寒返る中山縦走路
 平成15年 3月 9日(日)
【天候】曇り時々雪のち晴れ
【同行】単独
高圧鉄塔の尾根から眺める六甲(奧)と中山の稜線


 もう一つテンションが上がらない。当然、用意も未だ。でも何処か歩いてみたい。この
頃よくあるパターン。さあて、どこへ行くか。外へ出れば気分も高揚するかと思いきや、
灰色雲がやってきて、いきなり白い物が結構な密度で落ちてきたではないか。余計に気分
も萎えてしまう。が、こんな寒の戻りに山の中で熱いうどんを啜るのもオツなものだろう
と思い返して、向かうは近場の中山縦走路。

 灰色雲は北の空一面に広がっている。車のフロントガラスに間断なく当たる白い飛粉。
霰っぽい雪だ。何時もの様に阪急中山駅南の有料駐車場に車を置いて支度する。ようやく
雪も止んでやや明るくなった空。

 折から中山寺では梅林公園でフリマが開催されるようだ。信徒会館前でチラシを配る兄
さんすこぶる寒そう。同時にカブスカウトの大会も開催されるらしく、さっきの兄さんに
比べると、こっちは元気な子供達の歓声が上がる。

 満開の梅をカメラに収めていると、またも雪が横殴りに。さっきまで眺められた六甲方
面も灰色の帳の向こうである。

先競う梅の花。信徒会館前にて

 墓地横から奥の院参道を歩き出す。沢を渡り、左に卜部左近の墓を見て坂にかかる。の
っけの階段道はエンジンのかかる前の体には些かつらい。一丁毎にある丁石と石仏を眺め
ながらゆっくり登ると、直ぐに明るい尾根筋に出る。雲が去って薄日も射してきた。日が
射すと気分も明るくなるから不思議だ。すぐに点名『中山寺』の三等三角点。唯の尾根筋
の一角だが一寸寄っていく。

 カブスカウトの子供達と抜きつ抜かれつ。夫婦岩公園では多くのハイカーが休憩中。あ
ずまやにも鈴なり。生憎、視界は良くない。早々に辞して奥の院方面へ。林道を横断すれ
ばすぐに奥の院と中山最高峰山頂との分岐に出る。今日は左側の奥の院へ寄っていく。

 聖徳太子が修行したという岩走る水場を過ぎると、宇多天皇自彫の天神像がある岩の横
に立つ。が、どうも江戸時代の作の様な....。(笑)

 奥の院は神仏混淆時代の面影を残す。最奧には白鳥岩から湧く御神水がある。今日も沢
山のペットボトルを手にした小父さんがいる。背負って降りるのも大変だぁ。(笑)因み
にこの水、生で飲むなとある。

 数グループのハイカーがたむろする奥の院を後に、境内の中にある祠の裏から踏み跡を
進む。この辺りは格段に人も少なく、雪の為に倒木や木の葉は白い。吹く風も心なしか寒
く感じられる。小さなこぶを越え、やがて夫婦岩からの道との出会い。左に折れて中山最
高峰を目指す。

 山頂展望台の高みを左に見る頃、再び、風とやや大粒の雪がやってきた。ヤッケにも雪
が積もる程だ。現れた緑のフェンス沿いに先を急ぐ。出会った団体さんが降りた後は誰も
いなくなった山頂に着く。本来、北側がガレてなかなかの好展望なのだが、強い風に吹き
上げてくる雪のベールで何も見えず。しかし空を良く見ると微かに青みがかっている。も
う暫らくの辛抱と待っていると、雪はそれから5分程で止み、青空から陽光が落ちてきた。
視界も嘘の様に広がって、鳥脇山や川西方面から能勢方向が見渡せるようになる。去年、
昼食を摂った場所に佇み、景色を暫し愛でる。

 ハッキリせぬ天気に、さっきまでは来た道を戻って清荒神へ出るかとも考えていたのだ
が、この分なら最後の岩場も大丈夫だろうと踏んで、縦走路を東へ辿ることにする。

 暫くはフェンス沿い。粘土質の山道は折からの雨や雪でドロドロの泥濘。注意していて
もズボンにはハネが。こうなりゃ、「まっいっかぁ。」最初の高圧鉄塔。ここには宝塚市
の三等基準点が埋設されている。ここで昼食とも思ったが、また雪模様。諦めて先を急ぐ。

 痩せ尾根や展望岩を過ぎると、右下に何処かで見た風景が。山本から切畑に抜けるバイ
パス道だ。長尾山トンネルはこの下を通っているのかと初めて気付く。切畑といえば確か
水上勉の『櫻守』の主人公、弥吉の妻の『園』の生地だったはずだ。古宝山の近くだなと
考えると何か懐かしい。

 あれやこれや昼食場所を捜している内に、小さなピークを幾つか越えて、とうとう満願
寺西山まで来てしまった。三角点は登山道からやや西にずれているので、ここでようやく
昼食。濡れぬ様に、枝にザックをぶら下げ、レトルトの讃岐うどんを温める。煮立つまで
は焼酎のお湯割りで寒さ対策。(笑)

 ところでこの満願寺西山、西側が伐採されて、すこぶる展望が良くなった。六甲山と大
阪湾を眺めながら焼酎を傾ける。来た甲斐があったねえ。(笑)

満願寺西山から南西方向。甲山の奧には光る大阪湾
その向こうには泉南地方が霞む

 後片付けをして再び縦走路へ。満願寺西山から尾根伝いに赤白の高圧鉄塔の建つ尾根に
出ると、どこか今迄と光景が一変する。原因は昨年の山火事。あちこちに炭化し、黒い木
肌の立ち木がみられるようになるからである。あれから1年。しかし木の生命力は大した
もので、根元から新たな枝を伸ばすソヨゴ、緑の葉を残す赤松、下草にはオシダがもう繁
茂している。早く元の雑木林が戻ればいいなと思う。それにしても、山の直下には新興の
住宅地があり、さぞ怖い目にあったのではないだろうか。

 しかし、その山火事の為に眺望が良くなったのは皮肉なものだ。この辺りから、次の鉄
塔にかけては素晴らしい展望だ。先程までの雪雲も通り抜けて広がった青空の下、まるで
飛行機の窓から見る風景だ。まず北から西にかけて中山寺から中山最高峰にかけての緩や
な稜線と馬蹄形に続く尾根筋。北東には白い物を戴く剣尾山から高代寺山、振野、妙見山。
五月山から鉢伏山、明ヶ田尾山。直下には愛宕原ゴルフ場の芝枯れのグリーン。南に広が
るは北摂から阪神間の市街。大阪空港や昆陽池も指呼。遠く生駒、金剛、和泉山脈。更に、
大阪湾が逆光に光り、海原に浮かぶ船も望める。淡路島や友が島が霞む姿と山頂部が白い
六甲にこんもりとした甲山が印象的である。南から上がってきた単独兄さんも鉄塔の下で
小休止している。何時まで見ていても飽きない風景だ。

 次の雪雲が来ないうちにと先を急ぐことにする。雪で濡れているのではないかと懸念し
ていたのだが、南斜面なので表面が乾いていて一安心。フィックスロープを伝って降りて
いく。この辺りが一番良く燃えたのか立ち木は全て炭化している。足掛かりを探しながら
降り、一旦、山道になった後、最後の岩を降れば、満願寺と山本を結ぶ峠。団体さんが集
まっていたので、こちらはそそくさと山本方面へと峠を下る。

 不動明王の参道らしい、常緑樹が多くやや暗い沢筋を下っていけば、何時の間にか小さ
な沢に澄んだ水が流れ、徐々に水音が高くなる。何度か沢を渡り返している間に左から最
明寺川が合してくる。土で作られた中国風の門を潜って暫らくすると民家に近い趣の小さ
な寺が数軒。生駒山の西麓に似た雰囲気を醸し出す。更に住宅が並ぶ市街地に出、道標に
従えば、阪急山本駅はそこから10数分であった。

 中山駅まで阪急電車で戻り、駐車場で車を回収する。3時。梅見客や霊場巡りの笈を羽
織った参拝者が、まだちらほら中山寺へ向かっていく。寒返りしたここ数日であるが、だ
いぶ長くなった陽は春の麗らかさを増したようだ。ブラリ歩いた一年ぶりの中山である。



【タイムチャート】
9:45自宅発
10:20〜10:25中山駅前駐車場
10:30〜10:40中山寺
10:53点名『中山寺』(173.4m 三等三角点)
11:03〜11:04夫婦岩公園
11:10林道出合
11:12奥の院、中山最高峰分岐
11:25〜11:28奥の院
11:40奥の院、中央展望所分岐
11:57〜12:03中山最高峰(478.2m 三等三角点)
12:25高圧鉄塔(南大浜線)の立つピーク
13:06〜13:40満願寺西山(361.6m 四等三角点)
14:00〜14:05高圧鉄塔(伊丹線)の立つ尾根突端
14:15満願寺・山本分岐のコル
14:50阪急山本駅



中山最高峰、満願寺西山のデータ
中山最高峰は蒸し風呂状態または
梅ほころぶ中山連山縦走」を参照下さい。
【参考】2.5万図『武田尾』、『広根』



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