辿る明快な踏み跡である。マツタケ山というだけあってアカマツが多い。ミツバツツジ
に羊歯、早くも白い花を咲かせたアセビ。5月頃の丹波や北摂の日向の山道で鼻腔をくす
ぐる、あの酸っぱい様な匂いが想像しただけで脳裏に甦ってくる。

いい道が続く赤松主体の地獄谷西尾根

 静かな雑木林の中。かと思えば岩混じりの道や、ザレ場などもあってなかなか飽きない
道である。所々にある岩場は舞台の様に張り出して、痩せたアカマツとあいまって、さな
がら日本庭園の趣き。里山らしく幾本も分岐があるが、ひたすら尾根沿いに行く。ただ、
右手に現れる、マツタケ山への侵入を防ぐ為らしい錆びた有刺鉄線には要注意だ。

 未明に降ったと思しき霰が次第に目立つようになる。いつのまにか地獄谷が眼下はるか
になり、東尾根の岩稜も目の下になっていく。そして、丹生山系の山並みから北摂西部の
山々が顔を出し始める。羽束山に大船山の尖った山容も良くわかるようになる。

地獄谷西尾根の展望岩から丹生山系。手前は
花山、唐櫃方面の市街。手前に阪神高速が見える

 どこからか高圧線が唸るような音。見上げてもそれらしきものが見当たらないと思った
その時、索道上を建設機材を運ぶバケットが目に入った。往復のワイヤが互いに当たって
音を立てているのだった。そういえば、麓からブルーシートがはためくのが見えていた。

 砂防工事をしているのか、工事現場が近い部分は迂回路になっている。道は尾根をやや
外れてクマザサ原の中を進む。前方に現れた水晶山と思しきピークも巻きながら過ぎてし
まう。残念、ピークが踏めずかと思いきや、また前方にピークが現れた。一旦下って、沢
の源頭と思えるなだらかな雑木林を右に見ながら、エイエイと登り返すと、水晶山と独特
の筆致で書かれた兵庫登山会のプレートがあった。アカマツと笹に囲まれた狭い山頂に展
望は無いが、中央にデンと、座るのに便利な石。誰が運んだか、水晶山と刻まれた小さな
石標もある。
落ち着いた感じの水晶山山頂

 水分補給で小休止していた時である。突然、ビュンと大きな音。一瞬、銃声かと身構え
たが、どうも索道から荷物を下ろした為に緊張を失ったワイヤが音を立てたらしい。それ
にしても驚かせる。

 石楠花谷の分岐がある鞍部へ降りると、水晶山もピラミダルになかなかの風情。また迂
回路が現れて、斜面をトラバース気味に登っていくと、行き着いた所は関係者の車が並ぶ
工事現場で、小父さんが索道のバケットを操作している場面に出くわす。台地の先端には
ダイヤモンドポイントの標識が侘しく立っている。ここがダイヤモンドポイントなのか。
北方面が見晴るかせるポイントだが、残念ながら今は工事で惨憺たるもので、お勧めでき
場所ではない。

 ここからは地道の林道。集合地点の記念碑台への道標のあるUターンポイントはほんの
100m程である。勿論、谷コース隊は未着。しばらく待っていたが、陽が翳ると急激に
寒さが増してくるので迎えにいくことにした。200m程先の地獄谷の源流らしき小さな
沢付近で10分程待っていたら、聞き慣れた男女の声が近づいてくる。果たして谷コース
隊でありました。

 神戸市水道局の建物の前を抜け、夕映山荘への取付け道を過ぎて、降り出した小雪の中、
ドライブウェイから自然の家の前を穂高湖へ向かったのは前回と同じコース。途中で、杣
谷峠からやってきた谷口さんと合流する。

 当時はハイカーで鈴なりだった湖畔も、人っ子一人いない。ダム湖の周回路を行けば東
屋があるとのことで、そちらに向かうも生憎、先着のグループがいる。そこで日当たりが
よさそうなダム横の草地で昼食タイムとしたのだが、ダムは丁度日陰になっていて、コン
クリート壁には1m位の大きなツララ。それが融けて大きな音を立てて落ちる音に驚く。
「やっぱり、寒いんやねぇ」(笑)

 食事の後はぜんざいタイム。ぜんざいの甘い香りと、少し焦げ目のついた餅の香ばしい
こと。なんやかやで餅を5つも食べさせて頂きました。(笑)

さぁ、ぜんざいタイムの始まりだ。まむさんの
箱酒の空箱で作った風除けはいいアイデア

 シェール槍へは穂高湖の周回路に取りつきがあるとのことで、10分もあれば登れるら
しい。折角なので、腹ごなしにでも行ってくるかと周回路途中の細い四角柱の立つ所から
みずさんと登り始めたはいいが、食事時に聞こし召した持参の秀月と、たぬきさんから頂
いた佐渡の地酒が今頃効いてきて、へろへろと覚束ない。それでも何とか岩混じりの山頂
に立つ。「フーッ。ウイッ。」

 岩の重なる山頂からの展望は抜群。ほぼ四方が見渡せるのだが、生憎の雪雲襲来で周囲
はうす暗い。それでもなかなかの高度感で、灰色に翳った湖面と目の前には新穂高。その
向こう微かに海が見えた。吹きさらしで寒いので長居もせず、直ぐ引き返して皆と合流。
往復15分位でありました。

シェール槍から小雪舞う穂高湖

 さて、後半はお目当てのマンサクがあるシェール道である。林道と見紛う広い道。褐色
の花を付けたヤシャブシなどを眺めながら歩いていくとまたもや雪。今度はかなりの密度。
木々の葉が少し白くなり始める。と、前方に黄色い大きな木。マンサクだ。思いのほかな
かなかの高木。しかし枝が下から出ていて目の前で花が見られる木でもある。タイミング
よく満開で、その黄色の花はまだまだ冬枯れの林の中ではよく目立つ。花弁はチリチリと
縮れており、見れば見るほど不思議な形をしている。直ぐ向こうには沢があって、マンサ
クは湿った所がお好きなようだ。

 シェール道は徳川道とは反対に新穂高を北から巻く道。マムシ谷の分岐には河原にネコ
ヤナギが群生している。ベージュ色のにこ毛に覆われた芽はかなり膨らみ、春近しを思わ
せる。表六甲へ降りる谷口さんとはここでお別れして、残ったメンバはマムシ谷を遡る。
ここは神戸市の北区と灘区を分ける谷で、静かないい道が続く。ここにも所々にマンサク
の花。砂防堰堤を右に見て進むと、小さなナメ滝。その先からは残念ながら投棄ゴミが目
立つ。やはり左手にドライブウェイのガードレールが見える。あの辺りから捨てるのだろ
うか。怪しからん輩が多い。

 獺池のほとりに出て左に廻ると西六甲ドライブウエイで、再び舞い始めた雪催いの中、
池沿いにしばらく進むと、左手にやや荒れた広場がある。広場の先は林道になっており、
そのまま向かえば石楠花山だが、今日は割愛、道標に従って炭ヶ谷へ降りることにした。

 北向きの加減か、辺りは雪でかなり白い。烏帽子岩への分岐を左にして、木の階段を滑
らぬように降りると炭ヶ谷の源頭。荒れた印象のある石混じりのザラザラした狭い谷で浮
石も多い。やがて杉林が現れると同時に、右岸に明快な道が現れる。あちこちに炭焼き窯
の跡があって、どうもこれが炭ヶ谷の名前の由来らしい。季節にはハナイカダが目立つそ
うだが、勿論、今はない。

 山腹沿いから一気に谷底へ向かってジグザグに降りると、炭ヶ谷の細流を渡る箇所は分
岐になっていて、道標が一本ある。直進は高圧鉄塔の先が廃道になっているという。流れ
を渉って今度は谷の左岸を進む。大きな砂防堰堤を二つ過ぎる頃には、阪神高速を走る車
の騒音が響いてきて、嫌が応にも現実に戻される感じだ。(笑)田畑跡らしい笹混じりの
小道から新しい住宅がぽつぽつ建ち始めた造成地の取付け道路。左に折れれば神鉄谷上駅
だ。

 新しい取付け道路はほとんど車も通らない。異人街やポートタワーをあしらったマンホ
ールの蓋の模様に興じながら、30分位で谷上駅。駅前で一同解散となる。谷上では風も
治まり薄日も射すほどだったが、豊中は俄かに吹雪。世の中同様、一筋縄では行かぬ今年
の冬であります。(笑) 同行の皆さん、お世話いただいたなかいさんに多謝。


■同行 あかげらさん、幸さん、母たぬきさん、たらちゃん、なかいさん、谷口さん、
    まむさん、水谷さん、もぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00自宅発
8:40神鉄大池駅(第一集合地)
9:05〜9:10地獄谷取付道標前
9:15地獄谷西尾根分岐
10:20〜10:26水晶山(710m)
10:35ダイヤモンドポイント
10:39〜11:15記念碑台道標のあるUターンポイント
12:10穂高湖
12:18〜13:07穂高湖ダム横(昼食)
13:15シェール槍(649m)
13:22穂高湖ダム横(昼食)
13:50〜13:55マムシ谷分岐
14:12獺池
14:25炭ヶ谷分岐
15:17阪神高速道北神戸線高架下
15:42神鉄谷上駅

水晶山のデータ
【所在地】兵庫県神戸市北区
【標高】710m
【備考】 裏六甲地獄谷西尾根にある峰です。展望にはあまり恵ま
れてはいませんが、岩と松が適度に配置された落ち着い
た山頂です。
シェール槍のデータ
【所在地】兵庫県神戸市灘区
【標高】649m
【備考】 摩耶山に近い穂高湖の畔に聳える岩峰です。付近はミニ
上高地の趣で、穂高湖や新穂高などの名称が付けられ、
ハイカーの憩いの場所ともなっています。
【参考】
山と高原地図『六甲・摩耶』



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