搦め手から陽春間近の六甲最高峰
 平成15年 4月 6日(日)
【天候】快晴
【同行】単独
魚屋道の石畳。ここまで来ると一軒茶屋は近い


 久々の上天気。何処へ行くかなぁ。花見の行楽客が多くて混むだろうと遠出は早々と断
念。尤もこれは表向きで、出発が遅くなりがちで遠くへ行けないだけなのであるが..。
というわけで今、日目指すは六甲最高峰。以前は車で一軒茶屋まで上がってしまったので
とても山歩きと云えたものでなく、ただの散歩。で、今日は本格的?にお手軽な有馬から。
やっぱり下山後の温泉は魅力ですから...。(笑)

 いつもより若干早出ではあったが、思ったより道路はスイスイ。それでもファミリーラ
ンド前は予想通り混んでいる。それでまたもや中国道にエスケープ。おかげでストレスな
く1時間で有馬の有料駐車場に着く。ほぼ同時に着いたデリカからも中年夫婦が出てきた。
山行準備に余念がない。

 用意を整えてロープウェイの駅方面へ向かう。山の中腹はタムシバの白い花に彩られ、
有馬三山を歩いたのがたった二週間前なのに、こんなにも華やかになるものか。どこから
かヒサカキのガスっぽい臭いが漂ってくる。

 虫地獄の直ぐ横に魚屋道の有馬側の入口がある。「太陽と緑の道」の表示と共に、明治
10うん年の道標が建つ。早速歩き始める。並みの林道より広い位の道だ。始めは舗装路
だが何時の間にか地道に変わり、アセビ、タムシバの白い花が、まだ枯葉色が中心の林の
中には目立つ存在だ。

 最初のカーブの曲がリ角に石標がある。見れば大阪毎日新聞社と読め、社章まで刻まれ
ている。大阪毎日というから少なくとも戦前のものだろう。この魚屋道が如何に古い時代
から、ハイキングコースとして親しまれてきたかが分かろうというものだ。六甲山頂迄3
726m、住吉迄12413mとえらく細かい距離表示であるが、巻尺ででも測ったのか
しらん。(笑)

 ジグザグに登っていく所には御多分に漏れずショートカットの抜け道。それもあろうか
路肩が崩壊している箇所も多い。射場山の北斜面に張り付くように登っていた道は、やが
て東側の山腹を巻いて行くようになる。漸く視界が広がって、紅葉谷の向かいの有馬三山
が目に入るようになる。何時の間にか、落葉山の妙見堂が遥か下に、水無山も目の下であ
る。だが、湯槽谷山の山頂はまだまだ上。とすると、現在は標高700m位か。

魚屋道から眺める湯槽谷山。左の鞍部が湯槽谷峠

 前方にまた何やらあるような。今度は「南無妙法蓮華経」とひげ文字が刻まれた石標だ
った。新しいお供えも置かれている。何の為に立てられた石標なのだろうか?などと、首
を捻っていると、東の方角からは車の音。ふと見ると100m幅位の谷を隔てた向かい側
は芦有ドライブウェイで、今しも1台のスポーツカーが排気音を響かせて通り抜けていく
のが見えた。

 尾根を乗越して、一旦降ると桧の植林。といっても直ぐに雑木林になる。古い石垣で補
強された辺りを抜け、左に大きくカーブすると、前方にようやくパラボラアンテナが目印
の六甲最高峰が顔を出す。

 深くなり出したクマザサの中に石畳が現れると右に青く塗られたトタン屋根の作業小屋。
その手前には吉高神社の参道がある。暫らくすると、左からヌーっと車が現れた。船坂か
ら上がってくる車道である。大震災の時に自衛隊第一師団が駐屯していた広場に出ればド
ライブでも世話になる一軒茶屋は目の前である。

 車道と別れて右に登っていく舗装路が六甲最高峰にあるパラボラアンテナへの保全路で
ある。ここからは喬木が無いので京阪神の展望が抜群なのだが、生憎、空気がやや霞んで
視界が延びず、生駒、金剛、和泉の山脈が見えないのは残念。だが、大阪ドームや大阪湾
、阪神間の都心の建物が手に取るようであるのは流石だ。そして、広やかな山頂はよく整
備され、関西のハイキングのメッカの名に恥じない人気スポット。十組以上のハイカーが
東屋などで休憩や早や食事の最中である。パラボラアンテナ施設の横から、ブナの幼木の
植付けられた部分を抜けて奥の広場に行くと、明治19年に埋設された大きな一等三角点
と銘板が嵌め込まれた大きな石がある。恒例!三角点にタッチして一息入れる。快晴。寒
くも暑くもなくここで食事しても良かったのだが、まだ11時なので先に進むことにした。

雲一つない真っ青な空の下の六甲最高峰

 凌雲台方面を目指す。ここからは六甲山全縦走路の一角となる。丸太の階段を降る。こ
の辺りはアセビが多く、鈴なりに花を咲かせている木も多い。更に降ると車道と合流。以
降、道は車道とつかず離れず。南に海が見えるかと思えば、北に有馬の街並みが望める箇
所もある。幾つか些か急だが短いアップダウンを繰り返し、西おたふく山から住吉への道
を見送って暫らく、一軒ぽつんと建つ極楽茶屋に着く。アンテナが林立し、十国展望台の
ある凌雲台は直ぐ目の前である。茶店の前に座るのに手頃な石。海も眺められるので、車
道沿いでやや車が煩いが、ここで食事とした。茶店で缶ビール250円で購入。「結構安
いやないの」嬉しくなってくる。しかし、空きっ腹にビールの後に、よせばいいのに持参
の焼酎で作ったお湯割を少々聞こし召し過ぎたものだから、後半の歩きには些か辛いもの
がありました。(^^;

 極楽小屋の建物の横から有馬へ下る道がある。紅葉谷コースと番匠屋畑尾根コースであ
る。紅葉谷コースは昭和8年にロープウェイが建設された際に整備されたのだという。こ
れも古い話だ。当初の計画ではこの紅葉谷コースで戻る積もりだったのだが、尾根コース
が面白そうだと急に考えが変わり、結局、左の尾根コースを採る。この辺りにブナ林があ
るそうだが惜しくも見逃してしまった。

 尾根コースに入ると直ぐに小川谷への分岐。ここにも古い石標があって、「北 からと」
と読める。

 ところで「番匠」とは面白い名だが、広辞苑によると「交代で都に上って労務に就いた
木工」とか「大工」という意味らしい。昔、極楽茶屋付近に薬草畑があったというが、何
か関係があるのだろうか。その番匠屋畑尾根は細い尾根の上の道。それも主脈の尾根道で
はなく、湯槽谷山への支脈なので、時折、木々の間から右手に六甲最高峰が眺められる程
度で、下界を見下ろすような展望はない。その代わり赤松が主体で、枝先の新芽が萌え出
し始めたツツジ等の雑木の中の、清々しい、これはなかなかいいじゃないかと思える道で
ある。しかも縦走路の喧噪が嘘みたいに静かなのがいい。しかし、かなりの急斜面なので、
登るのには少々草臥れそうである。

 クマザサが繁った右側が植林の鞍部に出る。カタカタと何かが動く気配がして振り仰げ
ば、頭上を丁度、ロープウェイのゴンドラが山上駅に向けて通過するところである。乗客
の顔も分かる程の近さで、思わず手を振って合図を送ったから、気づいた乗客もいたろう。
更に少し進むと、ロープウェイの緑色の橋脚の下に出た。ロープウェイに何か事故があれ
ば、ここで救助するのかもしれない。

 そこから暫らくの急登。この暖かさに冬眠から覚めて、カソコソと大きな石の上をトカ
ゲがびっくりしたように草むらに逃げて行く。アルコールも抜けてきて、ようやく素面に
戻った体を踏ん張って、上がった先にひょこんと四等三角点。点名を『湯槽谷山』。通称
「湯槽谷山」はこの先のピークだが、展望がないのでこっちに選点したのだろうか。やや
こしい事だ。振り返ると流石に大きな六甲の主脈が重畳と屏風の如くにたたなづいている。
三角点の写真をとっていると、30台位の単独兄さんが追い越していった。

 急な下りをこなすと、案外直ぐに見覚えのある湯槽谷峠に着く。ほっと一息ついて、茶
で喉を潤す。

 さてと。直進という考えも脳裏をかすめたが、生来の軟弱者のこと、あっさり湯槽谷山
への登り返しは諦めて、この前歩いた湯槽谷の方へエスケープすることにした。(^^;

湯槽谷峠。直進は有馬三山、右(東)は湯槽谷
左(西)は逢山峡へ

 土曜に降った雨の為か、先々週よりも若干水量が多い沢を下り、紅葉谷からの道と合流
すれば後は林道を下るのみである。枝の先に萌え出た若芽で霞んだような林やウリカエデ
の花なぞを愛でながら歩けば、林道歩きも苦ではない。20分程で到着のロープウェイ駅
の先から直ぐ左折して、今日は「金の湯」で汗を流す。でも満員、芋の子だぁ。

 さっぱりした後は太閤橋から車道をテクテク。ワンにゃンガーデンが見えると駐車場は
まもなくである。陽春間近の六甲山系。これから結構、癖になりそうです。



【タイムチャート】
8:30自宅発
9:30〜9:35有馬有料駐車場(Ca410m)
9:47魚屋道入口(Ca430m)
10:20日蓮宗の石碑
11:00一軒茶屋
11:06〜11:20六甲山最高峰(931.3m 一等三角点)
11:52〜12:40極楽茶屋(昼食)
13:04〜13:10笹の鞍部
13:17〜13:20点名『湯槽谷山』(752.0m 四等三角点)
13:25〜13:27湯槽谷峠
13:50湯槽谷・紅葉谷出合
14:12ロープウェイ有馬駅



魚屋道のデータ
【所在地】兵庫県神戸市
【標高】
【備考】 神戸市灘区から六甲最高峰の東肩を越えて有馬を結ぶ六
甲越の道です。有馬の湯治客へ新鮮な魚介類を運んだ道
から魚屋道(ととやみち)と呼ばれるようになったと云
われます。道標など良く整備されており、ファミリーハ
イクに最適です。
【参考】エアリアマップ『六甲・摩耶』



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