雨森山〜旧道探索と里山散策
 
平成16年 8月15日(日)
【天候】曇り
【同行】単独
三代の道路が並ぶ一庫大路次川の龍化渓谷
左奧の赤い橋脚が現R173


 連日の暑さも少し和らいだお盆。お盆の間は遠出は控えたほうが無難というわけで、久
方ぶりに近場の里山散歩。ついでに以前から気になっていた所を探索してきました。(笑)

 能勢へのメインルートR173は川西を抜けると、幾つかのトンネルをくぐりながら、
一庫ダムによって出来た知明湖の畔を縫っていく。山々は雑木が主で、新緑や紅葉の季節
には存外優れたドライブスポットだ。そんな中、猪名川町千軒の南、トンネルとトンネル
の間にくねくねと蛇行する一庫大路次川の渓谷が見える箇所があって、川岸の岩肌に何だ
か洞穴みたいなものがあるのを前々から不思議に思っていた。今回は付近に盛り上がる雨
森山散策とセットにして調べてみようというわけで、かみさんの用事をこなし、昼前に家
を出る。

 民田トンネルを抜けてすぐ、千軒バス停の南側に知明湖の湖岸道路の入口があって、数
台駐車可能な駐車場がある。車を置いて、まずは大路次川の川岸へ出なければならない。
幸い千軒の民家横から国道の高架の下の川岸道路へ降りる階段の近道があった。ブラブラ
と下流へ向かう。余談だけれど、この千軒という地名、どうもここから近い多田銀山と関
係するような気がする。千軒とは家が千軒あるから名付けた名前ではなく、家が非常に多
い様を現すもので、街道沿いで便利のよかったこの付近に鉱山で働く人々の家が密集して
いたので千軒と付けたのではあるまいか。尤もこれは私見で何の根拠もないけれど。
 
 さて、立派な最後の民家を右に見て暫く行くと、今歩いているダムの取り付け道路の下、
川沿いに遊歩道が現れる。この辺りは龍化渓谷と呼ばれていて、なかなかの渓谷美で、周
囲の山々は低いが大小の岩が顔を出し、川面は白く泡立つ急流である。まもなく前方に吊
橋が掛けられているのが目に入る。平成4年に完成した龍化吊橋だ。

 この辺りで大路次川は大きく蛇行するが、その右岸の岩肌に、国道を走っていて目にす
る目的の洞穴がある。と思いきやそれはなんとトンネルなのだった。遊歩道へ降りる階段
があったので降りて近づいてみる。するとそのトンネル、高さ4m、長さは20m程なが
ら、手掘りというか、壁はコンクリで固められていない岩肌そのもの。なぜこんな所にト
ンネルが?そこでふと気づいた。これは旧R173なのではないか。そういえば遊歩道の
川岸の方に古い鉄筋むき出しの欄干部分がある。どうも旧R173を遊歩道に転用したら
しい。更に南へ行くともう一つトンネルがある。これはなんとレンガ造り。残念ながら銘
板は取り外されていたけれど、これはもう間違いは無い。そして、向こう岸を見れば渇水
で低くなった湖面へスーッと入り込んでいく一本の道が・・・。

新旧の龍化隧道
手堀の龍化隧道
こちらは煉瓦造りの旧トンネル
欄干には旧国道の面影が残る

 ダム建設に当たっては旧道や民家が沈んだそうだが、このトンネルはその痕跡なのだっ
た。沈んだ民家の屋根などが現れればもっと面白かったかもしれないが、そんなに都合よ
くは行くはずも無い。

 さて、遊歩道から取付け道路に上がる。さっきの手掘りのトンネルの丁度上に新龍化ト
ンネルがあり、南側の入口に何やら記念碑が立つ。「龍化隧道記念碑」とある。建立年月
を確かめると大正6年10月 書 藤沢南岳とあった。まさかこの新龍化トンネルの完成
記念碑でもあるまい。してみると、この記念碑は下の手掘りのトンネル以外に考えられず、
ダムで水没するのでここに移設されたに違いない。因みに藤沢南岳は通天閣の名付け親で
作家藤沢恒夫の曽祖父にもあたる著名な漢学者である。尚、この龍化隧道は大阪の篤志家
植村治良兵衛が私費を投じて掘削したそうだ。

龍化隧道完成記念碑。左は
大物主尊の霊碑

 と、まあ、なかなか面白いものを発見しながらトンネルを抜け、圓山大橋をくぐって進
むと、右手に一間幅の地道が樹間に消えている。たもとに「入山口」と木標があった。

雨森山の登山口

 50m程歩くと、山道が右に大きくカーブする地点に出る。直登する踏み跡があり、そ
れもすぐに「安全コース」と「岩場コース」に分かれる。「岩場コース」といっても岩場
はなく、斜面を最短で直登するコースだ。勿論、岩場コースを選択。丁寧に立ち木にトラ
ロープまである。まもなく安全コースと合流して、つづら折れに斜面を登る道となる。足
下に新圓山トンネルが貫通していると思うと変な感じだ。

 やや広い台地に出る。向かいからさっきの地道が登ってきていてここで合流。ここにも
木標があり「第一広場」とあった。更に、広場から「けもの街道」と名づけられた小道が
延びているので辿ることにする。

 いくら涼しいといっても雑木の中の登りなので汗が出てきた。それを嗅ぎ付けて、この
時期の低山の住人である蚊とアブが早々とお出ましになった。当方も慌てて防御体制、虫
除けをスプレーしておく。小休止、ついでに乾きも癒しておく。

 丈の短い笹に石がゴロゴロ転がるちょっとしたピーク。第二広場の木標。向こう側(南
西側)に緑のフェンスが張り巡らされている。よく見ると青山女子短大とあった。ここか
らの南西側の展望はよい。五月山連山と中山連山の間から大阪市街が一望で海も見える。
西に六甲最高峰、甲山。川西から猪名川にかけてのニュータウンが一望であった。

第二広場のピークから西方向。右奧は六甲

 この付近から道は北に進路を変えて、小さな鞍部を挟んで「第三広場」のある小ピーク
再び北西に進路を変え、なだらかな斜面を少し登ると見覚えある雨森山の山頂広場であっ
た。

 誰も居ない。静かだ。ミンミンゼミの声がする。伐採木で作られた腰掛に座って、コン
ビニおにぎり、お茶で一息入れる。持参のラジオのスイッチを入れるとオリンピックのニ
ュース。

 少しうろついてみる。雨森山の北からの登路はやや茂って、踏み跡が冬場よりも薄くな
っている様に見える以外は、今年の春、来た時と大差ない感じである。東に妙見山が意外
に近い位置にあった。

 帰りは地形図を眺めて読図練習。第三広場から東に派生した尾根を少し確かめると、ヌ
タ場が見つかった。雨森山の北側のピークにもヌタ場があるから、この付近にはイノシシ
が結構いるのだろう。第二広場から南に延びる尾根は、短大のフェンスがずっと続いてい
るらしいが、ササが茂って、今は道らしいものがないようであった。第一広場からは往路
の岩場コースを採らず、広い地道で下る。登山口へ戻ると、路肩に車が止めてあって、広
い川原でルアーを振るアングラーが見える。釣れているのかな?

 千軒までは遊歩道に下りて戻る。水没時立入禁止の遊歩道だが、草が青々と茂っている
所を見ると、最近は水没したことが無いらしい。川の中を覗き込むと、岩の苔を食む小魚
が銀鱗を翻すが、鮎だろうか?そういえば日券は2千円だそうである。

 心なしか弱々しく聞こえる蝉時雨。季節が1ヶ月早まって動いているような今年の夏。
涼しい日を選んでの久々の里山歩きであったが、旧道を調べたりで存外充実した半日であ
りました。行楽帰りの車で渋滞するR173を避けて、県道を使って6時前帰宅する。

【タイムチャート】
12:20自宅発
13:20〜13:25千軒バス停南駐車場
13:35〜13:36龍化吊橋
14:00雨森山登山口
14:10第一広場
14:15〜14:20小休止
14:25第二広場
14:30〜15:00雨森山(383.7m 三等三角点)
15:25第二広場
15:35登山口


雨森山のデータ
雨森山〜北摂の低山で黄葉見納めを参照下さい
【参考】 2.5万図『妙見山』『広野』
エアリアマップ『北摂の山々』



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