桶居山〜播磨アルプス陽だまりハイク
平成16年 1月24日(土)
【天候】晴れ
【同行】単独
221mピークから見た桶居山の荒涼とした姿


 まるで暦の上での『大寒』に合わせるが如く、この冬最も厳しい寒波は都市部でも各地
で雪を舞わせた。どこか歩きにいきたいけれど、本来雪嫌いの小生はこの寒さと雪にすく
んでしまう。が、今日はその寒さも一息ついた格好で、それではと雪のない日溜まりハイ
クに播磨アルプスへ。実際に歩いてみると、風が収まった加減か予想以上のポカポカで汗
ばむ程。すっきり気分爽快の一日でした。

 R2の阿弥陀の交差点を北へ曲がれば、標高は低いものの播磨アルプスの峨々たる山並
みが目に入る。今日は馬の背から鷹ノ巣山の東で尾根に乗って桶居山へピストン、帰りは
鷹の巣山から西へ向かい百間岩から降る目算。竿池の横を抜けて、奈良の大神神社のもの
と比肩するほどの大鳥居を潜って鹿嶋神社の駐車場に車を止める。

 何年ぶりの播磨アルプスだろうか。あの時は確か9月で暑かったことを覚えている。駐
車場から鹿嶋神社の参道へは行かずに北にある公園方向に歩くと、『馬の背の森』への道
標がある。緩い傾斜の常緑樹の森を抜けると灌木が疎らに生える岩尾根に出る。小野アル
プスの紅岩に似たベンガラ色の一枚岩で、高圧鉄塔(姫路火力東線)が立つ辺りまで来る
と良い景色。左手(西)の百間岩から反射板のピークを歩く人がまるで蟻のようだ。東側
には水辺の公園が出来ていて、時折、子供の歓声が聞こえる。

 殆んど高い木はない。尤も岩盤の上で土も出来ないから大木が生えようもないが....。
それでも痩せた木があって、名も知らない小鳥が頭上の枝で囀る。そうかと思えば、足元
に狂い咲きのミツバツツジが紫の花を咲かせている。

 平坦であった岩尾根も主稜線が近づくに従って次第に傾斜を増し、最後は胸突き八丁。
それでも距離が短いので小憩することもなく主稜線に乗る。

馬の背の岩。奧は鷹ノ巣山

 鷹ノ巣山は双耳峰だが、三角点のある峰が西峰なのか東峰なのかガイドブックによって
もまちまちの表示。桶居山への分岐がある峰を東峰とする書もある。ここでは三角点峰を
東峰とする。『+347 山』と刻まれた岩のあるピークを越え、下り基調になる辺りで
小さな案内プレートに従って、主縦走路から離れて北に向かう。桶居山までは手元のGP
Sで直線距離で1.8q。だが手前の山に隔てられ、桶居山の姿は見えない。

 良く踏まれた道が降っていく。背丈以下の高さの松が多い。他にはネズ、ツツジ類、イ
ヌツゲ、ササや乾性のシダが目立つ。ソヨゴやナナミノキの赤い実が綺麗だ。静かな道だ
なと思った途端、ダーンという銃声が立て続けにこだましたのに驚く。谷間にあるクレー
射撃場からの銃声だ。桶居山への道はこの射撃場のある谷間を馬蹄形に巻いている稜線に
沿って付けられているから、この先ずっと銃声が聞こえるのかと思えば、全く聞こえなく
なる時もある。道が山蔭に入ると岩肌に反射して届かなくなるのかもしれない。灌木の間
から大きな岩が覗く。道はその岩の上を通過するのだが、茂みに紛れ高度感はない。時折、
視界が広がって、高圧鉄塔の立つピークの向こうに桶居山がチラッと顔を出すのが見える。
「結構、遠いなぁ」

 更に小さなアップダウンが続く。前方から微かに人声がするなと思うと、木々が茂った
谷間を隔てた向こう側の岩混じりの裸地に、10人位のパーティが休憩中なのが見える。
が、なかなか近づかない。しかも「おい、おいっ」という感じでどんどん下っていく。よ
うやく茂みの真っ只中の鞍部。T字路になっていて、左に折れると今度は黒いプラ階段が
現れた。関電の巡視道だ。そのまま登っていくと、やっと先程のパーティが屯する裸地に
出た。

 この辺りは鉄塔が林立しており、その為に関電道があちらこちらに伸びていてやや判り
辛い。GPSで桶居山の方向を確かめる。

 姫二火力線bR6とある高圧鉄塔横を抜けると再びT字路である。左はどうも左前方の
ピークの上にある鉄塔への巡視道らしい。右に向かい、姫一火力線bR7とある鉄塔へ出
る。桶居山もだいぶ大きくなってきて、221mピークを越えると、桶居山が正三角形を
したその全貌を現す。が、それは通常の風景ではなく荒涼とした世界。高い木は一本もな
く、しかも黒く炭化した墓標のような幹だけの木々がぽつぽつとある。数年前に山火事が
あって、舐めるように燃え尽くしたのだという。ただ、今はクヌギらしい高さ1m位の木
やササが茂りだしていて、自然の生命力の強さが実感される。

桶居山。鹿嶋槍にも似ていると云いますが。

 Ca200mの尾根を乗越すと最後の50mの直登だ。岩混じりのざらついた斜面はかな
りの急斜面。シャリバテには些かつらい登り。歩き易い部分を選んで登る。息が切れだし
た頃に漸く頂上。誰もいないだろうと思ったら向こう向きに岩に腰掛けて食事中の単独兄
さんが一人。

 JR御着駅から歩いてきたという神戸から来た兄さん、高御位山に登って長尾へ降る予
定だという。ひとしきり雑談に花を咲かせた後、お先にと降って行かれた。

 独りになってラーメンの湯を沸かす。その間に360度の大展望を独占して愉しむ。西
は姫路市街、名古山の白いパゴダの東には姫路城が見える。新幹線がまるで白い蛇だ。南
に広がるのは瀬戸内海で、家島諸島が散らばり、淡路島が大きい。遠く霞むのは大阪湾の
向こうの和泉山脈だろうか。東から東南は鷹ノ巣山から高御位山と続く播磨アルプス主稜。
北には青く霞んで笠形山。北西に見える姫路セントラルパークは閉園したという。麓を通
る車がチョロQのようだ。それにしても月面もかくやと思われる荒れた世界。そのお陰で
何処へでも歩いて行けそうだ。気がつくと湯がぐらぐらと音と湯気を立てている。慌てて
火を消しカップ麺に湯を注ぐ。食べ終わる頃、東からご夫婦がやってきた。入れ替わるよ
うにこちらは東へと戻る。
桶居山から歩いてきた稜線を眺める。左奧に高御位山

 約1時間。桶居山分岐に到着。桶居山で長居をしたので、高御位山へのピストンは諦め
て馬の背コースとの合流点に戻る。茶を飲んで小休止。少々の下って登り返せば鷹ノ巣山
(別名:鹿嶋山)の三角点だが、見通しは良くない。むしろ西峰から反射板のあるピーク
への稜線にかけてが素晴らしい。歩いてきた桶居山へと続く尾根が一望である。この辺り
は岩場で足元に注意が必要なのだが、どうしても景色に気持ちが向かい、足元がついつい
おろそかになる。少しよろけかけて慌てる。

反射板ピークから。鉄塔ピークの左奧に桶居山が顔を
出している

 別所奥山反射板と書かれた国土交通省の反射板のあるピーク。風が出てきたのか、もが
り笛に似たヒューヒューという風切り音がする。と、いきなり突風に帽子を押さえる。

 桶居山への縦走路から正三角形に見えた209m山へはここから歩けそう。尾根伝いに
地形図の鳥居マークへ下るのも楽しいみたいだ。鉄塔ピークから見ると、背後の鷹ノ巣山
へと続く東の尾根は正に馬の背である。舞台のように張り出した鷹ノ巣山の大岩が目立つ。

 この鉄塔ピークから続く一枚岩が百間岩で、虎ロープも用意されているが、ざらついた
岩なのでホールド感があって安心。但し油断は禁物、転ぶと下まで止まらないだろう。

 百間岩の先のコンクリートのトーチカみたいな展望台の横を抜ける。すると小さな広場
があって、壊れたベンチの他に、吊り輪とか子供の遊具まである。変な所に遊具を置いた
もんだ。その側に網干鹿島講の石碑を見つける。昭和初期とこれは比較的新しいものであ
った。暫く歩くとJR曽根駅、中所登山口との分岐で、ここで全山縦走路と別れて左に折
れるとすぐに『天狗の森』と云われる神社裏手の樹叢の中の石段道となり、「一願成就」
鹿嶋神社の本殿と狛犬の鎮座する門の横に飛び出した。今日も経木を持って本殿を巡る人
々が居る。数え年だけ経木を持って無我で巡ると御利益があるそうな。当方も無病息災を
祈って本殿を後にした。

 参道沿いには土産物屋が立ち並ぶ。名物のかしわ餅でも買っていくか。湯気を上げる蒸
したての白と緑の餅を柏の葉で巻いてくれる。あわせて6つ。土産にして駐車場に戻り、
帰途についた。

 こんな山が近くにある播州の人は幸せだ。真夏は別として、四季愉しめ、暫くすると又
行きたくなる、そんな播磨アルプスである。

【タイムチャート】
9:10自宅発
10:20〜10:30鹿嶋神社駐車場
10:50〜10:52高圧鉄塔(姫路火力東線)
11:07〜11:11馬の背コース・主縦走路出合
11:18桶居山分岐
11:45鞍部のT字路
12:00高圧鉄塔(姫二火力線bR6)
12:05高圧鉄塔(姫一火力線bR7)
12:09221mピーク
12:26〜13:30桶居山(247.6m 三等三角点)
13:49221mピーク
13:53高圧鉄塔(姫一火力線bR7)
14:00高圧鉄塔(姫二火力線bR6)
14:06鞍部のT字路
14:36桶居山分岐
14:42〜14:47馬の背コース・主縦走路出合
14:49鷹ノ巣山(264.2m 四等三角点)
14:55鷹ノ巣山西峰
15:07反射板のピーク
15:10高圧鉄塔(姫路火力東線bR1)
15:19百間岩下の展望台
15:26鹿嶋神社
15:40鹿嶋神社駐車場


桶居山のデータ
【所在地】兵庫県姫路市
【標高】247.6m(三等三角点)
【備考】 播磨アルプスの主稜線から北に派生する尾根上にありま
す。鹿嶋槍に似たピラミダルな山容で良く目立ちます。
山火事の為、周囲は荒涼とした眺めが展開し、主縦走路
から離れている為、歩く人が少ないですが、谷にあるク
レー射撃場の銃声が少しうるさく感じられます。
【参考】2.5万図『加古川』



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