北山秋色〜品谷山から廃村八丁
 
平成16年11月 3日(水)
【天候】晴れ一時曇り
【同行】別掲
明るい雰囲気の品谷峠


 そろそろ秋の装いは如何かと、2ヶ前の9/12に初めて歩いた廃村八丁を再訪。今回
はミニオフにでもと参加者を募れば、13名ものメンバーが集まって予想外の盛況オフと
なった。これだけ集まれば頻々と出没する熊もヒルも怖くないぜいっ!(笑)

 7時に桃山台駅西のロータリー。かねちゃんは現地へ直接ということで、12名がここ
に集合、3台の車に分乗して現地に向かう。実はこのオフ、10月最後の日曜にと企画し
ていたのだが、前夜の雨が夜半に到っても止まない。当日の降水確率は20%から30%
との予想であったから、単独や少人数なら強行するところではあったけれども、遠方から
来る方々もおられることとて、次の休日の文化の日は晴れの特異日だということもあって、
大事をとって自重したものだ。幸い朝からいい天気。その分期待は高まる。

 勝手知ったる道を快調に走る。湖西バイパスの真野ランプで降りてすぐのコンビニで休
憩を兼ねて食料調達。次いで安曇川沿いに北上し、梅ノ木から山間に分け入って、羊腸の
久多峠越えの細い道。夜半に時雨れたのか路面はしっとり濡れている。上空からはハラハ
ラと黄色い落ち葉が雪の様にフロントグラスをノックする。これぞ北山、いい雰囲気だ。

 能見で花背からの府道に合流すると数分で広河原菅原町に出る。バス停の北側の空き地
に見覚えあるシルバーの車。かねちゃんが先着しているようだ。他に8名位のパーティの
車が2台で先着しているが、我々の車も何とか無事駐車できた。

 皆さん、柔軟体操や装備点検に余念がない。一段落したところで自己紹介を済ませ、揃
っていよいよ今日の目的地、八丁へ出発だ。2ヶ月ぶりの道だが、その間に風景は大きく
移ろい、緑濃かった山の斜面も渋い色合いである。手入れの行き届いた北山杉の林を抜け
ると尾根道と谷道の分岐。勿論、尾根コース。「暫く急登でっせ」とみんなを脅かしてお
く。(笑)

 道の両端を覆うイワウチワは赤く色づき、名も知らぬ雑木も黄色く色づいている。かね
ちゃんに「中国の秋は」と聞けば、こんなしっとりした感じはなくもっとカサカサしてい
るのだという。そうこうする内に右手の植林に覆われた谷がせり上がって来て先ほどの谷
道と合流する。その先の急登をジグザグに辿れば、ウリハダカエデが赤く色づくダンノ峠
だ(地形図ではダンノウ峠)。

 今日はダンノ峠の北斜面を登り、尾根沿いに品谷山経由で廃村八丁へ向かう予定。約9
0分の行程だ。初めは植林の斜面だが、すぐに落ち葉でフカフカの明るい雑木林に変わる。
煩くない程度にテープもあり、案外、明快な道がついていて迷う心配はない。

 面白い木があった。大きな杉の木の内部が空洞になっていて、その空洞の中に何の木だ
か広葉樹が生えているのだ。その木を囲んで一同、カメラに収めたり、感心したり。

 緩くもきつくもない斜面を登り、東西に延びる尾根に乗る。錆びたドラム缶が転がって
いる。北側は南側に比べて急峻、鹿よけネットが延々と張り巡らされていて、その向こう
に佐々里から芦生方面の山々が眺められ、眼下には佐々里峠に続く車道が見え隠れしてい
る。

 この尾根は京都で国体が開催された時に開かれたという。尾根筋にはイワウチワの群落
の中にきれいな踏み跡が続き、ブッシュもなく快適に歩ける。杉に囲まれたCa850m峰
のコブを越えた先の、北側斜面が伐採されたCa860m峰は、京都市上京区、美山町、京
北町の境で、佐々里峠との分岐がある。ここは展望が良く、日差しもウラウラと心地よく、
昼食の場所としては最適の所だ。遠く霞む三角錐は比良の武奈ヶ岳らしく、すぐ近くの形
の良い山はソトバ山だろうか。北山のピーク同定は難しいと聞くが確かに...。(^^;

佐々里峠分岐のあるCa860m峰から南方面
谷間は錦です

 佐々里峠との分岐から尾根は急激に南に折れる。地形図の866m標高点峰には杉だか
モミだかの大木がある。芯が空洞で枯れているのかと思えば遥かで緑の枝を伸ばしている。
雷にも遭わずよく生きながらえたものだ。

日差しに輝く紅葉

 この先は尾根が広がって、やや踏み跡が薄い所も有るが、下草が疎らなので何処でも歩
けるし、テープを拾いながら進めば問題はない。程良く色付いた木々を愛でながらなので、
我々の歩みは事の他ゆっくりだ。それでも品谷山が徐々に近づいてきて、東のCa850m
峰を過ぎ、小さな鞍部から緩い登りをこなすとあっけなく品谷山の山頂に着く。

品谷山風景

 幾つかのプレートが架かる山頂の二等三角点『佐々里村』の標石は、例によって一体誰
の仕業なのか角が欠けている。展望が効かないとガイド本にはあるが、葉を落とした木々
の間から北方向が眺められるが、どれがどの山かさっぱりだ。

 先着の男性4人パーティにお願いして記念撮影のシャッターを押してもらう。静かな山
歩きをと思っておられたに違いないのに、我々の話し声や奇声?はさぞ煩かったことだろ
う。ご容赦。(^^;

 少憩後、品谷山から尾根沿いに更に西へ。この辺りも木が疎らで下草もなく明るくて、
何処でも歩ける感じだ。しかも地面は落ち葉が深く降り積もりフカフカの絨毯だ。「いい
ねえ。」期せずして皆さんの口から嘆声が上がる。

 葉を落とした大木が一本立つ鞍部に出る。地面は大きなU字型の優しい曲線をしている。
地形図にある品谷峠である。しかしスモモ谷へ降りる踏み跡はなく、周囲に注意するとテ
ープは更に尾根沿いに続いている。地形図とガイドでは、峠の位置もトレースもずれてい
ると聞いていたので良かったけれど、それを知らないと狐につままれたみたいで、いささ
か不安になるだろう。そこからテープ通り一旦登り返して下った鞍部には、立ち木に品谷
峠とプレートが架けられていて一安心することが出来る。ここもたおやかな良い雰囲気の
峠であった。
品谷山から品谷峠へはたおやかな曲線だ

 今までの明るい山道から、一転、植林の暗い中を南のスモモ谷へ降りていく。やや踏み
跡は薄いが、低い方へ歩いて行けば良い。まもなく左手から柔らかい小さな谷が現れ合流
する。植林帯を抜けるとチョロチョロと水も流れ出し、補助ロープが張ってあるやや急な
沢筋を下れば、左手から顕著な沢が合流してくる。そちらにもテープがある。多分、遡行
すると地形図の峠へ出るのであろう。(こちらが正規のスモモ谷らしい。)

スモモ谷源頭にて

 二股を過ぎ、朽ちた丸太橋を渡ったり右に左に渡渉を繰り返す内に沢音も大きくなり、
スモモ谷も谷らしくなってくる。ハウチワカエデやウリハダカエデ、カツラなどが左右か
ら透けた天蓋を形作り、淡い日差しが透き通る水を色めかせる。カワムツらしい川魚が驚
いたように岩陰に隠れるのも面白い。

 この先、雑木林、植林が交互に現れる。右から大きな支谷が合流してくるが、こちらに
も踏み跡らしきものがあり、遡行時は注意が要る。

 30分程下ったろうか。苔むした炭焼き窯跡を左に見て右岸を暫く進むと、植林の下に
石積みが現れた。前方を見れば、明るみの中に見覚えある三角形のトタン屋根が目に入る。
ようやく八丁に到着だ。八丁川の浅い部分を適当に渡って土蔵跡からトタン屋根の建物前
に出る。石垣に座って早速待望の昼食の用意である。背後に1本、色づき始めたモミジの
木。意外や我々以外には誰もいない。

 三々五々、遅れていたメンバが森から現れる。思い思いに陣取ってワイワイガヤガヤ。
差し入れを頂いたりして楽しいひと時を過ごす。

 昼食後は皆さん、八丁の探訪。ザックを置いて神社に詣でたり、キノコを観察したり。
で最終的に集まったのは村長の小屋前。今日は村長の友人というメガネのおじさん一人。
その先の稜線で変なものを見つけたという。直径5p位の黄褐色の半透明の玉。地衣類か
キノコの一種だろうが、森には変なものがあるものだ。小父さんは食料が尽きるまで後数
日ここに滞在するそうだ。羨ましい限りだが、いつぞやの冬には一晩で小屋の扉が開かな
いほど雪が積もり、ヘリでの救出依頼まで考えたそう。最後の手段で八丁川をザブザブと
下って何を逃れたのだという。また今話題の熊は近辺に5頭生息していたそうだが、今は
3頭で、餌が無くもっと里に近い所へ降りているそうだ。

 小父さんの四方山話を皆さんが聞いている間に、小生はこの前見落とした墓地へ行って
みることにした。小屋から凡そ100m。八丁川の傍、ソトバ峠への道沿いに墓地はある。
全部で10基足らず。苗字は全部Hさん。往路にあった最奥の民家の表札と同じだ。内一
つを調べると大正一桁のもの。80年は経ている墓石の裏面は荒削りのままで、厳しい生
活環境の一端がしのばれるものであった。

八丁に入植された人々の墓標

 帰路は衣懸坂経由を想定していたけれども、遅くなりそうだと最短の刑部谷経由に変更。
昼食場所に戻って、東へ八丁川を遡る。ところが暫くして後続メンバが来ないことに気付
く。Nさんがデジカメを置き忘れたという。数人のメンバが残って捜すということで、先
発隊はゆっくりと休み休み歩を進めることになった。

しっとり清らかな刑部谷を行く

 朽ちた桟道でワイワイ。沢の渡渉でガヤガヤ。白布を垂らしたような刑部滝はこの前よ
り若干水量が多く、より優美に見える。道はその先、奈良谷に出てすぐ左のシャクナゲ尾
根に急登する。尾根をゆるゆる下れば同志社大学新心荘前の四郎五郎峠道との分岐はすぐ
である。

 朽ちた巨大モミの木と、それに寄生した巨大サルノコシカケに驚く面々。そのサルノコ
シカケの一つが落ちている。さし渡し40pはあろうか。持ち上げるとこれが非常に重い。
霊芝として売ったらどうだろ?と良からぬ事を考える小生である。

巨大なサルノコシカケ
ステッキと較べて下さい

 そろそろ追いついてくる頃だと大声を出すと、意外や反応があった。やがて残った面々
が降りてきた。結局、デジカメは発見出来ず終い。カメラはまだしも、今日撮り溜めた画
像がもったいないと、無念やるかたないNさんではあった。

 芦生に似た雰囲気の刑部谷源頭部。道に覆い被さったコナラの倒木は切断されて処理さ
れている。右に緩くカーブして植林の中のU字にえぐれた道を登れば、往路のダンノ峠。
ホッと一息、大休止。

 秋の日は釣瓶落とし。まだ4時だというのに薄暗い。やや急ぎ足で30分もかからずに
取り付きへ。街灯に灯が点った夕景の中を駐車地へ戻った。

 駐車地で無事を祝して御開き。さて、帰ろうとした瞬間だ。左後輪がおかしい。土にめ
り込んでいるのかなと一瞬錯覚したが、パンクだ。「アチャ〜。」
見れば大きなビス風の金属が刺さっている。暗くなってくるしこりゃかなわんなと思った
が、幸いIさんが手馴れた調子でスペアと交換してくれた。地獄に仏、有難うございまし
た。

 大津市内で渋滞にはまったが、二時間半ほどで無事帰阪。ビール片手に余韻に耽る夜長
でありました。みなさんサンキューです。色々ハプニングはあったけれど、懲りずにまた
行きましょう。


■同行 あかげらさん、井上さん、かねちゃん、北山さん、幸さん、中井さん、
    natsuさん、二輪草さん夫妻、まむさん、萌木さん、もぐさん、小生

【タイムチャート】
7:00桃山台西ロータリー(集合地)
9:00〜9:15広河原菅原町(駐車地)
9:35沢道、尾根道分岐(尾根コースへ)
10:00沢道、尾根道出合
10:10〜10:20ダンノ峠
10:41Ca850m峰
10:50〜11:00佐々里峠分岐のあるCa860m峰
11:06〜11:10866m標高点峰
11:18〜11:22品谷山東のCa850m峰
11:32〜11:42品谷山(880.7m、二等三角点)
12:00〜12:05品谷峠
12:40〜14:00廃村八丁
14:18刑部谷、四郎五郎谷分岐
14:40〜14:50刑部滝
15:00〜15:25同志社大学新心荘前
15:42〜15:50ダンノ峠
16:10〜16:18沢道、尾根道分岐
16:36広河原菅原町(駐車地)


品谷山のデータ
【所在地】京都府北桑田郡美山町、京北町
【標高】880.7m(二等三角点)
【備考】 廃村八丁を囲む山々の内、北側にそびえる山です。ダン
ノ峠から品谷山、品谷峠へと続く尾根道は清澄で素晴ら
しい雑木林の中の尾根歩きが楽しめます。
尚、廃村八丁の取付きの菅原町へは出町柳から京都バス
があります。
廃村八丁〜北山最奧の癒しの森』を見る
【参考】 2.5万図『上弓削』、『中』
エアリアマップ『京都北山2』



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