冬春同居の芦生トロッコ道
 
平成17年 4月10日(日)
【天候】晴れたり曇ったり
【同行】単独
咲き始めたトクワカソウ


絶好の好天という土曜は野暮用。ならば日曜はというと、予報では昼から崩れるという。
それなら崩れても歩ける所。はて...?そこで4年ぶりに芦生のトロッコ道へ。ところ
が、崩落した橋あり、道を塞ぐ倒木あり、更にこの時期にしては大量の残雪ありと、遊歩
道とは様変わり。結構、アドベンチャーコースに変貌?していたのでありました。(^^;

 京大の演習林管理事務所がある須後へは、いつも西の美山町側からアプローチしていた
のだが、今回は東の久多から佐々里峠経由で行ってみることにする。今日も例の如く出遅
れ気味で少々焦るが、京都へ桜見物に向かう行楽の車で渋滞するかもとの思いは杞憂に終
わり、案外、スイスイと京都東IC。湖西道路経由で久多に廻り、久多峠、佐々里峠と峠
越えをする。冬から一足飛びに初夏がやってきたような陽気だけれど、北向きの沢や日陰
の路肩にはまだまだ多くの雪が残っていて驚く。今年は雪が多かったのだとあらためて思
う。

 芦生の山の家下の駐車場に着いたのは、出発して2時間半足らず。西から来るのとあま
りかわらない。高速代が勿体なかった。(苦笑)

 駐車場には7台程の車が先着していたが、ほとんどが釣り客らしい。(結局すれ違った
ハイカーは5人連れの初老男女パーティ1組のみだった。)

陽光あふれる演習林事務所前

 足固めして駐車場を出て東へ向かう。暫く来なかったけれど変わりが無いなと思った瞬
間、
「あらっ?」
敷地内の由良川を渡る鉄橋の手前に真新しい二軒の民家が建っているではないか。鉄橋も
手すりが付けられ安全になっている。そして妙に明るい。川近くに植林されていた杉が伐
採されていたのだった。

 最奥の民家を左に、自然石の墓標が並ぶ墓地を右に見て、錆びたレールを踏みながら進
む。下界では若葉が萌え出しているというのに、辺りの木々はまだ、芽が漸く緑っぽく膨
らんだ程度。向いの山肌も薄い茶色。そんな中にあって、ハシリドコロだろうか鮮やかな
光沢ある若緑の芽を吹き出しているのが目立つ。一見旨そうだが猛毒だ。湧水が落ちる崖
ではゲコゲコとヒキガエルの鳴き声。小さな水溜りにはトコロテン状の卵塊が沈んでいる。

 左を流れる由良川は雪解けの為か、少し濁り加減だが水量は豊富。ゴウゴウと音を立て
る。その速い流れが曲がる淵に引っかかった大きな流木の一つに、異様な物が取り付いて
いる。目を凝らすとなんと雄鹿の屍骸。首を水中に突っ込んで水流にユラユラと揺れてい
るのは無残である。

 廃村灰野の辺りも笹が刈られて明るい。愛宕社にも新しい木の鳥居。

 そろそろイワウチワが出てくる頃だがなぁと、右手の斜面を注視しながら歩いていると、
そこに光沢のある丸い葉っぱ。せいぜい蕾が色づいた程度の物が多い中に、ありました、
少しフライング気味にもう花を咲かせたものが。葉柄の付け根が丸いので、厳密にはトク
ワカソウというそうだが、その横ではイワナシも薄赤い蕾。花の盛りはもう10日から2
週間位、先のようだ。

朽ちた軌道の向こうに雪が現れてきた

 所々、道端に消え残った雪が現れるようになる。すると、前方から二人連れ。今日初め
てすれ違う人間だ。渓流ブーツを履いているところを見れば釣り客らしい。挨拶を交わす
と、
「これ位雪があるよ」
と、手で深さを示す。むむ。50センチ?この暖かさに半信半疑であったが、しばらく進
むと、斜面から滑り落ちた雪が重なっている箇所に出くわした。その上には夥しい鹿の糞。
踏まぬように、更に又、へたに新しい所を踏むとズボッと踏み抜いて疲れるので、忠実に
先人の残した足跡をたどる。

 さっきは水中にあったが、今度は道の真ん中に、これは雌鹿らしい屍骸。周囲に毛が散
乱し、内臓は完全に食べ荒されていて、胴体はほとんど肋骨と背骨のみ。従って、臭いは
感じないが、何者が食べたのだろう。ちょっと不気味。

笹が刈られて明るくなったコヨモギ作業所

 コヨモギ作業所も笹が伐採されて明るい。その前のケヤキ林は白樺のようで幹がきれい
なのだが、若葉は全く吹いておらず、冬の装いのまま。

 あら、あら、朽ち果てて完全に橋が落ちた箇所に出くわした。谷の深さは3mくらい。
土の部分は滑るので要注意。登るより降りる時がよほど怖そうだ。(^^; 細い立ち木に掴
まりながら、そろそろと降りて再び這い上がる。「フーッ」

完全に崩落した架橋

 次に現れたのは完全に道をふさいだ倒木。根元からバッサリと倒れこんでいる。片方が
由良川の崖だから油断すると少々怖い。一見、通れるのかなと懸念するも案外簡単に乗り
越えられる。

 フタゴ谷の標識付近で今日初めて遭遇するハイカーグループ。折から食事中。八朔かな
んぞを分配する女性。ちょっと欲しかったなぁ。(笑)

 そのフタゴ谷の標識を過ぎると徐々に雪の量も増えて、刑部谷近くは一面の雪原。深さ
は30p位。足を取られながら「ええぃ!ままよ。」ズボズボと前進する。

刑部谷付近は深さ30センチの雪の原

 深い谷状だった由良川の流れが近づいてくると、カヅラ谷作業所まではまもなく。崩落
した後を丸太とトラロープで補強した箇所を越えると、トロッコ道は一面の雪に覆われ、
ここも至る所に鹿の糞が転がっている。誰かいるかと思ったが人っ子一人いない。聞こえ
るのは川の流れの音のみ。辺りを包む怖いくらいの静寂。作業所の横から河原に降りて、
手頃な石に腰掛けて食事の用意。相変わらず馬鹿の一つ覚えの助六とカップ麺。食後のコ
ーヒー。1時間近くゆっくりしていたけれど、結局、誰にもお目にかからず仕舞いであっ
た。
やっとついたカヅラ谷小屋も雪だらけ

 ごみを片付けて帰途に。妙に生暖かい風が吹いてきて、歩いていると汗が噴出すというほ
どではないにせよ暑い。寒冷前線が近づいているような感じ。

 花はないかとキョロキョロしながら歩く。今年は早春に雪が多く、花も遅れている様子。
それでも灰野付近まで戻ってくると、ショウジョウバカマ、ミヤマカタバミがちらほら。
さっき渡った赤崎谷の流れも何となく春らしい雰囲気であった。

 3時過ぎに戻った管理事務所の前にはフキノトウ。マンサクが今は盛りと黄色い花を付け
ている。新しく建った民家の女の子だろう。自転車に乗って楽しそうに眼が笑っている。ゆ
ったり時間が流れ、冬と春が同居する芦生の半日でありました。

何となく春を感じさせる赤崎谷の流れ

【タイムチャート】
8:30自宅発
10:50〜11:00京都府青少年山の家駐車場
11:27灰野
12:00コヨモギ作業所
12:20フタゴ谷
12:30刑部谷
12:40〜13:20カヅラ谷作業所横(昼食)
13:31刑部谷
14:04コヨモギ作業所
14:35灰野
15:05京都府青少年山の家駐車場

芦生トロッコ道のデータ
【備考】 芦生の森憧憬〜京大演習林トロッコ道
を参照ください。



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