磯砂山〜羽衣伝説の山へ
 
平成16年11月21日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独
展望抜群の磯砂山山頂


 また蟹の季節。蟹ツアーの帰りに昨年は依遅ヶ尾山に登ったが、あれからもう1年。「
光陰矢の如し」とはよく言ったもので、それがつい先頃のように思える。しかも年々その
感が強くなるから不思議だ。

ところで今回の『蟹のついでに山歩き』の"山"は磯砂山。整備されすぎた山と一部には不
評をかこつ面もあるけれど、一等三角点を持つ山で、しかも近百。気軽に登れて眺望が折
り紙付きとくれば、一回は登っておくにしくはないでしょう。

 予報に反していい天気だ。宿のある久美浜町湊宮を出て、神野駅前の食料品店で昼食の
巻き寿司を入手した後、R178からR313にショートカットするローカル府道を走る。
が、何を間違ったか又網野近くのR178に合流してしまった。途中で右折するところを
うかうかと直進したらしい。昨日の酒が残っているのかなぁ。(^^; えらく時間のロスだ

まぁ、今日はそれほど時間のかかる山でもないしと、久美浜温泉近くから再チャレンジ。
今度は無事にR313に出て比治山峠のトンネルを越えて峰山町に入る。峠から5分ほど
走ったところが大路口のバス停。「天女の里」なる目立つ看板が現れ、南側の山裾に向け
て狭い道が延びる。近くで農作業の準備をしているおじいさんにとりあえず確かめてみる。
「磯砂山へ登るのは、バス停のところの道に入ればいいですかぁ?」
「そうやけど、熊出るから気をつけんとな」
「...。」
濃く薄く茶色に色づいた里山を見つつ、鱒留川を遡上して奥へ奥へと潜り込む感じ。それ
にしても結構奥まで人家があるものだ。

 真新しい建物が現れた。「天女の里」とはこれらしい。左手の紅葉が最盛期なのが乙女
神社らしい。なんとも優雅な名前ではないか。帰りにちょこっと寄ることにしよう。

 磯砂山へはまだ暫く走らねばならないようだ。大分、山々が両側から迫りだした頃、途
切れていた人家が再び現れた。大成の集落で、民家の壁に磯砂山登山道の案内板が張って
あるのが目に入り、手前には車数台が置ける駐車場がある。

 先行車なし。川音だけがかまびすしい。先程の案内板の向かいがミソン谷林道で、登山
口まで1780mとある。同時に「熊注意、ラジオや鈴など音の出るものを携行せよ」と
の注意書きがいやでも目に付く。
「...。」
ミソン谷林道。「クマ注意」の看板
奥に通行禁止のバリケード

 所々にベンチが設置してある林道は完全舗装。かえってそんじょそこらの府道より立派
なもの。ところがバリケードが設置され、台風23号による土砂崩れで通行禁止との表示
がぶら下がる。まあ車は駄目でも人間は通れるだろうと進んでいけば、確かに道半分が埋
まっている箇所があるが、車が通れぬ程ではなかった。

 パラパラと小糠雨が来たが直ぐに止む。熊が出るかと最初は緊張したが、明るい雰囲気
でもあり、徐々に警戒感は薄らぐ。凡そ20分、林道が右に大きくカーブする奥に東屋が
見えてくる。「羽衣茶屋」とあり、トイレ完備。左にカーブして延びるのは磯砂林道で、
これも完全舗装。ここから登山口までは300mとある。

羽衣茶屋

 羽衣茶屋からゆっくり登ったミソン谷林道の終端が登山口である。「京都の自然二百選」
の石柱が立つ。人工林でやや暗いが、ここから1010段の丸木階段が始まるらしい。階
段の数は天女伝説とテンテンと引っ掛けたのかな?(笑)でもふと見るとバイク進入防止
の金属製障害物に「台風23号の影響で、土砂崩れ。当面、このコースの通行を禁じます」
云々の峰山町の注意書き。
「...」
しかし折角、此処まで来たのだからとりあえず行くだけ行ってみようではないか。どれほ
どの土砂崩れなのか見てみるのも一興ということで進むことにする。

 人工林はすぐに雑木林に変わる。階段は鬱陶しいが、木のチップが敷き詰められフカフ
カと弾力性があって歩きよい。土砂崩れは磯砂山の山頂部が見え出す辺りの左の谷へ落ち
込む北斜面であった。路肩が崩れてざらついた粗い砂が斜面を流れ下っているが、虎ロー
プと木杭が既に打ち込まれていて、通過には何の支障もない。

1010段の階段道

 直ぐに鞍部に出る。北常吉からの山道が東から上がって来ている。天女が水浴びしたと
いう女池はここから200m南らしい。これは帰りに寄るとしてまずは磯砂山に向け、北
へ。階段はまだ780段あるという。

 階段道は単調であるが、登るに従って徐々に展望が広がり、「南無妙法蓮華経」とひげ
文字が刻まれた高さ1m位の石柱の手前では天橋立が霞むのが見える。ここまで来ると大
した傾斜はなく、小さな高みを左から巻いた先が山頂であった。

 山頂は広く、何か建物があったような感じを受ける。それを証拠づけるように、大きな
石が置かれていて、その中央が礎石か何かの跡の様にくり抜かれているのだ。先程、ぽつ
んとあった「ひげ文字」の石柱の土に埋まる寸前の部分には「妙」の字が見えた。峰山町
には鬼子母神で有名な妙経寺があるから、単なる推測だけれど、何か関係があるのかもし
れない。

 さて、目当ての展望はといえば流石、一等三角点の山。予想通り素晴らしいものだ。潅
木もなく360度遮る物なし。まずは北側。久美浜湾から丹後半島の依遅ヶ尾山に風力発
電のプロペラが林立する太鼓山。やや右手には天橋立。優美な山容は由良ヶ岳。遠くに青
く霞む青葉山は正三角形。東から南にかけては大江山。南東方面は高竜寺ヶ岳。西遠くの
屏風は氷ノ山だろう。
天橋立を眺める

 三角点の標石の横にはお馴染みの天女のレリーフ。驚いたのは木造の展望台が設置して
あるのだが、その台上に遊園地に良くある大きな双眼鏡まで備え付けてあることだ。一寸
覗いてみると、これがなかなかよく見えて、天橋立の阿蘇海を走るモーターボートの白波
まで眺められた。

 天気がいいのに誰もいない山頂で眺望を独り占めだが、やっぱりじっとしていると寒い。
ウインドブレーカを車に置き忘れてきてしまった。食事には少し早すぎるし...。で、
食事は例の羽衣茶屋で摂ることにして、山頂を辞するにした。

 女池は分岐の鞍部から200mだそうだ。倒木のあるクマザサの茂る道だが、明快な道
が続く。200mも歩かない内にまもなく杉林が出てきて、その杉林の窪みに水溜り。そ
れが女池だった。日は差しているのだが何となく陰気な感じで、水浴びしようという気も
起こらないシチュエーション。今にも熊が飛び出してきそうで早々に元に戻る。(笑)

女池。ただの水溜りでした

 羽衣伝説の説明板があったので読んでみた。北畠親房の神皇正統記にも記述があるとい
うから、かなり古い伝承だったのであろう。なんとなく物悲しい物語である。

 羽衣茶屋で食事の後は林道歩き。こっちは下りなので思いの他、足が捗る。谷沿いの紅
葉を愛でながらでも20分足らずで大成に戻ることが出来た。

 ところで駐車場で装備を解いている時である。何か見られているような雰囲気にふと振
り返ると、大根畑に異様な物が...。なんと生首!と思いきや、マネキンか美容学校の
練習用の頭部模型でありました。猪避けなのだろうが人騒がせな。(^^; 

スワッ!大根畑で生首事件か!

 乙女神社は小さな神社だが、祠が3つ並列している。参拝すると綺麗な娘を授かるらし
いが、それを早く知っていれば...。家にはもう3人の娘が...。
「あ〜あ〜あ〜。」
錦繍の乙女神社境内

 それはさておき、盛りの紅葉が日に照らされてえもいわれぬ色合いである。しばし愛で
て車に戻る。腹も肥えて、目も肥えて、丹後の晩秋を目一杯楽しんだ週末でありました。

『昔、比治の里に三右衛門という名の狩人がいた。ある日、磯砂山の頂の池で水浴する八
 人の天女を見かけ、その羽衣の一つを隠した。三右衛門は羽衣を隠された天女を連れ帰
り妻とし、三人の娘をもうけたという。だが、天が忘れられない天女は羽衣の隠し場所を
見つけ天に帰っていったという。乙女神社はその三人の娘の一人が祀られている。』

【タイムチャート】
10:05〜10:10大成(駐車地)
10:30羽衣茶屋
10:33登山口
10:40女池分岐
10:53ひげ文字石碑
10:58〜11:10磯砂山(661.0m、一等三角点)
10:20女池分岐
10:25〜10:27女池
10:30女池分岐
11:34登山口
11:39〜11:50羽衣茶屋
12:05大成(駐車地)


磯砂山のデータ
【所在地】京都府京丹波市峰山町
【標高】661.0m(一等三角点)
【備考】 但馬と丹後を区切る山塊にあって、高竜寺ヶ岳の東に位
置し、羽衣伝説のロマンの山です。山頂は流石に一等三
角点の山だけあって、360度の大パノラマが展開し、
丹後、但馬の主な山々、そして日本海とりわけ天橋立、
久美浜湾が絶景です。登山道はよく整備され、登山とい
うより家族向けのハイキングコースです。
■近畿百名山
【参考】
2.5万図『四辻』



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