貴公子花紀行〜春の伊吹北尾根、雲上の花巡礼
平成16年 5月 5日(水)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲
静馬ヶ原手前から見る伊吹北尾根。
手前から御座峰、大禿山、国見岳


 今年のGWは天気に恵まれて、5/4にようやく本格的な雨。何処へ行こうかやきもき
せずに(笑)、山行記でもゆっくりと思っていたら、5日は早くも天気回復とのこと。そこ
へ伊吹北尾根へ行かないかとの勧誘メール。うーん、行くか行くまいか。ここは決心のし
どころ。山の神の機嫌はどうかな?といっても結局行くことになるのだが....。(^^;

 6時半過ぎにみずさんの車に拾ってもらって、次は千里中央。ここで女性陣3名を乗せ、
7時に現地へ向かう。流れる車も少なく順調に関ヶ原IC。8時半前にはもうドライブウ
ェイのゲート前に到着である。

 名神から見る伊吹山はすっぽりと雲の中。が、低層の雲とその上の白い雲の間に隙間が
ありそうな雰囲気であったから、雨は多分大丈夫とは思ったけれど、やっぱり少々、不安
がよぎる。それもゲートの案内板の山頂「曇り」、開花情報「ニリンソウ他5種」との表
示に安堵。さて、どんな花々が待っているか期待が募る。でも花がたった5種はないでし
ょう。(笑)

 ドライブウェイを上がるに従って猛烈なガスが流れる。視界は50m以下だろう。その
ガスも標高千mを越えると薄くなり、秋口のような雲が浮かぶ青空が広がる。

 山上の駐車場はガラガラ。管理事務所の横に駐車してまずは雲海の北方面を眺める。昨
日の雨で塵が払われ、視界は良いのだが、如何せん雲が切れない。北尾根も雲の中。そこ
へぽっかりと浮かぶ残雪をまだらに被った山。「横山岳かな?」「まさか白山じゃないよ
な」(帰宅後、みずさんが調べたところ、能郷白山とのことであった)

北尾根付近はガスが次々に湧く

 まずは山頂を周遊しようじゃないかと山頂へ向かう。高さ5m近い雪だるまももうお役
御免。係りの小父さんが解体中。その横の遊歩道を登っていくと、早くも沢山の花々。つ
ま紅のニリンソウの群落にイチリンソウ、カンスゲ、エンレイソウなぞは掃いて捨てるほ
どある。黄色が目立つのはコキンバイらしい。

雪だるまも痩せてもう終わり

 測候所の横を回って、何かの宗教団体の石碑の立つ辺りから東南を見晴るかす。丁度、
雲が切れて濃尾平野が一望できる。金華山も箱庭の様で揖斐川、長良川、木曽川が帯の様。
南には養老山系から霊仙山の綺麗なシルエット。見飽きない風景だ。

 一同は幾度となく立ち止まって歩は進まない。腕時計を見ればあっという間に10時を
過ぎている。まあ慌てる事もないけれど、今日のメインディッシュは北尾根なので、そち
らに移動しなければ。駐車場へ降りてくるとこどもの日ということなのだろう、サービス
でカブトムシの幼虫が貰えるという。とりあえず貰っておこう。(結局、隣家の小学生に
あげました)

 山上の駐車場から1キロ下った辺りに北尾根の取付きがある。ここは雲の通り道なのか、
いっかなガスが晴れる気配はない。視界も10m位であろう。しかも寒い。早々に準備を
整える。

 一旦大きく下って、さざれ石公園からの登山道と合流した後、静馬ヶ原へ登り返す。と、
薄い赤紫の花があるではないか。「ありゃぁ、あっ、カタクリだぁ」序盤からから春の野
草のプリマ級が出現したのには驚いた。しかし、残念ながら旬は過ぎて更に昨日の雨で花
びらは溶けてしまったらしく、綺麗に反り返った別嬪さんがいないのは惜しかったが、贅
沢はいうまい。そしてこの後、ツツドリやウグイスをBGMに、次から次へと入れ替わり
立ち代り春の花々が姿を現すことになる。

 一度は会ってみたかったサンカヨウ、ルイヨウボタン。前者は大きなフリルのついたド
レスを着た貴婦人、後者は黄緑色の花で目立たないが、均整の取れた姿の少女という風情
で良い。花に造詣の深い方々が同行しているから、知らぬ花に出会っても心強い。白いス
ミレはニョイスミレ(ツボスミレ)、フタバアオイの葉をめくると赤茶色の花がある。フ
ッキソウ、ハルトラノオ、石灰岩の上にはヒメレンゲとそれに名も知らぬベンケイソウの
一種。ウグイスカグラ、芳香を漂わせるムシカリ。鮮やかな黄色はヤマブキソウ。ハクサ
ンハタザオの変種といわれるイブキハタザオ。照りのある深緑の葉をつけるヒトリシズカ。
これだけ次々と花が出現すると予定はあってもないようなもの。昨夜来の雨でぬかるみ滑
る所もあるが、それもものかわ。目は足元ではなくて道の左右に振られる。そのあげく、
午前中には北尾根の中間点の御座峰までも行き着けず。仕様がないので昼食は風も避けら
れることから、御座峰から800m位手前(南)の大きな石が転がるCa1000mの尾根
筋の際で摂ることになる始末である(笑)。

鵜の目鷹の目で983m峰の南付近を行く一行

 もう一つのお目当て、ヤマシャクヤクの花姿を見つけねばならないこともあってか、い
つもより短めで昼食を切り上げる。その肝腎のヤマシャクヤク。個体自体は見つかるもの
の、繊細な花弁は昨日の雨で溶けてしまったのか、花を付けているものがなかなか無い。
往路は結局見つからず仕舞い。

 そんなこんなで大禿山まで行こうという当初の予定は、前に述べた花々の競演に目を奪
われ、ずっと手前の御座峰で引き返すことになってしまった。その御座峰でも野生のクサ
ボケの赤い花に遭遇。植木では珍しくはないものの、野生を見たのは初めてで少し感激。

 10分ほどの小休止。帰路も鵜の目鷹の目で開花のヤマシャクヤクを探す一行。その執
念が実ったのか、蕾を付けたものがようやく一株見つかったが、開くまでにはまだ間があ
りそうである。まあ残念だけれど仕方がない。

 そんな花探しの余録といっては何だが、静馬ヶ原と983m峰の鞍部付近から西に一筋
の踏み跡を発見。西の遥か下に国見峠に向かうらしい林道が見えているのでそこのどこか
から上がってくる道なのかもしれない。そうならば縦走のショートカットに使えるだろう。

 ハウチワカエデの目立つ林から抜け出て、時折ガスが切れると北は重畳と続く奥美濃の
新緑の山々。西南には海と見紛うばかりの琵琶湖が光り、沖ノ島や多景島が浮かぶのが眺
められる。特に静馬ヶ原の登りでは国見峠へと続く北尾根の稜線が一望できる。特に大禿
山は雲水が被る丸い饅頭笠そのものだ。(冒頭の画像)

 静馬ヶ原は気分のいい所だが、ドライブウェイを走るバイクの騒音が聞こえるのが玉に
瑕。それにしても、ドライブウェイがかなり山を痛めているのが分かる。植生が失われ、
赤茶けた露地が風化している。そして、セメント原料の採掘。山容が大きく変容してしま
っていて痛々しい位だ。人間は地球に対して、もっと謙虚でないといけないなあ。

 幸さんがザゼンソウが咲く場所があるというので寄ってみる。普通、ザゼンソウは湿地
に咲くものとばかり思っていたので、こんな山の斜面にあるとは思わなかった。付近が山
霧の通り道で湿気が常に多いことが生育を促しているのであろう。見れば見るほど焦げ茶
色の怪異な姿であるなあ。

 そうこうする内にまたガスが湧いてきた。展望が回復すれば山頂へ戻る手もあったが、
暫くは無理そうであったので、明日からは仕事だしと、大人しく帰ることにするそして、
カーブを曲がる毎に展開する琵琶湖や濃尾平野の景観を楽しみながらあっという間に下界
へ。帰りも意外や、恐れていた渋滞に巻き込まれることもなくスムーズに帰阪できたのは
幸運でありました。

 しばしの雲上散歩と花巡礼に堪能の一日。いつもながら運転のみずさん、同行の皆さん、
ありがとうございました。下をクリックすると北尾根で会えた花々の幾つかの画像が見ら
れます。


■花々の写真集伊吹北尾根の妖精達を見る


■同行 幸さん、すみれさん、知さん、みずさん(五十音順)

【タイムチャート】
7:00千里中央集合地
8:45〜10:30山頂遊歩道周遊
10:35〜10:40伊吹北尾根取付き
10:52静馬ヶ原(1149m)
11:57983m峰
12:05〜12:30御座峰南方800m地点(昼食)
13:00〜13:10御座峰(1070.1m 三等三角点)
13:40983m峰
14:50〜14:58静馬ヶ原
15:10伊吹北尾根取付き


伊吹山、御座峰のデータ
【備考】 御座峰については『北尾根縦走で再び花の伊吹山
伊吹山については『伊吹山百花繚乱』を参照下さい
【参考】
2.5万図『美束』



   トップページに戻る

inserted by FC2 system