能登野から秋時雨の三十三間山 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ガスに煙る三十三間山の南のカヤト尾根にて |
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台風一過、体育の日は久しぶりに好天だという予報だ。当初、鈴鹿近くにしようかと目 論んでいたのだが、掲示板に「江若国境の三十三間山へ行かないか」とのメンバ募集の書 き込み。ガイド本をひも解けば、頂上付近はカヤトの原に海も見える大展望だとか。北摂 からはなかなか行けない山域だし、飛び入りをお願いした。ところが、大阪近郊は絶好の 運動会日和だったというのに、やはり秋の日本海側であった。折悪しく秋時雨に遭い、展 望はおろか昼食も立って食べる体たらく。それでもガスに煙る尾根上のブナの自然林、群 れ咲くトリカブト、ダイスギ。下山路の休憩地から何とか拝めた三方五湖と、好天とは又 違った風情の山歩きが愉しめた。 集合は綾部ICだという。しかし、つらつら地図を眺めれば、目指す江若国境の山は意 外に遠くでもなく、朽木村から30q程度奥まった場所に過ぎない事が分かる。それなら 現地集合ということで登山口のある三方町倉見で落ち合う連絡を入れる。 7時前に家を出て名神、湖西、R367、R303と乗り継いで今津町に入ると、にわ かに雲行きが怪しくなる。ポツポツと来た雨足が本格的になるまでそれ程の時間は必要が なかった。大丈夫かいなと少々不安が掠める。それでもR27に合流する頃には薄日に青 空も顔を出し、やや愁眉を開く。 倉見峠を過ぎて間もなく「三十三間山登山口」と大きな案内板があり、脇道にそれると すぐに立派な駐車場に到着。驚く無かれ自宅からここまで2時間足らずではないか。立派 に射程圏?である。但し、往復の高速代を無視すればだが。(^^; 駐車場には先行者のものであろう1台のステップワゴン。これまた立派なトイレを拝借 し、三方町が設置した案内図なぞを眺めていたら、やまごさん、たぬきさん夫妻の車がや ってきた。 今日、小生が事前準備したものはガイド本のコピーのみ。ルートは一度冬に歩いたこと があるというやまごさんにお任せである。そのルートだが倉見の約1q北にある能登野か ら古道を辿り、尾根を南下して三十三間山を極めて倉見へ降りるというルート。ガイド本 には倉見しかルートはないとか書かれてあったが、何だか楽しげなルートである。
ませた後、少し車道を戻ると、休耕田の中を真っ直ぐに山裾に入っていく林道がある。こ れが取付きとのことだ。それを暫く進むと林道能登野線の標識がある。ご他聞に漏れず産 廃物がうち捨ててあって汚らしい。林道があると必ずこういう不届きな輩が出る。誠に嘆 かわしい限りだ。右手には八幡川が流れる。ここの所の雨で水音高く、かなりの水量があ る。これを上流で横切らねばならないらしい。うまく渡れればいいのだが。 突然、工事中の広い道に出る。新しく林道を付け替えているのかと思いきや、砂防堰堤 工事の取付け道であった。林道はその新設道終端の下から植林帯の中へ延びていく。鬱蒼 とした、余り手入れの良くない人工林だ。白や黄色の怪しげなキノコが顔を出している。 そんな中に薄紫の可憐な花が揺れているのに気付く。トリカブトである。やや薄い紫の花 が鈴なり。気がつけばあちこちにある。
鹿がいる。立派な角を生やした雄で、身じろぎもせずこちらを伺っていたが、その内に身 を翻して斜面をあっという間に姿を消した。ぬかるんだ道には鹿の糞と滑った足跡が残さ れている。鹿も滑るのだから人間も滑らぬようにしなくては。(^^; まだまだ流量の豊富な沢が二股に分かれる所で林道は終わる。ここで小休止。真っ青な 秋空が顔を出した。それにつられて気分も高揚してくる。 左側の沢を飛び石で渡る。すると右手の斜面上方に白い標識があるのが目に入る。『能登 越登山道』とあり、明快な山道が現れた。これが若狭から近江に抜ける古道の一つ、能登 越の道らしい。昔はよく歩かれた道だとみえて深くえぐれて、斜面をジグザグに登ってい く。なかなかきつい坂道だ。今年はよく雨が降ったからだろう、また福井では集中豪雨も あった由、流された倒木や枯れ枝が窪みにうず高く積もっていて歩きづらい。湿った土の 斜面ではよく滑る。案の定、ズルっとやって手はドロドロだ。(笑)
歩いてきたからだろうか。更にかなり高度を稼いだと思われるのに、何処からか沢の音が 聞こえてくる。木々は全て根元辺りで撓う様に湾曲している。雪の重みだろう。そういえ ば丹後の依遅ヶ尾山でも同じ光景を見たような。 やや傾斜が緩んで山腹を巻くようになって、しばらく行くと小さな道標を見つける。旧 近江坂の分岐とあるが、その旧近江坂への道は余り歩かれた形跡はなくヤブに帰りつつあ るようである。能登越までは10分とマジック書きがある。 やまごさんが云う朽ちた丸木橋が見えてきた。急斜面をえぐって小沢が流れ落ちており、 それに架けられた橋だがとても歩けそうにない。ここは沢に下りるしかない。そして再び 斜面をトラバースする形で進む。背の低い雑木の枝に全身を阻まれながらも突き抜けてい くとポッカリと草地の鞍部に出た。イネ科の植物が生えていたのだろうが鹿に食べられた のか残っているのは株元だけ。その株元には夥しい鹿の糞。ここが能登越と呼ばれる所ら しい。地形図には645mと標高点表示されているから、凡そ550m登ってきたことに なる。日本海からの強い風の為か高い木はなく、展望もいいのであろうが、這い上がって くるガスで思うに任せない。風の通り道で気持ちいいが、立ち止まっているとすぐに寒く なってくる。たぬきさんからパンを差し入れてもらい、些かシャリバテを抑えてから南の 三十三間山に向かう。 前方に見えるCa780mのピークに向かう尾根道は、今迄のような明快さはなく踏み跡 という感じで、それも所々薄くなるが、黄と黒のトラテープが要所にあって迷うほどでは 無い。(美浜山遊会の「三十三間山←→新庄」と書かれた私製プレートも尾根道には幾つ か見られる)その踏み跡沿いには至る所に鹿の寝床があり、ヌタ場も点在している。道理 で獣臭いはずだ。そんな鹿達もトリカブトだけは毒草だけに食べないらしく、あちこちで 咲き乱れている姿を目にする。 再び草地に出る。これから向かう三十三間山や天増川の谷を隔てて、大きく根を張る三 重嶽が見られるというが、このガスでは...。その内、とうとう雨粒まで落ちてきた。 すぐ止むかと思えば、徐々に木々の葉を打つ音が高まってくる。これは少し本格的。ザッ クカバーを付け傘を広げる羽目になった。 尾根はやや西に振って再び低木の中である。この先も雨を避ける場所は無いとの事なの で、時刻が正午でもあり、ブナ林が現れ始めた所で昼食とする。木の枝に傘を預け、雨よ けにして手早く握り飯。食後のコーヒーもカップラーメンも勿論省略である。 それにしてもこのブナ林付近は清々しく、歩くのが楽しい場所だ。しかも白くガスが漂 い、幽邃な感じがする。イタヤメイゲツや栗等の広葉樹が多くもう1ヶ月、秋が深まれば 錦織りなすに違いない。
スギを横目に、一旦鞍部に降りて登り返しでダラダラと登っていくとひょっこりという感 じで三十三間山に到着する。山頂は角が欠けた三等三角点とプレートがあるだけで展望は 無い。雨が降ったりやんだりなので数分休んだだけで先を急ぐ。
んで体にへばりつくのを想像してしまう。が、子供の背丈を超える位のがよく茂っている との事だったけれど、適度に刈られていて体がずぶ濡れという事態は何とか避けられた。 でもスパッツは役に立たず、ズボンは腿の辺りまでビショビショである。(^^;
備途中なのか笹が刈られている。下山路は西の支尾根についているので、ここを右に折れ るとすぐに『風神』の標識。道から5m程奥まった所に摩滅した石仏と、僧侶の墓石によ くある卵塔風の、天保三年の銘がある石碑がひっそりと立つ。昔、流行り病に霊験があっ たとか。今もお参りする人がいる様子で硬貨と花が供えられている。
などもあり、概して明るい尾根道だ。『夫婦松』と表示がある登山道途中の踊り場みたい な場所には、なるほど、大きな松があるが、枯れて随分になるらしく幹しか残っていない。 ここからは西北方向に開けていて、山並にかかる雲の切れ目の彼方に日本海らしき青みが かった水平線がぼんやりと見える。北には三方五湖らしき汀も眺められ、ここにきて少し は景色を楽しめたのだった。 雑木林から人工林の中のジグザグ道に変わる。さっきからの騒がしい水音は『最後の水 場』から聞こえてくるものだった。ここには小さな沢が集まってきていて、水を汲む器も 備わっている。ここで山靴の泥落とし。ええい、邪魔くさいジャブジャブと水の中に入る。 道はここから荒れた感じの林道となって谷川沿いとなる。一際、水音が高い所には三段の 滝が懸かっているが名前は付いていないとのことだ。 更に太い林道と合流する地点には山頂まで3qの表示がある。ガイドにある登山口はこ こで、車2、3台が置ける空き地がある。 山の神の祠は谷川の向かい。苔むした石灯籠がひっそりと立つ。やがて前方が明るくな り植林帯から抜け出すと、農作業小屋が現れ、まもなく登山口表示と登山届のポストのあ る第二駐車場で、その向こうが車を置いた第一駐車場であった。 結構歩き応えがあった今日の三十三間山。たぬきさんらは近くのスーパー銭湯に寄って いくそうだ。またの再会を約してここでお開きである。 解散すると途端に雨が強くなってきた。ところが上中の街中に出ると、路面は乾いたま まだ。秋時雨。雨の通り道というものがあるらしい。山頂でのお目当ての展望は叶わなか ったけれど、若丹や江若の国境にはしっとりとした山々が多いことを実感した山歩きでし た。たぬきさん、やまごさん、有難うございました。 ■同行 たぬきさん夫妻、やまごさん
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