小処温泉
平成16年 5月29日(土)
天候: 晴れたり曇ったり
同行: 単独
小処温泉



 前略

 半年ぶりに大台ヶ原に行ってきました。この時期、シャクナゲはほぼ終わりなのですが
代わってシロヤシオツツジなどが咲き出すのです。このシロヤシオ、別名ゴヨウツツジと
申しまして、皇太子ご夫妻のお子さん、確か愛子内親王の御印でもあったと思います。

 今年は全体的に花が早いですね。そのシロヤシオ、西大台付近ではもう早や、盛りを過
ぎて、遅れたのがちらほら咲いている程度で、些か落胆の態でありましたが、三角点を探
しに寄った経ヶ峰では満開で、来た甲斐が有ったというものでした。

 さて、大台の帰りは大抵、温泉に寄るのですが、今回は小処温泉です。去年の秋、西大
台から小処まで歩いて降りたのですが、諸般の関係で入れずだったものですから、今回と
なった次第です。

 大台のドライブウェイから林道辻堂山線を下ります。この林道数年前まで地道でしたが、
今は全線舗装の快適道。数字の大きな下手な国道より立派です。とはいえ、林道ですから
一車線で勾配もきつく、ヘアピンも随所にありますから、景色に見とれているとえらい目
に遭います。その景色ですがすばらしいですよ。大普賢岳から行者環岳、八経ヶ岳、釈迦
ヶ岳と続く大峰主稜が一望です。水蒸気で霞んでいるのが玉に瑕でしたが、しばし車を止
めて眺めました。

 小橡川のせせらぎの音が聞こえてくると三叉路で、橋を渡って左に向かいます。温泉は
橋からまだ1km奥です。川沿いの狭い道を遡ると一寸小広い場所に出て、真新しい建物が
見えてきます。小処温泉です。以前はもっと鄙びた建物だったらしくその時を懐かしむ登
山者も多いらしいですが、今はログハウス風の綺麗なものです。

 剥製の鹿に出迎えられて玄関を通ります。ロビーは左が食堂、右が土産物コーナーにな
っていて、受付ではクレープの下着姿の小父さんが居眠っていました。

入浴料は500円とリズナブルです。ホールの奥の二つ並んだ暖簾の奥の方が男湯でした。
脱衣所には先客のジモティーらしい小父さんが一人、扇風機で涼んでいます。
「山登って来なさったんかい?」
「はぁ、大台から林道で降りてきました。去年、西大台からここまで歩いて降りてきたん
ですけどね。入りそびれて...。」
「わしも若い頃は歩いたよ。マムシ多いんや」
「へえ。それは知らんかったですわ」

浴室に入ると誰もおらず。奥の露天風呂に一人だけ。大台といい温泉といい、今日は予想
外に空いていてラッキーでした。

「大樹の湯」。ガラス戸の向こうが露天風呂

 六畳くらいの広さがある槙か桧の湯船を左に見て、まずは露天風呂に直行です。小橡川
の川べりにへばりつく様に作られた東屋つきの湯船は三畳足らずでしょうか。鉄平石に透
明な湯が溢れていました。どっぷりと浸かります。いい湯加減です。

ところでちょっと「?」と思うことがあります。単純硫黄泉と聞いていたので匂いをか
いでみたのですが、全く硫黄の匂いはせず、それどころか塩素臭が鼻をつきました。これ
には少なからず幻滅でした。レジオネラ菌とかいうものに神経質にならざるを得ないのは
仕様がないのですがね。
「うーん....。」

 一方、浴室内の湯船の方は、硫黄の匂いこそしなかったですが塩素臭は感ぜず、浴槽の
柾目の木の柔らかな感触が気持ち良いものでした。湯は木製の樋を伝って流れてくる仕掛
け。天井を見上げるとチョウナで削っただけの直径1mはあろうかという梁が2本。やは
り木というものはいいですねえ。

 湯にのぼせたら、ガラス戸を開けて川風に吹かれればいいという趣向。小橡川の清流の
向こう側は急斜面に鬱蒼と木々が青葉を茂らせていて、山の匂いがぷーんと鼻腔をくすぐ
り、真に秘湯に来たという気にさせてくれました。

 風呂上り、土産物コーナーを冷やかしてみました。すると、やっぱり山深いのでしょう
ね。鹿の角、霊芝、そしてなんとスズメバチの巣まで売っていました。鹿肉、猪肉もある
ようでしたが、高そうなので残念ながら買わずです。(^^;

 小腹が減ったので、昼の残りのおにぎりを頬張ります。鈴なりの卯の花が風に揺れる中、
大台登山口6時間の見覚えのある標識が目に留まります。去年の秋はあそこから降りて来
たんだなぞと感慨に耽りながら秘湯をあとにしたのでした。それではまた。

草々 

 小処温泉のデータ
【所在地】奈良県吉野郡上北山村
【泉質】単純硫黄泉
【温度】25.6℃
【効能】神経痛、筋肉痛、五十肩、糖尿病、婦人病など
【備考】 小橡川の源流近く、大台ヶ原の山懐深くに抱かれた温泉
です。大台ヶ原への登山口でもあり、近くには後南朝の
悲話も残る滝川寺があります。尚、温泉には食堂施設も
併設され、隣には宿泊施設『バンビ』があります。
TEL 07468−3−0256



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