春の南紀一巡り
平成16年 3月28日(日)
天候: 晴れ
大門坂を行く平安美人。さながらタイムスリップした
様な...。



 いい季節になりましたね。百花繚乱、野も山も、我々の庭先にも、花の神がやってきて
一斉に魔法の灰を振りかけていったのではないでしょうか。

 とはいえ、当方宅は貧乏暇なし、平々凡々いつもの如くでありましたが、子供らが春休
みということとて、どこぞへ一泊したいとの家族からの圧力は日に日に強まり、小生も重
い腰を上げて、それでは暖かい南紀でもいうことで、ぽかぽかと絶好の行楽日和の先日、
勝浦温泉に行って参りました。今回は少し長いですが、その時の話でも少し聞いて頂きま
しょう。

 南紀は結構遠いです。海岸周りでも山越えでも大して時間は変わらないので、行きは山
越えです。五条へ出てR168、所謂、十津川街道をひたすら適当に途中の道の駅でトイ
レ休憩を挟みながら南下します。大休止は有名な谷瀬の吊橋で。うちの娘たちもなかなか
スリルがあるといっておりました。

 昼食は十津川村役場近くの道の駅『十津川郷』に併設の蕎麦屋『行仙』。十津川産の蕎麦
を食すことが出来、十割蕎麦もあります。小生はもり蕎麦と炊込みご飯のセットを頼みま
した。しこしことなかなか美味かったです。しかも蕎麦の下には山葵の葉っぱなんぞが敷
かれておりましてね。色合いもグッドです。そして仕上げは蕎麦湯。これで出汁を割って
飲むとまた格別ですわね。

 食後は足湯へ。この道の駅は温泉地温泉が近いので、こんな設備があります。ぷーんと
硫黄臭があっていいもんです。

 次の休憩地点は本宮。熊野本宮大社に参詣します。流石に大峰奥駈の熊野側(順峰)の
基点。立派な神社です。神木といわれる梛の実生を買った後、参道脇に残る熊野古道の石
畳を下って門前の茶店に出、「もうで餅」と抹茶のセットを食して一休みでありました。
そうそう、熊野といえば熊野牛王の魔よけの印が有名ですが、それに使われている八咫烏
はJリーグのシンボルでもあるのですよ。

 本宮からは横を流れる熊野川が北山川を合し、どんどん広くなって、家々も増えてくる
と新宮です。ここで西に折れてR42を暫く進むと那智勝浦町。那智湾に望む旅館で一泊
です。勝浦温泉については『いで湯の落とし文』をどうぞ。

 翌朝も快晴。6時過ぎに起きだして朝食前にまずは朝風呂。バイキング形式の朝食もた
っぷり摂って、まずは定番、那智の滝。飛滝神社の前の茶店横の駐車場に車を置いて、老
杉の参道を進みます。平日だから空いているだろうと思いきや、いやぁ、結構な人出です。
バスツアーでやってきた年配客がひっきりなしに押し寄せて来るのです。そうです。日本
はもう立派な老人大国。しかもその老人が最も小金を持っている階層であり、曜日感覚な
ど必要のない階層なのです。

 まあ、それはさておいて、入山料300円也を払うと滝近くまで行けると聞いて、行っ
てみることにしました。

 岩混じりの参道を進むと滝見台がありました。おや?もっと近く迄行けるのでは?と思
っていましたから少し期待外れ。やっぱり滝壺を見ないとしっくり納まりません。以前は
左からもう少し先まで進めたようですが、左の山肌から岩が崩れたのか、通行禁止になっ
ていました。

 全長133m、やや水量が少なく、風に落ちる水が流されていましたが飛滝神社の御神
体、圧巻です。
飛滝神社の御神体でもある那智滝

 続いて、一旦戻って、右手の自然石の階段道を登っていきます。ミツマタの花が満開。
古い庚申塚や石仏もあって風情があります。登るに従って那智の滝が木立の中から現れて
きます。結構な急坂を約10分。青岸渡寺の赤い三重塔横。ここからの風景は良く観光写真
にありますね。そのまま奥へと進むと七福神を祀る如法堂。その横が熊野古道。遠く大雲
取越への道です。歩きたいなあ。

 重要文化財の本堂に参って、更に進むと熊野那智大社です。ここには大楠があって、空
洞になった幹の中を胎内潜りができるのです。子供が面白がって潜ってきました。

 帰りはさっきの如法堂に出て、古道の続きを滝方向へ下っていきます。これがなかなか
風情のある道なのです。自然石の石畳。横の古色蒼然とした民家の石垣にはスミレやキラ
ンソウが咲いています。ぷぅーんとヒサカキの匂い。杉木立に出ると、小さな畑にはサカ
キが数本植えられていました。

 駐車場に戻り、土産を物色した後は、折角なので少し熊野古道歩きをしようと大門坂の
バス停近くに車で下りました。大門坂は全長約500mで古道の風情を良く残しているの
で有名。本当は下の市野々付近から滝まで歩きたかったのですが、何せ足弱のカミさんが
いるので、ええとこ取りをしたわけです。

 老杉に囲まれた幅2m程の石畳の階段道です。下りの方が何となく風情が良さそうに思
われたので下ってみることにしました。

 すぐに多富気王子跡。ここから那智の滝が見え、手を合わせたことから「手向け王子」
が転じたとありますが、昔は滝が見えたのでしょうか。ここにも青面金剛の石仏と庚申塔
がありました。

 やがて、左手にまたもや大楠。これも中が空洞で入れますので入ってみました。大人3
人は十分入れる広さ。上から光が漏れて来て、何かトトロの世界に入ったみたいです。

 道の両側に門番の如くそそり立つ一際大きい杉があります。夫婦杉。樹齢800年だそ
うです。いわば蟻の熊野詣の生き証人、幾多の老若男女を見てきたのでしょうか。

大門坂の樹齢800年と云われる夫婦杉。
真ん中の娘達と大きさを較べて下さい

 夫婦杉を過ぎると平坦且つ明るくなって茶店が見えてきます。大門坂茶屋。石橋があっ
て、最寄の古い民家は元旅館。なんでも南方熊楠が滞在していたらしい。ここを基地とし
て粘菌の研究をしていたのでしょうなぁ。この辺りはなんともいえず風情のある静かな場
所です。無人販売所でみかんを売っていました。デコポンっちゅうのもありましたよ。

 さて、戻ろうかということでふと前方に目を移すと、ありゃ、忽然と市女笠を被った平
安美人が現れた。「ついにタイムスリップしたかや?」そんな訳はありません。じつは大
門坂茶屋で着付けしてくれるのです。うら若き女性が二人草履をはいて石段を登っていき
ます。美人に弱い貴公子は思わず我を忘れて写してしまいましたぁ。

 大門坂を少し歩いただけなのですが、熊野古道にはまってしまいますね。後日、丁度、
ヤマケイからウォーキングの本が出ていて特集が熊野古道。買ってしまいましたぁ。

 昼食の場所を探しながらR42を走っていると、三女が海を見たいというので、串本の
手前に格好な平坦な岩の台地がありました。近くに車を止めて、海を眺めました。ドドー
ンと打ち寄せる波飛沫。南からの暖かい風。塩溜まりにはヒザラガイやヤドカリ、ウミウ
シの死骸もありました。のーんびり。これぞスローライフ。いいっすねぇ。

 串本節で有名な大島って、結構大きな島です。そして橋杭岩。マグマから地面の割れ目
に沿って噴き出した固い火成岩が浸食されずに残ったのだそうです。それにしても不思議
な地形です。ここでも波打ち際まで散策しました。

橋杭岩。向こうは大島

 その後は海岸線に沿ってのドライブです。切目の近くでハッサクを売っている店があっ
たので買って帰ります。10個500円、みずみずしくていい味でした。やはり柑橘類は
和歌山です。

 海岸線を延々とドライブ。南部から高速に乗るのはもったいないので御坊までR42を
使い、7時前に帰宅しました。それにしても、久方ぶりにのんびりといい天気に恵まれた
小旅行でした。また夏も行きますかぁ。



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