往く秋惜しんで横尾山
 平成14年11月 10日(日)
【天候】晴れ
【同行】単独
西に傾いた日の光を浴びて燃えるヤマモミジ


 今年は冬の訪れが早く、11月もまだ上旬だというのに各地から初雪の便りが届く。能
勢にも9日に積雪があったとの情報が寄せられた。この分じゃ、うかうかしていたら紅葉
も見逃しそうだ。で、費用も余りかけずに紅葉の山歩きを楽しめる条件で行き先を絞る。
脳裏に浮かんだのは、北摂では珍しくほとんど雑木に覆われた横尾山。小春日和に誘われ
てこの日曜、出かけてみた。

 例によって、キャンプ場の横の道の路肩に車を置く。先行車は1台。用意をして能勢の
郷へ向かう。エントランスの坂を登ってテニスコートの横の道をワンパク広場に向かう。
ドウダンツツジは真っ赤に紅葉し、能勢の農家を移築した辺りのカエデも紅葉を始めて、
あっという間にすっかり晩秋の雰囲気である。

 軽食堂の建物の裏にワンパク広場がある。若い夫婦が幼児を遊ばせている広場を横切る
と、2つのコースに分かれる。一休み峠コースと見晴らし峠コース。どちらも上で合流す
るのだが、見晴らし峠コースを選択、小さな尾根の取付きから山頂広場目指して登り始め
る。

 結構きつい登りである。今日のコースではここから山頂広場までが最もきついと思える。
尤も体にもエンジンがかかっていないこともあるが。

 道はよく整備されている。最近新たに整備の手が入ったようで刈り取られた雑木の幹や
枝があちこちに積み上げられている。痩せ地の為、丈の低い松や細いリョウブ、ヤシャブ
シが多い。岩混じりとなった尾根を登っていくと左手にあずまやが現れる。振り返ればさ
っきのテニスコートも小さくなって、R173を流れる車や南方向に三草山や竜王山、堂
床山が仲良く並んだ姿が広がって爽快だが、上がった息に、額には汗が滲み出す。

 尾根道は今度は山腹を巻くように右に折れる。柱の様に立った岩を巻いて左に上がると
『小鳥のテラス』と名づけられた場所に出る。一休み峠コースとの合流点。

 雨水に洗掘された急な登りをこなすと、ようやく雑木林の中の小道に変わり、前方が開
けるとテーブル状の岩が鎮座する頂上広場である。ここからの紅く黄色く色づいた木々を
纏ったCa680mピークの眺めはよい。ところが「あれっ?」
巨大な高圧鉄塔が通称「トンビカラ」付近に建設されているではないか。ピラミダルな姿
が台無しである。「あーあ」と歎声も出る。鉄塔の巡視道に昇格?したようで、踏み跡程
度であった横尾山へのルートも遊歩道然としっかりしたものになっている。静かだった横
尾山のルートもこれで訪れる人も多くなるに違いない。秘密の場所を暴かれたようで、少
々寂しい感じがする。

トンビカラ付近に鉄塔が立つCa680mピーク

 川西から来られたという単独にいさんと声を交わす。この辺りが好きでよく歩くそうだ。
鉄塔付近の展望が良さそうなので、昼食はそこで摂ることにして、小休止の後、歩を前に
進める。想像以上に良い道だ。色づいた雑木と赤松にアセビ。所々に露岩が配され、まる
で日本庭園の趣きである。

 鉄塔付近は大きな切り開き。鉄塔直下はセメントで平たい石を固めた階段まで作られて
いる。山の姿は艶消しだが、その代わり振り返って見る眺望は素晴らしいの一言である。
先程から見えた三草山等の奥に高代寺山、妙見山、長々と伸びる五月山連山の向こうには
大阪の都心が霞んでいて、大阪ドームと思しき建物の屋根が光っている。右には六甲連山
から丹生山系。羽束山と大船山に高岳。霞んでいなければ瀬戸内海が見えそうだ。前方に
はようやく横尾山のなだらかな姿。山の姿と引き換えのこの眺望。痛し痒し。

鉄塔付近からようやく顔を出した色づく横尾山

 やや風があるので、昼食は鉄塔を過ごしたCa680mピークの頂上付近の登山道から少
し離れたテラス状の岩で摂ることにした。ここは東側に剣尾山の大きな姿が見られる。右
に点名『行者山』のピーク。眼下遥かに林道も垣間見える。

 この付近は通称『トンビカラ』と呼ばれる岩峰や露岩が多い。大きな五葉松が生えてい
るのに驚く。火の用心と書かれた関電の赤い標識が所々に立っている。下草にクマザサが
増えてくると、左手に黒い鹿よけネットが現れる。再び急斜面となるがそれも暫く。鹿ネ
ットが直角に左に曲がるのとは逆に、道は右に折れる。笹の陰に雪がまだらに残っている。
昨日の名残らしい。やや深くなったクマザサの間を行けば道の中央に二等三角点がある。

 付近は少し雑木が切り開かれていて、深山平からゴルフ場、深山山頂のドーム。多紀ア
ルプスの三岳、小金ヶ岳、西が岳が指呼である。

横尾山山頂から北方。深山と深山平

 雪が融けたのだろう、クマザサの間の踏み跡は泥濘である。暫く憩った後、来た道を引
き返し、再び、鉄塔のあるピークで眺望を堪能して山頂広場へ戻る。

 山頂広場からはサワガニ広場へのコースへ降りる事にする。「急傾斜なので、老人、子
供、自信のない方は降りないで下さい」の注意書きがあるが、やや荒れているが立ち木に
すがる程の急傾斜もない。一気に下って暫くすると沢の水音が高くなって、林道の白い路
面が近づいてくる。雑草が生い茂る中に置き去られたようにテーブルがある。谷川を飛び
石で渡ると林道に飛び出した。(逆にここから頂上広場に向かう時は取付きが少し林道か
ら引っ込んでいるので分かり難いかもしれません)

 昼食を摂った岩から見えていた鉄塔の取り付きが少し気になるので、林道を300m程
遡ってみる。すると関電の火の用心標識横から、巡視道が直登している。これを辿れば点
名『行者山』のピークに直登し、剣尾山の登山道に合流できそうである。

 元へと引き返す。砂防堰堤で堰き止められた青い池を過ぎると、右手奥に大きな岩がそ
そり立っているのが分かる。『えぼし岩』と呼ばれる岩で、不動明王が線刻されている。
弁才天と刻まれた石標があるので探したがそれらしいものは見つからなかった。

 左に剣尾山への登山道を過ごして、ぶらぶら下って駐車地へ戻る。先行車は既になかっ
た。

 紅葉には丁度いい頃加減。小春日和にも恵まれ、往く秋を惜しみつつ、錦に色づいた山
をチープに楽しめた横尾山でした。

錦織りなすという言葉がぴったりの横尾山の山腹




【タイムチャート】
10:00自宅発
11:30〜11:35キャンプ地横の道(駐車地)(Ca280m)
11:45わんぱく広場
12:02小鳥のテラス(ひと休み峠道出合)
12:20〜12:30頂上広場(Ca600mピーク)
12:45高圧鉄塔
12:47〜13:10鉄塔上部の岩のテラス(Ca680m)
13:30〜13:35横尾山(784.9m 二等三角点)
14:00〜14:02高圧鉄塔
14:11〜14:17頂上広場(Ca600mピーク)
14:33サワガニ広場
14:35林道出合(この後、うろうろ)
15:10キャンプ地横の道(駐車地)


横尾山のデータ
【所在地】大阪府豊能郡能勢町・京都府船井郡園部町
【標高】784.9m(二等三角点)
【備考】 剣尾山の北西の稜線沿いの山です。剣尾山に隠れた存在
で、静かな山歩きが楽しめましたが、最近、関電の新し
い高圧鉄塔が出来、従来の踏み跡が巡視道に昇格?した
為、遊歩道のように整備され、剣尾山から周回する人が
多くなりました。また鉄塔からの眺めは素晴らしいの一
語に尽きます。
【参考】エアリアマップ『北摂の山々』



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