三輪山〜ご神体に登る

平成14年 5月 6日(月)
【天候】 晴れ
【同行】 単独
箸墓近くから眺める三輪山


 大阪方面から西名阪や竹内街道で、生駒から葛城金剛に連なる山稜を越えて大和盆地に
入ると、東の方、大和高原の南に優美な姿の山が目に付く。三輪山である。それ自体が大
和一之宮、大神神社のご神体であり、神の依り代、神南備山である。それだからてっきり
立入禁止だと思っていたら、飲食、写真撮影禁止、3時間以内に戻ってこなければならな
い等というような制限は勿論、あるものの、許可が有れば登れるのだという。

 以前、北側の竜王山に登って三輪山を眺めた事がある。台風一過で夥しい立木が倒れて
いる様に見えた記憶があるが、今はどうなっているのだろう。加えて一度、神南備山に登
りたかったこともあり、この機会を得て登ってきた。

 西名阪道の天理ICから山の辺の道沿いに南下する。こんもりと木が茂っているのはほ
とんど古墳。その中でも女性自身を簪で突いて死んだという倭迹迹日百襲姫の墳墓とも卑
弥呼の墓ともいう最も巨大な箸墓を左に見て、そうめんの里を抜けると桜井市三輪。大神
神社の高さ30mの超巨大な鳥居を潜って、大神神社の参拝者駐車場をお借りする。

大神神社の高さ30mもの巨大な鳥居。背景は音羽山

 松並木が続き、門前町の雰囲気を残した参道を山際に歩く。良い匂いがしていると思っ
たら揚げたてコロッケを売る店だった。もう昼でそろそろ腹の虫も鳴きだしたこともあっ
て、つい手をだしてしまった。(^^;)

 二の鳥居を抜ければいよいよ社叢に囲まれた参道となる。流石、大和一之宮、多くの摂
社が祀られている。左手に祓戸社。取りあえずここで身を浄めるんだとか。次に夫婦岩。
昔、長寿を誇った翁と媼が住んでいた場所だという。名残の石二つ。夫婦円満に御利益が
あるという。小生も拝んでおかねば...。(^^;

 広場を過ぎ、石の階段を登れば拝殿である。神社にはふつう本殿があるが、大神神社は
三輪山自体がご神体である為、本殿がないのである。主神は大物主神で国作りの神とか。
脇神は大己貴神と少彦名神。拝殿右手には『巳の神杉』。大物主神の化身の蛇神が棲むと
いい、酒と卵が供えてある。

 折良く宝物館が開館していたので入館してみる。三輪山の祭祀遺跡から出土した須恵器
や神宮寺の仏像、明治天皇のフロックコートなどもあって面白かった。

 三輪山登山口のある大神神社の摂社狭井神社の参道は宝物館のある広場の向かい。その
前に昼食だ。休憩所が目の前にある。その場所を借りて、腹拵えさせて戴くことにした。
折良く館内のビデオは、御神花ササユリが馥郁と香る率川神社の『三枝祭』の模様。6月
17日のことだという。

 狭井神社の参道はまたの名を「久すり道」と呼ぶ。左右に薬草、薬木が植えられている。
その中にササユリ。蕾はまだだが30p程度に背が伸びていた。

 狭井神社の社務所の若い神主さん。お神籤や種々のグッズの販売に忙しい様である。頃
合いを見計らって三輪山のことを尋ねる。教えられたのはおおよそ次の通り。原則、立入
禁止だが希望があれば許可していること。火気、飲食は厳禁。登山道以外立入らぬこと。
三時間以内に戻ること、等々。山の保護の名目で志納料300円を払い、「三輪山参拝所」
と染め抜かれた襷を借りて出発。その前に神前に置かれた白い御幣で指示された通り自ら
体を浄める。
狭井神社の社務所向かいにある三輪山登山口

 社務所の向かいの階段道を登るとすぐに林道といっても良い程広い道に出る。所々にモ
チツツジが薄紫の花を開いている。有刺鉄線の柵が右側に続くが、暫くして登山道は尾根
を離れ谷へ降っていく。やっと山道らしくなった道は丸木橋を渡って沢沿いに続くが、杉
や常緑樹の為やや薄暗い。立ち止まって地形図を広げたが、どうもこの道は地形図の点線
路では無いようだった。

 前方に参籠所の建物が現れた。沢音がかまびすしいので覗いて見ると行をする為の小さ
な滝がある。ここからは谷と別れて急な山腹をジグザグに上がっていく。すぐに尾根に出
るが、まもなく岩座の跡らしく、注連縄で囲われた石が転がった場所が現れる。そこを抜
けると右の日当たりの良い斜面にはクサイチゴの赤い実が鈴なりである。一粒つまむとな
かなか甘い。帰りに一寸戴いていくことにする。

 一本調子の登りに些か辟易する頃、振り返れば藤原京のあった辺りが一望できるように
なる。大鳥居や大和三山の向こうには葛城、金剛、二上の山並みが認められる。南は大き
な音羽山系から多武峰。

 やがて、傾斜が緩んで大きな木もなくなり、スミレが咲く中を上がっていけば可愛い神
社が現れる。摂社高宮神社で祭神は日向御子神とある。だが三角点はここではない。神社
裏手から奥、東へ20m程入った茂みの中である。GPSが無ければ少々手こずる位置で
ある。綺麗な三等三角点に山名プレートが3枚とヤマザクラ。

 更に道なりに東へ辿るとここにも岩座跡らしい祭祀場所跡がある。ここも注連縄で囲わ
れ、直径1m位の大きな石がゴロゴロと転がっている。その注連縄に沿って踏み跡がある
ので辿ってみるとまもなく下り。巻向山か三輪山の南麓に降りていくようだった。

 神社前に戻って一服。雑木が成長して眺望は思いに任せないが、北の方には竜王山。麓
にはシャープの研究所。更に向こうには若草山と東大寺大仏殿と思しき建物まで伺える。

 30分ほど山頂に留まって下山とした。途中でクサイチゴの実を戴き社務所に戻ると、
御神水が湧いている所があるというので、奥の人だかりへ向かう。

 何だか少し騒がしい。見ると石垣を全長1mは越える大きなアオダイショウが供物の卵
を飲み込んで登っていく最中であった。更に石垣の間に別のアオダイショウの眼がヌメっ
と光っている。手を合わせているおばさん曰く、こんな事は珍しいのだという。これも何
かの縁であろう。

 御神水で喉を潤して、帰りは柿畑の丘につけられた遊歩道を登って展望地に出る。ここ
も西から南にかけて大和盆地が一望、東には三輪山の姿がある風光明媚な場所である。

久延彦神社横の展望台から眺める大和盆地
左から金剛、葛城、右に二上の山並みの手前は
左から畝傍山と耳成山

 そこから、竹林が茂る中を久延彦社、若宮社と寄り道して、山の辺の道を少し散策し参
道へと戻る。

 瓶詰めのニッキ水を売る茶店。隣の露店の小母さんと立ち話の小父さん。初夏を思わせ
る連休最後の日の昼下がりの長閑な風景。時間がゆったり流れる久々の大和の山でした。

「三輪山をしかも隠すか雲だにも情あらなも隠さふべしや」 額田王



【タイムチャート】
10:30自宅発
11:50〜11:55大神神社駐車場
12:00〜12:38大神神社境内
12:40狭井神社参道入口
12:54登山口(狭井神社受付前)
13:10行場
13:40〜14:15三輪山(467.1m 三等三角点)
14:55登山口(狭井神社受付前)
15:30大神神社駐車場



三輪山のデータ
【所在地】奈良県桜井市
【標高】467.1m(三等三角点)
【備考】 奈良盆地の東南端に優美な円錐の姿が目立つ山です。日
本最古の神社といわれる大神(おおみわ)神社のご神体
の山で神南備山、三諸山(みもろやま)とも云われます。
その為、大神神社には本殿が無く拝殿しかありません。
近鉄桜井駅からバス、JR桜井線三輪駅からすぐです。
■関西百名山
【参考】2.5万図『桜井』



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