北尾根縦走で再び花の伊吹山
平成15年 8月 3日(日)
【天候】曇り時々晴れ
【同行】別掲
ドライブウェイから眺める北尾根。奧から国見岳
大禿山、御座峰、静馬ヶ原と歩いてきた


 伊吹山は南麓の伊吹町上野からのルートがメインだが、他に北側の尾根を縦走するコー
スがある。8月に入って最初の日曜、そこを舞台にミニオフが開催されるという。それを
聞くや、小生、何の因果か、ついつい食指を動かしてしまい、つい先日訪れたばかりの伊
吹山にまたまたむさ苦しい姿を現すことになったのである。真夏の蒸し暑さに加えて、ア
ブやブヨの襲撃、マムシとの邂逅と自然界の危険生物との有難くない接近遭遇もあり、な
かなかハードだったけれど、道は殆んど雑木林の中、多彩な花々に充実の山歩きであった。
それにしてもブヨに刺された患部の痒〜いことよ。(--;

 やっと梅雨が明け、予報は晴天。前日にコースを地図で確かめると結構な距離だ。暑さ
対策として水分は2Lと0.5Lの麦茶、250ccのグレープジュース、300ccのスポ
ーツ飲料と計3L強。小型の簡易クーラーバックと保冷剤を用意して、0.5Lの麦茶と
スポーツ飲料は凍らせ、ジュースを冷やしておく。塩分補給に塩飴、チーズ。服装はTシ
ャツに半パン。しかしこの軽装が後で痛い目、否、痒い目に遭う元凶になるとは。

 水谷さんの車で午前6時に出発。近江長岡駅で名古屋から参加の内田さんと合流後、伊
吹町上野の登山口へ。ここでもぐさん、hiroさんと合流し”もぐ車”をデポ。水谷さ
んの車に総勢5名が乗車して縦走出発地点の国見峠へ向かう。伊吹町を縦断する形で姉川
沿いに北上して板並を過ぎ、工事半ばの林道に入ってぐんぐん高度を上げる。奥美濃に続
く山々は徐々に山深さを増し、谷底も深く、単独じゃ一寸心細くなる細い道。登り詰めた
先の鞍部が江濃国境の国見峠で、手元のGPSは標高855mを指している。意外に明る
い峠なのは、岐阜県側のスキー場からいい道が上がってきている為で、岐阜ナンバーの1
台の四駆が先着している。車を降りると幸いの曇り空、陽射しも遮られ涼しい。が大気は
湿度が高く、皮膚に粘りつく感じがする。南を望むと、ガスに覆われた伊吹山が周囲を圧
して居座っているのが望まれる。しかし結構遠い。あんなとこまで歩いて行けるものかと
内心少なからず不安もよぎる。

国見峠から望む、結構遠い伊吹山

 峠には弘法大師らしい新しい石像と由緒書の石碑がある。それによると、国見峠越えは
古くからの道だったらしく、絹と塩を運ぶ人々や、野麦峠にも似た女工哀話も語り伝えら
れているとか。さぞや難所だったことだろう。

 その石仏の横から北尾根縦走路は始まる。思ったより良く踏まれたいい道がついている。
因みに北に辿れば虎生山で、準備に余念の無い先着の四駆の主はそちらに向かわれるとい
う。
国見峠の北尾根縦走路取付き

 尾根上を忠実にトレースする道は雑木に囲まれいい雰囲気。暫く歩くと右に小さな石碑
が建っているのに気づく。文面をはっきり覚えていないが、この辺りを繁く歩いている人
が個人で建てたらしい事が刻まれてあった。

 小さなピークを越えて目の前に現れた周囲の景色にそぐわぬブリキの看板は、教如上人
の遺跡「鉈ヶ岩屋」を示すもの。なんでも関が原の合戦の時、教如上人は徳川方につき、
その為、石田方に追われた上人を春日の村人がその岩屋で匿ったので、難を逃れたのだと
いう。付属の案内図を見ると、岩屋を通って岐阜県側から峠に上がってくる車道へ出ると
書かれてあった。急坂注意の但し書き。北尾根の岐阜県側は概して急峻なようだ。

 道は東から次第に南に向き、最初のピークの国見岳を目指して徐々に高度を上げていく。
路傍にはオトギリソウらしい黄色い花やママコナが散見される。そんな中、忽然という感
じで通常の登山道の左に金属製の階段が現れる。通常のルートにはトラロープがあるが、
左に階段があるせいか余り歩かれていないようである。しかしこの階段も濡れて滑り易く、
クサアジサイやマタタビ等が繁茂して左右から枝を伸ばして歩き難い。今回の縦走では、
この付近が最も植物が茂って足元が見えず、歩き難い箇所の一つだったが、一気に高度を
稼げるのは助かる。実際は10分足らずの階段登りだったろうが、蒸し風呂状態なので夥
しい汗が噴き出す。ブーンと地鳴りに似た音がだんだん大きくなってくると、これまた忽
然と白っぽい大きな建物が現れる。KDDIの中継アンテナ施設で、階段はその付属施設
だった。

 涼しいかぜが吹き上げてくる建物の側で小休止。滴る汗を拭う。今来た方向の展望がい
い筈なのだが、ガスの中では諦めざるを得ない。その代わりといっては何だが、何処から
ともなく現れたアブが一頻り頭上を飛び回る。刺されては適わないので早々に出立。

 GPSによると国見岳の最高点は約200m南らしい。そちらへ向かうと建物横の草が生
い茂る広場にウバユリを見つける。更に進んだ最高点は小さな露岩が埋まるような場所で、
ヒメフウロの可憐なピンクの花が一杯咲いている。ここも展望は抜群のはず。しかし僅か
にこれから向かう大禿山の姿が望める程度である。

 国見岳からの下りは、石灰岩質の石と粘土質の土でツルツル滑る。覚束ない足取りの時
に限って現れるのがアブ。ブンブンと煩い。追い払っても追い払ってもやってくる。その
内膝頭付近がおかしいと思ったら急に痒くなってきた。見ると、赤く腫れて真ん中の刺さ
れた跡に血が盛り上がっている。ブヨにやられたらしい。虫除けを手や首筋には塗ったが、
足はスパッツを装着していたので大丈夫と油断した所為か塗り忘れてそこを狙われた。そ
して、ついには耳までも。

 国見岳から1.5km、国見峠から国見岳の所要時間とほぼ同じ時間で饅頭型の大禿山。
東の展望が良さそうなのだが、これもガスに遮られる。

こんもりとした大禿山へ続く縦走路
西からガスが湧いてくる

 尾根に出たり、樹林の中に入ったり。アップダウンを繰り返しながら、ひたすら南へ歩
いていく。日陰ではヤマシャクヤクに似た植物やチゴユリには緑の小さな実。キンポウゲ
の光沢のある黄花。日向ではコオニユリ、ナデシコ、フウロソウ類が目立つ。ウツボグサ
は他の場所のよりも青紫色が濃い。ガスの切れ目から遥か下に採石場。岐阜県側の谷底を
白い細い帯紐の様に県道が延びているのが垣間見られる。かなりの高度感だ。

 御座峰はこの縦走路で唯一三角点を持つ峰。山頂の部分のみ刈り取られたように平坦で、
三角点の横に金属製のプレートがある。何でもこの縦走路は藪で道もなかったのが、大垣
山岳協会が長い年月をかけて開き、以後毎年春日村が整備しているのだという。そういえ
ば、途中の私製道標には「大垣新道」と書かれたあったような。少々シャリバテの我々一
行はここで早い目の昼食とした。

 一息ついて、内田さんからコーヒーの差し入れを頂いていると、南の方向から20人位
の団体がやってきた。何処まで行くのか尋ねると、この御座峰までだという。こちらは昼
食も終わったことだし、場所を譲って先へ進むことにする。

 ガスの切れ間から前方にピラミッド型の山の姿が現れた。地形図にも表示が無いので良
く判らないが、あれが槍ヶ先なのだろうか?

 次の目的地は静馬ヶ原。登山道は概ね樹林の中なのだが、偶に稜線上の草原を通る。太
陽が真上に来る頃、ガスが薄れてきて所々には青空が顔を出し、ついに直射日光に晒され
ることになった。首筋がとくに熱い。慌てて日除けにタオルを頭にかけて帽子を被る軍隊
スタイル。これで少しましになる。

 伊吹山に近づくにつれて花の種類も増えてくる。コオニユリ、クガイソウ、ハクサンフ
ウロ、サラシナショウマ、メタカラコウ、シシウド、シュロソウにナデシコ。お花畑で見
られる花々の殆んどがお出ましなった感がある。御座峰と静馬ヶ原を繋ぐ稜線まで来ると、
あんなに遠く思えた伊吹山が大きく屏風のように立ちはだかる感じになる。大阪セメント
の石灰採掘でテーブル状になった台地の突端の鉄塔が良く見え、そして山腹を巻く鉢巻の
様にドライブウェイがあって、走る車が目で認められる程になる。「ん?」あの観光バス
動いていないなぁ。見物でもしているのだろうか。後で判ったことだが、駐車場の空き待
ちの車でドライブウェイは大渋滞を呈していたのであった。

吊尾根から静馬ヶ原(右)と伊吹山
ドライブウェイが見える

 稜線の左手は深い谷でギボウシの白い花が点々と目立つ。滝でもあるのか下から沢の音
が湧き上がってくる。揖斐川へ流れ込む粕川の源流だろう。アサギマダラらしい蝶がヒラ
ヒラとウツボグサの間を滑っていった。

 「急坂注意」の標識もあって、静馬ヶ原への登りも結構きつい。クマザサの繁る道を歩
いてのっぺりした台地に立つと、時々車の排気音も聞こえてくる。もうドライブウェイま
では指呼である。ここが「燕平」と呼ばれる場所なのだろうか?(静馬ヶ原もピークの事
か、その付近のことか判然としないが、とりあえずカシミールの山名データはピーク名だ
ったのでそれに従う)

 静馬ヶ原とドライブウェイの間は広くて深い溝状の形をしている。石灰岩質の山の特徴
なのかもしれない。急斜面を下って行くと春日町笹又からの登山道と合流する。こっちも
マムシが多いらしい。

 ところでこの付近も小さなお花畑。待望のイブキフウロが咲いている。早速、デジカメ
に。他にはメタカラコウ、シシウド、クガイソウ等々。

 ドライブウェイは駐車場待ちの車で数珠繋ぎだ。山頂駐車場は大分先で、これから歩く
我々もうんざりするほど。(この車道歩きが一番辛かった)それでも気分を騙し騙し歩い
ていく。北にはさっきまで歩いてきた北尾根稜線が今はくっきり。中継塔が目印なので国
見岳がどれか良く判る。今更ながら良く歩いたもんだ。だけどこれからまだ上野まで降り
ねばならないのである。漸く駐車場に着いて売店で小休止。ザックから簡易クーラーを出
し、取って置きのジュースを取り出す。おお!良く冷えて旨いと思ったら、なんと保冷剤
がまだ凍っているではないか。これはいいわ。これからもこの手で行こう!

 それにしてもえらい人出だ。遊歩道は人が途切れる間も無い。その中に混じって中央遊
歩道で山頂に出て、南側の展望はどうかと眺めに行ったけれど、靄が強く麓辺りが眺めら
れた程度であった。

 伊吹山寺付近で後続の3人を待つ。携帯メールにも伝言を入れ、20分程待ったが現れ
ず。とりあえず三合目まで下ることにする。その三合目でも30分近く待つが、またまた
遭えず。行き違ったかな?とりあえずゴールへと、ヒロさんは一般道で、少々歩き疲れの
小生はゴンドラで下の駐車場へ向かうことにした。

 駐車場の端に水場がある。顔と頭を洗うと何とも心地よし。Tシャツを着替えて、もぐ
さんの車の横で暫らく待っていると意外な速さでヒロさん。ダイトレ縦走と同じく走って
降りてきたという。このパワーには脱帽でした (^^;

 駐車場のおばさんと四方山話してゴンドラを待つ。その間に近くの売店に氷水を交代で
食べに行く。暫らくするとみずさん、もぐさんが合流、車を回収に出かけたが、後から内
田さんが降りてくるはずだというが、タイミング悪く行き違いになったようで、後刻、み
ずさんの携帯に連絡が入ってようやく三宮神社の前で合流できたが、内田さんには申し訳
無かったです。

 さて、結構歩いたなぁが実感の伊吹北尾根縦走。多くの花々が目を楽しませてくれたけ
れど、夏の山は服装、虫除けに細心の注意が必要なことを身をもって実感した次第。これ
からは虫除け剤、痒み止めを常に携行しよう。でも後の祭りかぁ。(^^;)
皆さん有難うございました。


■同行 内田さん、水谷さん、もぐさん、hiroさん

【タイムチャート】
6:00自宅発
8:00上野ゴンドラ駐車場
8:25〜9:35国見峠(Ca860m)
8:52〜8:54小ピーク(Ca950m)
8:55鉈ヶ岩屋分岐
9:20〜9:26KDDI国見岳中継局
9:42〜9:44国見岳(1126m)
10:30〜10:40大禿山(1089m)
11:08〜11:32御座峰(1070.1m 三等三角点)
12:15〜12:25静馬ヶ原北側の吊尾根
12:56〜13:08静馬ヶ原(1149m)
13:15〜13:25笹又コース出会い
13:27伊吹山ドライブウェイ
13:48〜14:00伊吹山頂駐車場売店
14:20〜14:40伊吹山山頂広場
15:22五合目
15:30〜15:35四合目
15:42〜16:00三合目(高原ホテル前)
16:15上野ゴンドラ駐車場


 御座峰のデータ
【所在地】滋賀県坂田郡伊吹町
【標高】1070.1m(三等三角点)
【備考】
伊吹山から北に伸びる尾根の途中に位置する三角点峰で
す。山頂からの展望には恵まれませんが、その前後の尾
根道からは東側、岐阜県側の展望が良い箇所があります。
伊吹北尾根縦走路は国見峠から伊吹山迄の尾根筋を伝う
道で、早春のカタクリ、イワウチワ、夏のフウロソウ類、
ナデシコなど伊吹山頂のお花畑で見られる花々がここで
も見られます。尚、マムシも多く、アブ、ブヨ等の毒虫
も多く生息していますので、虫除けや服装に万全の注意
をして下さい。尚、アプローチは車以外は困難です。
 伊吹山のデータ
伊吹山百花繚乱』を参照下さい
【参考】エアリアマップ『御在所・霊仙・伊吹』



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