久方ぶりに弥十郎ヶ岳

平成14年 6月 2日(日)
【天候】 晴れ
【同行】 単独
農文塾コース出合いの峠。日置村の石標があります


 最近は大峰や台高など遠出が多かったが、今回は一休み。そこで暫くご無沙汰の北摂を
歩くことにした。ターゲットは厳密には丹波の山だが凡そ5年ぶりの弥十郎ヶ岳。
 猪名川渓谷ラインと名付けられた県道を遡り、大野山の麓を縫って後川(しつかわ)の
ドライブインのある四つ辻から東へ。羽束川沿いに開けた籠坊は以前と変わらない風情。
5年前と同じく、茂みに隠れたテニスコートの横の路肩の広くなった辺りに車を駐める。

 川沿いに歩いて、今は廃業した旅館籠坊の前が神姫バスの「下籠坊」の停留所。案内板
と古びた赤い橋があって、これが温泉コースの取り付きである。旅館の庭園には水車と、
欄干に平成元年と書かれた小さな橋がある。石垣のサツキのピンクの花やモミジの樹が往
事を偲ばせる。

 その横から登山道がみなの沢の谷川沿いに植林の中へ吸い込まれていく。花の終わった
マムシグサに代わって、コアジサイの密集した小さな白い花が満開である。意外に香りが
強く、楠に似た芳香がした。
マムシグサに代わって満開のコアジサイ

 植林の中の道は林道ほども広い。5年前のイメージとは少々違う。少々朽ちて危なっか
しい丸木橋を渡り、幾本かの倒木を潜って暫く歩く内に、沢の合流点の倒木が折り重なっ
てやや分かり難い所に出て記憶が甦ってきた。ここを左に曲がるのだっけかな?テープが
あって、記憶が間違っていないことが分かる。道も細り、あれほど賑やかだった水音も消
えて、沢にはほとんど水が無くなり、ツツドリが近いところでポポーッポポーッと鳴き声
を上げる。コゲラのドラミングもこだまする。そうするうちに沢の源頭に出た。その上の
峠が農分塾コースコースとの四つ角で、道標と見覚えのある『日置村』の石標がある。峠
の向こう側が旧日置村で、えぐれた道の向こう側の急斜面を薄い踏み跡がジグザグに降っ
ている様であった。

 小休止の後、左に折れる。これも見覚えのあるブナかコナラのような一抱えもある大木
がある。ここからは所々植林はあるものの、概して気分の良い雑木林。うねる様に小さな
ピークを縫いながら、665mピークで西南から北に方向を変え尾根に沿っていく。そん
なピークの一つが『ハハカベ山』。「日置村」の石標と並んで「ハハカベ山」と彫られた
石標が立つ。日置に「波々伯部神社」があるので、その社域でも現すのであろうか?波々
伯部神社は平安末期、波々伯部荘が京の八坂神社の荘園に繰り入れられた際に、勧請した
もので祭神は素戔嗚尊。竹谷コースとの出会い近くには『八上山』の石標もあるが、どん
な関係があるのだろうか?

ハハカベ山の石標。奧は旧日置村の石標

 さて、ハハカベ山を過ぎると再び植林帯。幾つかのアップダウンを越えて、左側に綺麗
に湾曲し地形の植林帯を見て進むと雑木のトンネルの様な急斜面に出る。モチツツジのピ
ンクが目を楽しませてくれるのだが、それにも目もくれず、喘ぎながら登ると後川から登
ってくる竹谷林道コースとの出会いで、ここからは山頂の稜線の一部となりほぼ平坦とな
る。右(東側)が伐採されて深山のドームと笹ピークがよく眺められる。以前は全体的に
もっとブッシュだった様に思うのだが....。前方から何やら話し声が聞こえてくると思え
ばすぐに山頂であった。
花の根元が粘つくモチツツジ

 山頂には南向きに二等三角点がある。西から北にかけて、5年前より広く伐採されてい
る。あの時はここで偶々同道した小父さんと話をしたのだった。多紀アルプスの三岳、小
金ヶ岳、西ヶ岳がよく見える。西北に八上山の小さな富士型の端正な姿も見え、横長の篠
山市街も指呼である。西遠くには白髪岳や松尾山も見えているのであろうがよく分からず。
それにしてもクマバチの羽音が煩い。暫くすると先客がいなくなり、山頂は独占状態とな
ったので余計に耳につき出した。木陰に陣取り食事タイムとした。

 Tシャツを脱いで小枝に干していると、ウグイスの声に混じって「特許許可局!」の声
が耳に飛び込んできた。ホトトギスである。以前には気づかなかった畑地集落から上がっ
てくる登山道の奥から聞こえてくる様である。畑地コースも何時か行ってみたいコースで
ある。

 単独小父さんが上がってきたのを潮に、東側が眺められる山頂南の地点に居を移す。深
山が意外に近い。高岳、剣尾山。奥能勢の山々が一望である。南には大野山のパラボラア
ンテナ。縄張りを荒らされたと思っているのか、ここでもクマバチがワンワンと煩い。あ
まり邪魔だてしてもと、偶々飛んできたカラスアゲハと共に下山にかかる。

 山頂で会ったのが最後の登山者だろうか。以後誰にも会わないでスイカズラやウツギの
白い花が咲く登山口に戻った。

 ところで本日のもう一つの目的は籠坊温泉。原集落への道が分岐する角にある渓山荘。
唯一日帰り入浴が出来る旅館である。今日の男湯は一階の「瓢箪の湯」。花崗岩をくり抜
いた露天風呂でゆったりと汗を流し、R173経由で帰路につく。



【タイムチャート】
9:30自宅発
10:50〜10:55籠坊テニスコート横の路肩(駐車地)
11:00旅館籠の坊横
11:30〜11:35農文塾コース出合
11:42665mピーク
11:50〜11:52ハハカベ山石標
12:07〜12:09竹谷コース出合
12:13〜13:03弥十郎ヶ岳(715.1m 二等三角点)
13:04〜13:10山頂南側の展望地
13:17竹谷コース出合
13:32〜13:33ハハカベ山石標
13:40〜13:50農文塾コース出合
14:22旅館籠の坊横
14:27籠坊テニスコート横の路肩(駐車地)



弥十郎ヶ岳のデータ
初春の弥十郎ヶ岳』を参照下さい。
【参考】2.5万図『福住』エアリアマップ『北摂の山々』



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