初秋に歩くまたに山から千ヶ峰

 平成14年 9月 8日(日)
【天候】曇りのち時々晴れ
【同行】大加茂さん、松田さん
    みーとさん(五十音順)
穂を出したススキがきれいな千ヶ峰山頂からマタニ山
左の肩に加美アルプスが覗く


 週末が来たのに、最近の悪弊またまた行き先を決められない小生。何か手懸かりはと電
子掲示板を覗くと、大加茂さんとみーとさんが深谷(またに)山から千ヶ峰を歩くとの書
き込みが。これは朗報。ご迷惑ながら(笑)ご一緒させてもらうことにする。

 加美町からの千ヶ峰への代表的な登路は三谷コースと市原峠コース。今回は市原峠から
深谷山と千ヶ峰を両方ピストンすることになる。小生にとって千ヶ峰は3度目だが、市原
峠コースは初めて。粗々の事はチャットで決めたのだが、このチャットという機能、すぐ
レスポンスが還ってきて、こりゃ便利だぁ。(^^)/

 明けて日曜日。中国道を西へ走っていると、前夜の予報に反して丹波方面には一面、黒
灰色の雲。とうとう吉川付近では激しい雨となった。が総体的には天候は回復基調で、社
PA迄来ると、路面も乾いていて空も明るい。山々はガスっているが何とかいけそうだ。

 待ち合わせ場所としたR427の市原峠への分岐点は、三谷への分岐から暫く北上した
辺り。角が杉原谷郵便局で、その裏が駐車場である。まだ9時半前。車を降りてザックの
準備をしだした途端、申し合わせたように大加茂さんとみーとさんの同乗した車がやって
きた。

 大加茂さんが電子掲示板を確かめる。ドタ参の可能性のあったえびたさんは宝塚との書
き込み。かわって早朝、三谷から千ヶ峰へ登った松田さんが、もう市原峠で待っていると
いうので、少々早いが9時半、集合場所を出発することにした。

 市原の集落を抜けて山懐に入る。ここも三谷コースに似て川沿いが公園になっている。
右に何某とかいう窯の設備を見て、よく手入れされた植林帯をつづら坂に登って行く。気
持ちの良い舗装路は林道というよりこれはもう立派に国道か県道だ。もっともガードレー
ルは殆ど無いが....。

 何時の間にやら民家の屋根は遙か下に。舗装が途切れて砂利道になった所に数台の駐車
スペースがあって、松田さんの姿が見えた。もう少し上の林道工事の現場周辺にも駐車ス
ペースがあるとのことなので、そこまで車で登ることにした。

 支度していると、一台の軽がやってきた。なんと大加茂さんのお知り合い「千ヶ峰同好
会」の会長さんのTさんであった。何でも今日は登山道の手入れだとか。前回、三谷コー
スで愛好会のOさんとご一緒した話などして名刺まで頂く。

 歩き始めて間もなく、工事中の林道を100m程進んだ山の斜面に二本の自然杉がある。
その下の石積みの祠には赤い前垂れをつけた地蔵さんの石仏。峠を越える旧道に置かれ
ていたものだろう。それも林道で様変わりだ。登山口はその祠横。三峰山の月出登山口に
よく似た雰囲気である。大きな石混じりの登山道はジグザグに急斜面を登っていく。杉木
立の下、マツカゼソウが白い花をつけている。

 植林帯を一気に登り切って、周囲が雰囲気のいい雑木林に変わるとすぐに市原峠。昔は
茶店でもあった様な雰囲気がある。ここは尾根上の縦走路と交差していて、直進すると神
崎町、南に向かえば千ヶ峰、北へ往けば深谷山から加美アルプス。「またに山まで30分、
千ヶ峰の眺望が良い」とある。一服して北のまたに(深谷)山を目指すことにする。

市原峠。見えるのは千ヶ峰への登山路

 ここからは概して西の神崎町側は植林で暗いが、道は加美町側の稜線のやや下を通って
いて丈の低い灌木の生えた明るい道である。ふと目をやった先にやけに背が低いがヤマジ
ノホトトギスの花。ススキもえび茶の穂を出している。連日の暑さの中にも季節は着実に
移ろい始めているようだ。
雑木林の中、またに山へ向かう

 809mピークを過ぎる。東側の杉原谷を隔てた篠ヶ峰や大井戸山、妙見山の上部には
ガスが懸かっているが、雲の隙間から青空も顔を出してきて、もう雨の心配はなさそうだ。
道は小さなアップダウンを繰り返しながら、徐々に高度を上げていく。アセビや赤松、リ
ョウブ等のトンネルを潜り、879mピークからやや左に振って進むと、再び明るい場所
に出る。ようやく前方に深谷山らしき姿が現れる。殆ど平坦になった道を再び低木帯の中
に入って抜け出ると、左手に展望地があると大加茂さん。頂上がガスッた千ヶ峰がほんに
大きい。
またに山山頂南の展望地からガスから顔を出した千ヶ峰

 三角点はそこから100m程先なので向かおうとした矢先である。右手の茂みから「ウ
ゥ−」と何やら唸り声がした。小生だけの空耳かと思えば、メンバー全員が聞いたという。
「熊かぁ?」「鹿じゃないやねぇ」正体不明だけに気持ち悪い。まあこれだけの人数がい
るから安心だが、正体が不明なのは何だか気持ち悪し。それからやや声高になったのと、
熊鈴を余計に鳴らすようになったのは云うまでもない。(^^;)

 またに山の三角点付近は平坦な台地で眺望絶佳とは行かないが、加美アルプスが意外に
近くで白い岩肌を見せているのが印象的である。我々以外には誰もいない。涼風が吹き抜
ける静かな雰囲気に、昼寝でもしていたい感じだが、未だ11時で昼食時間にも些か早い。
暫く憩った後、千ヶ峰へ向かうことにした。

 市原峠へ下る手前で、さっきの会長さんが登山道の手入れをされている。そういえば深
谷山でも道の周囲が刈られていたっけ。それがあるから安心して歩けるのだが、日々の手
入れはさぞや大変なことだろう。感謝です。

 市原峠へ戻る。道標を見ると、千ヶ峰までは1980m60分とある。到着予定は12
時半と踏んで再び歩き出す。

 千ヶ峰へは幅広の道。丁度、八ヶ峰の五波峠からの登山道に似ている。道端で3,4才
の女の子を連れたお父さんがランチタイム。小生宅の三女はもうお菓子でつってもついて
こない。羨ましい限りだ。

 展望岩を教えてもらって先端付近へ出てみる。大井戸山や妙見山、杉原付近が一望に見
渡せる。しかし林道工事は赤い地肌が剥き出しで痛々しい限りである。それを知ってか知
らぬか、ギボウシの白い花が崖下に咲いていた。

 こちらも神崎町側は昼なお暗い植林帯であるが、東の加美町側は開けているので明るい。
越智第2小学校の児童が設置した道標が点々とある。あと600mとの道標を過ごすと、
右に緩やかにカーブした先に千ヶ峰のなかなか鋭い姿が目の前に現れる。急登をこなした
先の平坦路から再び急登の二段構えに「ええっ?まだあんなにぃ?しんどそうやぁ」と手
抜き登山が多い小生は思わずため息。と同時にどっと汗が噴き出した。

Ca900m付近から千ヶ峰山頂を望む。ススキ
がおいでおいでするが、まだあんな上やぁ

 こんな時に限って日が射し、風も止まる。拭うしりからの汗。日頃の鍛錬の違いか、鴨
肉コンビは颯々と登っていく。「待ってくれーぃ」

 こうなると周囲の景色も目に入らない。顎を出しながら這々のていでやっとの思いで山
頂である。深谷山とはうって変わって盛況の山頂。3、40名の団体が上がってきている
のだった。三角点横の南無妙法蓮華経の碑の周りはいつものように千ヶ峰愛好会の方達で
ある。

 我々一同、取りあえず三角点の南側の空きスペースを見つけ待望の昼食。隣で松田さん
は無線に忙しい。こちらは海苔巻きを頬張りながら展望を楽しむ。圧巻だったのは眼下は
るか越智谷を隔てた向こう側の山裾に懸かっている滝。双眼鏡で覗くと水が落ちる様がよ
く分かる。今にも水音が聞こえてくるようだ。南から西にかけては笠形山に白岩山。ピラ
ミッド型の山は雪彦山だろうか?段が峰方面は霞んでいる。東には山南町の至山が見える
ではないか。製紙工場の煙突も。とすると石金山はあれかと懐かしい。遠くに目立つのは
西光寺山。山また山の世界である。

 昼食を終わってそろそろ下山にかかり、山頂北側へ向かった時である。足許に鮮やかな
山吹色の目立つ花に気づく。図鑑で調べるとキンバイソウとあった。近畿では珍しい花だ
とか。一輪だけに不思議な感じがした。

 三谷の登山口に車を置いている松田さんとはここでお別れ。我々は北に向かって千ヶ峰
を振り返り振り返り、後にする。帰りは下り基調で余裕がある。右前方に展開する眺望を
愉しみながら歩けば、市原峠はすぐであった。

 杉桧林を降りる。登山口から数m隔たった辺りにある「地蔵さんの水」。枯れたことの
ないという地下からの湧き水でまず顔を洗い、さらに渇いた喉を潤す。冷たい清冽な水は
旨い。周囲で群れ咲くマツカゼソウのカスミソウに似た白い花が風に揺れていた。

 この後は恒例の温泉。大加茂さん、みーとさんと最寄りの春蘭荘へ汗を流しに立ち寄り、
帰途につく。下界は残暑厳しいが、お山はもう初秋の装い。ススキが穂を出し、ホトトギ
スの花。稲刈りの始まった田圃の向こうでは中学校の運動会。播州の初秋を満喫した一日。
ミニオフ参加の皆さん有り難うございました。意外と空いていた中国道で、5時には自宅
着でした。



【タイムチャート】
7:20自宅発
9:25〜9:30杉原谷郵便局(集合地)
9:45〜9:55林道終点(駐車地 Ca645m)
10:00市原登山口
10:10〜10:15市原峠
10:20805mピーク
10:44〜10:46展望地
10:48〜11:05またに山(928.0m 三等三角点)
11:37〜11:45市原峠
11:56〜12:00展望岩
12:30〜13:30千ヶ峰(1005.2m 二等三角点)
14:10市原峠
14:18市原登山口
14:25林道終点


またに(深谷)山のデータ
【所在地】兵庫県多可郡加美町、神崎郡神崎町
【標高】928.0m(三等三角点)
【備考】 播磨の名峰千ヶ峰の北側に相対して位置する山です。人
気の千ヶ峰に比べると人気が少なく、却って静かな山歩
きが楽しめます。頂上は南北に長く、笹原で大きな木が
無く、南側から見る千ヶ峰は綺麗です。登路は市原峠か
ら加美アルプスへの縦走路があり、またに山まで所要は
約40分です。
千ヶ峰のデータ
 『久々の千m峰、千ヶ峰』をご覧下さい
【参考】2.5万図『丹波和田』



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