ヤブ山堪能、香合新田から三蔵山
 平成15年 2月23日(日)
【天候】曇りのち小雨
【同行】別掲
木津と槻並を結ぶ道から眺める秀麗な三蔵山の姿


 妻恋地蔵さんからお誘い戴いた北摂は三蔵山のヤブ山オフ。その著書「低山趣味U」に
記載されているコースだ。天候が心配されたが、晴れ男で鳴る小生の神通力か天候も回復、
無事開催。(笑)途中、雨に降られたりもしたが、妻恋地蔵さんの的確な読図により無事
完歩。本格ヤブ山を堪能することが出来ました。

 前夜の雨も上がって、曇り空の日曜。集合地の猪名川道の駅には8時前に到着。少々寒
いが、雲間から青空も覗きだし、期待が高まる。自販機で買ったホットコーヒーを飲んで
いると、「いろり」のステッカーを貼ったデリカがやって来た。
「妻恋さんですかぁ?」「違います、矢問です」「ああ。MICKYさんの...」初対面
とは思えない気さくな矢問さんであった。次いで月刊「西谷」を発行されている林さん、
今日の主催者の妻恋地蔵さんと同僚の隠岐さん、最後に物静かなダンノ凡太郎さんが到着
して、8時30分過ぎ、猪名川霊照苑に車をデポし、矢問さんの車で出発地点の宝塚市香
合(こうばこ)新田へと向かう。

 「香合」とは変わった地名だが、香を入れる容器のこと。昔、お姫様が香合を云々と、
車中で妻恋さんに教授いただく。当の香合新田は十数軒の民家が集まる隠れ里のような集
落。西に去年登った寺山、広照寺山がピラミッドの様に聳えるのが見える。ここで宝塚か
ら自転車でやって来た織田さんと合流、総勢7名が揃い、用意を整え、林道を東へ笹尾峠
に歩いていく。車止めを越えて右に小さな池を見る。直ぐに笹尾峠。その南側の切通し斜
面から第一歩。のっけから獣道程度の微かな踏み跡である。勿論、テープなど一切無し。
もしあっても、不要なものは妻恋地蔵さんが剥しているのであるが。(笑)

 唯、ハンターは歩いている様である。ハンターは小枝を折ることでテープの代わりの目
印にするのだそうで、確かにその跡がある。鉈目も所々に入っている。それでもこの辺り
は小尾根が複雑に入り組み難しい地形だ。主稜線を外して、東の小さな池の端に出てしま
ったりとあっちこっち。それも一興と楽しむ妻恋地蔵さんである。

 池の縁をトラバースして、主稜線に戻る。Ca360mピークの東をかすめて南へ折れる。
結構なヤブ。小枝が張り出したり、朽ちた倒木が行く手を遮る。帽子は脱げる、ザックは
引っ張られる。おまけに雨でぬめる斜面。ある箇所ではずるっと斜面を滑って尻餅をつき
かけた。そうこうする内に、何か杭のような物が現れた。「エルベの基準点」。ゴルフ場
か何かの標識であろうか。

 少し下った薄暗い湿った峠には東西に広い道が延びている。そこから更に踏み跡がH型
に錯綜する峠に出る。水場があり、チロチロと雑木林の中から水が流れ出している。飲ん
でみると、なかなか旨い水である。

 小休止の後、急斜面を登ると地形図の296mピークに出る。木の間越しに東の笹尾の
集落が眺められる。この辺りは先程に較べれば尾根がハッキリしているので歩き易い。前
方に見える高みを目指して歩くこと約15分。四等三角点『上佐曽利』の置かれた327.
4mピークへ着く。ここから県道の笹尾峠までは激ヤブがあると、脅かす妻恋さん。しか
し、あにはからんや、それ程のヤブはなかった。しかし、等高線が緩み、広い尾根にとも
すればあらぬ方向に出てしまう。県道の車の音が良く聞こえ、南に向かえばとりあえず
県道に出るのだが、そこは読図してピンポイントでなけりゃとこだわる妻恋さん。腰を屈
めて踏み跡を探っている。こうすれば獣の視点で道を見つけられるのだろう。的確な読図
で尾根を拾って歩く。 

 下に県道が見えてくる。と、変な所に簡易トイレが立っていてびっくりするが、その横
の山懐に入る作業道に出て、下ればばっちり完璧に笹場峠であった。

 割と頻繁に車の往来がある。注意しながら南側の斜面に取り付く。土の崖状の部分を横
切って331mピークの西北西の尾根に乗った所で小休止。12時を廻っているので、こ
こで各自エネルギー補給。小生はおかかおにぎり。

清々しいヤブを行く一行(331mピークの南尾根にて)

 芽出しを待つ木々の枝越し、東に331mピークが見える。ハッキリした道はないが、
ヤブも思ったほど濃くなく歩き易い。331mピークを抜けて、尾根沿いに西へ湾曲した
辺りのCa310mピークからは、市町界を示すらしい石標やプラ杭も出てきた。それに導
かれてややきつい斜面を下る。ちらちらと三蔵山の鋭鋒が前方に見え出してきた。どんど
ん下るのでますます登り返しがきつそう。「役行者みたいに霊力で橋が架けられたらいい
のにねえ」等と冗談も出る。さらに下った所が木津峠であった。

木津峠で憩う面々

 一車線のやや荒れたアスファルト道が通る。猪名川町の標識があり、昔は何か建物が建
っていたらしく有刺鉄線と木組みの古材が置かれている。その南側が旧道でそこに三体の
墓があった。中央の地蔵が彫られたものには明和三年の銘があり、○○童女と読める。
いずれこの辺りで道中亡くなった人のものなのだろうか?

 暫く憩った後、少し戻って今井岳と三蔵山との鞍部の沢を遡る。ホウノキの枯葉が重な
る沢を巻いていると、ゴルフボールが転がっている。下手なゴルファーがOBしたらしい。
しかし恐いなあ。頭にでも当たったら....。と思い出すと今にも飛んできそうな錯覚に襲
われる。「早よ行こ。」(^^;)

 いよいよ三蔵山の山腹に取り付く。途中、山頂への稜線が眺められる箇所がある。想像
以上にきつい登りである。大変だぁ。(笑)

 傾斜がきつく直登が難しいので、踏み跡はジグザグを切ってつけられている。落石に注
意しながら石がゴロゴロした部分を抜ける。眼下にゴルフ場が広がってきた。そこここに
大きな露岩。灌木も斜めに生えている。ようやく傾斜が緩み出した時、人工的な平たい部
分が山頂を取り巻いているのに気付く。曲輪の跡だという。聞けば土地の豪族佐曽利氏の
城だったらしい。荒木村重に加担したというから、村重の没落に伴って勢力を失ったのだ
ろう。強者どもが夢の跡である。

 山頂間近から北に降りて昼食場所と決めていた天狗岩を捜すことにする。天狗岩はヤブ
ツバキや赤松等に隠れて、山頂付近からかなり下った所にある高さ10m程のオーバーハ
ング気味の岩であった。北に張り出しているので、三草山、竜王山、丸山、双耳峰の愛宕
山。直下には栃原の集落や後川(しつかわ)へ抜ける県道等が眺められたが、大野山や高
岳はガスの白いベールの向こうである。13:50。遅い昼食を摂ることになったが、折
悪しく雨が強くなった。急いで腹に詰め込む。

天狗岩上でポーズをとる妻恋さん

 昼食後は山頂へ登り返す。明快な踏み跡はなく、傾斜もはきついが藪ではないので助か
る。山頂は平らで一筋の踏み跡が東西にあり、その付近の潅木にだけ何故かテープがあっ
た。その山頂の東側に無残にも南西部が欠けた三等三角点を見つける。この頃には雨も上
がり、しばし休憩、記念写真撮影。

 南側に展望の良い所があると聞いて行ってみる。眼下に旭国際ゴルフ場のコース。川西
市街、北摂大峰山方面が霞んでいる。但し、この直下は崖に近い急斜面らしい。その為、
下りは東側から迂回して南へ廻って前山(Ca370m)経由で下ることになる。

 きつい下りも程なく緩やかになる。台形をした前山である。アセビ、リョウブ、赤松、
ソヨゴ。各種のツツジ類。典型的な北摂の植生。人一人が通り抜けられる程の空間がある。
市町界を示すプラ杭が目印になる。尾根を外さず、コンパスで確認して降る。やがて、古
い道があったという峠に出る。ハタチノ峠と呼ぶのだという。西側はゴルフ場のグリーン
で潰されてしまったが、東側には深く洗掘された明快な道があった。ゴルフ場から三蔵山
の良い姿が眺められるのではと期待したのだが、台形をした前山に遮られて見えない。カ
ート道を峠に戻って古道を下ることにする。大きなタラノキが一本。小さな沢を横切って
進み、右に延びる尾根と別れて進めば笹原が現れる。明るくなってきたと思ったら、切り
開かれた残土置き場で、折からの雨で積まれた残土がぬかるんで歩き難いこと夥しい。滑
っては大変、泥が付着して甚だ重くなった靴を引きずって漸く平地に出た。

 平日はダンプの通う作業林道をゆっくりと南へと降る。右側の沢が水を集めて徐々に川
らしくなる頃には、車の騒音が次第に大きくなって、本日のゴール、猪名川霊照苑に到着
であった。

 水溜まりで靴の泥を落とした後、妻恋さんの音頭で一応オフ会閉会の宣言。その後、デ
ポした車に分乗して、矢問さんの車や織田さんの自転車を回収に再び出発点の香合新田へ。
だが三蔵山の姿を写していないのが何となく心残り。そこで図々しくお願いして、三蔵山
の良く見える場所へ妻恋さんに先導頂く。一つは上佐曽利、もう一つは天狗岩から眺めた
木津から槻並への道沿い。とりわけ後者からの三蔵山は堂々としていて、素晴らしい眺め
であった。(冒頭画像)

 かねがね気になっていた三蔵山。取付きが明快でない為にガイドブックにも載っていな
い三蔵山。それだけにテープもなく、南側はゴルフ場と化してしまったけれど、まだまだ
手付かずの里山のイメージを残していてくれる静かな山であった。楽しい一日をプレゼン
トして頂いた主催者の妻恋地蔵さん、そして同道の皆さん、有難うございました。雲間か
ら顔を出した夕陽は、間もなく来る春を予感させるようにうららかであった。

上佐曽利からの三蔵山



■同行: 隠岐さん、織田さん、ダンノ凡太郎さん、妻恋地蔵さん、林さん、矢問さん
    (五十音順)

【タイムチャート】
7:00自宅発
7:55〜8:35猪名川道の駅(集合地)
9:10〜9:15香合新田(Ca210m)
9:45池付近
10:15エルベの基準点
10:37〜10:42H型の峠
10:55〜10:57296mピーク
11:14〜11:19点名『上佐曽利』(327.4m 四等三角点)
12:02笹尾峠
12:12〜12:25331mピークの西北西の尾根(笹尾峠の南)(小休止)
12:35331mピーク
12:48Ca310mの石標ピーク
12:58〜13:05木津峠
13:50〜14:25天狗岩(昼食)
14:40〜14:55三蔵山(411.4m 三等三角点)
15:10ハタチノ峠(ゴルフ場グラウンド横)
15:30土砂集積所
15:42猪名川霊照苑



三蔵山のデータ
【所在地】兵庫県宝塚市・川辺郡猪名川町
【標高】411.4m(三等三角点)
【備考】 宝塚市と猪名川町の境にある三角形の秀麗な山です。明
確な登山路がない為、ハイキングのガイド誌にも紹介さ
れておらず、雑木の静かな山歩きが楽しめます。岩の多
い山で、山頂近くの天狗岩からは北方が開けています。
また、山頂は戦国時代の山城があったらしく、三重の曲
輪跡が残っています。尚、テープも殆どないので、コン
パスと地形図は必携です。
【参考】2.5万図『木津』



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