ホトトギス啼く里山徘徊〜杤原めぐみの森

平成14年 6月 9日(日)
【天候】 晴れ
【同行】 単独
『杤原めぐみの森』の案内標識


 この3月に猪名川町北部の高岳北尾根から奥山を歩くオフがあった際に車を走らせてい
て気づいたのだが、猪名川町の道の駅から県道を暫く北上した栃原付近に『杤原めぐみの
森』という案内板が出ている。この辺りで最近盛んになっている里山整備の一環だろうか
とその時から一寸気になっていた。そして弥十郎ヶ岳への道すがらもやっぱり目に飛び込
んできた。試しに地形図『木津』を広げてみると、その近辺に2つ3つ三角点もある。今
日はこれといった予定も無い。遊歩道を散歩しながらお気楽里山山歩に行くかというわけ
で出かける準備。

 とその前にGoogleで情報収集してみる。するとなんとエビちゃんが猪名川町杉生
の愛宕山の帰路に歩いた山域でありました。神出鬼没の低徘派恐るべし。(笑)

 栃原のバス停付近に無人の野菜売場のある駐車場があった。そこから案内板に従って北
に向かう舗装路に入る。
 集落の中の村道の様な舗装路を抜けていくと、突き当たりの四つ辻。道標が立っていて
右側を示す。駐車場という看板も立っているがそれらしき広場がない。一寸不思議。

 林道に変わった道は関電の巡視道への取り付きも兼ねている様。アザミが赤紫の花を風
に揺らせている。先端に2p程の藤紫の花を冠の如くつけているのはウツボ草だろうか。
所々にはトチノキの大きな葉。思いの外、近くでウグイスに混じってホトトギスの特徴の
ある鳴き声が響く。あのウグイスに託卵しているのかなぁ。

 しかし暑い。時折ムーッとする草いきれ。一瞬、数年前、或る所で暑さに敗退した事が
頭をよぎったけれど、すぐに桧林となって日光の直射が免れたのと、空気が乾燥している
ので助かる。

 ゆるゆるとした登り勾配、右に溜め池を見て間もなく「めぐみの森」の案内板。総面積
20ha。健脚コースというのがあったのでそのコースで周回することにする。

 案内板からほんの数十mで炭焼き窯のある通称『ジャライバ』。昔、子供達が遊び場に
していたという明るい小さな広場である。左手には東屋もある。春先はコバノミツバツツ
ジ、更にモチツツジが彩る場所だという。

 炭焼き窯と東屋の間に登り道がある。一気に尾根に出るコースらしい。急斜面にジグザ
グにつけられた丸木階段を上がる。結構きつい登りだ。赤松が多く秋はマツタケ山になる
のだろう。そういえば立入禁止と書かれた白いテープがあった。

 やがて現れたゴロゴロと小さな岩が転がる間を登って、息が上がってくる頃、上方にベ
ンチが見えてきてそこに先着の単独兄さん。乾かしていたらしいシャツを着ている様子で
あったが、こちらがそこへ到着した時には入れ替わる様にもう姿はなかった。

 ところで、このベンチでは思いもかけぬ展望が待っていた。ザックをおろし視線を上げ
ると、青空の下、なんと五月山の稜線の向こうに大阪市街のビル群。更に向こうには二上
山と金剛葛城の山並み。その奥には大峰の前衛峰まで見渡せるではないか。近くでは三角
おむすびの形をした三蔵山や北摂の大峰山の山塊。涼しい風に汗を拭いつつ、しばし小休
止である。
ベンチのある尾根の展望地から南方向。五月山、
大阪市街のビル群の向こうに金剛山と大峰前衛も

 ここまで来ると尾根に乗った様で、一気に傾斜は緩み松林の中の道。テープ類はほとん
ど無いが、赤白の金属杭と切り開きを辿ればよい。右に平井尾根コースを分けて尾根沿い
に進めば道標と、木のテーブルのある峰池の畔に出る。

 峰池は沢に水が溜まった様に南北に細長いが、山の上にしては結構大きな池で、解説板
によれば水面に浮かんでいる水草はジュンサイだそうだ。時折、ウシガエルの声。

 「クラガリ」は池の向こうに見え隠れしている高みの様だ。このまま池の左の稜線を辿
るか、右から行くか。とりあえず左から。少しの間、踏み跡は薄かったが、すぐに整備さ
れた道に出くわした。池の左側の稜線を真っ直ぐ歩いて、池の北側に出る。更に沢の源頭
付近まで来ると、右に道が分岐する。高みは右(東)なので先程の道から分かれて東へ進
む。松の枯葉が積もった緩いアップダウンを繰り返す踏み跡を進むと、左にザレ場が現れ
て北の方角を見晴るかす場所に出る。愛宕山が見えているのだろうが定かでない。

 雑木の間を縫う如く辿る。前方に忽然と道標が現れ、横に測量用のポール。付近に落ち
葉に埋もれて綺麗な四等三角点が見つかった。が見事なほどに展望はない。でもその分静
かで、鳥の囀り以外は聞こえない。水分補給後、道標に従い峰池へ戻ることにしたが、こ
の道は峰池の東岸の道で、往路よりもあっけなく先程のテーブルのある峰池の畔から下に
見えていた場所に出た。ここにも道標があって、「最高点まで0.3q」の表示。こっち
を選択した方が分かり易かったかも....。バシャッと何かが水に飛び込む音。ウシガエル
に違いない。

 続いて『森の舞台』へ廻る。一旦戻る様に尾根を登り返す。流石、里山だけにあちらこ
ちらと踏み跡が錯綜している。高低差が少なく、のっぺりしてこれといった特徴のない地
形なので、道標が無ければ迷いそうだ。読図の練習にはいい山かも知れない。

 『森の舞台』は2,3の小さな沢が集まってきた様な盆地状の平坦な場所。コナラ、ア
ベマキが生えていて、テーブルが幾つか置かれてあった。

 ここから『森の玄関』へは、やや湿った谷筋を降ることになる。押部谷池への分岐を過
ごした林道終点が『森の玄関』であった。簡易トイレと車数台が置けるスペースがある。
 ときたま足許でカサコソいうのに「スワっ!蛇か?」とドキッとして目を凝らすとトカ
ゲ。本物の蛇はシマヘビ1匹だけでした。(^^;)

 少々長い林道歩きになるかな?と懸念していたが、そうでもなくて30分程で出発点の
『ジャライバ』に戻ってこれた。東屋で一寸遅い昼食とした。

 昼下がり。初夏を思わせる陽光に照らされて林道を元来た方へ。土手にワラビが顔を出
していたのでお裾分けを頂く。タラノキもあって、秋のマツタケといい、薪といい、山の
恵みを随分受けていたのだなぁとあらためて思う。

 栃原の農家は池田の細河あたりと同じように、植木を扱う農家も多いらしく、畑に植木
が植わっている。マキにモミジに五葉松。芳香のするキササゲの花。農家の飼い犬のスピ
ッツに吠えられながら車道に戻る。駐車場に止まっていた1台の車が無くなっていた。さ
っきの単独兄さんだろうか。途中、猪名川ふるさと館に立寄って帰途につく。


『杤原めぐみの森』案内図(パンフレットより)


【タイムチャート】
10:15自宅発
11:12〜11:20栃原の県道沿いの駐車場(Ca150m)
11:40ジャライバ(Ca250m)
11:54〜11:59ベンチのある尾根の展望地(Ca370m)
12:05峰池
12:15〜12:18くらがり山(点名『笹尾』431.8m 四等三角点)
12:22峰池の東の分岐
12:25〜12:26『森の舞台』
12:35『森の玄関』
12:49〜13:20ジャライバ(昼食)
13:50栃原の県道沿いの駐車場



くらがり山のデータ
【所在地】兵庫県川辺郡猪名川町
【標高】431.8m (点名『笹尾』 四等三角点)
【備考】 堂床山の東南方向にあるマイナーなピークです。雑木に
覆われ展望もありませんが、南麓に「杤原めぐみの森」
が整備された為、登り易くなりました。「めぐみの森」
は里山を整備した人と自然の触れあう場所として整備さ
れましたが、必要以上の手が入っておらず、低山徘徊が
楽しめます。
【参考】2.5万図『木津』



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