西多紀アルプス縦走〜鋸の歯の上を往く | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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踏破してきた鋸山西峰(右)、Ca590m峰(左) 奧左は夏栗山、中央に黒頭峰、奧右に三尾山が 覗く(鋸山東峰より) |
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昨年の秋に行われた三尾山オフ。佐仲ダムから鏡尾根で三尾山へ、更に夏栗山と巡った のだが、その時、林道から鏡尾根に取り付くついでに、逆方向ではあるが有志で鏡峠へ寄 ってみたのだった。雑木が鬱蒼として暗いが、昔は良く歩かれていたらしく深く掘れた地 道が印象的だった。そして綺麗な縦走路が続いているのが興味を引いた。たぬきさんに聞 くと鋸山へ続く道だという。春にでも一度行ってみなければと話していたのものだが、も ぐさんの発案で急に盛り上がり、ヒカゲツツジにはまだ早いが、陽春前の丹波の山歩きも 捨てがたく、ミニオフ敢行とは相成ったのである。 もぐさんの急な不参加は残念だったが、前夜、電話や掲示板で打ち合わせた如く、集合 地は舞鶴道春日ICに8:30。宝塚付近の渋滞で間に合うかと心配したが、何とかジャ ストタイムで到着。待っていたかの様にたぬきさんから電話。「もう間もなく」という水 谷さんからの連絡もあって、ほぼ定刻の8:35には次の集合地の春日町中山へ。モービ ルのGS前でたぬきさんとも落ち合い、集落を抜けて鏡峠への林道を登る。地道の林道は やや荒れ気味で、FRの普通車にはちとつらい。所々にある路肩の広まった辺りで止まる のかと思いきや、先導のたぬき車はずんずん上がっていく。「底を擦らんかな」と内心冷 や冷やものであったが、何とか林道終点に到着。「ホッ。」(^^;) 終点の広場は植林で囲まれたやや陰気な場所。杉の幹が風に揺れて擦れてキィーキィー と不気味な音を奏でる。「こういうの一人の時って、一寸気持ち悪いんだよなぁ」(^^;) 鏡峠への道はつづらおれで、所謂、羊腸の道。杉の枯葉と雑木の枯葉におり敷かれて古 道の雰囲気がある。しかも電柱の残骸や碍子の破片も転がっているのは、何か最近まで電 気を使う建物でもあったのだろうか?すると明らかに人の手が入り、小広くなった場所に 出た。その上には不動明王の石仏がある。以外に古く、銘は安政4年5月と刻まれてい る。広場には茶店か不動堂でもあったのかも知れない等と空想は膨らむ。そして石仏のす ぐ上が今回の縦走基点の鏡峠である。 5ヶ月ぶりに踏んだ鏡峠から、いよいよ縦走の開始である。成程、軽四輪も通れそうな 遊歩道然とした道だ。しかも丸太補強された階段。但し、一旦整備した後、メンテナンス が全く行われていない様子。佐仲ダム周辺にもあったが、これじゃ自治体の気まぐれな無 駄遣い以外の何者でもない。でも我々にとっては、却ってこのまま自然に帰ってくれた方 がいいけれど。(笑) 暫くすると、鹿遊びの鞍部に出る。地形図では松森から破線路が上がってきているはず であったが気付ずに、やがて道が二股に分かれる地点に出る。遊歩道は南の佐仲ダム方面 に向かって下っていく。半分かすれかかった私製の道標が鋸山の方向を指す。左へ尾根伝 いに進むと漸く本来の山道になった。 小さくアップダウンを繰り返しながら高度を上げていく。アセビの白い花が風に簪の様 に揺れている。が、杉の枝に触れると、花粉が黄色い靄の様に広がる。花粉症じゃ春の丹 波は歩けないなあ。
ゃないかとタカを括っていたら、徐々に露岩が現れだした。その内、前方に大きな岩峰が。 「これ登らにゃならんの?きつそう」と覚悟を固めたら、幸いちゃんと巻道が現れた。で もこの巻道さえも、かなりの急傾斜である。手足をフルに使って登り切ればCa590m峰 の頂上に立つ。 この峰を鋸山と誤ることも多いのだとか。北側が切れ落ちた険しい岩混じりの山だが、 そのしんどかった代償に好展望が出迎えてくれる。女性的な黒頭峰、夏栗山とは対照的に 三尾山は荒々しい。北には妙高山。西に向山、譲葉山方面も眺められる。たぬきさんがい ろいろ教えてくれるのだが、如何せんなかなか頭に残らない。(^^ゝ Ca590m峰を過ぎると暫くはややなだらか。小さなピークを抜けて細い踏み跡を再び 急登すれば、今度は本物の鋸山。非常に狭い山頂ではヒカゲツツジの群生の中から露岩が 頭を出し、それに登ればここも360度の大展望。東多紀アルプスに鹿倉山。北摂の深山、 大野山。西には笠形山や西光寺山。北は粟鹿山まで眺められる。
へ足が進まない。(^^;) 進まないのは下り道が見つからないことも一因かも。高さ2m 程の岩の上に出て、下の棚へ降りるのに一苦労。岩の出っ張り、立木にすがって漸く降り 立ったが、素直にバックして岩を巻けばこんな苦労はなかったようである。でもこれが結 構面白かったのも事実だ。 雑木の中にテーブル状の岩がある。ヤブツバキの赤い花。尾根の南斜面。強風が防げて 暖かい。
通りの「鞍部」。緩やかに湾曲した馬の鞍のようで、分厚い落ち葉のクッションで敷き詰 められている。典型的な丹波の雑木林は清々しい。所々にあるウサギや鹿の糞を除けなが ら、時として消える踏み跡を捜しつつ、小さなピークを越え、次のピークに至ったところ でほぼ正午。山頂の雑木に囲まれた6畳程度の空き地で昼にする事にした。早速、たぬき さんの無線機から、三岳のWMさん、皆子山のHiroさん等の賑やかな声が流れてきた。 湯を沸かしている最中である。ふと奥の松の幹に目をやると、「山本株山」と書かれた 白い標識を見つける。ふむ。株?江戸時代の各商売仲間の組合を「株仲間」とか「同心」 の株を買うなんて言葉があったからそれと同じ意味だろう。赤松が多いので、きっとマツ タケに関したものに違いない。 ところで随分歩いてきたけれど、行程は未だ半分強。たぬきさんからのカステラの差入 れと食後のコーヒーの後、先を急ぐことにする。 「山本株山」からCa550mとCa530mの二つの峰を踏破した後に聳えるのが、57 2mの標高点ピークで「堂の峰」と呼ばれる峰。竜女の鱗を所蔵するという麓にある福徳 貴寺に関連する山らしい。下山後、東から眺める姿は整っていて神奈備山そのものであっ た。 東西に長い堂の峰の山頂東端からは東側が開ける。多紀アルプスの主峰である三岳、西 ヶ岳が大きく聳えて周囲を圧している。栗柄の谷を隔てて北には高王山等の峰々。しかし 見とれている場合ではない。(笑)足元を見ればこれが激下りなのである。90m程を一 気に下り、やや緩んだ後、更に下って都合150mもの一気下りなのである。分厚い落ち 葉で滑るから雑木の幹を掴んででないと降りられない。が、根元が朽ちた灌木もあって油 断がならない。何度か危うく難を逃れるて斜めにトラバースしながら難所を漸くクリアす る。
人が抜けられる様な空間を見つける。右手には最後の目的地、御在所山(点名『浅木谷山』 )が木の間越しに眺められる。その取付きを探っていると古い赤テープがあった。 ここも結構きつい登り。距離は短いが多くのアップダウンをこなしてきた足には応える。 張り出した枝に邪魔をされ、結構ヘロヘロしながら登った頂上の四等三角点は落ち葉の下 に埋もれ、珍しくプレート類は一切無い。縦走路から若干離れているからだろうか、西以 外の展望に恵まれていないからだろうか。その西にはさっきまで居た堂の峰が端正な三角 形を見せていた。
春先なので猛烈ヤブじゃ無いのが助かる。北東へ向かう尾根を捜して、一旦、沢へトラバー ス気味に下って行くと、間もなく目指す尾根に復帰。明瞭な踏み跡がついていた。 ここからは格段に道が良くなった。郡界尾根のコンクリート杭を目印に進む。枝道や枝尾 根があるので下山は計画通りに歩く事が難しい。最初は順調に栗柄を目指していたのだが、 最後の最後に誤って北西に張り出した支尾根に惑わされてしまった。左手に堂の峰、右手に 県道のガードレールが見えるのでおかしいなと面々。しかし戻る程の事もないかと、ヒサカ キのガス臭のする尾根をこのまま歩き続けることにしたが、肝腎の県道がなかなか近づいて こない。ようやく飛び出したのは県道際の土の崖の上。幸い左に巻き道があるのを水谷さん が発見。結局降りた所は目標地点から500m西の県道付近であった。 すっかり晴れ渡った春の日差しの中を、ぶらぶらと県道を栗柄へ向かう。ネコノメソウや フキノトウ、ハコベ、オオイヌノフグリ。花を見ながら東に歩けば、山腹の赤い鳥居が目に 入る。深くなった谷に倶利伽藍の滝。そして狭い路地に折れると間もなく、栗柄の観音堂で あった。 デポしてあったたぬきさんの車で出発点へ戻る。約6時間の長丁場の縦走。越えたピーク は大小取り混ぜて20は下らないであろう。文字通り鋸の歯の上を行く縦走であった。でも 夏はブッシュになりそうな部分もあり、歩くなら今が最高であろう。心地よい充実感に浸り ながら、帰路は歩いた山並みを右手に県道を東に走る。車のデポや先導などお世話頂いたた ぬきさん夫妻、水谷さん、感謝です。
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