早春の高岳南北府県境尾根縦走
平成16年 2月21日(土)
【天候】晴れ時々曇り
【同行】別掲
芦生の谷に似た大谷源流部の雑木林


 大阪府能勢町と兵庫県猪名川町の府県境に蟠る高岳周辺は、北摂でも雑木林が比較的多
く残された希少な地域で、春の芽だし、秋の黄葉、冬枯れとそれぞれ風情のある風景が楽
しめる。とりわけ高岳の北側は、高岳が南からのアプローチが一般的であることもあり、
ガイド本にもあまり掲載されておらず、静かな山域である。今回のオフはそんな高岳を中
心として、南尾根から北尾根へかけての府県境を縦走しようというものだ。猟期明けを待
ちかねて集まった山好きは総勢10名。春を思わせる陽気に誘われて雑木林を存分に堪能
したのでありました。

 食料調達などがあるので、少し余裕を見て7時過ぎ自宅を出る。集合地の奥猪名健康の
郷の駐車場には一昨年だったか、丁度、今回の山行の後半部に当たる高岳北尾根から奥山
を歩くオフに参加して以来である。まだ誰もいないだろうとの推測は外れて、見覚えある
車が1台。早くも母たぬきさんが準備中である。四方山、話している内に矢問さんやその
他の参加メンバが集まってきて、最後に妻恋さんの車が同乗者を乗せ、9時前に到着した。

 駐車場で恒例の挨拶を交わした後、早速、起点の中山峠へ向かう。杉生で県道を能勢方
面に折れ、猪名川変電所を左に見て、植林で薄暗い坂を登りきると中山峠である。

中山峠の取り付き。左にネット

 広まった路肩に車を置かせてもらう。近くの大信鋼業の工場からは今日も作業をしてい
るらしく機械音が漏れてくる。その工場の所有らしい空き地の横から取り付く。暖かい。
予報では最高気温は20度を超えるとかで、それを見越して、服装も軽く、水分も1Lのお
茶のペットボトルを用意したのは正解の様だ。道は鹿ネット沿いに、荒れた畑地の横から
葉を落とした栗畑を抜け、すぐに桧の植林帯に吸い込まれる。思ったより明瞭な道だ。そ
れもそのはず、直ぐに祠が現れ、社前には新しいみかんが供えてあったから、地元の方が
今も世話をされているのだろう。その祠を過ぎて暫く、今度は小さな広場が前にある高さ
3m位の岩が現れた。妻恋さんが指し示す岩の面を何気なく見やると、驚いたことに仏さ
んの顔が線刻してあるではないか。裏にもあるというので回ってみれば、そこにも岩があ
って、鎧らしいものを纏った姿と、頭が異常に大きい翁の顔の線刻がはっきりとわかる。
これって福禄寿?ということは鎧の方は毘沙門天?七福神が彫ってあるのか?さっきの明
瞭な道はその参道だったらしい。しかし、誰が何時、何の為に彫ったのか不思議な気がす
る。
福禄寿らしい線刻。分かるでしょうか?

 七福神を過ぎるとやや薄くなるもののまだまだ明瞭な尾根道が続く。その尾根が広がっ
て不明瞭になる辺りにある無名の峠には、左右から荒れているが明快な踏み跡が上ってき
ている。地主の古い看板がぶら下がるのを潜って入った先は、妻恋さんがキャンプの適地
だという雑木林の平地で、細い沢が流れているけれど、やや濁り気味で飲み水には余り適
さないみたいだ。妻恋さん、これにはやや落胆の表情である。

峠付近にて

 峠付近は地形図を見てものっぺりとしているので読図がやや難しい。しかも踏み跡が薄
くなる。テープ類も皆無でふと間違った方向に行きそうになる箇所も幾つかある。府県境
を示す赤プラ杭が目印になろうが、地形図、コンパスは必携だろう。(当たり前か(笑))

 小柄な人が歩く程度の隙間があるものの、こちらは中腰にならねばならずちょっと太股
が軋む。(^^; ヤブではないが、倒木やヒサカキ、ツツジの張り出した細い枝が鬱陶しい。
時折、前方が開けて、赤白鉄塔を頂く高岳の姿が徐々に大きくなってくるのがわかる。遠
くからはチェーンソーらしい山仕事の音も耳に届く。

 背の低い松が疎らに生える斜面に出て小休止。南方向が広がって、三草山、竜王山、堂
床山と端然と並ぶ姿がいい。それらを眺める額に滲む汗に微風が心地よい。ふと、ポケッ
トまさぐると「ありゃぁ?」タオルがない。また落としたようだ。今まで何回落としたこ
とやら。少し戻ってみるが見つかる筈もない。今度歩く時でも捜すかぁ(笑)

 背の低い潅木の明るい斜面を進んで、左に鉄塔を間近に見る頃、明瞭な道に飛び出した。
猪名川不動尊からの道だ。しかし今回、我々が歩いてきた南尾根からのルートとの合流点
に目印はない。あえて云えば、不動尊からの道が最後の鉄塔を過ぎて50m位東だろうか。
丁度、道が東から北に方向を変える辺りになる。

 右にマツタケ山を示すPPテープ。登り基調で暫く進み、伐採地から再び最後の登り。
山辺やナルタキ山への道と合わさって、西に少しで展望のない高岳山頂に出る。記念撮影
の為、小休止。林さんはデジカメのリモコンが意のままにならず悪戦苦闘。これが一行に
は程よい休憩になる。(笑)

高岳山頂で暫し憩う面々

 高岳山頂西の赤白鉄塔から北には、丹波幹線、丹後幹線の二系統の送電線の管理の為、
防火帯も兼ねた関電の広い巡視道が伸びる。それを辿って暫く急降下した後である。眼前
に深山の南のピーク一帯を思わせる広い熊笹の原が広がった。なだらかに起伏する笹原と
赤松林。これはすばらしい風景だ。

高岳北尾根の雑木のトンネルを行く
クマザサ原に出る
クマザサ原からこれから歩く稜線を見る

 その先の鉄塔の立つ切開きで尾根道から北西に折れて、幅広の落ち葉のふかふか道を行
き、少し登った所が今日の昼食場所の711mピーク。笹が刈られて円形の台地になって
いる。妻恋さんの話では関電の作業用へリポートなのだという。そしてそこからの展望は
ダイナミックそのもの。西に尾根続きの高ンボ。妻恋さんご推奨の稜線だが、なるほど笹
の中に獣道然とした薄い踏み跡がある。その向こうには大きく大野山。北にはこれから歩
く高岳北尾根からもっこりした奥山と背景に弥十郎ヶ岳や丈山。その間からは三岳や小金
ヶ岳。東は白いドームの目立つ深山に横尾山、剣尾山、半国山がうねり、南には鉄塔を頂
く高岳や大船山が広がる。まことに見飽きない。しかも今日は風もなくうらうらと心地よ
い。食後の昼寝を決め込む人もいる程である。ところがその暖かさにつられて、歓迎され
ざる物が....。そう、ダニだ。体長3o位のマダニが服の上をモゾモゾと蠢いている。足
の多い生物はやはり好きになれない。(^^;

 無線に興じるたぬきさん、缶ビールの小和田さん、思い思いに過ごした1時間の休憩は
あっという間。午後の部はさっきの鉄塔へ戻って、再び所々雪が消え残る関電の巡視道を
北へ進む。巡視道のプラ階段で急降下。降りきった鞍部には細流があり、金属製の橋が架
かる。ここが沢谷の源流部で、地形図には破線があるが、妻恋さんが云う通り猛烈な藪で
歩くのは困難そうだ。細流を渡って岩混じりを登り返すと右脇に展望岩がある。妻恋さん
と小和田さんが登って景色を愉しんだが、小生は遠慮しておく。(^^ゝ

 鹿避けネットだろうか黒いネットが暫く右手に続く。固定用の針金が張り出していて、
注意しないと危ない。この辺りはアカマツが主体の林で明るい。マツタケがよく出そうな
雰囲気だ。
ヤブを避けて大谷源流部の雑木林へ降りていく

 665mピーク等、幾つかの緩いアップダウンをこなすと分岐がある。直進の尾根伝い
は大谷へ出るそうだが、巡視路は右手の階段道で降りていく。下った先もまだまだいい道
が続くが、この辺りは少しややこしい部分がある。小さな尾根伝いに巡視道は直進し、や
がては大谷へ下っていくらしいが、奥山へ続く尾根は右に折れている。しかし、この折れ
た尾根を乗っ越す部分がヤブだという。迂回の為、妻恋さんは右に折れずに見送って、山
腹を強引に降りていく。その先は大谷の源流部。芦生の原生林の谷を髣髴とさせる風景が
広がる。地形図で確認すると一昨年、大谷を遡行して尾根に取り付いた地点とほぼ同じら
しかったが、どうもしかとは思い出せない。
「ここで大谷を下れば杉生新田にエスケープできますが」と妻恋さん。しかし全員、尾根
歩きを続行の意思。そうでなくっちゃ。(^_-)

 この付近はどこでも道。登りやすそうな箇所を見つけて尾根に上る。一昨年、昼食をし
たためた辺りを抜けて655mピーク。その先、以前は丈余の笹のブッシュだったという
コルの部分も今は踏み跡の部分だけ刈られていて歩きやすい。忽然とという表現そのまま
に、右手直下にコンクリート舗装の林道が近づいてくる。小さなコブを越えて、少々山腹
沿いに下った後、関電標識「火の用心bP01」が立つ辺りで林道に合流する。

 しばらく林道を歩いて、林道が右に降りていく辺りで再び植林尾根に分け入る。最初、
西方向であった尾根は608mピークを過ぎると北に振り、また西に振って、よく手入れ
された桧林の中の無名峠に至る。赤ペンキで矢印のみが書かれた見覚えのある地図標識が
倒れている。再び小休止。ここでも妻恋さん、
「奥山は急登で激下りがあります。林道下れば楽に杉生新田ですがどうします?」
女性陣の中には賛成した方も2、3居られた様だが、ここまできたら奥山に登らねば(笑)
ということでもう一踏張りに決定。

 この山はどこからでも取り付ける。無粋だからと枝に巻かれたテープを外しながら妻恋
さんが行く。例のぽつんとある緑に塗られた別荘はガラスが綺麗に拭かれているので使用
されているらしい。登り易い部分を選りながら登るに従って、背後には弥十郎ヶ岳が大き
く迫ってくる。100m程、一気に高度を稼げば雑木の綺麗な山頂で、狭いのかと思いき
や東西に長い台地状を呈している。三角点は更に100m先である。北摂ではよく見かけ
る緑色の山名板が一つ。角の欠けた三角点の周りで小休止してここでも記念撮影となる。

奥山山頂。左手に三角点、中央の木に緑の山名板

 奥山からはやや北西に振って636mピークを目指す。途中、健康の郷が俯瞰できる切
開き地点では駐車した車も見える。そして靴紐を締めなおして最終目的地の泉郷峠への激
下り。一昨年より藪がきつくなっているようだ。木の幹に無粋な赤ペンキが塗られている
所を降りれば、以前は良かったのかもしれないが、今はそこが必ずしも藪の薄い部分でも
なく、薄い所を選びながら降る。それでもイバラなどで抵抗を受ける。その時は気付かな
かったが、お陰で帰宅して風呂に入ると、腕はヒリヒリでありました。

 さっきまで籠坊の集落がちらりと見えていたが、それも山際に消え、暫くの後、代わっ
て今度は下の方に車道沿いの電柱がちらちらと見え始めてくる。ようやく籠坊への車道も
現れて、飛び出した所は峠の石碑からやや逸れた場所である。それにしても泉郷峠付近は
ゴミだらけだ。公私の区別のつかなくなった日本人。家の廻りじゃ、決してこんな振る舞
いはするまいに。

 杉生新田への道に出て、県道を進めば健康の郷は直ぐ。風呂は受付が4時までだという
ので諦めて、能勢のコロッケの旨い店へ行こうということに。ちょうど起点の中山峠を抜
けた先だ。能勢町の岐尼(きね)神社の西側にある「鳥岩屋」。なんと妻恋さんに1人2
個ずつ、ご馳走になってしまった。オフの主宰と何から何までお世話になった上に、コロ
ッケまで。こりゃまずいと思いつつも、ついついお言葉に甘える小生であります。(尚、
コロッケは一個60円と廉価。家への土産に10個購入。家でも好評でした)

 今日はここで散会。今度は泉郷峠から大野山のヤブの稜線行きましょうという妻恋さん。
また新たな楽しみを残して、日が傾き、ややセピア色に染まった空気はまだまだ暖かでし
た。

■同行: 岩崎さん、隠岐さん、小和田さん夫妻、たぬきさん、ダンノ凡太郎さん、
     妻恋地蔵さん、林さん、宮川さん、矢問さん(五十音順)

今回の山行については矢問さんのHPと、丹波のたぬきさんのHPがあります

【タイムチャート】
7:10自宅発
8:25〜9:00奧猪名健康の里駐車場
9:12〜9:17中山峠
9:18尾根取付き
9:23〜9:34七福神の岩
10:00
10:25〜10:42小休止
10:55猪名川不動尊コース出合
11:07〜11:13高岳(720.8m 三等三角点)
11:35〜12:30711mピーク(昼食)
12:54665mピーク
13:06〜13:15大谷源流部
13:39〜13:41655mピーク
14:00林道出合
14:06608mピーク
14:20〜14:30
14:46〜14:55奥山(654.8m 三等三角点)
15:10〜15:15636mピーク
15:31泉郷峠
15:53奧猪名健康の里駐車場


高岳と奥山のデータ
奥山については『寒の戻りに若芽震える高岳北尾根から奥山
高岳については『不思議な邂逅に驚いたPart2〜高岳
などを参照下さい。
尚、道標、テープなどは皆無ですので地形図、コンパスは必携
です。
【参考】2.5万図『木津』、『福住』



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