小春に誘われ鳥脇山
 
平成16年12月 3日(金)
【天候】晴れ
【同行】かみさん
検見山への途中から見た鳥脇山(中央)


 8/29の妙見山以来だから3ヶ月ぶりである。永らくあちらこちらと浮気?していた
けれども、今回は久しぶりに北摂。取りこぼしていた検見山と鳥脇山へ出かけるつもりだ
ったのだけれど...。

 早めの昼食、といっても即席ラーメンなのだが、食べる準備を始めていると、かみさん
が訊く。
「今日はどこ行くの?」
「宝塚の奥」
「沢山、登るの?」
「うんにゃ。大したことない。里山や」
「なら、紅葉も見たいし、行く。12時まで行くの待って」
しゃーないなぁ。二山とも大した登りはないが、出発は遅れるし、運動不足?のかみさん
ではなぁ、というわけで、検見山には大峰山とセットでまた訪れることにして、今回は鳥
脇山、紅葉見物には武田尾の桜の園へ廻ることにする。

 宝塚市山本から長尾山トンネルを抜けて、鳥ヶ脇付近の路肩の広まった辺りに車をとめ
る。あら?2台も車がとまっていると思ったらドライバーは白河夜船の最中であった。(笑)

 支度をして、榎峠へと車道を戻って緩い傾斜を登り返す。クヌギ、コナラ、コシアブラ、
タカノツメ等々、茶系統の濃淡が山の裾野を染める。モミジやハゼの深紅もいいけれど、
これら渋い茶系統も鮮やかなものだ。
これぞ北摂の秋(榎峠西側付近にて)

 榎峠は地形図でいえば347mの標高点の付近。車道が広げられる前は、川西に抜ける
車道が細々とあったに過ぎない。その拡幅された車道の山側斜面にコンクリート偽木の階
段が取り付けられている。その袂に笠塔婆がひっそりとあるのに気づく。「道供養」云々
の文字が刻まれ、文化元年三月とある。多田、池田と三田、武田尾方面を結ぶ古い道が元
々あったのだろう。その道すがら倒れた行路病者を供養する塔なのだろうか。

榎峠にある文化元年建立の供養塔

 階段を登ってみれば、よく手入れされた道がつけられている。始めはちょっとした急登
であるが、ものの5分もすれば緩やかになる。シダ、ツツジ、アセビ、赤松、コナラ、リ
ョウブなどが混生する典型的な北摂の植相だ。いつまでも暖かなのを思い違いをしたのか
赤紫の花をつけているミツバツツジ。ここも4月になればツツジの回廊のようだ。黄色の
ポリテープが雑木にやたらに巻きつけてあるのはなぜだろう。よくわからない。

榎峠の取付きのプラ階段

 高圧線の下を抜けて暫くすると、関電の火の用心の標識が林立するY字路に出る。鳥脇
山へは右を取るが、こちらにはNHKという印もある。道がいいのはNHKと関電の巡視
道でもあるからだ。更に進むと再び火の用心の標識が林立するY字路で、今度は左手が小
さな谷となり、細い流れの音も聞こえる。左に行っても面白いだろうが山頂へはここも右。
(地形図を見ると、この谷は鳥ヶ脇の集落へ下っているようだ)

 登路沿いに所々埋設された、三角形にTCと刻まれた石標を辿るように進む。ほとんど
傾斜はなく、イノシシの掘り返しが多い。やがて右側に白いポリテープが延々と続くよう
になり、「鴨神社 立入禁止」の札が頻繁にぶら下がる。鴨神社とはJRの川西池田駅の
南に鎮座する式内社のことであろう。

落ち葉のフカフカ道

 南を向いたNHKのパラボラ型のアンテナ施設が現れる。そこからはなだらかな三角形
の山が見える。頂付近がザレ場になっているのは中山最高峰であろう。更に進むとNHK
とSUNTVの共同放送施設が現れ、次いで猪名川TV放送局と書かれた放送施設が現れ
た。こちらは毎日など他の民放局の施設らしい。説明書きによれば、生駒からの電波をこ
こで増幅しているのだという。機材は全てヘリコプターで運搬したそうだ。その施設の中
間に三等三角点が埋まっていた。その三角点付近を中心として東と、放送施設横から西へ
落ち葉道が通じている。東は川西方面、西は切畑の関電の宝塚開閉所方面へ向かう道らし
い。

 山名プレートは2枚。ここまで来ると喧騒も聞こえてこない。静かなものだ。かみさん
は三角点の標石を椅子代わりにドッカリ。ちと標石が可哀想だが....。(^^; お茶と
アンパンで暫く憩った後、来た道を引き返す。

三角点の『重い〜っ』という悲鳴が聞こえてきそう

 往路では余り気づかなかったけれど、左手、葉の落ちた木の間からちらちらと川西市街。
右手(西)に意外に顕著な峰を示す検見山がそれぞれ見える場所がある。しかし最も眺望
が楽しめるのは榎峠の車道の切通しだ。中山連山から大峰山、六甲などが眺められる。微
かに人声が聞こえてきたが、これはゴルフ場の客の声であろう。プラ階段を下ると、ズボ
ンの裾にいっぱいのコセンダングサの実が付着していた。

 コナラ、エノキ、クヌギの見事な黄葉を愛でながら車の所へ戻る。取付き階段近くには
ワルナスビが花があったけれど、車道脇にはカワラナデシコが一輪咲き残っていた。

 3時前だ。武田尾までは15分もあればよかろう。左に検見山を見て、切畑の集落の辻
を南に折れる。僧(ぼうさん)川に沿って狭い道をくねくねと進む。途中、素晴らしい黄
葉を見せる山肌があった。しかし、ここも何年かすれば第二名神によって寸断される運命
だ。僧川を見ると、やはり台風の爪痕か流木が蓄積されていて、武田尾の集落間近では工
事の為に片側通行である。その台風が葉を散らしたのではと心配したが、武田尾の集落の
モミジ並木は今年も目も覚める紅葉である。

 バス停近くの路肩の広い辺りに車を止めて、廃線跡に向かう。某ミニコミ紙で武田尾が
大きな被害を受けたと知ったが、1ヶ月を経て、表面上はその痕跡はほとんどなくなって
いる。しかし、対岸のヨシ原は軒並み倒れ、流木が残り、そこまで濁流が押し寄せた様子
が明瞭に残っている。

 二つ目のトンネルを潜ると桜の園の入り口。その前の広場にはモミジが多い。今が丁度
身頃で、枝が屋根のように空を覆い、その鮮やかさは、下にいる人まで淡く朱色に染まり
そうなほどである。ハイキンググループがさっき引き上げた所で誰もいない。瀬音が聞こ
える以外静かだ。石のベンチに座って、持参のみかん、アンパンのおやつ。

桜の園入口の紅葉の天蓋
桜の園の紅葉林

 桜の園入り口階段を登った遊歩道周辺にも楓が多い。こちらはやや盛りを過ぎた風情で
ある。それでも2、3人の素人カメラマンが往く秋を残そうとカメラを向けている。少し
坂道を登って、早や傾いた西日に透けるモミジをしばし眺める。更にモミジの谷を遡行す
るのも良かったが、かみさんが余り行く気ではなかったので、来た道を引き返すことにす
る。

 廃線跡と旧駅跡を整地して造られた車道の土手から、数m下にある細い旧道に沿った武
田尾の集落は長い。その真ん中辺りの昔ながらの食堂。以前、駈渡山の取付きを尋ねた店
だ。コーヒーを飲もうと入ったけれど、手頃な値段だったし小腹も空いていたしで湯豆腐
鍋を注文。それを食べている内に武田尾温泉の冬の味覚はぼたん鍋というわけで、食いし
ん坊の二人連れは、ミニぼたん鍋をついつい注文してしまった。車なのでアルコールが飲
めないのがつらい。(^^;

 鍋が出来上がるまで暫く時間があったから、前述したミニコミ紙の記事について事情を
訊いてみた。店のご主人によれば、温泉へ行く赤い吊橋が落ち、店の付近も高さ1m位ま
で水に浸かったそうである。おかげで冷蔵庫から什器その他一切合財、使い物にならなく
なったこと。浸水した跡が見当たらないのは、日頃の山歩きに来る馴染み客達がボランテ
ィアで拭いてくれたことどもを話してくれた。そういえば床机やテーブルは真新しいもの
であった。

 なんやかんやで1時間以上も居たろうか。秋の日は釣瓶落としとはよくいったもので、
肉の厚い椎茸や野菜を土産に、店を出た5時過ぎにはもう辺りは薄暗い。早く帰らねば。
北摂のしっとりとした山と味覚を楽しんだ秋散歩の一こまでした。


【タイムチャート】
12:10自宅発
12:55〜13:00鳥脇集落東の路肩(駐車地)
13:05榎峠(347m)
13:39NHKアンテナ
13:45〜14:00鳥脇山(484.2m 三等三角点)
14:30榎峠
14:40鳥脇集落東の路肩(駐車地)


鳥脇山のデータ
【所在地】兵庫県宝塚市、川西市、川辺郡猪名川町
【標高】484.2m(三等三角点)
【備考】 大峰山を主峰とする宝塚北部の山地の中の一峰です。と
りたてて顕著なピークがあるわけではありませんが、北
摂の代表的な植相を示す雑木林に覆われ、夏を除けば、
それぞれ趣のある山歩が楽しめます。
【参考】
2.5万図『武田尾』



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