春を待つ大船山のんびり山歩

平成14年 2月24日(日)
【天候】 晴れたり曇ったり
【同行】 単独
大舟寺境内から眺める大船山(中央)


 好天が続いている。しかも暖かい。家にじっとしてるのも何だからと行き先物色。何処
にしようか?近頃は北摂西部の山を徘徊することが多かったのだが、その何れの山から見
ても目立つのが大船山の三角形の姿。数年ぶりに行って見ようかと思い立つ。

 前回は西の三田市十倉からピストン。今回は東の大磯コースから。帰りは旧大舟寺の参
道を下って、ぶらっと松尾谷の大舟寺を見学するというのんびり趣向である。

 三田方面へのいいバイパスになる新しい長尾山トンネルを抜けて、宝塚市北部から三田
市へ。波豆川沿いを更に北上する。以前より道が広げられ走りよい。次第に左右から山が
迫ってくる頃、登山口のカナディアン大磯は駐車有料と聞いていたので、その手前の適当
な路肩を見つけ車を止める。

 準備していると、南からご夫婦が歩いてきた。お尋ねすると川西の方。この辺りで面白
い山はと仰るので、大岩が岳を推薦する。

 ご夫婦と話しながら歩いたらすぐにカナディアン大磯。結構大きな駐車場がある。数台、
ハイカーのらしき車も駐まっている。登山口の案内に従い左に入ると受付の小屋がある。
窓口が閉まっており、係員は不在のようだった。「ぎょぇっ?入山料千円?」アスレチッ
クの利用料だろうと解釈して、その前の舗装路を上っていく。

 ロッジやフィールドアスレチックの設備があるが、やや荒れた感じだ。建物が途切れる
と同時に舗装も途切れ、地道となる。程なく右手にミニ観音霊場が見えてくる。その横は
水子地蔵尊。赤ん坊を象徴しているのか、大きな頭の地蔵さんが沢山並んでいた。

 台場クヌギが多い。それを焼いたのであろう炭焼き窯跡を右に、水の乏しい沢を左に見
ながら幅広の道をゆるゆると登る。杉が植林されているがあまり手入れがされていないの
か、照葉樹や蔓植物が繁茂している。雨が降れば川になりそうにえぐれ、頭大の石が転が
る中を登って行けば、案外早く西の十倉との間の峠に出た。立派な道標とベンチあり。

 登路はここで南に直角に折れる。U字形に深くえぐれた道はやや歩き難いと思えば、や
っぱり上にバイパス道ができている。ヤマザクラや照葉樹の林。足下にはコナラやリョウ
ブ等の落葉樹に混じって橡だろうか大きな枯葉が混じる。

 山腹を巻いて左にゆっくりカーブして程なく、大舟寺跡からの山道と合流する峠に到着。
ここにも立派な道標。記帳の箱が置いてある。ここまで案外、楽ちん。この前来た時はも
っときつかったような....。ところが山頂への急登を忘れていた。北摂の山は頂上直下が
きついのだ。今度は右に直角に折れて山腹を直上する。葉を落とした疎林を透かしてよう
やく東南側の山々が眺められるようになり、東のCa550ピークを眺めて息を整える。す
ると頭上から話し声が降ってきた。暫くするとぞろぞろと下山する団体さんが。35名い
たそうだ。うまくタイミングがずれて良かった。(^^;(すみません)

 一気に100m程登り切ると、三田市の説明版と祠、三等三角点のある見覚えのある山
頂。祠の後ろにはシンボルのようにタムシバの木が1本。

 相変わらず展望がいい山だ。北側は茂って見えないが、東に深山、大野山、剣尾山。南
は妙見山、五月山連山、ときわ台の住宅地、千刈の湖面の向こうに中山連山と六甲山。丹
生山系の西には雄岡山、雌岡山まで眺められる。また山々の間からは大阪市街。特にOB
Pのビル街がよく見え、大阪湾も。遠くには生駒連山から葛城、金剛も淡い姿を現してい
る。しかし何といっても印象的なのは羽束山の特異な姿である。(写真)

雲間からの光線がスポットライトの様に羽束山と
さんしょう山(右)を照らす(大船山より)

 風が強くなったと思えば、北から灰色の雲。と見る間に何とアラレが降り出した。気温
は6℃。北東に見える多紀アルプスの三嶽は灰色の雲の中であった。

 ベンチで湯を沸かしカップラーメンで暖を取る。山頂で一緒になった川西の大和団地に
お住まいのご夫婦と話しながらコーヒータイム。山座同定に時間を忘れる。

 そうこうしている内に早くも1時間。流石、ふるさと兵庫50山、人気の山だけあって、
入れ替わり立ち替わりハイカーが登ってくる。そろそろ場所を明け渡して下山にかかる。

 先程の峠に戻って大舟寺旧参道へ向かう。こちらは人が少ない。200m程進むと苔む
した広場に出る。大舟寺跡である。湿気で建物の荒廃が進むので、延宝5年(1677)、
徳川家綱の御代に麓に移ったそうだ。跡形もないが円盤状の石が一つ、礎石だったのかも
知れない。

 未だ残る石垣の横をやや下ると、卒塔婆形の町石が立ち、それのみが昔参道だった事を
仄めかしている。建立は室町時代まで遡るそうだが、材質が砂岩らしく風化して判然とし
ない。その次に現れた二町石はまだしもで、錫杖らしきものを持った地蔵菩薩が線彫りさ
れているのが分かる。
大舟寺旧参道の丁石。地蔵菩薩が彫られています

 大きなケヤキの木が現れる頃には旧参道は荒れているものの徐々に広くなる。枯れた沢
からは水音も響き出す。

 左に大きなモミの木を見る辺りでは、山仕事の軽四輪も入れるほぼ平坦な道となり、薄
青い水を湛えた古い砂防堤を過ぎる。やがて小さな田圃。更に下ると民家が現れる。「こ
ちら私道、通り抜け禁止、登山道→」の小さな板。右に池を見てすぐにバス道。波豆川の
バス停はすぐそこであった。

 車では気づかなかったが、大磯までの道には石仏が点々とある。ということは昔からの
古い道と思われ、やはり銀山に関係する道なのであろうか。道端には早くもオオイヌノフ
グリが青い花をつけている。

 車に戻り、中村の集落で波豆川を渡って東に入ると式廬山大舟寺。敏達帝の頃、百済の
高僧日羅上人が開基したという古刹。元は真言宗であったが、のち、江戸時代に黄檗宗に
改宗したという。山門を抜けると大きなカヤの木が迎えてくれる。大舟寺がここへ移る前
に既にあったとかで根回り7.6m、高さ20m。3つに枝分かれしていることから『三
宝(方)のカヤ』とも呼ばれる樹齢数百年の木である。

 カヤの木を過ぎて左手に庫裏、右手に天明年間建立の珍しい茅葺きの鐘楼。デジカメに
納める。本堂左手横に祠。覗くとなんと弘法大師真筆の石というのが安置してある。旧大
舟寺の敷地で炭焼き用の石を集めていた時に発見されたとか。沙門空海と書かれてあるそ
うだが、真偽の程は定かならず。
天明年間に建てられた珍しい茅葺きの鐘楼

 本堂裏手に廻ると大きな観音像のある広場。池の横に大舟寺の裏山の鞍部へ向かうと思
しき踏み跡と何やら曰くありげな石碑があった。この山域も面白いらしい。

 戻ろうとしてふと見た足許に、フキノトウが顔を出しているのが目にとまる。春の先駆
け、これを食さずば春を迎える気がしない。今晩の酒の肴に少し戴いて帰ることにした。
(^0^)
フキノトウの雄花

 帰ろうとした途端である。「ツクシの里」が近いのを急に思い出した。まだ早いので大
丈夫だろう。その思惑通りヨモギ餅を購入して帰途につく。春らしい土産片手にぶらっと
歩いたお手軽北摂山歩の一コマでした。



【タイムチャート】
10:00自宅発
11:20〜11:25カナディアン大磯手前路肩(駐車地 Ca260m)
11:30カナディアン大磯入口
11:47十倉コース出合の鞍部(Ca410m)
11:58旧大舟寺参道出合の鞍部(Ca540m)
12:09〜13:12大舟山山頂(653.1m 三等三角点)
13:20旧大舟寺参道出合の鞍部(Ca540m)
13:23〜13:25大舟寺跡
13:51中村登山口
14:04駐車地



大舟山(大船山)のデータ
秋を探して北摂大舟山を参照下さい。
参考 エアリアマップ『北摂の山々』
2.5万図『木津』  



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