奧伊勢路は秋めいて〜大洞山・尼ヶ岳周回

 平成14年 9月22日(日)
【天候】曇り
【同行】単独
大洞山雌岳より雄岳(左)から四の峰、尼ヶ岳(右)に続く
稜線を望む。今回はここを歩きました(奧は尾高山)


 前週に登った局ヶ岳から眺めた尼ヶ岳と大洞山。その姿に、以前、曽爾高原から二本ボ
ソに登った時に、全く角度は違うのだが眼前にどっしりと優美な山容を見せていたのを思
い起こした。その頃から気になる山だったのだが、今まで何故か行きそびれていた。秋の
彼岸を迎えて漸く秋めいてきたのを幸い、二山巡りに出かけてみた。

 大洞山と尼ヶ岳は南北に連なっており、縦走するのがベストであろうが、車での単独行
ではそうも行かない。そこで地図をつらつら眺めると、二山の真ん中に倉骨峠があるのに
気づく。下太郎生でR368から峠に向かう林道(倉骨林道)が分岐しているが、Web
の情報によると舗装林道とのこと。標高も800mとずぼら山行の得意な小生にとっては
渡りに船。峠中心に周回ルートもある様だ。基点はここだぁ。(^_^)/

 いつものように針ICから。玉立で右折せずに今日は榛原へ直進。後はR368をひた
すら東へ進む。三峰山の奈良県側の登山口である神末(こうずえ)を過ぎて、道を間違う。
敷津で左折のところを右に曲がって杉平へ出てしまった。慌てて元へ戻ったが今度は林道
取付きを探してあちこち。太郎生の駐在所のお巡りさんに迄、道を尋ねてしまった。(^^;)

 お巡りさんの話によると「国道のもっと先、川沿いに神戸屋パンの看板出てる先」だと
いう。先へ進むと成る程、集落の間を抜ける道がある。路肩に注意していると、「林道倉
骨線」の古い標識が見つかった。やれやれである。

林道入口にあった標識

 道なりに進んで右に大谷に架かる橋が見えたら右折。二速に落として落葉が舞う一車線
の舗装路をうねうねと登っていく。植林帯で暗い道が雑木林で明るくなると、荒れ地が右
に広がって切り通しに出た。ここが倉骨峠。右に地道の林道が合流していて、路肩が広ま
っており、ここに駐車する。ここは尼ヶ岳と大洞山の中間点。東海自然歩道の標識がある。
どっちにするかな?思案の挙げ句、距離が長い大洞山を選択することにした。

今回の基点の倉骨峠。大洞山と尼ヶ岳の
中間点にある鞍部です

 曇り空。先週とはうって変わって寒い位だ。風が強くヒューヒューと梢を鳴らす。誰も
いない。用意をして切り通しに付けられた階段を昇って薄暗い植林帯の中に入る。直ぐに
分岐。直進は桔梗平からの東海自然歩道で帰路に使う予定。右が健脚コースと銘打たれた
大洞山縦走路である。三の峰と云われる峰の中腹を巻いて暗い人工林の中を斜めに登って
いく。暖機運転の出来ていない体には少々辛い。が、直ぐに灌木帯の尾根に出る。露岩が
現れ、雑木のトンネル状になった良く踏みならされた道を辿れば小ピーク。四の峰と呼ば
れる894mピークである。プレートが一枚、木に懸けられているが、それがなければ通
り過ぎてしまう。ピークを過ぎると、西南方向が開けて倶留尊山から二本ボソの山並が指
呼の間。遠くの鋭い山容は高見山らしい。噂に違わぬ展望である。

四の峰付近から池ノ平高原を隔てて西南方向。右から
倶留尊山、二本ボソ、古光山。遠くの尖峰は高見山

 再び人工林。抜けると右にダート林道が現れる。倉骨峠から始まっていた林道だろう。
ここからは一旦30m程降って、雄岳に登り返さねばならない。一寸厳しい約150mの
直登。途中何度も立ち止まる。好きな時に休めるから単独行は楽だ。

 漸く傾斜が緩むと周囲が明るくなった。「ん?」丸太のベンチが置いてある。プレート
には雄岳とある。手元のGPSでは雄岳はもっと先だがなぁ。GPS、マップポインタと
地形図で確かめてみる。でもやっぱりここは雄岳。「ありゃ?待てよ」原因はGPSの地
名入力ミス。雄岳と雌岳が逆だった。緯度経度は再三チェックしたのだが...。

 摩滅して分かり難いが、富士講か何かの石碑がある。今度は東方向が伐採されているの
で、大洞や広瀬の集落がよく見える。遠くは白猪山、局ヶ岳方向の山並みらしい。ベンチ
に座って一息入れる。ここも誰もいない。少し冷たい風が嫋々と吹き抜ける。南方向にこ
れから向かう頂のなだらかな雌岳。

 人工林を抜けると雑木の林。一気に鞍部へ降る。少々登り返して南東から南に方向を変
えれば、桔梗平への分岐道標がある雌岳の頂上北端である。振り返れば、雄岳が三角形を
してなかなか端麗。北に尼ヶ岳がこれも綺麗な三角形だった。

大洞山雌岳北端からトロイデ型の雄岳

 やっとここには人がいた。保護石のない三角点の横に円形の方角盤とベンチが設置され
ているが、親子3人連れと単独の若い美人。女性は名張からタクシーを飛ばしてきたとい
い、中太郎生から登ってきたそうだ。若い女性とは近頃珍しい事ではある。

 少し風が強いが展望も良いのでここで食事とした。

 ところでここでの展望は特筆物である。ほぼ360度のパノラマ。ハンググライダーの
基地だったのも頷ける。とりわけ太郎生から池ノ平高原は鳥瞰しているようである。双眼
鏡で覗けば、中学校で運動会をしているのが手に取るようであった。南東には学の洞から
三峰山。局ヶ岳は鋭鋒がよく目立っている。西には古光山から、屏風岩、高見山のシルエ
ットが印象的であった。

 あと片づけを終えて桔梗平に向かう。桔梗平というから何か広い場所を想像するが、東
海自然歩道を林道を横切っていて、ベンチと案内図が植林帯の中に置かれてあるのみ。ベ
ンチで休憩するにも少し暗くてその気にもならないので、自然歩道を先へ進む。

 これから先、自然歩道は大洞山の東の中腹を巻いて倉骨峠へ向かう。初めは植林の中の
暗い道だが、やがて雑木に被われた道となる。エアリアマップに「石畳の道」とコメント
があったが、なるほど柳生の滝坂の道を彷彿とする自然石を敷き詰めた小道である。元来
古い街道だった名残なのであろうか?涸れ沢にはゴロゴロと一抱えもある苔に被われた石
が転がっている。中には道の真ん中にでんと腰を据えた大石もある。大洞石といわれるも
ので、噴火で出来た石らしい。そういえばこの山、沢の流れをあまり見受けない。火山性
の砂礫の為に水が伏流してしまうのだろうか?

大洞山の東の中腹を辿る苔むした石畳の東海自然歩道

 湿った木陰にミカエリソウがピンクの花穂を出しているのを眺め、ついで足許に目を移
した時である。一本の枯れ枝がぞろぞろと動き出した。なんと40p位の蛇である。思わ
ず踏みつける所だった。何か出そうな気はしていたのだが・・・・。

 「水場」に着く。本当の水場は歩道から下へ降った所らしいがよく分からない。この辺
り、「足許悪し通行注意」と注意書きがあるが、修復も終わっているようでそれらしい所
はない。

 徐々に左側の稜線が低まってくる。稜線コースとの合流も近いようだ。再び植林の中に
入ると、見覚えのある道標が出てきて往路と合流。倉骨峠はそこからまもなくである。

 路肩に止まっている車が4台に増えている。小休止して水分補給。涼しいのでお茶が三
分の一も減っていない。時刻を見るとまだ1時過ぎ。エアリアを見ると尼ヶ岳迄は2時間
もあれば往復出来そう。折角ここ迄来たからにはとピストンすることにする。

 コンクリートの階段を上って、杉桧林を進む。暫くの間、左手には倉骨林道が沿う。そ
れもやがて離れて行くが、道は小さなアップダウンを繰り返しで大して登っていく雰囲気
がない。そうこうする内に一気に降り勾配となり、自然石の石段が現れた。「おいおい?
こんなに降るのぉ?」と内心呟き、登り返しを気にしながらようやく鞍部。そこが「おお
たわ」であった。ヤマザクラの木の下の十字路で、西に行けば下太郎生、東は伊勢八知に
通ずる。林道に尼ヶ岳登山道方向を示す美杉村の標識があったが、ここに通じているので
あろう。

 道はここから小さな支尾根上に乗って登り勾配となり、コンクリート擬木の階段が現れ
る。それを登り詰めて植林が途切れた辺りが「こたわ」。道標が立つ。直進が尼ヶ岳直登
コース、左は櫻峠。直登コースに入ってみたが踏み跡はブッシュ状態。ササ漕ぎもいやな
ので、迂回することにした。尼ヶ岳の西側を巻いて北側に出ると、ベンチと案内板が設置
されているスペースに出る。そこからはピラミッドの階段もかくやと思われるような、コ
ンクリート擬木の急階段が、ササの中を頂上に向かって延々と続いている。

 100mの標高差を一気に登るこの階段はきつい。歩幅に合わないので疲れが倍増する
気分。しかし振り返れば、一段登る毎に視界が広がって周囲の山々が見渡せるようになる。

 疲れる足を引きずって何とか最後の一段を登りきれば、こんもりとした草原状の山頂に
出る。青山町が設置した大きな山名板とベンチ。国土地理院の「大切にしましょう云々」
の白い棒から何故か少し離れて二等三角点。それに表面が風化した地蔵らしい石仏がある。

尼ヶ岳山頂に鎮座していた石仏

 ここも最初は誰もいなかったが、堺市からのご夫婦や3人組、和歌山から電車を乗り継
いできたという単独おじさんらが次々に登ってきて賑やかとなる。尼ヶ岳からの展望は南
半分が灌木に被われている以外は素晴らしい。目の前に尾高山。奇っ怪な「鷲の巣」は鎧
岳に良く似ている。名張、上野の市街地は霞んで判然としない。右手のゴルフ場はメナー
ド青山らしい。南は灌木を通して大洞山雄岳が大きく立ちはだかる。が、午前中より霞が
強まり、次第に視界が悪くなってくる。遮るものがないので風が強い。汗が冷えて寒い位
だ。慌ててヤッケを羽織る。

 30分もいたろうか。視界の回復も見込めず元来た階段を下りて峠へ戻る。予想した通
り、おおたわからの登り返しはやっぱり厳しかったが、3時過ぎに無事、倉骨峠に帰着。
路肩には自車以外にもう車は無かった。

 彼岸花が棚田の畦を真っ赤に彩る中、若干の渋滞に巻き込まれながら6時過ぎ帰宅。総
走行距離は285qでした。



【タイムチャート】
7:10自宅発
9:45〜9:55倉骨峠(駐車地)(Ca800m)
10:00東海自然歩道、大洞山尾根コース分岐
10:09四の峰(894m)
10:37〜10:50大洞山雄岳(1013m)
11:00〜11:03桔梗平分岐
11:05〜12:15大洞山雌岳(985.1m 三等三角点)
12:33林道出合
12:37桔梗平
13:00水場
13:10東海自然歩道、大洞山尾根コース分岐
13:15〜13:20倉骨峠
13:27大タワ
13:42東海自然歩道、尼ヶ岳分岐
13:53尼ヶ岳北西側登り口
14:00〜14:30尼ヶ岳(957.7m 二等三角点)
14:37尼ヶ岳北西側登り口
14:52大タワ
15:05倉骨峠(駐車地)(Ca800m)



大洞山のデータ
【所在地】三重県飯南郡飯高町、飯南郡飯南町
【標高】 1013m(雄岳)
985.1m(雌岳)(三等三角点)
【備考】 室生火山群に属し、池ノ平高原を隔てて倶留尊山の東に
位置する山です。雄岳、雌岳の二峰からなり、展望が極
めて良く、伊勢・伊賀・室生・台高・大峰の山々が一望
です。南に「三多気の櫻」で有名な真福院があり、また
一帯は戦国時代、北畠氏の所領でした。
■近畿百名山■関西百名山
尼ヶ岳のデータ
【所在地】三重県一志郡美杉村、名賀郡青山町
【標高】957.7m(二等三角点)
【備考】 室生火山群に属し、池ノ平高原を隔てて倶留尊山の東、
大洞山の北続きの位置します。伊賀富士と呼ばれるほ
ど円錐形の秀麗な形をしており、山頂は高木がなく、
北側は素晴らしい展望が得られます。西側を東海自然
歩道が通っています。
■近畿百名山■関西百名山
【参考】 2.5万図『倶留尊山』
エアリアマップ『赤目・倶留尊高原』



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