伊吹山百花繚乱 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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山東町柏原付近から眺める伊吹山 田圃の向こうに新幹線が走る |
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いつかは登りたい山の一つが伊吹山。高い木がなく、従って日陰のない山で、夏は夜間 や早朝以外しんどい山だ。この秋にでもと思っていたのだが、この週末は梅雨前線が南下 して比較的涼しい晴天だという。暫く遠出もしていないし、少々懐は痛むけれど、清水の 舞台から飛び降りた積もりで高速料金奮発して行ってみるかぁ。(笑) 日頃は低山ばかりなので、百名山はこれでやっと二つ目。結果は高い金をはたいた値打 ちあり。文字通り百花繚乱の伊吹山。もう少しガスが晴れてくれれば言うこと無しだった けれど、その分涼しかったのだから贅沢は言うまい。 高速を使えば思ったより速く着く。2時間足らずで滋賀県側の登山口のある伊吹町上野 の集落。軒を接する家々の間を縫って、適当な民間駐車場を選ぶ。駐車料金千円。高〜ぁ。 湖国バスの上野バス停の前に三宮神社の立派な鳥居がある。奈良時代の創建といい、長 浜城主時代の秀吉とねねが帰依したという古社だ。境内は神さびた丈の高い杉が茂り、日 本武尊が毒消しに飲んだという「けかちの水」という湧水もある。登山道はここから始ま るのだが、ゴンドラという便利な物が横にあっては、根っからズボラの小生、誘惑には勝 てない。ゴンドラ駅はこちらとおいでおいでする案内板に、ふらふらと吸い寄せられて神 社の境内を抜ける。まあ、遅く出てきたのは、このゴンドラでの時間短縮をはなから狙っ ていたからでもあるのだが....。(^^;) ゴンドラ往復もこれまた千円。夏目漱石が羽が生えた様に消えていく。しかしこのゴン ドラは価値あり。約5分で標高約730mの三合目なのである。 「涼しくていいですねぇ」同席した小父さんと会話を交わす。今日は地元の醒ヶ井小学校 の親子登山の日なのだそう。最後尾を見届けながら登って行くんだという。こりゃ大変だ。 因みにゴンドラは夏休みに入り、夜間登山のハイカーも多いことから、今日は6時から2 4時の間、営業しているということだ。 ヒグラシが鳴く杉林を眼下にあっという間に高原ホテルのある三合目。やけに賑やかだ と思ったら、MTBの大会なのだという。お陰で登山路は迂回させられる羽目になり、取 付き判らずちとうろうろ。あちゃ〜。
ある。黄色いニッコウキスゲ、真っ赤なコオニユリ。ピンクのハクサンフウロ。赤紫のカ ワラナデシコ。道草ばっかりになりそうで、こりゃ山頂まで行けるかなぁと我ながら危惧 する始末。(^^ゝ でもこれだけ花が多いと、それもだんだん麻痺してきて、帰りに写せ ばええわいと生来のズボラ癖が頭をもたげてくる。 ゆるゆるとした勾配を暫く歩いて、スキー場のリフトの最高所である四合目に出る。山 頂まで2.7qの表示がある。ここから暫くは涸れ沢と見まごうばかり、赤子の頭大の石 がゴロゴロと転がる道で、左右は灌木が茂る。ジグザグを切りながら高度を上げていけば、 遠くに霊仙山の稜線や湖北の平野が広がりだす。伊吹山の山頂にも雲はなく、この分なら 展望も良さそうと期待も膨らんだが、山の天気は変わりやすいのだというセオリーを、こ の時は完全に失念していたのである。 五合目は何々平と名前が付いていそうな一寸した広場で、売店とトイレ、ベンチがあり、 缶ジュースは180円。昭和43年2月の雪崩で山小屋が流され、3名が亡くなった時の 遭難碑がある。眼下に大分小さくなったホテル。MTB大会の応援の鳴り物やアナウンス の声が上がってくる。
小さな人が蠢いているのが判る。ひゃー。あんなとこまで登るんやぁ。 五合目以降は樹高3mを越える木は全くといっていい程無い。その分見晴らしは最高だ けれど木陰が無いので真夏の炎天下は本当に堪えるだろう。幸い今日は予想通り、陽射し も雲に遮られて時折射す程度だ。汗をかく尻から涼風が吹き抜けてほど良い塩梅。それも そのはず六合目はもう標高1000mなのだ。鮮やかな黄色い花をつけたメタカラコウの群落 が目立つ。それに見とれていると、何時の間にやらガスが流れ始めた。それは七合目、八 合目と登るに従ってだんだん濃くなって、八合目では完全に白い帳の中になってしまった。 八合目には少々広いテラスがあって、丸太のベンチと小さな祠がある。十人位の先行者が 休憩中である。空いているベンチに腰掛け、こちらも小休止である。 この辺りから急な狭い道となる。石灰岩っぽい白い石が目立ちだし、フウロソウやシモ ツケソウ、イブキジャコウソウといった花々がそこここに咲いている。葉肉が分厚く、黄 色の花が咲いているのはベンケイソウ科の花だろう。(後で調べるとキリンソウであった) それらに目を奪われ、キョロキョロしながら行き着いた九合目はもう殆ど頂上で、緩い斜 面の先にガスに霞みつつも売店と伊吹山寺の建物が100m程先に現れる。 山頂は思ったより広い。しかし売店付近は予想はしていたものの、凄い人人人。胸にワ ッペンをつけた初老の人達の多いこと。大津市自然観察会の旗に先導されて、100人以 上の男女がゾロゾロと後をついていく。その間を縫って、素朴な顔をした日本武尊像をま ず見た後、三角点を探しに行く。今は無人らしいコンクリート造りの頑丈な測候所横に目 指す大きな一等三角点が見つける。
一周し、三角点横の台状のコンクリートに陣取って、少々早いけれども昼食とした。
で寒いくらいだがジッと我慢。しかし北から次々とガスが流れてきて、晴れるかと思うそ ばから視界を遮る。それでも、真っ青な空に飛行機雲が見えた瞬間、サーッと一気に晴れ 渡って、ドライブウェイから関ヶ原方面、養老山地と濃尾平野が広がった。想像以上の高 度差である。が、写真に撮ろうとしたらもう白いベールの向こう側であった。 展望は諦めて、お花畑の散策に移る。東遊歩道へ。それにしても多くの人がいるもんだ。 殆どがドライブウェイからの客のようだ。そんな中、関西弁とは異なるイントネーション が時々耳に入る。どちらかといえば中京圏に近い山であることを実感する山だ。 シモツケソウ、ハクサンフウロ、オオバギボウシ、サラシナショウマ。とくにシシウド の白い花火の様な放射状花、メタカラコウやキンバイソウの黄色が目立つ。そこここで大 きな三脚を抱えた初老のアマチュアカメラマン。散策するカップル。大津市自然観察会の 旗に先導された団体。遊歩道は入れ乱れる感じだ。 東の小高い突端、1334mの標高点近くに鳥居が二つあるのに気付く。近づいてみる と衣冠束帯の老人と老婆の石像に大物主尊と刻まれた石柱等種々雑多の石造物が並んでい る。なんだろう?一寸不思議な異空間ではある。 再び山頂の中心へ。新しく出来たエコトイレは超満員。とくに女性陣は長蛇の列。男ト イレにも闖入しているかと思ったが流石にそれはなかった。(笑) 伊吹山寺の横に、お花畑の写真入りの解説板を見つける。同定に役立ちそうだ。デジカ メに納めておこう。寺の前では臨時郵便局が開局。花の切手か何かのセール中。それにし ても、山の上の一大観光地といった風情に、深田久弥も苦笑していることだろう。 そろそろ下山にかかる。同時刻、醒ヶ井小学校の親子登山グループも下山するらしく、 上がってくる人と相まって大渋滞。が、8合目でグループが小休止したのでその後は妙に 空き空き状態であった。 ホトトギス、ウグイスの鳴声を聞きながら下ってくると、山上のガスは嘘みたいに無く なり、八合目からは箱庭の様な湖北の平野が望め、長浜や米原の市街、薄く靄った琵琶湖 の湖面には竹生島が浮かんでいるのが望見される。南側では新幹線の列車が走っていく。 暫し、石川五右衛門の気分。「絶景かな絶景かな」。
と今日の山行も終盤。三合目は近い。 MTBの大会はまだ続いているようで、今は耐久レースが行われている。それを横目に、 混まない内にとゴンドラに乗る。 神社の横に観光案内所を見つける。お婆さんが一人で留守番。折角なのでパンフを頂い て駐車場へ戻る。流石に下界は暑い。帰宅すると、今日は梅雨明けだったそうな。多くの 花々と出会えて満足の伊吹山遠征。でもやっぱり人が多すぎるわぁ。(^^;) ■伊吹山で見られた花々の写真集『伊吹山百花繚乱』を見る
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