出灰から寒返るポンポン山
平成16年 3月 6日(土)
【天候】曇時々晴れ、にわか雪
【同行】単独
束の間の日射しに花を開いたF草


 ポンポン山は城摂丹を区切る老坂山地の最高峰。人気の山だけあってあらゆる方向から
登ることが出来る。小生も過去2度登ったけれど、いずれもオーソドックスな神峰山寺か
らであった。それで一度、北から登ってみたいと思っていたところ、京都市がポンポン山
の北斜面を大原野森林公園として整備して数年。自然に任せ必要以上の手を入れず、雑木
尾根がなかなかいいと聞いたので、今回訪ねてみることにした。ついでに未踏の釈迦岳の
三角点も踏んでということで、南側の川久保尾根からもいいなと考えたが、それはまた今
度に置いておくとして、今日は最短の出灰からアプローチである。

 豊中では青空だったものが、高槻の市街地を抜けて神峰山口迄来ると、陽が翳り、空谷
橋辺りでとうとう白いものがちらつき出した。出灰川の両国橋のたもとに車が数台止めら
れる空地があり、地元の方の駐車場でもないようなので車を置かせてもらう。用意をして
いる間にも降りはどんどん激しくなってくる。雪嫌いの小生の脳裏には少し嫌な予感がか
すめるが、幸い空がそれほど暗くないのが救いだ。

 府道と分かれて、出灰川の右岸沿いに車道を歩く。『せせらぎの里』の案内や焼物体験
の案内板が目に付くが、この道は『緑の郷』のハイキングコースとして高槻市が指定して
いるだけあって、車も殆ど通らない。山際には野仏も道行く人を見守っている。

 『せせらぎの里』を抜けて暫く。駐車地点からは20分位だろうか。萱葺民家と狭いが田
畑もある平地に出る。橋のたもとに道標が立っていて、ポンポン山の登山口とある。橋の
名前が面白い。鬼語条橋。
ポンポン山の出灰登山口。茅葺農家が見える

 民家の軒先をかすめるように小道を進む。急に犬が飛び出してきたりするから民家の横
は苦手なのだが、幸いなことに犬は飼われていないようである。一休禅師所縁の尸陀寺跡
はその民家の上の狭い台地で、小さな庵と昭和42年に建てられた石碑がある。尤も、一休
さんが庵を結んだのはもっと上の方らしいが。

一休禅師縁の尸陀寺跡。今は真新しいお堂が

 尸陀寺跡を抜けると、道は桧林のつづら折れで、急登だが良く踏まれたいい道である。
ちらついていた雪も小康状態で青空が覗く。さっきまでやや沈み気味の気分も、陽が射し
てきただけでこうも違うものかと思える位明るくなるから不思議である。

 高槻ハイキング協会の道標を見て、二回ほど鋭角に切り返して桧林を抜けると尾根に出
る。雑木の林で、所々、西方面が見渡せる場所がある。鴻応山か湯谷ヶ岳らしい優美な山
が望めたが、雪が降っているらしく灰色に霞んで見える。

 左の雑木ヤブの谷が次第に浅くなって、その源頭を緩やかに左に巻いていくと、前方に
549mピークの姿が現れるが、道はその頂上を避けてゆく。殆ど水平の道だ。森林組合のも
のだろうか、石標が埋まっている。再び、谷の源頭を巻いていると、また小粒の霰が降り
出した。今度は先程より激しく、枯葉を叩く音を耳にする程である。桧林に入り先を急ぐ
とY字路に出る。右に行けばポンポン山。すぐに階段が現れた。流石に頂上直下では、地
面は積もった霰で白くなっている。そしてまもなく見慣れた頂上に飛び出す。

 とりあえず三角点にタッチ。ここまで人に会わなかったが、頂上には2名。後からも数
人が上がってくる。中に富山から来たという人がいたのには驚いた。

 ここからはなかなかいい展望が得られるのだが、今日は飛雪でかき消されぎみ。僅かに
淀川の蛇行する姿と京阪の市街地が眺められるのみである。適当な所で切り上げて、次の
目的地の釈迦岳へ向かうことにする。

 頂上から南直下へ降りて、神峰山寺への道と別れ左へ。東海自然歩道だが半端な林道よ
りも広い道である。すぐに川久保渓谷道との出会い。更に10分。左手に関電の巡視道を示
す「火の用心」の赤い標識。その標識に『東尾根コース』とマジックで書き込みがある。
「むっ。ここへ出てくるのか、なるほど」と得心。ということは西尾根は?今までそんな
表示はなかったな。ま、下山路は後で考えるとするかぁ。

 善峰寺と釈迦岳の分岐はそこからすぐ。分岐の横にある赤白の大きな高圧鉄塔(北河内
線bP1)を見て、雑木の道を緩やかに下る。次に現れる高圧鉄塔(西京都線12)の直
下を潜ると、左手に下っていく踏み跡があるがこれは善峰寺への道。これを過ごして階段
を約10m登ると、左が釈迦岳山頂で角が欠けた三等三角点とベンチが置かれてある。島本
町の説明板には「島本町の最高峰で、水無瀬川の最上流云々」とある。そのわりに目立た
ぬ山頂で、南は木に遮られ展望皆無。北方向にアンテナが林立する小塩山が眺められる程
度である。一息入れ、昼食はさっきの赤白の高圧鉄塔でと決め、引き返すことにする。

 ようやく雲が切れ、青空が広がってきた。南斜面で陽が当たるとぽかぽかと心地よい。
湯を沸かしていると、初老のご夫婦がやってきて離れた所でおにぎりを頬張り始めた。静
かなランチタイムである。

 風が強まってきたらしく、ざわざわと木が騒ぐ。同時に気温がぐっと下がり始めたよう
だ。手袋、ウインドブレーカで武装して、ポンポン山方向へ戻る。

 山頂には戻らず巻き道を出灰方面へ歩いて往路のY字路。大原野からの西尾根コースと
いえばここしかなさそう。暫く試しに辿るとしっかりした道で、北方向に下っていくよう
なので間違いなかろうというわけで、降りていくことにする。すると大原野森林公園の保
護地域の概念図が掲げられいるのが目に留まった。これで安心だ。

 想像以上に素晴らしい雑木林の道ではないか。ツツジ、リョウブ、アカマツ、カシ、ナ
ラ等々。ゴミも無く、何度でも歩きたくなる。とりわけ『リョウブの丘』と名づけられた
前後がいい。明神岳や黒柄岳方面も展望できる箇所もあって、陽炎立つ春や黄葉の秋は最
高であろう。
西尾根コースの雑木のプロムナード

 その『リョウブの丘』には釈迦岳への道ですれ違った団体さんが食事の最中で喧しい。
のんびり昼寝でもしたいリョウブの林だが、長居は無用、早々に退散するに限る。

 さて、今回のもう一つの目的はF草に会うこと。キンポウゲ科のイチゲ類には何度も対
面したことがあるが、野生のF草は未体験。どんなかなと『リョウブの丘』手前を急いで
いる時である。前方から登ってくる夫婦らしき二人連れ。あれ?どこかで見た顔だと思っ
たら、なんと二輪草さん達ではないか。突然の邂逅は金剛山以来二度目。奇遇というか、
世の中狭いというか。やっぱりF草目当てに来られたという。
「咲いてましたよ」という言葉を耳にして、更に期待は膨らむ。いそいそと現場に向かう。

 かなり急な斜面を降りていくと、踏み荒らされないようにロープで仕切ってあって、腕
章を巻いた若い係員の方がいる。聞くと業者の盗掘などがあって、監視しているのだそう
だ。肝腎のF草は丁度タイミング良く陽が射しているので花を開いたものがちらほら。思
ったより大輪で鮮やかだ。有名な藤原岳のものより丈が高いそうだ。早速、撮影モード。
鮮明な写真が撮れているだろうか?(冒頭の画像)

 元の道へ戻って一休みしていると、陽が翳って周囲は急に暗くなった。一旦治まってい
た風もまた強くなってうなり声を上げる。これはいかんと緩い下りの尾根を足早に進む。
その内にとうとう雪がまた落ちてきた。今度は霰ではなく、薄い切片みたいな雪。『ツツ
ジの丘』への分岐を過ぎる頃には、本格的な降りになってきてヤッケにも雪が付着しだし
少し慌てる。

 杉の植林の中に入って暫くすると、右下にせせらぎが現れた。出灰と森の案内所の分岐
を示す道標がある。

 本来、ここで出灰への道標に従って、左に折れれば良かったのだが、森の案内所も見て
おきたかったのでそちらに向かったのが運の尽き。グルッととんでもない大廻りを余儀な
くされた。そうなったのは、加うるに「出灰の登山口から800m奧に森林公園への入口
がある。」という情報をネットで仕入れていて、それが先入観としてあった事にもよる。
確かに入口はあったけれど、その実体は・・・・?それは後刻判明する。(笑)

 出灰川にかかる三つの橋を渡ると、谷間も開けて畑地となり、高台にログハウス風の建
物が見えてくる。案内所である。炭焼き窯の横を抜け、階段を上がると意外に小さい建物
である。受付のおばさんが中にいたのでバス停の位置を確認しておく。

 案内所を出ると雪は益々激しくなっている。空がやや明るいので、まさか積もりはしな
いだろうが、それでも枯葉の上はうっすら白い。それにしても歩いても歩いても人家がな
い。急ぎ足で歩く内に川の流れが逆になった。ようやく峠を越えたのだろう。農家がちら
ほら現れるようになると、西京都変電所の宇宙基地のような施設が見えてきた。椎茸園が
あり、灯りが点いていたのでバス停を確かめるべく案内を乞う。
「バス停まで遠いですかねぇ?」
「いや、もう少し西に行ったとこ」
「バスの時刻分かります?」
「えーと。もうすぐ出るわ。小走りで行ったら大丈夫や」
「有難うございました」
挨拶もそこそこに小走りに先を急ぐ。確かに中畑回転場のバス停は小さな峠を越えたすぐ
そこ。しかし、肝腎のバスの姿が見えない。
「?」
時刻表を見て、唖然、がっくり。平日は2時18分発が休日は12分発だったのだ。おじ
さんは平日タイムを見たらしい。次のバスは2時間後。残っていたのはバスの轍のみだ。

 仕様がない。雪も小降りになった。歩くしかない。これも又一興。近畿では珍しいリン
ゴ園を見て、中畑の産土神である大神宮社の前で南に折れる。

 道標があって、出灰までは4.3qとある。
「ぎょえっ」
森林公園からだと10qはあるなぁ。とはいうものの、それ程苦にならないのは、山歩き
で慣れたからだろう。

 中畑川沿いに南に下ると、樫田浄水場を左にする。そこから暫く、左の山手に「森林公
園」の案内板と一筋の踏み跡が。ひょっとしてネットにあった森林公園の入口とはこのこ
となの?西尾根コースにあった道標通り出灰へ進むとここに出てくるらしい。てっきり、
森の案内所がある公園の玄関かと思っていたからその落差は大きかった。(笑)

 山にへばりつくような出灰の集落過ぎると、往路の登山口がようやく視界に。フーッ。
とため息。長かったぁ。

 車に戻り、府道を市街地へ下るに従って、青空が広がる。冬の北摂の山は山陰だという
が、それを目の当たりにした寒返るポンポン山。それにしてもF草の黄色は鮮やかでした。

【タイムチャート】
8:40自宅発
9:40〜9:50出灰(両国橋横(駐車地))
10:03せせらぎの里
10:10ポンポン山登山口
10:12〜10:14尸陀寺跡
10:40549mピーク
10:59〜11:05ポンポン山(678.7m 二等三角点)
11:08川久保渓谷分岐
11:18釈迦岳、善峰寺分岐
11:30〜11:36釈迦岳(631.0m 三等三角点)
11:45〜12:10鉄塔(北河内線bP1)(昼食)
12:20ポンポン山山頂南の出灰道標
12:35〜12:37リョウブの丘
12:45〜13:15F草の谷
13:32ツツジの丘分岐
13:36出灰分岐
13:45〜13:48大原野森林公園森の案内所
14:15中畑回転所バス停
14:20中畑大神宮社
14:45ポンポン山登山口
15:05出灰(両国橋横(駐車地))


ポンポン山のデータ
ブラッとポンポン山』を参照下さい。
釈迦岳のデータ
【所在地】大阪府三島郡島本町、京都市
【標高】631.0m(三等三角点)
【備考】 ポンポン山の東側にあり、水無瀬川の源流地で島本町の
最高峰ですが、展望には余り恵まれていません。東の京
都側は所謂、西山で西国札所の善峰寺、柳谷観音などの
有名社寺があります。
【参考】エアリアマップ『京都西山』



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