秋めく丹波〜高見城山、石戸山快適縦走
平成15年 9月23日(火)
【天候】曇り一時小雨
【同行】単独
赤いザレ場から望む石戸山


 丹波の城巡りと銘打って、黒井城のある猪ノ口山と高見城山に登ろうと出掛けたはいい
が、余りの蒸し暑さに黒井城に登っただけで早々とギブアップしたのは去る8月31日。
今日はそのリベンジというほど大層なものではないが、柏原の街の南西側を囲む高見城山
と石戸山へ。台風の加減でめっきり涼しくなって31日とは雲泥の差。登っている最中は
流石に暑かったけれど、秋本番間近の丹波を満喫することができました。

 「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく云ったもの。朝晩はめっきり秋めいて少し寒い位だ。
8時半、ゆっくりと自宅を出て、費用節約の為、宝塚から三田西だけ高速道。R176に
降り、花博の際に会場の駅として使われたJR柏原駅の駅舎を左に見て、下町の交差点で
丹波悠遊の森に向かって左折する。

 悠遊の森の利用客や登山客がもっと多いかと思ったが、森に囲まれた駐車場は閑散とし
て車が僅か2台のみ。それも山登りの車ではなさそう。悠遊の森も閑散として何だか少し
淋しい感じがする。

 管理棟で地図をもらい、悠遊の森の奧へ奧へと入っていくと炭焼き広場に出る。高見城
山の登山道はここからで立派な石標もある。伝えられるところによると、高見城は室町期
に丹波守護の仁木頼章が築城したという山城。戦国期、赤井家清の時に光秀によって落城
したという。

 雑木林の中に遊歩道として整備された道を進むとT字路に出る。管理事務所の案内板に
よると小峠というそうな。右(北)展望台600m、左(南)高見城山950mとある。展望台
は帰りに寄るとして、まず左へ向かう。

 道は次第に石混じりに変わり、それも上がるに従って露岩が多くなる。振り返れば、柏
原の街が木立の向こうに徐々に広がってくる。麓からは運動会の応援の太鼓の音、JRの
電車のゴトゴトという車輪の音。何かの物売りのスピーカー音やら何やらが聞こえてくる。
里山ならではの音の風景だ。

 結構急峻な登りで汗をかきながらジグザグ道を詰めていくと、「亀井戸」と書かれた説
明板の前にやってくる。高見城の水源だったらしく、黄金が水底に隠されているという古
城に付物の伝説があるという。但し、井戸の遺構は殆んど無く、それらしい石が埋まって
いるのみである。

 高見城山へはこの辺りで遊歩道と別れて右の高みに登らねばならない。途中に山頂をぐ
るりと取り巻く曲輪らしき遺構を見て、まもなく現れた小さな石の祠は愛宕社。そこを左
に折れるとススキと萩が咲く山頂である。高見城址の石標と木の簡易ベンチの前に四等三
角点が埋まる。喬木もなく、城があったというだけに展望は抜群。この前に登った黒井城
も見え、三尾山も望める。これだけの連携があると明智方も攻めるのが難しかったに違い
ない。金山に城を築いて、波多野の本城との連絡を分断したのは正解だった。

高見城山山頂。石標の横に四等三角点
奧の山並みは向山連山

 南に真新しい紅白の巨大な高圧鉄塔。これから向かう石戸山はどれだろう。一旦戻って
遊歩道を南へ進むと、岩の斜面をへつる部分もあるが直ぐに鉄塔の立つ切り開きに出る。
往路は鉄塔のある470m峰の最高部に登らず斜面をトラバースしたが、ザレているので
少々足元に注意が必要だ。その後は暫く関電の巡視道ともなっているので快適な道となる。
ほとんどアップダウンも無い。5分程で石戸への分岐。先達の山行記で左の尾根筋に行か
ぬよう注意せよとあるのはここら辺りらしいが、道標が置かれていて今は迷うことも無く
進める。しかしさっきから蜘蛛の巣が鬱陶しい。10m進むごとに出くわすほどの夥しさ
だ。ストックを振り廻しながら進む。それでもややもすれば顔や首筋にピタリと貼り付く。
でもそこで意外な発見。蜘蛛の糸は白い物だとばかり思っていたが、これがなんと薄黄色
なのだ。知らなかったぁ。

 昔の石の道標があった。表には「○○○ 鴨の」裏には「下 北山」とある。○○○は
崩したかな文字で小生には到底読めず。残念。

 落ち葉の堆積したやや暗い常緑樹の林を抜け、赤っぽいザレ場に出る。林の途切れた辺
りから前方に石戸山らしいピラミッド型の山が現れてきた。ところがこちら側との間の鞍
部が結構深い。登り返しは辛いかもと毎度の事ながら山を歩きに来たとは思えない弱きの
虫が...。(笑)

 やや笹の被った斜面を下ると、そこから鞍部までは、「もうええやん」と思われる程の
どんどん下り。痩せた植林帯の中の細い尾根に出るとようやく鞍部。「右 かもの 左 
大新屋 界」と刻まれた道標を兼ねた様な境界標がある所を見ると古い峠だったのか。柏
原町側は植林の中に道らしい痕跡が残るが、氷上町側は廃道のようである。

鞍部に立っている古い石標

 予期した通りきつい登りが始まる。深く掘れた踏み跡から、斜面の胸突き八丁。やや不
明瞭な部分もあるが要所にテープがある。一旦、平坦になるが再び急斜面となり、それが
納まると、鉄平石が重なる通称「賽の河原」に出る。頂にハゼらしい痩せた木を載せたス
トゥーパのような岩を向こう側には、本当の賽の河原の如く石を積んであった。

石戸山山頂北側の通称「賽の河原」

 賽の河原を過ぎた右の高みをふと見上げて一瞬ギョッとする。思わぬ所に夫婦らしい男
女二人組。石龕寺から来たという。後で考えると、今日遭遇した唯一のハイカーだった。

 GPSによると頂上はもう少し先。やや不明瞭な踏み跡をテープに導かれていくと、突
然、切開かれたような狭い山頂に飛び出る。右に旧建設省のアンテナ施設。その横に保護
石に囲まれて大きな一等三角点が鎮座していた。

石戸山山頂の一等三角点

 石龕寺へはここからやや西に振りながら下る。が、そこへ下りてしまうと帰りの車道歩
きが大変になるからここはピストン。見晴らし皆無なので、三角点を撫ぜた後、暫く休ん
で戻ることにする。

 往きは遠いなあと感じるが帰りは意外に早く感じるものだ。見晴らしの良い鉄塔ピーク
まで戻って昼食にした。

 食事の支度をしていると、パラパラと雨が来たが直ぐに止む。いい眺めだ。北側の高見
城山はここから見ると、但馬竹野浜の猫崎に似て、猫が獲物を狙って蟠っている感じに見
える。その姿の向こうは向山連山に五台山。東は黒頭峰や夏栗山、金山。その奥、一際高
いのは三嶽だろう。双眼鏡で覗くとアンテナ鉄塔のある大野山が見え、そこから左に方向
を変えていくと、なんと白い雨量観測ドームの建つ深山が認められた。南に白髪岳、西光
寺山にとんがり山。西には篠ヶ峰が良く目立つ。

鉄塔ピークから見る高見城山。猫が蟠った姿に見える

 コーヒーを飲んでいると大粒の雨がやって来た。慌てて撤収する。

 直登を示す道標に従い遊歩道と別れて高見城山へ再び登るが、やっぱり無人の山頂。佐
治川(加古川)の流れ、白山、北方の五台山方面や氷上の街並を眺めて下山。

 小峠まで戻り、直進して展望台へ寄ることにする。ほぼ平坦な道が尾根伝いに付けられ
ていて、先端が一寸した高みになっている。地形図の259m峰で茂みの中に東屋があっ
たが、展望台というほどの場所でもなかった。(笑)

 こちら側にも下山路があるのでそのまま進むことにする。ジグザグに下って行くと猪除
けのフェンスにぶち当たった。その前で道は左右に分かれる。案内板があってこの辺りは
「禅座坂」と呼ぶらしく、可愛い室町時代の五輪塔も置かれてあるが一寸陰気な場所では
ある。

 ところで、悠遊の森へは右に行くの正解なのだが、ありゃ。猪除けのフェンスで閉鎖し
てあるではないか。仕様がないので左を採ると、すぐに道が無くなった。幸いフェンス沿
いに薄い踏み跡があるので辿っていくと、明快な道になり、前方が明るくなったと思った
ら、線香の匂いがしてきて、斜面に造られた古い墓地に飛び出した。

 暁山霊園とある。墓地入口の新井忠魂碑前の道から直ぐに新井小学校のグランド横に出
る。小学校では運動会が終わったらしい。家に帰る親子連れ、遊び足りない子供達はまだ
校庭で走り回っている。

 車道に出て新井神社の標識を目印に南へ折れる。畑の畦には彼岸花。農家の庭先には栗
のイガが転がっている。不順な気候にもかかわらず、植物は正直だ。

 悠遊の森に戻り、案内板に見入っている時である。背後から声をかける人物。振り返る
と父たぬきさんの人なつっこい笑顔。三週間前の黒井城以来だが、久闊を辞し、レストラ
ン「ベルピーマン」でコーヒーブレークと洒落こむ。このベルピーマンのコーヒー意外に
いけますので皆さんも。(笑)

 四方山話に花を咲かせていると、時間の経つのは早い。明日も仕事。早めに帰らねば。
というわけで再会を約しお開きとする。間もなく秋本番。そんな爽やかな気分にさせる秋
めく丹波の山歩きでした。

高見城山の頂の萩の花



【タイムチャート】
8:30自宅発
10:10〜10:15丹波悠遊の森駐車場
10:30炭焼広場(登山口)
10:37小峠
11:19〜11:27高見城山(485.2m 四等三角点)
11:38高圧鉄塔のピーク(Ca470m)
11:42石戸分岐
11:52赤土のザレ場
12:05石標のある鞍部(Ca480m)
12:20賽の河原
12:26〜12:30石戸山(548.8m 一等三角点)
12:45石標のある鞍部(Ca480m)
13:02赤土のザレ場
13:10石戸分岐
13:15〜13:55高圧鉄塔のピーク(昼食)
14:04〜14:15高見城山
14:40小峠
14:45東屋
14:55禅座坂
15:00暁山霊園
15:20丹波悠遊の森駐車場


 高見城山のデータ
【所在地】兵庫県氷上郡柏原町、氷上町
【標高】485.2m(四等三角点)
【備考】 氷上盆地の西から南を囲む山塊の峰です。山頂には室町
期に丹波守護であった仁木頼章が築いた城址があり、東
麓の登山口には丹波悠遊の森があり、季節にはキャンプ
場やレストランを利用する人で賑わいます。
 石戸山のデータ
【所在地】兵庫県氷上郡柏原町、氷上町、山南町
【標高】548.8m(一等三角点)
【備考】 高見城山を北端とし、南へ延びる当山塊の主峰ですが、
一等三角点が置かれている山の割に知られていない山で
す。その分、静かな稜線歩きが楽しめます。南麓の聖徳
太子が開創したといわれる古刹石龕寺は定慶作の仁王像
(重文)で有名です。
【参考】2.5万図『柏原』



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