天狗岩で天狗の気分〜雲峰

平成14年 3月30日(土)
【天候】 曇り時々晴れ
【同行】 かねちゃん、
     松田さん(50音順)
昔、雨乞いの火を焚いたという天狗岩


 夜遅く帰宅して、いつもの如くメーリングリストを覗くと、掃雲峰・天狗岩へ行かない
かという、かねちゃんからの勧誘メール。てっきり雨だと思っていたのが回復するらしい。
それじゃぁと、何はともあれ締切時間が過ぎていたが、取りあえずDMを送付。幸い、了
解が出、集合時間を30分遅らせてもらって10時、能勢町天王に集合とあいなった。

 快晴との予報であったが、能勢はすっきりしない天気。能勢付近は山陰型気候と云われ
る所以である。天王に着いて車外に出てみると結構冷たい風である。ウィンドブレーカー
を持参しなかったのが悔やまれる。

 定刻15分前、見慣れたかねちゃんの車。挨拶を交わし今日のコースの品定めをしてい
ると、向こうからやってくるのは松田さんだ。思わぬ飛び入りで賑やかさが増す。

 さて、今日のコース。京都府園部町大河内に車をデポし、車1台に相乗りして天引林道
を深山の方へ向かい、地形図の336m地点付近で取り付いて、706m峰から掃雲峰を
経て天狗岩で食事。その後、掃雲峰を経てCa630m峠に戻り、北麓の園部町法京へ下る
という次第。早速、瑠璃渓沿いの県道を北に降り、車デポの後は松田さんの車に便乗して
天引林道を遡る。

 天引林道は杉林に囲まれた沢沿いの一車線の舗装路で、最初は杉の枯れ枝が散乱しやや
荒れ気味だったが、登るほどに道が良くなってくる。これを2q程遡り、大きなカーブ付
近の路肩に車を止める。辺りは鬱蒼とした杉林。沢の音が高く響く。

 準備していると何処やら遠くで銃らしき音が響いたような。鹿の駆除かなぁ?と一寸不
安になる。年の為、熊除けの鈴を出す。

 300m位歩いただろうか。前方にCa650m峰を見る辺りで「そろそろ取り付きまし
ょうか」とかねちゃん。左の結構水量のある清らかな沢を渡って杉林の中に入る。始めは
作業道があったのだがすぐに消えてしまい、仕方なく浮き石の多い細い涸れ沢沿いに登っ
ていく。やがて植林を抜けると、周囲は常緑樹が主体のヤブとなったが、下草が少なく案
外歩きよい。但し傾斜は徐々に増して、落ち葉と濡れた土、更に朽ち木が多く、危うくも
んどりをうつところであったのは一度ならず。ヤブの薄い部分を選んで息を切らせて直登
する間、時々獣道に出会う。目の前に崩壊した古い炭焼き窯。

 ややヤブの薄い所で息を整える。振り返ると北西方向が開けて多紀アルプスの三岳らし
き姿。地面にはヤブツバキの赤い花、まだくすんだ茶色をした雑木にはタムシバの白い花
がアクセント。シキミの黄色い花は可憐だが、ヒサカキの鈴なりの花はガスっぽい匂い。
里より遅い春の息吹を楽しんでいると、松田さんの無線機にタヌキさんの声が。丹後由良
ヶ岳かららしい。その20分後には和田山町移動の島田さんの声も入感。

 高さ2m位の岩を抜けると尾根に乗ったのか漸く緩斜面となる。ここで洗面器一杯程も
あるタヌキの溜め○を発見する。大きな家族なのかいやはやすごい量である。

 狭いCa650m峰に着くと南南西に堂々とした深山の北面を眺めることが出来る。一昨
年の12月のオフの舞台760m峰も谷を挟んで整った姿を見せている。ここまで来ると
今までとは雲泥の差、俄然歩き良くなった。ヤブに鉈目が入っていて、ほっと一息。12
時過ぎ、706m標高点峰到着。赤白ポールに『興山』のプレート。

Ca650m峰と「興山」の間の稜線にて

 興山から南東方向は高原状を呈し、まだ芽を吹かない芝栗やリョウブ等の雑木の天国で
ある。その中をだらだらと降りきると峠で、法京へ向けて明瞭な道と白地に赤のテープが
認められる。帰路はこれを採る予定であったので、予想以上に良い道であるのに安堵する。
尤もこれは後刻、見事に裏切られるのだが.....。

 650m峰辺りから現れ始めた能勢電車の石標に導かれていく。赤プラ杭も設置してあ
るが、なぜか擦られたような跡がある。鹿が角研ぎでもしたのだろうか?

 この辺りまでやって来ると、深山の姿がだいぶ後方に隠れるようになる。左手に急斜面
を通して法京の集落が垣間見え、右手はなだらかな斜面で、緩い尾根は徐々に高度を増し
て掃雲峰へと続いている。最後の登りをこなすと山頂だが、これが似せピーク。掃雲峰は
ここから南へ折れてまだ100m先である。雑木に囲まれこんもりした山頂には、能勢電
車の石標と赤プラ杭に山名プレート。東側に天狗岩方向を示す私製道標、南の瑠璃渓方面
からはテープが上がってきている。疎林を通して深山が望めた。

 昔、雨乞いの火を焚いたという天狗岩に向かう。緩い稜線だが、賑やかにテープがあっ
て迷うことはない。小さなピークを乗っ越して凡そ10分。前方に岩が現れた。(冒頭の
写真)想像以上にでかい。周囲が綺麗に伐採されている。中央に穴ぐらがあって、その前
に焚き火の跡。穴蔵横の岩の割れ目からはコケの間から水滴がポタリポタリと伝っている。
これが川の源流になるんだろうなぁ。とすれば桂川、即ち淀川の源流なのである。

 折り重なった岩へは材木をナイロンザイルで括った梯子で登る。赤松の横から岩の上に
立つと、眼前には大パノラマが展開する。文字通り天狗になった気分だ。眼下に大河内や
法京の集落が手に取るようで、ギザギザとした多紀アルプスの三嶽、小金が岳。美山町の
大岩山や遠く霞む長老が岳。近くに尖った胎金寺山、高山。東に愛宕山、地蔵山。半国山、
金山にポンポン山。ピラミッド型の剣尾山から横尾山の稜線や瑠璃渓の通天湖も眺められ
る。西には雑木に覆われた掃雲峰の肩から深山南の笹ピークも覗いていて、エアリアマッ
プにも360°の展望とあったが、正に掛け値なし、そのものであった。

天狗岩から眺める大河内の集落と半国山

 岩上は風が強いので小生は岩陰に隠れて食事の準備。無線組はその後も岩上で頑張り、
松田さんは隠れ里さんと交信を楽しんでいた模様である。

 食事後もひとしきり展望を楽しむ。山肌を雲の影が通り過ぎていく。見飽きぬ光景には
きりがない。何時までも居たいという去り難い思いを「えいっ」と断ち切り、掃雲峰を経
て峠へ戻ることにした。

 峠にやって来ると折良く青空が広がってきた。往路とはまた違った風情。白っぽい木肌
と青のコントラストが最高にいい。見事の一語である。流石、「京都ふるさと登山50選」
の本の表紙に選ばれたのも道理だなと感心する。しかも静寂。小鳥の囀りと我々の声のみ
なのである。北摂(正確には丹波だが)にこんな良い所があるとは。

青空に映え、素晴らしいの一語に尽きる雑木林

 ここも誠に去り難かったのだが、断を下して予定通り北側に道を採る。大正古道と呼ば
れる古い峠道らしく急斜面をジグザグに下っていく。その内、左手に流れが現れて、数m
の高さの滝も姿を見せる。その時、突然の人の気配に驚いて、ヤマドリの群れが飛び立っ
た。

 最初明快だった道が降るに従い徐々に荒れだした。近頃はとんと歩かれない廃道らしく、
植林帯でついに道は消えてしまった。所々にあったテープも無い。尤もひたすら北に向か
えば車道に出るはずなので、コンパスさえ有れば迷うことはなさそうだが、下から来ると
つい引き込まれそうな尾根もあって、登りのコースとしてこの道を使うのは少々山慣れた
人向きと思われる。

 時折現れるえぐれた道の痕跡を辿っていくと伐採地に出る。延々と鹿ネットが張り巡ら
されていたので避けながら進めば、そこは常緑低木のはびこるヤブ。それでもその薄い所
を選んでいけば、地形図にもある古い砂防堰堤が現れた。堰堤の左の端を乗り越え、ヤブ
を突っ切ると、なんと民家の裏に飛び出した。大町さんと表札にあったが、梅の古木や枝
振りの良い松によく手入れされた庭があるところを見ると、単なる農家ではなさそうであ
った。

 早くも薄紫の花をつけたショウジョウバカマに見送られて車道に出たが、さて、何処に
車を置いたのだろう。東であろうと見当をつけて10分位だろうか。ぶらぶら歩いていく
とドンピシャであった。

 帰途は掃雲峰の瑠璃渓側の取り付きを教えてもらう為、県道を瑠璃渓沿いに走る。それ
は瑠璃渓付近の案内板横にあったが、かねちゃんによれば、最初はじめじめしていてあま
り感じが良いものではないそうだ。天引林道近くの溜め池付近から登るのが一番簡単かも
知れない。

 解散後、ツクシを採り、能勢の手作り豆腐を買って帰宅する。

 想像を超える清々しい雑木の林と大パノラマを堪能した今日一日。紹介頂いたかねちゃ
ん、同道下さった松田さん、有り難うございました。



【タイムチャート】
8:00自宅発
9:25〜9:50天王交差点左(集合地)
10:10車デポ地
10:25天引林道
10:30取り付き(336m標高点付近)
11:50650mピーク
11:25〜12:00興山(706mピーク)
12:12〜12:15峠(Ca630m)
12:27偽ピーク(Ca720m)
12:30掃雲峰(723m)
12:40〜13:40天狗岩(684m)(昼食)
13:55〜13:57掃雲峰
14:08〜14:16
15:05砂防堤
15:10民家裏
15:20車デポ地



掃雲峰のデータ
【所在地】京都府船井郡園部町
【標高】723m
【備考】 瑠璃渓の北に延びる山稜の主峰です。立木の為、山頂から
の眺望はありませんが、東にある天狗岩からは360度の
大パノラマが得られます。
瑠璃渓からのコースや、天狗山、天狗岩の稜線には切り開
きと能勢電車の石標、テープ、赤プラ杭があり目印になり
ますが、今回のコースの前半、後半部にはテープはありま
せん。地形図とコンパス、軍手を用意するのが無難です。
【参考】2.5万図『埴生』 ナカニシヤ出版『京都丹波の山』



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