立春間近の矢田丘陵ほのぼのオフ
平成16年 1月31日(土)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲
練り塀が続く矢田寺本堂前の参道と矢田丘陵


 間もなく立春。寒かった大気も心なしか暖かみを増した様に感じる。そんな中、今日は
ペンギンさんと梅原さんのお世話で矢田丘陵陽溜まりオフ。低山徘徊派の原点とも云うべ
き里山を巡るオフに集まった人々は、北は丹波、東は岡崎、西は加古川と遠来も含めて総
勢21名。予想よりも雲が多く、やや肌寒かったけれども、歴史の衣に深く包まれた大和
の丘をお互いの蘊蓄を傾けつつ歩くのも又楽しであります。

 地道で行こうと早めに出かけるつもりが、なんやかんやで8時を過ぎてもまだ家。仕様
がないので近畿道経由西名阪。法隆寺まで行くと高いから香芝で降りて何とか千円以内で
済ませる。(^^;

 所々にある案内標識を確認しながら、集合地の大和民俗公園へ。集合時間の10時には
まだ大分間があるのに、皆さん早くも集合。主催のぺんぎんさんや梅原さんの事前説明を
拝聴中。揃った所で恒例、自己紹介。こんなに集まるのは数年前の金剛山オフ以来だろう
か。記憶力がとみに衰えつつある小生にはとても覚えきれないほどだ。(^^ゞ

 さて、駐車場を後にして公園を北へ向かう。古い民家が移築してある。丁度、萱を葺き
替え中なのを見物しながら、『丘の道ウォーク』と名付けられたコースをゆるゆると歩い
て行く。少年自然の家の角を曲がって、大和式の豪壮な民家も散在する矢田の集落。古い
道標。興味ある人は立ち止まる。無い人は先に。早くも一行は前と後で長く延びる。(笑)

 道標の辻を曲がった所にあるのが矢田坐久志玉比古神社。規模は大きくはないが、境内
の古杉は神さびて由緒を感じさせる。聞けばやはり延喜式内社。本殿などが重文に指定さ
れている古社は物部氏の祖先神、饒速日命を祀る。饒速日命が磐船に乗って飛来したこと
から航空の神様としても知られているのだという。本殿前の楼門には真珠湾奇襲作戦の立
役者で、戦争末期は松山の343空で傑作防空戦闘機「紫電改」を率いて活躍した源田実
大佐から寄贈された中島製(現富士重工)の91式戦闘機の木製のプロペラが掲げてある。
その他、境内の二の矢塚の由来など不在の神主さんの代わりに刀自さんに説明頂く。突然
の大勢の到来に驚かれたことであろう。有り難うございました。

矢田坐久志玉比古神社。奉納されたプロペラが見える

 神社をお暇して、先程の辻から牛の飼育場横を抜ける。懐かしい?牛糞の臭い。再び車
道に出て西に蟠る矢田丘陵に向かう。陽明学者の熊沢蕃山の碑や路傍には野仏。立ち止ま
る箇所があちこちにある。いっこうに進まない一行に主催のペンギンさんも大変だろう。

 矢田寺は別名あじさい寺。次女が四歳位の時に家族で紫陽花見物に来たことがあるのだ
が、堪らなく蒸し暑かった記憶だけが鮮明である。山門から長い石段が連なる参道を上が
ると、途中に人間位の大きさの立派な地蔵菩薩の石像がある。『見送り地蔵』と呼ばれ、
地蔵さんが通常、手にする錫丈や幡を持っていない。珍しい形で矢田型と呼ぶそうだ。矢
田寺の中興の祖、満米上人が地獄で見た地蔵菩薩に似せて造ったといういわれがあるが、
実際は室町時代後期の1515年に造立である。ところでこの地蔵さんの周囲には相撲の
四股名のような名前が彫られた墓石が多い。勧進相撲が何かで力士と矢田寺は縁が深かっ
たのだろうか。が何分、浅学にして審らかでない。

矢田型の姿をした見送り地蔵

 やや息が切れた頃、行き着く高台には白い練塀と左右に塔頭が並ぶ。名は忘れたが、そ
の内の一つ(大門坊)の門内に湧き水があったので頂く。門柱の陰には北向地蔵がひっそ
りと佇んでいる。ことほど左様に至る所に地蔵さんの石仏があるなと思ったことだったが、
帰宅してからあらためて知ったことなのだが、矢田寺は日本最古の延命地蔵を本尊とする
天武天皇開基の古刹なのだった。道理でねぇ。

 本堂の前の庭。右手に幾つかの野仏が並ぶ中にも、一際大きなお地蔵さんの石像がある。
高さは1.5m以上はあろうか。鎌倉後期の作とかで『味噌舐め地蔵』と云うそうだ。お顔
をよく見れば唇に乾いた味噌が塗られているのがわかる。美味い味噌が作れなかった女性
が見た夢の中に地蔵さんが現れ、味噌を食べさせてくれれば美味しい味噌にしてやるとい
うので食べさせ、家に帰ったところ、美味しい味噌になっていたという言い伝えがある。
それで今でも味噌業者のお参りが多いのだとか。地蔵さんの柔和な顔同様にほのぼのとし
た昔話だ。たぬきさんも手回し良く自家製味噌を持参し、お地蔵さんの口元へ塗るのであ
りました。
味噌舐め地蔵。口に味噌が

 本堂から左に折れて、池の畔にある日露戦役の戦没者の墓を過ぎて境内を出、矢田の里
の民家の間を歩く。左手に大和盆地が見え出す頃、舗装路と分かれて右手に矢田寺の裏山
へ入っていく地道が現れる。やや登り基調の幅広の道で、周囲は竹やぶとまだ若い桧林、
それほど鬱蒼とした感じはない。古い里道と見えて枝道も多く、古い道しるべや石仏が置
かれている。その内に左に現れた小さな沢を越える立派な木橋を渡る。ここからはやや急
勾配、といっても険しいものでもなく5分も歩けば平坦になって、国見台と呼ばれる辺り
へ出る。「右 やた 左 いこま」と刻まれた道しるべがある。ここまでしばしば道しる
べを見たが、あくまで私見だけれど、斑鳩の法隆寺から松尾寺、矢田寺を経て生駒聖天な
どに至る巡礼道なのかもしれない。国見台の展望台からは展望ガイドも設置されていて、
大和高原のいい展望が得られるそうだが、生憎、天気予報が外れて曇って靄っており残念
であった。

 道草ばかりで先導のペンギンさんには気を使わせるばかり。ここまで予定より1時間の
遅れだそうだ。それで松尾山山頂を端折る手もあったそうだが、近いこともあり、折角な
のでとお願いし予定通りに進む。元気一杯のマウンテンバイクの若者がすれ違う中、一旦
下って、右に松尾湿原への取付きを過ごすと、『松尾山入峯修行道』と物々しく書かれた
杭が立つ山道が分岐する。それを登ること3分。建物が見えてくれば頂上は近い。NHK
の中継所があり、四等三角点はその建物の奥である。山頂といってもひょろ長い赤松や雑
木に囲まれ展望はない。三角点にタッチして建物をぐるっと回って来た道を戻る。

 国見台に戻って今度は矢田峠方面へ向かう。新しい林道と旧道が錯綜しつつ、道は雑木
の尾根を伝っていく。途中にある南僧坊池は日が当たらないのか結構厚い氷が張っており、
小石程度なら表面に乗ってしまう。

 右手に東屋を見て暫く進んだ窪地が矢田峠。ここにも安政三年建立と読める石の道しる
べと石仏があった。

 バラバラと落ち葉が鳴ると思ったら暗くなった空から通り雨である。誠に当てにならな
い冬の空だ。やがて木製の展望台が設置されている開けた場所に着く。展望台からは松尾
山の中継所のアンテナが見え、阪奈を分かつ金剛山や信貴山、生駒山の山並みが望める。

 そこから凡そ100m北に移るとまほろば展望所の休憩所で、この辺りが矢田山の最高
点なのだそうだ。ここからは先の展望台とは逆方向の東側に、所謂、大和の青垣の山々が
一望できる。最初霞んでいたけれど徐々にそれも取れて、若草山、高円山、大国見山、高
峰山、竜王山が居並び、その山並みの奥には貝が平山も顔を出しているのがわかるほどに
なった。ジモティの梅原さんやペンギンさんの解説付だから良くわかる。

 テーブルやベンチもあるのでここで昼食タイム。たぬきさんからは栗焼酎、フェアさん
からはチョコレートと差入れを頂く。毎度ながらオフはこれが楽しみだ。(^^;

 一息ついて集合写真なぞを撮りあう合間に、三角点があるというので行ってみた。それ
は東屋のすぐ横の木立の中にあった。立ち木に懸けられた「矢田山最高峰」のプレートの
下に、本来は町村界か何かを示す標石があって、それが三角点標石に見立てられているの
である。確かに、この後、矢田山の三角点を訪れたがあまり展望も利かず、ここに三角点
が置かれなかったのも不思議といえば不思議ではある。(笑)

 昼食後は矢田山最高点からさらに北に向かい下り勾配の道を行く。300m程歩いた所
付近の矢田山の三角点は、子供交流館に向かう道から折れて少し繁みに入った高みにある。
100m程度はハイキング道から離れているので、GPSがあれば簡単に見つかるだろう
が、地図のみでは些か見つけるのは困難かもしれない。それ故だろう、欠けの無い標石。
しかしこんな所にもマニアはやってくると見えて、プレートが2、3ぶら下がっている。

笹の中に三角点のある矢田山の山頂にて

 いつも間にか『小笹の辻』を抜けて明るい雑木林になると、木々に名前のプレートが架
けられ、プラの説明板に気づくようになる。ハイキング道は自然探求路にもなっているよ
うだ。やがて右手下方に『子供の森』の施設が見えてきた。その中心、子供交流センター
の立派な建物には管理事務所があり、休憩できるベンチも完備されていて、我々はここで
小休止である。

 建物の前は峠池。その畔に出ると右手は広い芝生広場で凧揚げ大会などもここで催され
るそうだ。ここに道標があって、東明寺は右折するのだが、案内図に描かれていないもの
があるというペンギンさんの指示でここは直進する。舗装林道を暫く進むと、左手に「滝
寺」の表示。やや湿った小道を沢沿いに下って行き、石碑のある角を回り込むと建物が見
えた。これが滝寺廃寺だそうだ。いつもは開いていないという扉が開いているので中に入
れてもらう。すると眼前の一丈程の岩に凡そ一尺四方の四角い穴が穿たれており、仏像の
レリーフが彫られている。規模は全く違うが中国の雲崗や敦煌の石窟に似ている。制作年
代は奈良時代といい、今も信仰されているようで、千手観音らしい大きな石仏の前に小さ
な木魚と赤膚焼の湯飲み等が置かれてある。珍しいものなのでとりあえず写真を撮ったが、
帰宅して確かめると、ろくなものが写っておらずこれまた残念であった。

 さて、滝寺の分岐から再び峠池に戻って東明寺方面へ歩く。最初は尾根道だが次第に山
の中腹を巻くように下りていく。落ち葉が積もり、昔からよく歩かれた道だったのであろ
う深く洗掘された道である。所々には東明寺を示す古い丁石があり、指で行く先を示して
あるのだが、中でも一丁石はとてもこんな形は無理だろうという指の形に掘られてあって、
一行はああでもないこうでもないと一頻り喧しい。そこから右手に大きくカーブした先に
案外立派な東明寺の本堂が現れる。

一丁石の指に注目。何か一寸卑猥な。考え過ぎかな?

 本堂は新しく改築されたらしいが無住寺のようで境内の敷地は猫の額ほどだ。小さな弁
天池の横から下って、崩れた庫裏の横から車道に出る。梵字の彫られた石などを見物しな
がら行くと開けた谷で、勧請掛が張られてある。松の枝をぶら下げた縄は浄界と穢土を区
切る結界を現すのであろうが、両側の急峻な山肌から張られていて、長さも50mはある
のではなかろうか。毎年末に懸けかえるのだろうが、大変な作業に違いない。

沢に懸けられた勧請懸

 車道をぶらぶら下った先は矢田の集落。道の際の大きな柿の木にはまだたわわに赤い実
がついている。やや萎びて自然の干し柿である。子供時分を思い出して、試しに一つ齧る
とこれが非常に甘い。が、少し渋柿特有の「えぐみ」が残っていた。

 三の矢塚は田んぼの中にぽつんとあるが、大和郡山市長の邪馬台国の碑が出来て立派に
なったのだとか。矢田坐久志玉比古神社の二の矢塚と同じく、饒速日命が射た矢が落ちた
所というが、また一説には射たのは神武天皇だともいう。いずれにしても塚の周りにはヌ
スビトハギが繁茂してズボンの裾に一杯付着したのには閉口だ。(笑)

 三の矢塚を後にして畦道のような道で小山を迂回する。イヌノフグリに混じって、もう
レンゲが咲いているではないか。そういえばもうすぐ立春であるなぁ。

 大和民俗公園はすぐそこ。公園では梅原さんが待っておられ、フィナーレは芝生でコー
ヒーや紅茶の接待とペンギンさんからの大和郡山銘菓の差入れ。歩いて小腹が空きかけた
身には有り難い。更に駐車場に戻ると、たぬきさんからは黒豆パン。これが又旨いのだ。
実は家で食べようと、持ち帰って茶の間に置いておいたら、何時の間にか無くなっていて、
捜査の結果、次女の仕業と判明したのだった。(笑)

 帰りは節約の為に一般道。案外早くR163に出て、6時前には帰宅。風呂上りのビー
ルを片手に頂いたパンフを眺め、オフの余韻に浸る小生でありました。

 見所一杯の矢田丘陵をグルッと一巡り。天気は曇ってぽかぽかとは行かなかったけれど、
低徘の仲間の皆さんでほのぼのと暖かくなった里山オフ。ペンギンさん夫妻、梅原さんに
感謝です。

■下のURLに矢田丘陵オフの紹介の集大成があります
  http://ikomanet.hp.infoseek.co.jp/Teihai/index.html

 ■同行: アーリーバードさん夫妻、あかほりさん、梅原さん、呉春さん、幸さん、
      島田さん、たぬきさん夫妻、たらちゃん、のりかさん、フェアレディさん、
      ペンギンさん夫妻、水谷さん、みーとさん、美馬さん、宮本さん、
      もぐもぐさん(五十音順)
      
【タイムチャート】
8:20自宅発
9:30〜9:50大和民俗公園駐車場
10:10〜10:20矢田坐久志玉比古神社
10:40〜11:00矢田寺(金剛山寺)
11:35国見台
11:50松尾山(315.4m 四等三角点)
11:55国見台
12:20矢田峠
12:26展望台
12:33〜13:15まほろば展望所(矢田山最高点)
13:30〜13:35矢田山(247.6m 三等三角点
13:55〜14:01子供交流センター
14:15滝寺分岐
14:18〜14:25滝寺磨崖仏
14:30滝寺分岐
14:50〜14:55東明寺
15:20三の矢塚
15:32大和民俗公園
16:10大和民俗公園駐車場


松尾山のデータ
【所在地】奈良県生駒郡斑鳩町
【標高】315.4m(四等三角点)
【備考】 矢田丘陵南部は厄除けで有名な松尾寺の北に位置します。
NHKの中継所がありますが、展望はありません。
矢田山のデータ
【所在地】奈良県生駒市
【標高】331.8m(三等三角点)
【備考】 矢田丘陵の北部に位置します。三角点付近は尾根のコブ
で本来の「山」の感じはありません。周辺は「矢田山遊
びの森」に指定され、ハイキング道が整備されています。
尚、最高地点は「まほろば展望所」付近の340mです。
【参考】矢田丘陵郡遊健康マップ、矢田遊びの森ハイキングマップ



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