貴公子花紀行〜七面山、シャクナゲ回廊を往く

平成14年 5月19日(日)
【天候】 曇り一時雨
【同行】 別掲
紅が濃い満開のツクシシャクナゲ


 過ぎる5月2日にシャクナゲ求めて登った大峰は七面山。しかし幾ら今年の春が早いと
はいえ、標高千五百mの稜線は芽出し前で、シャクナゲの蕾も固いままであった。が、そ
れから一週間後に登った方によると、蕾が赤く膨らんでいるとか....。それで今回、仕切
直しのシャクナゲオフに急遽、はせ参じた次第(笑)

 水谷さんの車に便乗させて頂く。近鉄下田駅でkogaeruさん、名古屋から遠来の内田さ
んと待ち合わせた後、次の待ち合わせ場所、JR五条駅へ向かえば、皆さん早々全員集合
である。

 途中、コンビニで食料を仕入れたり等して、大塔村役場を経由し現地へ向かう。生憎、
途中から降り出した雨は、舟の川を遡行して行く間に本降りとなった。深いV字谷の対岸
の山はガスで見えない。
「こりゃぁ、中止かもなあ?」の声も聞こえてくるが、「その内上がるでー。」の声も。
兎も角、現地へ行ってから考えようといういつものお気楽パターンで進む。(^^/

 雨に濡れた木々は文字通りの滴る緑。その中にガクウツギの白い花、大きなマムシグサ
が目立つ。釣りの車もちらほら。そんな中を進んでいくと、いつしか雨も本当に小降りに
なってきたから不思議。

 林道篠原線の終点の広場に先着の車はいない。地獄谷と二木屋谷の合流地点であるが相
変わらず清冽な水が流れている。ガスは依然として濃いものの、空は雲が切れてやや明る
くなった。よし、これは回復基調と見て、このまま登山口まで行くことにする。

 この前は林道を1時間以上かかってたどり着いた登山口も今日は車で楽チン15分位。
が、到着した登山口には悪天候にもかかわらず、何と予想外にも先着の車が3台もあった。
好き者は我々以外にもいるものだ。(^^;)

 スパッツ、ザックカバーと簡単な雨装備をして最初の急登にかかる。黒土は雨を含みぬ
かるみもあって、歩き難いことこの上なし。ここで滑ろうものなら泥んこだ。比較的足場
の良い所を選んで歩く。

 先週までヤマシャクヤクが咲いていたという辺りを抜け、鈍い尾根の直登に入った頃で
ある。上から夫婦者らしい小父さん小母さん組が降りてきた。
「上は大雨やで。」
上だけ大雨ってなこともないしなぁ。多分、我々が雨の中を車で走っていた頃、尾根の上
におられたのだろうと推測。
「そうですかぁ」と受け流して先を進む。すると今度は10名位の老若のグループが降り
てきた。登山口の先行車の一行がこれで全部降りてきたのか、これ以降は誰にも出会わな
かった。

 植林帯の中、一気に300mの高低差の急登を喘ぎつつこなし、行き着いた七面尾分岐
のブナ林近く。あちらこちらに顔を出す小さな白い杖はギンリョウソウ。葉緑素のない腐
生植物は見れば見る程、不思議な姿をしている。

白いタツノオトシゴの様なギンリョウソウ
英名をインディアンパイプというそうです

 1392mピークを過ぎ、トウヒや桧の根の絡まったヤセ尾根を抜けると、そろそろ本
日のハイライトの一つ、お目当てのツクシシャクナゲの出番。と思ったら、一行から歓声。
白いガスの中からポツポツと赤い花が浮き上がるように姿を見せ始めていた。想像以上に
紅が濃い。シャクナゲは蕾から開花するに従って白くなるものだが、ここのツクシシャク
ナゲは開花しても濃いピンク色をしている。ヤセ尾根一帯にブッシュ状のシャクナゲのト
ンネルが続く。

八分咲のツクシシャクナゲ

 ここら辺りから我々の足取りは俄然落ちる。そこかしこで撮影モードでループしている
のである。
「その花よりこっちの方がええなぁ」「いや、これ枝振りええし、色濃いわ」
 それに混じるのはこれもサーモンピンクのアケボノツツジ。こちらは雨に打たれて漏斗
状の花が地上に落ちているものもある。更に五葉ツツジとも呼ばれるシロヤシオツツジ。
こちらは盛りが未だの様だ。更に進んだ所ではムシカリが星形の花びらが一面に落ちてい
る場所もある。さながら花回廊の風情に、西峰到着は予定を大幅にオーバー。「あけぼの
平」で昼食のはずが、西峰でとなってしまった。(笑)

ムシカリ。本名オオカメノキ

 時間がたてば今回もと期待したのだが、いまだガスが切れる気配はない。それでも淡い
期待を抱いて西のあけぼの平を目指す。ヒメザサの中についた鹿道を辿り、50m程降る。
前回の5月2日には枯れ木の様であった木々が黄緑色の葉を広げていて美しい。イタヤメ
イゲツ、シロヤシオ、トウヒなどの混交林である。そこを抜けると「槍の尾」と西峰をつ
なぐたおやかな「あけぼの平」なのだが....。

「あけぼの平」とガスに煙る「槍の尾」。結局、
ガスは消えませんでした

 眺望への期待が失望に変わろうとしたその時である。ガスがやや薄くなって「槍の尾」
が顔を見せた。
「よっしゃー」
が、それもほんの一瞬、十数秒後には再び白いとばりの向こう側に消え、二度と姿を現す
ことはなく、釈迦が岳の姿は勿論、東峰の大ーや中峰の雄大な姿とも相まみえることは出
来なかった。

 時折、ぼうっと霞むピンク色は「あけぼの平」に浮かぶ島の様な一群のシャクナゲであ
ろう。記念にデジカメに納める。(冒頭の写真)

 もう5分だけと、暫くガスが晴れるのを待ったが、それを吹き払う風もなく、濃くなる
ばかりで諦めて西峰に戻る。

 足許が悪いので、帰路の下りは往路以上に気を遣う。何人かは滑った様だ。かく云う小
生も二度ほど危うく尻餅をつくところであった。所々で小憩を摂りつつ稜線を戻る。

 七面尾の分岐から急斜面の植林帯を抜け出て最後のジグザグ道に出た時である。今まで
見慣れたマムシグサとはいっぷう変わったテンナンショウを見つける。仏炎苞に縦縞、し
かもその先が釣り糸の如く細く伸びている。これがウラシマソウか?だが、ウラシマソウ
なら花穂の先から「釣り糸」が延びているはずだけれど....。それにしても不思議な姿で
はある。
仏炎苞が長く延びたテンナンショウ
ウラシマソウとも違うようです。

 今回で三回目の七面山。そのことごとくにつきまとうガス。地形的にも、南からの湿っ
たガスが高い山にぶち当たって水蒸気が発生しやすいのであろう。今日も眺望は思いに任
せなかったが、代わりにシャクナゲはじめ、色々な花との出会いがあった秘境七面山。奥
深い山の霊気に再び触れた一日であった。同行の皆さん、とりわけコーディネート頂いた
水谷さんに感謝です。



【同行】
  かねちゃん、佐竹さん兄妹、のりかさん、みーとさん、内田さん、フェアレディさん、
  松田さん、水谷さん、kogaeruさん(五十音順)


【タイムチャート】
7:00自宅発
7:45〜8:10近鉄下田駅前
8:40〜8:45JR五条駅前
9:30大塔村役場
11:00〜11:15七面山登山口
11:50〜11:55稜線下の笹原
13:16〜13:50七面山西峰(昼食)
14:05〜14:25あけぼの平
14:42七面山西峰
15:25〜15:30小休止
15:45七面尾分岐
16:20七面山登山口
18:05大塔村役場



七面山のデータ
 『七面山〜大峰の秋に酔うを参照して下さい。

【参考】2.5万図『釈迦が岳』



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