癒しの森に魅せられて再び野田畑谷
平成15年 11月 8日(土)
【天候】晴れ
【同行】別掲
枯葉の絨毯が敷き詰められた癒し
の森「野田畑谷」の風景


 3週間前に歩いた京大演習林の最奧部、三国峠から野田畑谷。またまたオフが催される
ということで、何だか知らないけれど参加してしまった。当初の考えでは小生も車を出し
て、野田畑峠まで同行。その後、野田畑谷を遡行してシンコボへ向かうつもりでいたのだ
が、何せこの秋に入ってから度重なった遠出で先立つ物が些か不如意に。ああ辛い!(T_T)
そこでシンコボは来春に取っておくとして、もぐさんの車に便乗させて貰って、再び三週
間前のコースに宗旨替えしたのである。しかし、何度来ても素晴らしい癒しの森に、同行
者、天候にも恵まれて、またまた清々しい一時を過ごせたのである。

 7時、千里中央。7人のメンバが集合して車二台に分乗。堅田で遠来のつむぎさんと合
同し、R367を梅の木で左折、一路生杉へという段取りだったが、今日は何だか車が多
い。紅葉のピークと見たハイカーが多いのかも。それは兎も角、ゆるゆるとしたスピード
でしか進まない。見ると大名行列の先頭は観光バスだ。こりゃ先行き大変だと思ったら、
幸い広くなった路肩に除けてくれた。有り難うです。

 濃霧注意報が発令中とあって、霧が山の端にたゆたう感じで取り付いていたが、いつの
間にか薄まり、空は青みを増してくる。しかもラッキーな事に地蔵峠への林道ゲート直前
に駐車スペースが。先程とはうって変わって、「幸先いいじゃないのぉ」と、秋の空の様
な移り気な小生の心であります。(^^)/

 3週間前より山の色彩がより濃くなった感じがする。葉に含まれるカロチノイドやアン
トシアンが濃厚になったのだろう。のっけの急登もブナやカエデのグラデーションを眺め
ながらであればほとんど苦にならない。一度歩いているからか距離も短く感じて、それ程
息を切らせることもなく尾根に乗る。イワウチワ、イワカガミの混生する柔らかな尾根で、
前回見つけたイチヤクソウも、踏みつけられもせずに花殻をつけた無事な姿を見せている。
最後は小山に登る感じで三国峠の山頂に上がる。

 展望は前回と大差なし。否、青葉山の双耳峰が辛うじて眺められる位だから却って悪い
かも知れない。一際大きい武奈ヶ岳の奥は蛇谷ヶ峰。南の方にブナノキ峠や傘峠らしい
高みを確かめる。

 三国峠への小さなコルで、我々が小憩中に先行して行った小父さん2人組以外に、枕谷
方面から若い女性を含んだパーティが上がってくる。少々山頂が手狭になってきたので、
集合写真を撮って先へ進むことにする。小父さん2人組も野田畑峠へ向うそうだ。でもこ
の付近は初見参とのことで、随行させてもらいたいとの申し出。総勢10名の大世帯であ
る。(^_-)

 三国峠から北に下って野田畑峠を目指す。気がつくと目の前の枝に『クチクボ峠』と書
かれたプレートがぶら下がる。枝にはよく目立つ赤テープ。
「ん?前回来た時はなかったけどなぁ。」
最近付けられたんかな?と、それ程深く考えもせずに、魅入られるが如くプレートの示す
方向へ歩き出した。

 気持ちの良い尾根が続く。トラロープのある急斜面を下るが、ここでも何の疑問も持た
なかった。やがて鞍部が見えてくる。深くえぐれた道がクロスしている。道標には『クチ
クボ峠』
「ありゃぁ?これはおかしいわ」
記憶にない風景にようやく気付く。おかしな事に目的方向とは逆の若走路谷(ワカンビ谷)
へのコースを歩いているのであった。(^^;

クチクボ峠の石碑

 お陰で見たかった『○経墓』と刻まれた石碑を写真に納める事が出来たけれど..。(^^;
何だか狐に摘まれたみたい。二度目なので安心していたのと、分岐の所でコンパスで方角
を確かめなかったことが原因だろうが、その分岐で「クチクボ峠」と書かれたプレートを
自分でしっかり目にしていたはずにもかかわらず、更に云えば、前回見かけた若走路谷と
書かれたテープを見ていないのは何故なのかなど、幾つもチェックポイントは有ったと思
われるのに、何の疑いもなくあらぬ方向に行ってしまうというミス。こんなことが現実に
あるんだなと今更ながら思う。幸い、現地点をロストするものではなかったが、道迷いは
こういう事が重なって起きるのだろう。自戒にしなきゃ。

 さて、えっちらおっちら登り返して分岐に戻る。野田畑峠へは三国峠から直進である。
ちゃんと野田畑と書かれたテープもあるではないか。

 忠実に尾根を辿る。相変わらず良く滑る。潅木を持たねばとても降りられない部分もあ
る。が降りた先は柔らかなU字形の曲線を描く雑木林だ。何とも優美な姿である。その内
に、767mピークの、山頂部に杉の木がある見覚えのある姿が左前方に見えてきた。も
う安心だ。
柔らかな曲線を描く小さな鞍部。落ち葉が分厚い
野田畑峠への下りにて

 Ca800mピークで方向を変えて、最後の斜面を降りきって野田畑峠。もう正午過ぎだ。
峠から直ぐの倒木が重なる辺りで弁当を開けることにした。

 暖かい。腹も膨れたことだし、ふーっと昼寝でもしたい位だ。アブラチャンの薄黄色の
葉に柔らかい陽が透けて見える。風が吹くとハラハラと木の葉が舞い落ちる。ほんに癒し
の森である。

 ここ野田畑谷は由良川源流の最上部の沢の一つに当たるが、信じられないほど穏やかな
流れだ。同じ芦生のトロッコ道横の深い渓谷を噛む流れと同じ川だとはとても思えない。
高低差が余りなく、勿論、突兀とした岩もなく、落ち葉とそれが分解した腐葉土に覆われ
ているので、澄んではいるが清冽とは呼べない水が音もなく流れていくのみ。何度か幅1
m〜2mの沢を渡る。こちらの姿に気付いたのか、ハヤらしき小魚やイモリが慌てて深み
に逃げ込んだ。

 湿地に出る。ほんの三週間の間にアケビの実の姿も無く、ツキヨタケの肉厚の茶色の笠
も無い。アケボノソウが一本だけ咲き急いでおり、サワフタギの茄子紺色の実も些か色褪
せて見える。間もなくモノトーンの世界が広がるであろうこの辺り一帯には、人が来ない
早朝にでも現れるのか、鹿の足跡が錯綜している。

 上谷の流れを木橋で渡って対岸に出る。流れに沿い、再び木橋を渡って杉林の中の木道
を進めば林道終端で、地蔵峠との分岐。左に折れて木橋を渡れば杉林の中の中山神社の前
に出る。枕谷からの道を左に見て、やや登り加減に行けば地蔵峠である。林道終点のゲー
トがあるが、下のゲートが出来る迄はここまで車で来れたそうだ。前回は団体さんでおち
おち見られなかった演習林説明地図を眺める。こうしてみると演習林が以下に広大かが判
ろうというもの。今日なんかほんの北端沿いの一部を歩いただけだもの。

 ゲートをすり抜ける。祠の中の石には新しい赤い前掛がかけてある。「○ 般若経、観
音経一字云々」と刻まれていて、ここにも「○」が使われているのが面白い。円満とか万
事丸くなどの気持ちを現しているのだろうか。

地蔵峠の自然石を利用した一字一石塔

 童心に帰って向かいの山に木霊する声を愉しみながら林道をテクテクと下る。ピクニッ
クにやってきたらしい子連れの家族が追い抜いていく。山々は一段と濃さを増した雑木の
葉をまとい、静かに冬を待ち受けている感じだ。三週間前はあれほど目立ったリンドウも
ちらほら見かけるのみ。ムラサキシキブの実も疎らになっている。トキワハゼが元気に薄
青い花を広げているのが健気である。

秋色濃い山々は様々に色づいて

 左へ大きくカーブして山裾を迂回すると、往路で見かけたバスが駐車しているのが目に
入り、前方には夢とうつつとを画すが如きゲートが見えてくる。それが今回の癒しの森徘
徊のエピローグ。現実に戻る瞬間であった。

 11月、立冬とは思えぬ暖かさの中、再び訪れた芦生の森。それが秘める麻薬の様な魅
力をひとたび知ったら、抜け出るのはかなり難しいかもしれない。決して多情とは思わな
いが、自分には近頃そんな所が多すぎる。そんな思いを深くした今日一日。同行の皆さん
に多謝です。



■同行:あかげらさん、きたやまさん、呉春さん、つむぎさん、まきたさん、水谷さん、
    もぐもぐさん(五十音順)

【タイムチャート】
6:20自宅発
7:50〜8:00千里中央(集合地)
9:15〜9:30ゲート前(駐車地)(Ca560m)
9:28登山口
9:47三国峠東南尾根
10:07〜10:13三国峠(775.9m 三等三角点)
10:35クチクボ峠
10:50〜10:54野田畑峠、クチクボ峠分岐
11:20767mピーク
11:33〜11:42Ca800mピーク
12:08〜12:52野田畑峠(昼食)
11:50〜12:30野田畑谷(昼食)
13:43地蔵峠、上谷・杉尾峠分岐
13:46中山神社
13:55地蔵峠、枕谷・三国峠分岐
13:58〜14:03地蔵峠
14:37ゲート前(駐車地)(Ca560m)


 三国峠(三国岳)のデータ
三国峠から野田畑峠〜演習林最奧部の秋』を参照下さい。
【参考】2.5万図『古屋』、エアリアマップ『京都北山2』



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