霞立つヤブ山縦走〜高畑山から寺山、広照寺山

平成14年 3月10日(日)
【天候】 晴れのち曇り
【同行】 かねちゃん、佐竹さん
波豆川公民館付近から眺める寺山(左)と
広照寺山の秀麗な姿


 二週間ほど前に登った大船山。その東に気になる山稜がある。昼が岳を最高峰とする山
脈の南部で、恐竜の背を思わせるアップダウンと三角錐の山が続いている。囲炉裏村でも
話題になっていたエリアでもあり、いつか行く機会があればと考えていたのだが、かねち
ゃんや佐竹さんとのミニオフで実現することが出来た。

 10時きっかりに集合地の大舟寺の駐車場。集合は10時半。時間待ちに近くの畑のオ
オイヌノフグリやオドリコソウ等を見ていると、飛び入りの佐竹さん、そしてかねちゃん
もやってきた。

 当初の予定では香合(こうばこ)新田を出発点とし、そちらへ1台車を回す予定であっ
たが、妻恋地蔵さんのniftyへのレポートに依ると、松尾谷を北上すれば高畑峠に出
られることが分かり、急遽、コース変更。勝手知ったる仲間内。気楽なものである。

 大舟寺の門前の舗装路を北へ辿る。溝には勢いよく水が流れ、畑にはカラカラとモグラ
除けのプロペラ。やや風は冷たいが陽光はぽかぽか。もう春の匂いがする。

 多分間違ってはいないだろうが、念の為にと丁度、最寄りの農家の庭先に出てこられた
奥さんに道を確かめる。
「すみませーん。この前の道、香合新田に抜けられますかぁ?」「ええ。行けますよ。」
奥さんの肯きに意を強くして進む。

 幾つかの農家の前を抜けると、ある一軒の軒先に「昼が岳縦走路登山口 明昭登山会」
と書かれた私製案内板が打ち付けてあった。「うむうむ。ばっちりやぁ」 

 ややあって舗装路は割れ瓦を敷いた地道になり、台場クヌギの混じる雑木林の中に吸い
込まれていく。けれど、その雰囲気も古い車等の大型ゴミが捨てられていて興趣をそぐ。
何で日本人ってこうなんだろうなぁ。情けない。

 里山だけに至る所で道が分岐している。しかも太さが同じ位。右側に沢があるのでこれ
を辿れば第一目標の溜め池か峠に出るだろうととりあえず沢と平行に進む。が、植林地帯
に入った辺りの分岐で、沢を渡って右の倒木の多い荒れた道に踏み込んだのだが、すぐに
北東方向に振り出して、小さな広場のような地点に出て行き止まり。東に高畑山らしき山
腹へ直登する薄い踏み跡があるが、茨が多そうなかなりのヤブ。GPSで現在地を確かめ
る。すると、地形図の点線道から東へ100m程ずれている。突っ切ろうという意見もあ
ったが、慌てることもなし。ここは大人しく戻ることにした。

 とって返して高みに上がると明快な道がある。暫く進むと右側に案外広いうす緑色の溜
池。道はここから本格的な山道となり池の西端を縫っていく。

 池を抜けてすぐにY字路。地形図にある大磯への分岐らしい。右を採って更に進むと、
今度は五差路に出る。左はさっきよりも明快な大磯方面への道。直進は鳥飼山への登路ら
しくテープ有り。右手(東)にも赤テープがあるのでこれに従う。

 こんな山中に不似合いなと思える位よく踏み固められた道である。鳥飼山からの流れを
土橋で渡って暫くは右の小さな谷に沿う。ずんずん歩を進めると一転、道が下降気味にな
る。ようやく高畑峠に着いたらしい。左に崩れた自然石のような石仏が置かれてある。シ
キミと饅頭が供えられているところを見ると世話する人がある様子。ここも十字路になっ
ていて、鳥飼山から昼が岳への縦走路を示すらしいテープが認められる。がそれに反して
これから登る南側には、妻恋地蔵さんのレポートの通り、取付きが認められる以外何もな
い。
 
 一息入れて登り開始。すぐに狭い尾根になる。が、テープは勿論、宝塚市と三田市の市
境なのにプラ杭さえも無い。ツツジが枝を伸ばしたり、枯れた松が行く手を遮る。その中
に小さな人間一人がやっと潜り抜けられる程度の空間が空いている感じである。やがて左
手が開けて、眼下の山あいに香合新田と思しき集落が見え始めた。所々で目立つ黄色い花
アブラチャンかダンコウバイのよう。アセビも白い花穂を垂らしている。雑木林はも
う春である。
高畑山の稜線から眼下に春霞の香合新田を望む

 雑木を縫いながら登り切った最初のピークが、なんと小生と同名の高畑山と呼ばれる標
高点ピーク。そう思うと何か親近感が湧くが、惜しいことに展望皆無の雑木山。最近「エ
アリアマップに名前が記載されたらしいが、無論プレート類は一切なし。しかしそれが逆
に新鮮で、雑木の中ながら雰囲気良し。ここで食事にしても良かったが、次のCa450m
ピーク手前のザレ場の展望がよいらしいので、そこまで進むことにした。

 今度は一転して一気の激下り。滑り台の要領で分厚い落ち葉を滑るように降りる。もっ
たいなや。稼いだ高度を一気に吐き出すと、降り立った鞍部は結構広やか。かつて横断道
が有った感じがする。

 続いて次のCa450mピークに取り付く。90m程の高度差だが、エンジンがかかった
のかそれほどの辛さはない。山頂付近は南北に長く、ブッシュもやや収まって歩き良くな
る。

 赤っぽい土砂の斜面のザレ場に出る。今日のコース一番の展望。ぱっと西側の視界が開
けて大船山が大きく立ちはだかっている。左手奥には羽束山とさんしょう山。有馬富士ら
しき三角形もみえる。北には母子方面の山々もうねるが、霞がかかって視界が伸びないの
が残念。直下には大磯に向かう車道を走る車が小さい。溜め池も見えるが往路には気づか
なかった。大船山の姿と目の前のアセビを肴にここで大休止。些かシャリばて。待望の昼
食の時間。

 40分程のランチタイムを終えて午後の部。凡そ50m歩いてCa450mピークを過ぎ
る。と、前方の寺山の鋭い山容がぐんと近づいて来ている。その姿は「羽束槍」と形容し
てもいい位。「険しそうやなぁ」の声も上がる。

 踏み跡は明瞭になったり薄くなったりだが、とりあえず尾根を外さねば大丈夫。緩やか
な起伏を2つ越え、徐々に下って典型的なコルを過ぎる。がここからの登り返しは半端で
はなかった。GPSによれば三角点まで直線距離は200m。高低差は約100m。つま
り50%の傾斜である。立木に捕まって登るが、時々朽ち木が有るから油断がならない。
鉈で枝を切っただけの空間がある木々の間に身を擦り入れる感じで高度を上げる。

逆光の中、Ca450mピークから見る寺山のシルエット。
『羽束槍』と呼びたくなるような尖峰です

 登り着いた寺山の狭い頂上も雑木に囲まれ、赤白ポールと落ち葉に埋もれた三角点があ
るのみ。それでも東側が辛うじて眺めうる。薄曇りに変わった空のもと、三蔵山とその後
ろに日生ニュータウンがうっすらと。北西方向には三草山や竜王山、反射板のある丸山が
姿を見せていた。
落ち葉の絨毯に埋まる寺山の四等三角点『鳥ノ上』

 暫く憩った後は南南東方向へ下る。ここも険しい下り。相変わらずテープはない。所々
で見受けられる鉈目を目印に拾って行く。途中、人手が入って積まれたような石の重なり
がある。それを縫って少し露岩混じりの斜面を降りていけば鞍部。西へ谷筋を下るような
踏み跡があり、大舟寺に近いねぇという誘惑もあったが、この際だからそのまま尾根を辿
ろうじゃないかというわけで、やや登り返すと南西に長い広照寺山の山頂である。

 ここも展望は殆どない。葉の落ちた立木の間から寺山が望める程度なので、一息入れた
後、先を急ぐ。

 最後の下りである。ところが何処でどう間違ったのか、いつの間にやら目印の鉈目が消
え、周囲は倒木だらけのヤブ。構わずヤブの薄い箇所を探して下っていけば、植林した後、
手入れがされていない様子の痩せた杉と雑木の混交林。ザック引っ張るのは誰や?と振り
返れば木の枝。落ち葉に滑ってひっくり返るやら、茨に痛い目に遭わされるやらの悪戦苦
闘。ヤブに突入する前に尾根の突端近く迄来ていたのを幸い、どっちの方向であろうと、
後はひたすら下るのみと先を急げば、ようやく傾斜は緩んで今度は丈余の笹が出てきた。
掻き分け掻き分け進む内に行き着いたのは緩やかな植林の谷で、何となく道がありそうな
雰囲気の辺りへ向かうと予想通り林道。炭の残片も残る炭焼窯跡の横であった。フゥーッ。

 現在地をGPSで確認すると、広照寺山の東南、香合新田へ抜ける山道付近と判明。南
南東の尾根を辿るつもりが、少し東に振り過ぎたようである。北以外の三方が里なので可
能な芸当だったが、深い山ではこうはいかんなぁ。

 南へ向かうと右手の山裾に使用済みと思しき椎茸のほだ木が積んである。小さな椎茸が
顔を出していたので一寸失敬。持ち主の方、すみません。m(_ _)m

 やがて左手に離れてぽつんと一軒家の農家と池が見え、そこから間もなくで上佐曽利に
向かう県道に飛び出した。

 西に折れ、のんびり雑談モードで長閑な里を行く。映画やら本やらMLの話題等。右手
にショートカットして波豆川公民館の前に出る。この辺り、寺山と広照寺山が綺麗に仲良
く並んだアングルがある(冒頭の写真)。そこからは10分足らずで大舟寺の駐車場であ
った。

 いつの間にか空は灰色。駐車場に戻ってくるのを待ちかねたかの如くぽつぽつ来た。「
つくしの里」に寄るというかねちゃん、新車の慣らし運転をするという佐竹さんとはここ
で再会を約して別れ、今日の山行はお開きとなった。

 これだけテープもゴミもない山は初めて。お陰で若干の迷走はありはしたものの、天候
と共に少々心配した鹿駆除のハンターも幸い見受けず。陽春間近を思わせる春霞み立つ中、
誰にも会わない静かなヤブ山歩きを堪能した一日でした。同行の皆さん有り難うございま
した。


【タイムチャート】
8:50自宅発
10:00〜10:30大舟寺駐車場
11:12奧の溜池
11:18大磯分岐の五差路
11:25〜11:30高畑峠(Ca380m)
11:47〜11:49高畑山(482m)
12:20〜13:00Ca450mピーク北のザレ場(昼食)
13:05Ca450mピーク
13:20寺山北のコル(Ca390m)
13:30〜13:55寺山(492.4m 四等三角点『鳥ノ上』)
13:59寺山・広照寺山の間のコル(Ca430m)
14:01〜14:02広照寺山(Ca440m)
14:26〜14:35香合新田への林道
15:10大舟寺駐車場



高畑山のデータ
【所在地】兵庫県三田市・宝塚市
【標高】482m
寺山のデータ
【所在地】兵庫県三田市
【標高】492.4m(四等三角点)
広照寺山のデータ
【所在地】兵庫県三田市
【標高】Ca440m
【備考】 大船(舟)山塊と波豆川を隔てて相対する南北に延びる
山稜に位置し、北から高畑山、寺山、広照寺山と南北に
並びます。低山ですがアップダウンが激しく、中でも寺
山は北から見ると『羽束槍』と形容しても良い程、良い
姿をしています。但し、西の大船山に較ぶべくもないマ
イナーな山域の為、踏み跡も細くテープや道標等は一切
ありません。所々にある鉈目だけが目印なので、ヤブの
大人しい時期に行くことをお薦めします。尚、地形図と
コンパスは必携です。
【参考】2.5万図『木津』



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