寒の戻りに若芽震える高岳北尾根から奥山

平成14年 3月23日(土)
【天候】 曇り時々晴れ、小雪
【同行】 別掲
奧猪名健康の郷から見る奥山(右)とCa640mピーク


 山が笑うこの季節は北摂雑木オフ。昨年は堂床山だったが、今年はハテ?。

 ところで慶佐次さん著書「北摂の山」を紐解くと、高岳の北にある三角点ピーク奥山付
近の雑木がよいとの記述がある。何かの折り、かねちゃんに耳より情報としてこの話をし
たら、既にちゃんとご存じであった。何時か行きましょうと云っていたのが、当のかねち
ゃんのお骨折りで今回オフに昇格?して存外早く実現しました。

 途中の道が混んでいて少々焦ったのだが、なんとか定刻20分前に、集合地の奥猪名健
康の郷に到着。早々と着いて談笑している参加メンバーがいる。

 定刻には全員が集合し、予定通り10時きっかりの出発。前方にもっこりとした奥山を
見ながら杉生新田に続く舗装路を行く。ウグイスの声も聞け、所々にある梅畑は白い花が
真っ盛り。時折、馥郁たる甘い香りが漂ってくる長閑な農村風景。しかし、数日前とは一
転、寒の戻りで肌寒い。灰色の雲が北西からやってきては時折、ぱらっと来る「狐の嫁入
り」。気象用語では「天泣」というそうだ。

 「この先に石仏があるから、5分程なので行ってみますか?」とのかねちゃんの誘いに
一同寄り道。左手に焼き物の窯元の建物を見て、山際に近づくと祠の中に赤い前垂れを懸
けたお地蔵さんがいた。明治8年建立とそれ程古いものではないが、風雨に耐えた古色蒼
然たる風格がある。が、その前垂れを上げてギョッとした。テントウムシが数十匹、黒い
ビーズの如くびっしり固まっているのだ。虫達にとっては、風雨を防げる絶好の越冬場所
だったようだが、突然眠りを妨げられてモゾモゾしだした。慌てて元へ戻す。

 少し後戻りして、大谷川と呼ぶ小川沿いに今日のコースへ向かおうとしている時である。
西から単独兄さんが歩いてくる。
「こんなマイナーな所へ来る物好きは、ひょっとしたら低徘のメンバかもねぇ(笑)」
冗談を言い合っていると、神仏のお引き合わせだろうか、それが現実となって驚く。なん
と矢野さんでありました。(笑)

 一層賑やかになった一行、砂防堤横の里道を進む。MTBの轍跡らしいものが残ってい
るなと思えば、実は薪となる木の枝を引きずった跡なのだとかねちゃん。「ほー」と納得
していると、その張本人?のお婆さんが道端に端座しているのにびっくり。膝元にはお婆
さんが集めたらしい枯れ木が束ねておいてある。にこやかなお婆さんに、お邪魔しますと
挨拶して通り過ぎる。

 晴れていれば最高であろうと思える、雑木ばかりの明るい広やかな谷である。足許は分
厚い落ち葉の絨毯。枝先の芽出しは下界ほどでなく、ようやく青くなった程度。アセビの
緑の葉のみ鮮やかである。その中に関電の巡視道を含め幾多の枝道が交錯している。かね
ちゃんによれば何処からでも取り付けるそうだが、今回は沢沿いに詰めていく。

 高圧電線下を東に越えた辺り、現役のような炭焼き窯がある、幕営すれば良さそうな感
じの平坦地で小休止して、再び沢沿いに辿る。ヌタ場に鹿かイノシシらしき足跡がくっき
り残っているのが印象的である。

 沢に懸かる鉄の橋(小さな沢だから、無くても何ら問題なしなのだが)を右に見て、更
に詰めていくと浅い谷が二股。右にとって沢の源頭に出、やや急になった傾斜を一気に登
ると、黒い鹿避けネットが立てられた府県界の稜線に登り着く。

 なんとまあここも想像以上の雑木林。大阪府側は植林帯だが、兵庫県側の自然のままの
姿に面々嘆声を上げる。ヤマザクラ、赤松、ツツジ、リョウブ、ヒサカキ。テープ類は皆
無だが、その代わりに鉈目が入っていて明快な踏み跡がある。時折、東や西が開けてそれ
ぞれ横尾山や大野山が顔を出す。が、残念なのは薬莢が散乱していること。マナーの悪い
ハンター、銃を持つ資格なし!!。

落ち葉の絨毯の上、清々しい雑木林を行く面々
(高岳北尾根にて)

 風が出てきたと思えば、白いものが散らつき出した。思わぬ雪。まあ雨よりは良いが。

 時折、東に横尾山が見えつ隠れつ。655mピークの約500m南付近。これより北は
ササが出て来るというので、少し早いが昼食タイムとした。

 12時、再び歩き出す。655m標高点ピークを抜けるとササが現れる。その北の鞍部
に向かっては丈の高いササだが、切り開きが出来ていて歩き難くはない。次のCa650m
ピークからは、西側に奥山のこんもりとした全貌が見渡せる。ここからみるとなかなか登
高意欲を掻き立てる山だ。山腹にある白いものは建物らしいが、あんな所に道がついてい
るのだろうか。
高岳北尾根のCa650mピークより
眺めるこんもりした奥山

 右下方に白いコンクリート道が現れた。見る間に道は峠にまで上がってきて、踏み跡を
寸断する。電柱もあって管理標識には天王と書かれている。ということは天王から上がっ
てきた林道らしい。道は真新しい赤白の高圧鉄塔の作業道でもあったらしく、鉄塔への分
岐もある。

 ここから暫くこの舗装道を行くが、やがて右に降りていくのに別れを告げて、左側の植
林尾根に乗る。608m標高点ピークを過ぎる辺りは踏み跡が薄く、直進してしまいそう
でやや分かり難い。ここは鈍い尾根沿いに右に振って植林の中を暫く降りていくと、1m
幅の明瞭な山道が現れた。天王と杉生新田を結ぶ山道で、地蔵石仏の立っていた道を詰め
ればここへ出るという。200m程西へ歩くと典型的な峠に出た。地名の記述が無い矢印
のみの手製道標が有る。小休止。

 奥山は目の前の高み。取り付きにはテープも何もないが、どこからでも登ればいいそう
だ。雑木の少ない歩き良さそうな所を縫って歩くことにする。

 登る内に、左手にレンタルトイレのような建造物があるのに気づく。覗くと驚いたこと
に本物のトイレ。更に左の山陰には手作りと思われる小さな別荘。さっきCa650mピー
クから見えた建物だ。トイレはこの別荘のものらしい。車で入れるような道がないのでこ
こまで作り上げるのは大変だった事だろう。だが、弥十郎が岳を眺められるデッキテラス
は気持ちよさそうである。

 別荘付近からは赤テープと府県境を示す赤プラ杭が現れるが、傾斜は急。ぜいぜい息を
切らせて登る間に、北側にまだ枯葉色の弥十郎が岳と丈山が更に大きく姿を見せる。時々
振り返っては息を整えていく内に漸く山頂、と思いきや三角点はまだ150m程先である。
しかし、ほぼ平坦となって雑木の中をルンルン気分で歩ける。やがて小広い山頂に到着。

 角が欠けた旧漢字の三等三角点が埋まる。三等にしてはやや大きいなと思ったら、明治
28年の埋標だとか。

明治28年埋標の奥山の三角点『杉生』
上には小生のGPS

 記念撮影の後、泉郷峠へは山頂からやや北に向かった後、尾根を西に歩く。暫く進むと
なんとこんな所からと思えるような西の急斜面からピンクのテープが上がってきている。
以後、このテープは泉郷峠まで続く。

 西斜面が伐採された辺りからは、奥猪名健康の郷の建物や、駐車場の車、県道がよく見
える。視線上げれば、大野山の左には六甲山や大峰山、寺山が眺められる。この伐採地か
ら直降すれば里はすぐと思えたが、斜面が赤紫にグラデーションされているのはどうもイ
バラの茎らしく、その植生密度からするときっと難渋するに違いない。

 ほぼ水平の稜線も636mピークを過ぎると一気の下りになる。雑木の中にピンクのテ
ープとペンキ。一寸見苦しいかも。イバラやタラノキも多いので茂ると歩き難そうだが、
今は幸いヤブが一番大人しい時。思ったほど難渋せず歩くことが出来た。が、朽ち木は厄
介。体を支えようとした途端、重力の法則に従うことになるから要注意だ。その朽ち木に
避けつつ、木の間越しに籠坊の集落を見ながらの急降下はあっという間に泉郷峠に飛び出
したのだった。

 峠で再び記念撮影して車道をてくてく南へ下ること約30分。その間もあちこちでワイ
ワイと雑談モードの花が咲く。今歩いてきた稜線を眺め、余韻に浸りながら泉郷峠と杉生
新田の分岐に戻れば駐車場は直ぐでありました。

 流石、かねちゃん推奨の尾根道ではある。想像以上の清々しさ。丹念に下見頂いたかね
ちゃんはじめ、参加のメンバーの皆さん、お疲れさまでした。



【同行】織田さん、かねちゃん、佐竹さん、しまださん、松田さん、矢野さん、
    やまぼうしさん、F代さん(50音順)

【タイムチャート】
8:20自宅発
9:40〜10:00奧猪名健康の郷駐車場
10:25地蔵の石仏
10:30大谷川砂防堰堤
10:40炭焼窯跡
11:05高岳北の尾根
11:25〜12:00655mピークの南(昼食)
12:05655mピーク
12:10655mピーク北の笹のコル(Ca610m)
12:25コンクリートの林道
12:35608mピーク
12:48〜12:52杉生新田と天王を結ぶ峠(Ca550m)
13:10〜13:25奥山(654.8m 三等三角点『杉生』)
13:35〜13:40Ca640mピーク
13:43636mピーク
14:04泉郷峠
14:30奧猪名健康の郷駐車場



奧山のデータ
【所在地】兵庫県川辺郡猪名川町・大阪府豊能郡能勢町
【標高】654.8m(三等三角点)
【備考】 高岳の北尾根から西に派生する尾根の主峰です。植林が
少なく殆ど雑木の里山で、芽出しの頃や晩秋、初冬の頃
に歩くのがお薦めです。テープが少なくヤブもあるので、
地形図とコンパス、軍手を用意するのが無難です。
【参考】2.5万図『福住』



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