ちょっと真面目?に氷ノ山
 
平成17年 8月17日(水)
【天候】晴れのち曇り一時雨
【同行】単独
氷ノ山山頂避難小屋。手前に一等三角点


 久しぶりに氷ノ山へ行ってみようと思い立つ。初めて訪れたのは平成14年8月だから、
かっきり3年ぶり。当時、恒例のかき氷オフに初参加の時だった。病み上がりもあって長
い距離は少々不安、かといって早朝出立もしんどそうと軟弱そのものだったのだが、たぬ
きさんから一番楽な大段平からのコースを案内していただき、無事、山頂で氷小豆を食し
たのであった。

 というわけで、今回は真面目?に福定から。しかし、途中、氷ノ山越まで暑いの暑くな
いのって。10歩毎に汗を拭く始末。でも、山頂は涼しく寒いくらい。会う人も少なく、
手乗りのアサギマダラで遊んできました。

 午前5時40分、家を出る。早く着きたいので、和田山まで有料道を奮発。(実際はE
TCの通勤割引適用、播但道も20%値下げになっているのです。)R9に入って、関神
社の交差点を左折する。県道をどんどん進んで最も山懐に入ったところが福定の集落。氷
ノ山国際スキー場がある。途中、Y字路を川沿いに左にとれば自然に林道になり、ヘアピ
ンカーブ箇所に親水公園の木組みがある。

福定親水公園入口。山頂まで5.2Kmだ

 「おやっ?」駐車場に一台も先行の車がない。初めての場所で、こういう時、何となく
不安になる。(正しいんやろか?間違ってんのかな?)車を降りてあちこち確かめている
うちに、一台の車がやってきた。降りた白髭のおじさん、早速山の準備。
「ここから登る人、今日はいないんですかねぇ?」
「鳥取から登る人が増えてるんやわ」
若桜町舂米(つくよね)からなら、キャンプ場まで上がれば標高差も少なく楽なのだとか。
「なるほど...」
高度計をみると現在地の標高は566m。ということは山頂までの標高差は約950m。
このくそ暑い時期に六甲山を麓から登ってまだ余りあるのか。道理で...。思わず萎え
るわが心...。(笑)

 それでも「お先に」と失礼してトイレの横からキャンプ場への取り付け道路に出る。山
頂まで5.2q。足元でピョンピョン飛び跳ねるのはキリギリス。

 多田ケルンが登山口を示す。すぐに布滝への尾根道と分かれるが、先で合流するので楽
な谷沿いの道をとる。砂防ダムの上は石がゴロゴロするキャンプ地。5m位の滝を左に見
て、木橋を渡る。花びらの散りかけたウバユリが目立つが、目に付いたのは白地に赤い筋
のある径2p位の花。一瞬、ゲンノショウコとも思ったが、タチフウロだった。

 意外にすぐに布滝の表示。立ち寄ってみる。谷川(布滝川)に橋が架かっていてその上
が滝見ポイント。文字通り白い布を垂らしたような滝である。岩壁が垂直ではないらしく
水が岩肌を伝いながら流れてくるのかほとんど水音がしない。豪快さは無いが静かな少し
情緒的な滝である。これに比して本来の滝らしいのは不動滝。いずれも登山道の途中から
見ることができる。とくに不動滝を上から見る登山道のテラスは「のぞきの滝」と名づけ
られていて、遭難者冥福祈願の石仏も安置されている。

 しかし、ここまで来る間にもう汗だく。Tシャツがべっとりと肌にへばりつく。今日は
こんなこともあろうかとウチワを持参したのだが、バタバタと忙しく仰ぐも追いつかない。
タオルで拭いても拭いても噴き出てくる汗。それもそのはず、急斜面にジグザグにつけら
れた登山道は、のっけからいきなりの急登で、さっき下から見上げた滝を、もう上から見
ていたりするほどである。「小豆ころがし」は地盤崩壊で通行止め。オオイワカガミが目
立つ迂回路は更に暫くジグザグが続く。

 20分も登った頃、「曲り坂終わり」の看板がヒョッコリ、目の前に。うんざりするの
は小生だけじゃないのだった。(爆)

 「フーッ」さっきに較べれば水平に近くなった。周囲が杉林になって左にカーブすると
シシウドやウバユリが生える草地に、水色のトタン張りの建物が現れた。加藤文太郎ゆか
りの地蔵堂である。お堂の中を覗くと大きな地蔵菩薩の木造坐像。置かれた古い棟木には
明治28年の銘。地蔵さんと同じ壇に置かれた昭和9年の奉納札は文太郎も眺めたのだろ
うか。「小豆ころがし」の道は本来ここにつながるそうである。

 この地蔵堂、一息つくには格好の道程にある。ザックを下ろして、お茶のペットボトル。
今日も2リットルボトルだ。喉の渇きと同時にいささかシャリバテ。ヨモギ餅を頬張る。

『単独行』加藤文太郎も宿泊したという地蔵堂

 お堂を過ぎるとまもなく山頂まで3.5qの標識。左から上がってきた沢を横切る。そ
の先を登ると「木地屋跡」の標識が立つ。木地師の家があったらしく、狭いが建物が建て
られぬでもない平地がある。トウロウ岩を経て氷ノ山という標識もあるが、いささかマニ
アックコースのようだ。

 杉林が雑木に変わるのと時を同じくして、再び急坂になる。弘法の水、一口水と水場を
通る。しかし、ほとんど水が枯れている。せいぜい登山道を湿らせている程度である。こ
こまで来ると、そろそろ前方の木立の向こうに明るみが見えだし、氷ノ山越かなと期待を
抱かせるが、そこまで行くと、逃げ水の如く先に高みが移る。幾度かそんなヤレヤレと落
胆?を繰り返している内に、次第にササが深くなって、左右が狭まってきた感じがする。
そして、ぽっかりと、今度こそ氷ノ山越である。

因但を結ぶ伊勢道の難所、氷ノ山越

 氷ノ山越は伊勢道ともいい、因但を結ぶ重要な間道だったらしく、伊勢参りによく使わ
れた道であるとか。立派なお地蔵さんの石仏が置かれている。彫られた文字は「皆原村」
と読めたが、但馬側の村だろうか。

 狭い峠は鉢伏山方面からのブンマワシコースとの出合いでもある。関宮町の避難小屋と
ベンチが置かれている。ザックを下ろして一息入れる。暑ぅー。ゴクゴク。喉を鳴らして
お茶。蝉の声が途切れたら、何やら喚声が下からあがってくる。舂米のキャンプ場(1.
8Km)かららしい。まあ、山では驚くほど遠くから音が聞こえるものだが、これもその類
であろうか。麓ではあんなに晴れていたのに、氷ノ山の山頂にはガスがかかりだした。一
寸先を急ごう。
山頂の避難小屋がガスから顔を出す。
手前にコシキ岩(仙谷コース出合手前から)

 標高1000m超の尾根道は快適。暑さからも少し開放されて、ホトトギス、オトギリ
ソウ、ツルリンドウと足元にも目が行くようになってくる。(笑) ネマガリタケとブナの
林を抜ける。幾つかのアップダウンをこなすと、左手に鉢伏高原が広がった。雲が広がり
だしたのに、不思議にそこだけがスポットライトを浴びたように日が当たっている。

日が翳る中、鉢伏高原そこだけが
スポットライトを浴びたように浮かぶ

 鳥取側から仙谷コースが合流する頃になると、氷ノ山の姿も余程大きくなってくる。山
頂手前の、こんもりと盛り上がっているのがコシキ岩。今は迂回路が本道となって、丸木
階段が設置されている。そして再びジグザグの最後の登り。といっても、ここはそれ程、
つらくはない。潅木帯を抜け、ネマガリタケの原になると、頂上の避難小屋がグーンと近
づき、一歩一歩踏みしめるが如く登りつめると3年ぶりの山頂である。

 「おや?」誰も居ない。少しは人が居るとは思ったが。群れ飛ぶ赤トンボと蝶の世界。
人声がしたのでそちらに顔を向けると、ご夫婦らしい一組が鳥取県が設置したトイレ付き
の休憩所で休んでおられたきりであった。

 汗が引いて今度は一転、寒い。先程のご夫婦が下山されたので、無人となった休憩所で
風を避けて食事とする。

 湯を沸かしていると、どこからかジージーと煩い鳴き声。窓枠に止まったエゾゼミ。そ
うっと近づいたら簡単に捕まえられた。とつこうつしていると、今度はヒラヒラとアサギ
マダラ。何を考えたのかウエストポーチに止まった。するともう1匹。どうも汗の塩分を
吸いにきたらしい。それならと汗の原産地?の手をもっていったら、逃げもせず指に乗り
移って、長い口吻で舐めだした。赤とんぼも難なく捕まるし、山の生き物はのんびりして
います。(笑)
指に止まったアサギマダラ

 一等三角点の場所には、例の白髭のおじさんが店を広げている。あったかいココアを勧
められたので有難く頂戴する。旨い。コーヒーもいいがココアも持参するといいなぁ。そ
のココア片手に鳥取から来たというおじさんも合わせて山座同定。ガスで遠望は効かぬも
のの、360度のパノラマは素晴らしい。扇ノ山、青ヶ丸、陣鉢山、藤無山、後山、日名
倉山など、山また山の風景。近くは歩いてきた北の尾根がコシキ岩の向こうに続き、氷ノ
山越の小屋から赤倉山、布滝頭、大平頭の避難小屋、鉢伏高原と手に取るようである。

山頂手前から北方面。左の赤倉山の下に
氷ノ山越の小屋が見える。
奥はうっすらと左に扇ノ山、青が丸、仏ノ尾

 南から上がって来た単独兄さん。北側は蛇はどうだと聞く。カラス蛇みたいなのを含め
て4匹ほど目撃と答えると、南は山道中央にマムシがトグロを巻いて逃げもせず大変だっ
たとか。10匹位、蛇を見たけど、ほとんどマムシだった由。東尾根で降りるつもりだっ
たけれど、これで急遽、ピストンに方向転換したのだった。(^^;

 パラパラと雨粒が落ちてきたのを汐に、ゆっくりと尾根を降りていると、さっきの白髭
おじさんが追いついてきた。浜坂から来たそうで、
「それじゃ、加藤文太郎と同郷ではないですか」
「図書館に沢山、山関係の本があるよ」などと四方山話。氷ノ山越近くの赤倉山も、ネマ
ガリタケのブッシュを大型鋏を持って二時間近くもかかったそうだ。(本来は県境沿いに
踏み跡があるそうだ)
氷ノ山北尾根のブナ林

 ブナ林を歩いている頃。また雲行きが怪しくなって、折角上がっていた雨も再び落ちだ
して、ササに落ちる雨音が高くなってきた。氷ノ山はすっぽりガスの中。それでも鉢伏方
面は明るい。氷ノ山付近のみは雲の通り道なのかも。氷ノ山越で暫く憩う間に、雨はやや
本格化。にわか雨だろうが、下山を急ぐことにする。

 途中、「トウロウ岩」と書かれた標識があって、「山頂見える」とある。南の方角を仰
ぐとほんに山頂がガスから顔を出している。右手のもっこりしたのがコシキ岩のようだ。
行きに気づかなくて良かった。気づいていたら、まだ山頂があんなに高くて遠いのかと萎
えるものなぁ。(^^;

 熊鈴が前でかすかに聞こえていたのは浜坂の白髭おじさん。地蔵堂でまた一緒になる。
道脇に目立つキノコが3本。朝は白い繭の中から少し顔を出した程度だったのが、今は海
老茶の傘の全貌を現している。毒々しい感じだが、浜坂のおじさん、これはタマゴダケ、
食べられるという。今は蕾だが、明日には傘が広がってくるらしい。
「へーえ」
タマゴダケ。見かけによらず食べられるのだとか

 往路は遠く感じるものの、帰路は早いもの。おじさんと話しながら、雨も上がって、再
び蝉の鳴き出した山道を下る。滝の水音が徐々に高まってくれば登山口は近い。朝には小
生の車と、白髭おじさんの車のみであったのが、今は数台が止まっている。そういえば、
カブスカウトの子供たちのテントが広場にあったなぁ。傍らでは親子連れが川で水しぶき
を上げていた。

 残暑厳しき氷ノ山。無事、山頂を踏めて満足。帰途は八鹿町の「とがやま温泉」で汗を
流す。風呂から上がった頃、暮れなずむ但馬路は、時折の稲光が雲間を光らせていました。


【タイムチャート】
5:40自宅発
8:20〜8:40福定親水公園(駐車地)
8:50〜8:52布滝
8:58〜9:00不動滝(のぞきの滝)
9:23〜9:30地蔵堂
9:40木地屋跡
10:00弘法の水
10:10一口水
10:19〜10:29氷ノ山越(1250m)
11:10仙谷コース出合
11:33〜12:50氷ノ山(1509.8m 一等三角点)
13:06仙谷コース出合
13:36〜13:46氷ノ山越(1250m)
14:15木地屋跡
14:20〜14:28地蔵堂
15:05福定親水公園(駐車地)


氷ノ山のデータ
氷ノ山〜氷の御山でかき氷』を参照ください
【参考】
2.5万図『氷ノ山』



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