白倉連峰小春日和
 
平成16年11月23日(火)
【天候】快晴
【同行】別掲
烏帽子岳から見る白倉連峰
左から白倉岳、中岳、南岳


 午前6時、窓を開けて未だ星が瞬いている空を眺める。東の地平近くは薄い朱色に染ま
り始めている。またとない快晴になりそうだ。今日の目的地は以前から気になっていた湖
西の白倉岳。実は二週間前に行く予定で低徘メンバーには声をかけていたのだけれど、色
々予定が合わず、今日になった次第。だが、却ってそれが幸運となって、この上天気を迎
えられた感じだ。予定の7時半、桃山台駅西の集合地には、あれこれ声を掛けて集まった
6名の参加者全員が顔を揃えた。いつもながら時間に正確な低徘のメンバです。(笑)

 紅葉を目当てに行楽地を目指す車が多いのであろう高速道路はやや混んでいたが、メン
バーを乗せた2台の車は順調に走って、安曇川沿いに北上する。梅ノ木を過ぎて暫く、朽
木村の栃生で橋を渡り、適当な車のデポ地を探す。幸い橋のたもと近くに数台が置ける空
き地があった。ここで1台に相乗りしてスタート地点の村井へ向かう手筈。が、安曇川左
岸沿いの村道は工事中らしく通行止だ。国道で迂回して北上、池の沢橋を渡って西村井の
集落に着く。誰もいないだろうとの予想に反して、ガイドに紹介されて知られだしたのか
先着の車が2、3台。準備中のパーティもある。こちらも早速準備開始だ。

 西村井からは寺の横からと村道からの二つの登路がある。今回は若干距離が短そうな村
道の取付きから。丁度車を止めた辺りに登山口の標識がある。(尚、周囲が民家の為、迷
惑のないように駐車が必要です)

民家の間にある西村井の登山口

 登山口から入り込むと直ぐに人工林の中の地道の林道になる。よく手入れされて明るい
杉桧林だ。緩い傾斜を暫く進めば、林道と別れて右に登る山道がある。桧の幼木が生え、
雑木も混ざる中に、オオイワカガミの群落が散見される。春はなかなか見事であろうと思
わせる群落は葉が赤く色づいたものも混ざって、松本地蔵への道すがら、更にその先の尾
根沿いにもそこかしこに見られる。

 山腹を登る為にやや傾斜を増した山道に、額には早くも汗。小休止して半袖になるメン
バーも出る。再び歩き始めた時だ。前方に白いカードがぶら下がっているのに気づく。「
蜂の巣あり注意云々」とある。Webにあったのはこれのことだろう。気温が低下してい
るので、もう活動はしていないはずだが、やっぱり不気味。幸い何事もなく進むと小屋の
ような建物が木の間隠れに見えてくる。松本地蔵だ。名前の由来となったらしい松の大木
がある。寺の横からの登路とはここで合流するらしく、1間幅のいい道が上がってきてい
る。お堂の扉は閉まっていたが、鍵はかかっておらず、開けると提灯とともに小さな地蔵
さんの石仏が祀られていた。

松本地蔵内部

 ここから暫くは山腹をへつる感じで進む。タカノツメ、ハウチワカエデなどが黄に赤に
陽に透かされて、青空に映える姿に一同、足を止める回数が増える。でも左側は棚林谷で
かなりの急斜面。上ばかり見ていると危ない。(^^;

朝日に映えるハウチワカエデ

 やがて周囲はアカマツが主体の平坦地に変わる。一面、松の落葉の絨毯。以前はさぞか
しマツタケが生えたでことであろう。そんな中に引っかき傷のあるアカマツが見つかる。
どうも熊の仕業らしい。まだ樹液が滲み出している生々しさを見ると、そんなに日数が経
っていないようだ。背筋が「ゾーッ」
多人数だからいいようなものの、単独じゃ少なからず不安が掻き立てられるところだ。

赤松に残る生々しいクマの爪痕

 登路にはテープがふんだんにあって、しかも造林公社のプラ杭と石標がいい目印になる。
545m標高点付近からは雑木が主体となり、周囲が開けて蛇谷ヶ峰がどっしりと構える
姿が綺麗。西峰の反射板が良く目立つ。そして日の出からかなりの時間が経つにも拘らず、
朽木村はまだ雲海の中である。

 再び、植林の中。桧かと眺めれば少し違う。アスナロともいわれるヒバである。葉の鱗
片の重なり具合が桧よりも少し荒めである。

素晴らしい雑木の中、尾根までもう一息

 牛コバといわれる場所は気づかずにいつの間にか過ぎてしまったらしい。757m標高
点手前で小休止を取って、再び歩き始める。歴史を感じさせる深くえぐられた道は、斜度
のきつい斜面をジグザグに高度を上げるので、あまり息が上がることもない。その内に右
手に見えていた尾根がだんだん近づいてくる。桑野橋・大彦(おしこ)峠からの尾根に違
いない。左手には烏帽子岳と思しき峰。この辺りになると、標高500m以下では色づい
て残っていた木々の葉も粗方散って裸木ばかりだ。大きなダイスギやブナの白い肌が散見
されだすと、ようやく緩やかな斜面となる。やや広やかな場所の真ん中、潅木に囲まれて
桑野橋・大彦峠との合流点の道標が立っている。風もなくポカポカと気持ちいいので、大
杉の側の日当たりのいい場所で一寸早いがランチタイムとした。

 和気藹々と食事を楽しんだ後は、いよいよ白倉連峰縦走へ。最初の烏帽子岳へはややき
つい登りである。昼食を摂って間もない体は重い。標高差は50m位か。どっこいしょっ
と。ふーッ。山頂には2、3枚のプレートが立ち木に引っ掛けてある。狭い頂の東側は植
林で展望が利かないが、西側は葉が落ちた雑木。前方にはこれから歩く稜線沿いに白倉岳、
中岳、南岳とほぼ同じ高さの峰が仲良く並ぶのが眺められる。(冒頭の画像)

 その烏帽子岳から少し下った鞍部が烏帽子峠で道標がある。朽木フィッシングセンター
のある小川へ下る古道(地形図の点線路)が通ずるが、小川側はやや荒れている様子だ。
特筆すべきは東側がポッカリ窓の様に開いて、蛇谷ヶ峰をはじめとする比良や湖北の山並
み、更に琵琶湖の向こうに鈴鹿や三上山らしき姿が見えることだ。雲海の底だった朽木村
の街並みは、今ははっきり姿を現している。暫く鳥になった気分を楽しむ。

烏帽子峠から蛇谷ヶ峰。眼下に村井の
集落。肉眼では琵琶湖も見えるのですが...

 峠から白倉岳に向かってはほぼ平坦である。そこを歩いている最中だったろうか、最後
尾のnakaiさんが声を上げる。目敏くナメコを見つけたらしい。粘液に包まれた栗色
のキノコは美味そうな香りを放っている。熊も食べ忘れたみたいでいいお土産になりそう。
(笑)

 やや細まった尾根筋を歩き、南東に振って登りついた白倉連峰の主峰、白倉岳の頂はち
ょっとした広場だ。朽木山行会の平成4年の木柱が立つ。(よく運び上げたものだ。)中
央には南を向いた二等三角点。樹木の間に東側がやや開けていて、村井と思しき集落に、
登ってきた錦繍の尾根筋も眼下に眺められる。ご夫婦が1組食事中であったが、煩い連中
が闖入してきてさぞご迷惑だったに違いない。(^^;

白倉岳山頂

 次の中岳には樹齢400年といわれる大きなダイスギ(アシウスギ)がある。幹周りは
5mはあるだろう。大きく二本に別れた片方は残念ながら枯れていて、樹勢にやや翳りが
あるものの、雪の重さに立ち向かい、苔むした樹肌は魁偉そのものである。願わくばいつ
までも樹勢旺盛で。

中岳のダイスギ。とにかくでかい

 南岳へは今までよりも大きく下り、一旦小さなコブを越えて、更に登り返さねばならな
い。この辺りはすっかり葉を落としたブナ林。西側には殆ど起伏のない山並み。その中で
西北方、少し顕著に盛り上がっているのは定かでないが百里ヶ岳であろうか。

 南岳山頂は狭いが大きなブナの木が1本。かなり上まで熊の爪痕が残っている。湖西、
北山では最も熊の生息密度が濃いといわれる天狗峠にも近いので、あるいはと思っていた
けれど、これほど頻繁に熊の痕跡があるとは。今年は朽木村の中心部にも出没しているし、
単独の場合は注意が必要だろう。

栃生まで劇下りの始まり

 それぞれの山頂でゆっくりと休憩をとりながらの縦走もいよいよ最後の下りの部だ。下
降点のCa930m峰にも南岳と書かれたプレートがある。ここから尾根は東と南に分れる。
栃生へは東尾根を下降するのだが、Webで仕入れた情報に依ればかなりの急坂だという。
しかし、歩いてみればそれほどでもない。ただ、ダラダラと長い下りがあって、それも直
下降である為、積もった枯葉と相まって非常に滑りやすい。また、今まで頻繁にあったテ
ープ類が、どうしたことかほとんど見かけられなくなる。しかし、道は明瞭で、造林公社
のプラ杭を目印にして、尾根を外さねば迷う心配はない。所々にそそり立つダイスギやブ
ナ、大きな葉をしたホンシャクナゲを眺めつつ、また前方の武奈ヶ岳の姿を見つつ降りて
いく。長いトラロープ。木の成長で幹に喰い込んでいるのは頂けない。

 ひとしきり下りをこなすと、暫くは水平道となって周囲は余り手入れの良くない痩せた
植林。所々にハウチワカエデがあって、ハッとするような彩りを見せてくれる。553m
標高点を過ぎると、踏み跡は北東に向きを変え、再び長い急降下となる。延々とトラロー
プが引っ張ってあるのも道理、落ち葉で滑りやすく、メンバーのほとんどは一度は尻餅を
ついたのではなかろうか。下るに従って、安曇川の水音と共に下界の騒音が上がって来始
める。嫌が応にも現実に引き戻される感じがしてなんだか寂しい気がする瞬間である。

 「30m先、道沿いにスズメバチの巣」の注意書きがまた現れ、左に迂回して避ける。
木の間から安曇川の流れが見え隠れしてきて、岩がちの最後の斜面を降りると、そこは村
道沿いの栃生口の登山口で、安曇川に架かる橋の直ぐ北、デポした車まではほんの20m
地点であった。
栃生口の登山口。矢印を降りてくる

 年に幾度もないほどの好天に恵まれた今回の山行も、熊にも遭わず全員無事に下山。西
村井に置いた車を回収してR367沿いの水場で解散となる。白倉岳は何度でも行きたく
なるような予想以上に渋いいい山。小春日和に歩く湖西の一日、皆さんご苦労様でした。


■同行 呉春さん、幸さん、なかいさん、水谷さん、もぐさん

【タイムチャート】
7:30桃山台駅西側ロータリー(集合地)
9:15〜9:20西村井(駐車地)
9:42〜9:50松本地蔵
10:25545m標高点
10:47〜10:53757m標高点手前200m(小休止)
11:03757m標高点
11:21〜12:03桑原橋コース出合(昼食)
12:08〜12:10烏帽子岳(916m)
12:15〜12:17烏帽子峠

キノコ探し(5分)
12:42〜12:50白倉岳(949.9m 二等三角点)
13:03〜13:14白倉中岳(Ca940m)
13:28〜13:42白倉南岳(941m)
13:55下降点(Ca930m)
14:18674m標高点
14:34553m標高点
14:50〜14:55Ca300m尾根突端(小休止)
15:07栃生登山口(車デポ地)


白倉岳のデータ
【所在地】滋賀県朽木村
【標高】949.9m(二等三角点)
【備考】 安曇川を挟んで、比良山系の西の山塊に位置し、朽木村
の最高峰です。烏帽子岳、白倉岳、中岳、南岳と連山を
形成し、朽木登山会が整備した明快な登山路があります。
ブナ林、芦生杉、オオイワカガミ、石楠花が見られ、四
季折々の良さが楽しめるコースです。尚、熊が生息して
いるようなので熊鈴は必携です。
【参考】
2.5万図『久多』、『北小松』



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