ガスに煙る高星山から千町峠へ

平成14年 4月29日(月)
【天候】 小雨のち曇り
【同行】 別掲
ガスの切れ間から現れた高星山東尾根
(林道入口付近から)


 「アセビだらけよぅ」と去年から、低徘MLの島田さん御自慢の高星山。兵庫県生野町
と大河内町の町界にあるマイナーな山である。昨年もオフが開かれたのだが、なかなか良
さげというので、今回のオフにドタ参を決め込んだ。それではその一部始終をば...。

 中国道の渋滞を懸念して6時半に出発。が心配した渋滞も杞憂に終わり、一寸早過ぎる
かなと社PAで時間調整のコーヒーブレーク。

 出発時からどんよりした曇り空だったが、雲に濃淡があり、吉川では薄日も射し青空も
出て、ラジオから流れる予報も小雨はぱらつくも傘が要る程ではないとの有り難いご託宣
に気分も高まる。しかし、期待は見事に裏切られ、福崎ではフロントガラスに水滴。神崎
町に至っては路面が光り、数少ない歩く人も傘姿で、間断なくワイパーが必要になる始末。
「こりゃ、中止やなぁ」との予感が脳裏をかすめるが、ま、とりあえず行くだけはと、集
合地点の生野学園へ向かう。

 学園には集合時間の40分前に到着。流石に誰もいない。校舎へのアプローチである坂
道の中間にある広場に車を止める。小糠雨は間断なく降っている。その内に、佐竹さん、
かねちゃんと北摂組。「この雨じゃ駄目かもねぇ」と言い交わしていたが、千町峠の車デ
ポ組に電話すると、あちらはえらいガスらしい。ここから見る山々も濃いガスに中腹より
上は見えない。小生には昨年の段が峰といい今日といい、妙にガスに縁がある。(笑)

 暫くするとデポ組が到着。最後に是兼さん親子の到着で全員集合した頃、どういう訳か
雨足が衰えてきた。今回のコースは途中に岩場登りもあるとのことで滑る懸念もあったの
だが、折角だし一の岩迄でも行ってみようということで、急ぎ支度を整えることとなった。

 舗装路から山側へ向かって沢沿いに荒れた林道が延びている(地形図の実線路)。これ
が取り付きだそうだ。歩く内に左下に学園のグラウンドが見えてきて、右手に島田さんが
石仏だという石の像がある。作りかけのようで蓮弁はきっちり彫られているが、他は判然
とせず不思議な像ではある。

 車止めのゲートがあってこれを抜けると中央に大きな岩のあるやや広い河原。取水用の
黒いパイプがくねくねと延びている。岩陰にはヒメレンゲの黄色い花が見られた。ここで
沢を渡渉して右手の檜の人工林に取り付く。スミレがばらまいた様に咲いている中を登っ
ていく。山仕事の杣道らしくはっきりした踏み跡がある。

 山腹をなぞる様に辿って、やがてごろた石が転がる小さな沢の源頭を巻いて暗い檜林か
ら、一転アカマツ林の尾根に出る。丈の低いアセビの他に下草も少ない清々しい尾根だ。
下から尾根直登の手もあるが、ひどいブッシュでそれを迂回したのだと島田さん。下のグ
ラウンドも大分小さくなったが、なにせ今回は標高差700m。地形図を見ると尾根の急
登は正にこれからなのである。

 次第に踏み跡は怪しくなって、所々に現れるのは獣道。湿気を含んだ黒土、分厚い落ち
葉に足元は滑り、手にする幹は朽木。しかも気温は低めだが湿度が高く、すぐに汗が額に
浮いてきて眼鏡は曇りがち。これでかなりの消耗、息切れ。早くもシャリバテか。(^^;
目に付くヤブレガサやギンリョウソウが慰めである。

 獣道の様なヤブの薄い部分を選んで進むと岩が現れた。「一の岩?」と思えば、島田さ
ん『半の岩』だと。

 その岩を巻いて間もなく本当の『一の岩』。去年は千ヶ峰へ向かう大加茂さんがここか
ら引き返したので『加茂戻り岩?』ともいうらしい。しかも大加茂さん、下山時に迷いか
けたという。さもあろう。こりゃ島田さん以外には難路、単独じゃしんどいだろう。

 『二の岩』は岩と岩の間をすり抜ける場所もあってミニ胎内潜りの雰囲気がある。例に
よって佐竹さんは岩頭に立つ。

 『二の岩』から小さなコルを過ぎて間もなく現れるのが最大の難所『天狗岩』。岩陰で
はシャクナゲが咲いている。
天狗岩の幅50pのトラバース道にて
モデルはdameちゃん、左は断崖

 『天狗岩』は巻き道が無いという。幅50p程の棚状の部分から手懸かりが疎らな岩を
登らねばならない。雨で湿っているので内心少なからずの緊張である。大きな岩が重なり
合った頂上からは、本来ならば大絶景らしいのだが見えるのは白いガスばかり。辛うじて
50m程離れたスヌーピーの横顔に似た岩が眺められたが、白い靄に浮かび上がるミツバ
ツツジの藤紫が幻想的であった。

 慎重に岩を下り地形図の923mピークに行き着くと、傾斜は穏やかになる。高星山の
台形状の東尾根の突端にようやく乗ったわけである。この高度になると春が遅く、雑木の
芽出しは始まったばかりであるようだ。

 いつの間にかもう正午。高星山は吹き晒しらしいので、風が防げる適当な場所を探し昼
食とする。高星山までは手元のGPSで673mとあった。

見事なミツバツツジの大木(手前は島田さん)

 この辺りからアセビが目立つようになる。しかし、残念ながら殆どが散った後。とは云
え、花にも逆らう輩はいるようで、今まさに満開の大木も散見される。

 高星山はアセビの低木と枯れたシダが覆う中に綺麗な三等三角点がある。高木が皆無な
ので、ここもガスがなければ大展望が得られるのだそうだが、残念。

高星山三角点を後にするオフ参加の面々

 高星山以降、所謂「大柿さんの赤布」が現れる。今までテープらしき物が皆無だったの
で、何かと心強い。

 相変わらずガスは薄まる気配も見せない。しかし、それが幻想的な雰囲気を醸し出す。
墨絵さながらのモノクロの世界。一方、そのガスの為に歩く方向を定めるのは難しい。1
067mピークでは北東に降りかける。いくら下っても登り返しがないのでおかしいこと
に先導の島田さんが気付いたのだが、小生の手元のGPSもそちらの方向を指していた。
実は尾根がドッグレッグしており、一旦、北北西に歩いてから北東に向かうのが正解だっ
たのだ。機械はあくまで参考という典型例である。それにしても島田さんの人間GPSは
お見事でした。

ガスの中に浮かぶ孤高の木(1067mピーク手前にて)


 そこを過ぎれば広かった尾根も痩せ尾根にかわってくる為、尾根を外さぬよう歩けば問
題なし。ムシカリの白い花、シダが枯れ茶色くなったザレ場も多い。これは笠形山からも
望見出来るのだという。

満開のムシカリに思わずシャッターの
たぬきさんとdameちゃん


 平石山の三角点は広場状の山頂部分の東側、縦走路より凡そ50m隔たった辺りにある
ので分かりづらい。GPS様々。その北側は鹿遊びの場所と呼ばれるほど広闊であった。

 町界を現す赤プラ杭が適当に埋まる尾根の生野町側は雑木林。大河内町側は概ね杉の植
林。どんよりした天候とガスに植林の中はダークグレーで恐いくらいである。このような
状況で幾つかのアップダウンをこなした先のヒシロガ峰は地形図上の1042mの無名ピ
ーク。ここも展望が良さそうだが、今日は望むべくもない。

 点名『千町峠』の四等三角点は縦走路の途中にあり、直ぐに見つかった。ここから右に
鹿除けネットが現れる。暫くするとその鹿除けネットは二重となり、下に砂利の新しい林
道が見え隠れしだした。するとその時、前方で声が上がった。鹿が林道に迷い込んでパニ
ック状態なのであった。暫く右往左往していたが、試行錯誤の挙げ句、来た方向へ走り去
って行った。牡鹿なら角が絡まってにっちもさっちもいかなかったに違いないが幸い雌鹿
であった。

 そこから山荘のある千町峠へはすぐ。丁度1年前は北の段が峰からここへ降りてきたの
だった。見覚えのある山荘の周囲はまだ整備中なのか雑然としている。ところで、今回、
林道に飛び出した所には目印もなく、初めてだとこちらから取り付くのは難しそうだ。

 出発点へは林道を東方向へ生野町を目指せば早いのだが、工事中で通行止めの為、西へ
迂回することに。途中、砥峰高原、川上を経由して、島田さんの観光ガイド付き、1時間
余りのドライブで生野学園へ戻る。

 恒例、たぬきさんのコーヒータイムの間につらつら考えた。それにしてもどのような方
法でこんなルートを知るのであろうか?不思議なしまだワールドである。しかもかなりマ
ニアック。けれども推奨するだけあって人を十分満足させるだけはある。出発点に戻って
くると、漸く晴れはじめたガスに、『一の岩』が遙か上方に見えていた。(冒頭の写真)

 しまださん、コーディネイト及び先導ご苦労様でした。また、いつもながらの差し入れ、
たぬきさんそして同行の皆さん有り難うございました。



【同行】かねちゃん、是兼さん親子、佐竹さん、しまださん、たぬきさん夫妻、
    dameちゃん(50音順)

【タイムチャート】
6:30自宅発
8:20〜9:30生野学園(集合地)
9:35林道入口(Ca350m)
9:45沢渡渉地点
10:45一の岩
11:00〜11:15二の岩
11:30〜11:35天狗岩
11:55923mピーク
12:05〜12:40高星山東尾根(昼食 Ca950m
13:00〜13:10高星山(1016.4m 三等三角点)
13:41〜13:451067mピーク
14:20〜14:26平石山(1061.2m 三等三角点)
14:36古い峠
14:52〜14:551040mピーク
15:05〜15:10ヒシロガ峰(1042m)
15:20点名『千町峠』(1033.8m 四等三角点)
15:35千町峠
16:50生野学園(解散)



高星山のデータ
【所在地】兵庫県神崎郡大河内町・朝来郡生野町
【標高】1016.4m (三等三角点)
【備考】 市川の流れの西側、段が峰、千町が峰から南に続く10
00m級の山々の中の一峰です。山頂は低いアセビの木
とシダのブッシュですが、周囲の山々の大パノラマが広
がります。尚、整備された登山道や標識、テープは無く、
熟練者の同行が必要です。
平石山のデータ
【所在地】兵庫県神崎郡大河内町・朝来郡生野町
【標高】1061.2m (三等三角点)
【備考】 高星山と同じ稜線上に位置します。三角点は稜線上から
やや離れていて、雑木に囲まれ展望はありません。千町
峠から登るのが楽ですが、取付きに目印がありません。
峠から南へ向かう新しい林道の直ぐ東側の植林帯を辿り
ます。(H14/4現在)
【参考】2.5万図『長谷』『神子畑』



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