深山〜イワカガミ群れる夜久野の最高峰
 平成15年 4月29日(火)
【天候】晴れのちうす曇り
【同行】別掲
初めて対面したイワカガミの花


 久方ぶりのしまださん主催の丹波オフ。毎回、隠れた名山を紹介してくれるのだが、今
回は京都府と兵庫県の境に近い夜久野町最高峰の深山へ。頂上付近のブナ林の若葉が良い
とのことであったが、訪れてみれば、それをはるかに上回る収穫が待っていたのでありま
す。

 集合地のレストラン夜久野には20分前に着いたが、既にヒロさんはじめメンバが集ま
っている。集合時間の10分前には参加者全員が集まり、出発点の天谷峠へ場所を移す。
今日は峠から県道を下り、現世(げんぜ)スキー場から尾根上にある東屋を経由して76
3mピークに登り、稜線上を栗尾山、深山と縦走し峠に戻るという趣向。まずは県道をぶ
らぶらとスキー場に向かう。ともすると単調になりがちな車道歩きだが、周囲の春景色、
道端の花々に面々の興味は尽きない。田植えの準備に水を入れられた田からは蛙の声。ア
ケビの花、キンポウゲの光沢のある黄色の花、スミレ、ムラサキケマン、カキドオシ。百
花繚乱だ。

 更に途中にはしまださん推奨の青面金剛の石仏。寛政12年製というから、ザッと20
0年前の作品。左手で女の髪を掴み、天の邪鬼を踏まえた姿は迫力がある。この道も但馬
出石から山陰道へ抜ける重要な道であったに違いない。

 小一時間歩くと現世スキー場が見えてくる。農道に車を避けて、林沿いに歩くと神社の
前を過ぎる。残念ながらスキー場は閉鎖されているそうだが、まだ使えそうなトラクター
が置かれたスキー場の用具小屋横を抜け、道なりに進んでいくと、自然に真っ直ぐ東に向
かって登っていく谷沿いの舗装林道に出る。周囲至る所には大きなタラノキがある。ワラ
ビも特徴あるクルッと縮まった三本の手を空中に伸ばしている。

 道は徐々にゴロゴロと大きな石の転がる地道に代わり、右の谷からも水音がしなくなっ
た頃、谷と別れて左手に折れていく。ここからは動物除けの電気ネットが続く道となる。

 トチノキやホオノキ、ムシカリの白い花。ミツバツツジの赤紫。新緑の雑木林を愉しみ
ながら結構きつい登りをこなしていくが、いっかな東屋が近づいてこない。くねくねと曲
がりを重ねて、漸く建物が視界に入った頃には、スキー場から40分が経過していた。

 東屋と云うよりも展望所兼避難小屋の様な立派な建物である。ここから西側の眺めは雄
大で、鉄鈷山、岸山、三谷山が屏風の様に居並ぶ向こうに西床尾山らしい山が顔を出して
いる。吹き抜ける風を受けながら暫し展望タイムだ。

尾根に乗るまでの中間ポイントである東屋
西側の展望良し

 さて、皆が水分補給して一息入れている時である。島田さんが脅す。「ここから激登り
でダニだらけやでえ」劇登りは良いけどダニはなぁ。虫除けを借りて念の為、足元に振り
かけておく。

 ここからは道らしい道はないが、下生えを綺麗に刈ってあるので何処でも歩ける。しか
し、島田さんの話に違わぬ激登りだ。それぞれの登攀スピードがバラバラの上に、撮影モ
ードや観察モードが加わるから先頭から最後尾まで長ーく延びきっている。(笑)

763mピークへの激登り開始

 突然、地面にへばりつくだめちゃん。イカリソウだ。小生も芦生の京大演習林以来。そ
の時は馬鹿なことにマクロレンズを忘れて綺麗な写真が撮れず。今日こそは。一つ見つか
るとそこここに見つかるものだ。結構あるんやぁ。

763mピークへの斜面に咲いていたイカリソウ

 噴き出す汗を拭いつつ、最後の胸突き八丁をこなす。緩傾斜になり、桧林の中を左に折
れた所の高みが763m標高点ピーク。「←富岡山」の標識が架かる。南側が開けてその
富岡山の頭が望める。その奥は居母山であろうか。

 12時前。ここで昼食。心配していたダニがいなくて良かったぁ。

 約40分の昼食タイム後、次の目的地は栗尾山。ここからはほぼ2,30mのアップダ
ウンの稜線道。桧の植林と雑木林が交互に現れる。途中のCa750mピークは人工林の中。
20分程度で本日唯一の三角点峰の栗尾山。通称「ヲノジリ」。残念ながら人工林の中で
展望は無く、苔が着生した三角点も四隅が欠けて哀れである。

 栗尾山を過ぎ、稜線は北西にドッグレッグする。すると、先行するメンバが集まってワ
イワイ。その人の輪の真ん中には、なんとマムシの若蛇。といっても30cmはあるだろう
が、とぐろを巻き、舌をチロチロ。褐色の体に銭形紋。さっと倒木の陰に隠れた。

 尾根上、北側が開けた部分からは、大江山、江笠山、磯砂山、郷路岳、登尾、三岳山等
が眺められる。北西には遠く豊岡方面。うっすらと見えるのは来日岳か。

 地面に光沢の有る鋸歯のある丸い葉が目立ちだした。ふと見ると小さな蕾も。「おおっ、
イワカガミやぁ」「咲いてるの無いかなあ」目を皿に探していると、誰かが開花株を見つ
けたらしい。ひざまずいて夢中でカメラに納めている。だがこの後、稜線上にはイワカガ
ミが次から次へと。最後には誰も見向きもしなくなったほどの多さ。(笑)それにしても
花色に変化が多い。白あり、赤あり、そしてその中間のピンクあり。此程までとは思わな
かった。

 やや深い鞍部を過ごして、深山の南のCa750mピークを抜ける。この辺りは今回のハ
イライトの一つ、ムシカリの白い花が目立つ新緑が眩しい雑木林。フカフカの落ち葉の上
である。そこへザーッと強い風が吹き抜ける。落ち葉が風に舞って吹き上がる。予報どお
り雲が増えてきたようだ。先を急ぐ。

 深山には夜久野町の最高峰だけあって、居母山クラブはじめ幾つかのプレートが架かる。
が、生憎ここも展望はない。深山の主コースは内田さんの『京都丹波の山々』にあるよう
に才谷から延びる林道へ下る東南尾根のコースなのだろう。「境」と刻まれたコンクリー
ト標がある府県境のCa750mピークからは明快な踏み跡はなくなった。

 北北東に尾根を追う。と、激下りの斜面が現れた。柔らかな曲線で織りなされた雑木林。
分厚い落ち葉の絨毯。素晴らしいの一言だ。そしてやや高い尾根の突端に直径1mはある
大きなブナが一本。樹齢200年はありそうで、大きなウロからトトロでも出てきそうな
雰囲気がある。
深山北西尾根付近の清々しい雑木林を降りる

 この付近の県境尾根にもイワカガミが多い。踏まずに歩くのが難しいくらいだ。満開の
ミツバツツジを眺めて下った先に登り返し。これを登るのを避けて左のよく手入れされた
植林帯にエスケープする。炭焼き窯跡の横に腐った丸木橋が懸かる小さな沢を渡ると、地
形図の点線路に出る。沢は円山川の源流、牧川のそのまた源流らしい。踏み跡は下るに従
って次第に林道然となる。斜面にイカリソウが多い。またまた撮影モードに入る面々。

 牧川に懸かるコンクリート橋まで来ると車道が見えてくる。林道から離れてその法面を
一気に登ると駐車地の林道入口の100m南であった。

 ガイドに載っていない想像以上にいい山があるものだ。逆に載っていないから手垢も付
かず、必要以上の整備もない新鮮な山が味わえるのだろう。紹介いただいた島田さん、同
行の皆さんに感謝です。初めて見たイワカガミの花。デジカメに綺麗に写っているだろう
か。少しの心配を胸に、オフは解散となりました。

 帰途は『農匠の郷やくの』でワラビとタラの芽を土産に買った後、夜久野高原温泉に浸
かり一汗流す。そこで思い出した。おお!そうそう。ついでに青垣道の駅で名物『あざみ
な』をゲットせねば。それなら、たぬきさんちにも寄っていくかと、ご迷惑ながらお邪魔
して、一日の結びとしたのだった。



■同行: 佐竹さん、島田さん、藤本さん夫妻、ヒロさん、みやびさん、やまごさん、
     萬屋さん、dameちゃん、GORYUさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:50自宅発
9:10〜9:20ドライブイン夜久野駐車場
9:40〜9:50天谷峠手前の林道入口(349m 駐車地)
10:30現世(げんぜ)スキー場(Ca280m)
11:10〜11:24あずまや(Ca550m)
11:50〜12:30763mピーク(昼食)
12:41Ca750mピーク
12:51〜12:52栗尾山((ヲノジリ)760.1m 三等三角点)
13:26深山の南のCa750mピーク
13:38〜13:45深山(780m)
13:52府県境のCa750mピーク
14:44牧川源流の崩壊した丸木橋
14:54天谷峠手前の林道入口(駐車地)



深山のデータ
【所在地】京都府天田郡夜久野町
【標高】780m
【備考】 円山川の支流板生川を隔てて床尾山塊と相対する連山に
あり、三角点はありませんが夜久野町の最高峰です。地
元の方々により深山、栗尾山、富岡山を結ぶ稜線が整備
されました。
栗尾山のデータ
【所在地】京都府天田郡夜久野町
【標高】760.1m(三等三角点)
【備考】 深山の南、通称「ヲノジリ」とも呼ばれる三角点ピーク
です。桧林の中で残念ながら展望はありません。
【参考】2.5万図『直見』



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