俎石山・大福山〜時雨の紀泉アルプス周回

 平成14年11月 3日(日)
【天候】曇り時々晴れのち雨
【同行】単独
大福山山頂から西側、深日港と多奈川の発電所
大阪湾の向こうには淡路島も


 和泉山脈の西部、紀泉高原は大阪府内といっても北摂からは遠く、未だ足を踏み入れて
いない山域。だが、ここ山域に属する俎石山に大阪府唯一の一等三角点の本点があると聞
いては出かけずばなるまい。しかも手軽に海が間近に見られるとあっては。

 先週は大和高原の一等三角点、神野山の周遊。一等三角点を制覇しようという野心もな
いが、二週続けての一等三角点の山旅である。例によって出遅れたので、阪神高速・阪和
道と贅沢?な経路で先を急ぐ。ところが豊中では青空が広がっていたのに、美原町を過ぎ
る頃から何やら雲行きが怪しくなってきた。ポツポツ来たと思ったら、見る間にしのつく
雨に。俄雨だとは分かっていても、雨は気分を滅入らせる。漸く泉佐野を抜ける頃に上が
ったのだが、スカッと晴れるでもない。まるで真冬の雰囲気である。

 JR和鳥取駅横を抜けて府道を南下し、波太神社で左折する。後は一本道だが、最後の
集落『桑畑』を抜けると所々ダートの林道となる。土砂採取の現場を横目に井関川沿いに
狭い道を暫く進むと、大阪みどりの百選にも選定されている鳥取池の駐車場が見えてくる。

 準備を整えて鳥取池へ向かう。夏から一気に秋を通り越して冬を迎えたかのような冷た
さに、やや色づいたカエデの梢が、11月には早過ぎる寒い風に震えている。左手に古色
を帯びた慰霊碑がある。鳥取池のダム完成を記念し、昭和27年7月の鉄砲水で亡くなっ
た人々の名を刻んだものであった。

 車道は直ぐにダム堰堤に突き当たり途切れる。右折してダムの堰堤を渡り、更に左に折
れる。直ぐに俎石山への登山口の標識があるがこれはスキップ。尤も取付きを見ただけだ
が、余り使われていないようで、女郎蜘蛛の巣が蔓延るブッシュであった。

 池沿いの道は断続的な時雨の所為でぬかるんでいる。その中に猪が掘り返した跡があち
こちに散見される。余程、数が多いのだろう。

 やがて池が尽きて杉桧の人工林となると、紀泉高原キャンプ場の案内板が現れる。道は
このキャンプ場を抜けていよいよ山峡へ吸い込まれていく。その鳥羽口の右手に目指す登
山口はあった。『ボーイスカウト泉南第一団ボーイ隊』と書かれた指導標が立つ。

 道は良く整備されている。沢沿いに登ってすぐ、左に小さいけれど一人前に釜を持つ滝
があり、ここで左に折れる。そして直ぐに倒木の重なる沢から離れ右へ折れる。ここから
は本格的な登り道である。この辺りは植林帯で薄暗く、何かが出てきそうな雰囲気がある。

 葛籠折れを辿っていくと、いつしか人工林から抜け出て雑木に囲まれた山道に変化する。
おりからタイミング良く、雲間から日射しも漏れてきて一気に明るい雰囲気となり、ホッ
と気分も和む。代わりに道は一本調子の直登になり、寒いにも関わらず、汗が額に滴り出
す程である。単独行の気安さ、誰に気兼ねもなく適当に歩を休め息を整える。

 漸く傾斜が緩む。尾根に乗ったらしく、鈍い尾根沿いの道になる。この辺りもイノシシ
の掘り返し跡が多い。しかも山盛りのタヌキの溜め糞もあって油断すると突っ込みかねな
い。と、バサバサと結構大きい野鳥が足元から飛び立って驚かせる。鳥獣保護区とあった
から野生動物も多いのであろう。

 前方の木に何やら白い物が貼ってあるのに気付く。標識かと思いきや「11月14日迄入山
を禁ず。違反者は警察へ出頭してもらう云々」との警告書だ。マツタケ山らしい。しかし
あんまり手入れされている雰囲気もなく、採れるのかどうか眉唾だが、横道に入って疑わ
れないようにしなくては。(^^;

 緩い登りをこなしていくと間もなく、多くのプレートがぶら下がったT字路に出る。鳥
獣保護区の標識に『ジャンクションピーク 392.1m』とあった。東への踏み跡は『
岸高ルート』とあったので岸和田高校のワンゲル部の道でもあるのだろうか。

色づき始めた木々の間をジャンクションピークから
俎石山へ向かう。足元にはシダのシシガシラが群生する

 道標に従ってジャンクションピークから西(左)に向かう。左手、疎林の間から大福山
が眺められる。丸くのっぺりした印象であるがすぐ樹間に消える。

 ほとんどアップダウンのない手入れされた道が続く。閉口なのはやたら多いカラス。バ
サバサと頭上を飛び立つ。糞をかけられぬかと心配すると足元が疎かになって、そんな時
に限ってタヌキの溜め糞があるから始末が悪い。

 シシガシラが茂り、赤味を増した山桜やハゼの木がモザイク模様をなす雑木林を抜ける
と、今度はカシや地元では「ビシャコ」と呼ぶヒサカキ等の常緑樹の暗い茂み。そんな繰
返しの後、一寸した高みが現れる。『北峰展望台』とある。ここは後で寄る事にして、そ
の裾を巻いていくと極く小さな鞍部で、ガイドに難路と書かれている大河内池への踏み跡
が降っている。その鞍部の向こうが目指す俎石山の頂上である。頂上は一寸した広場で、
周囲は透かす様に雑木が伐採されている。そのお陰で紀州方面らしい山々が望める。でも
一等三角点の本点が置かれる程の展望ではない。伐採木で作られたベンチの横に埋設され
た肝腎の一等三角点は角が欠けて痛々しい。

伐採木のベンチの横に俎石山の一等三角点(本点)

 北峰へ行ってみる。ヤブで見えないといわれていたのに適度に伐採されて尾崎方面の海
が眺められる。何処の漁港だろうか?防波堤が見える。海に長々と延びるのは関空の連絡
橋である。

 再び曇って来た空からは、水滴がいつ落ちてきてもおかしくない様子。12時を知らせ
るチャイムの音が麓から上がってくるが、大福山までGPSでは直線距離で700m程度
なので、食事はそこでする事にして先を急ぐことにする。

 一旦少し降って登り返す。ついに雨粒が落ちてきて木々の葉に当たって騒ぎ出す。少し
慌てて先を急ぐ。俎石山と大福山を繋ぐ稜線上の整備された道を辿って、常緑樹のトンネ
ルの様な部分を抜け出ると大福山の頂上。小広い広場になっていて『大福山』と彫られた
大きな石標と小祠がある。テーブルも置かれ休憩には良い所だ。そのテーブルで一組のご
夫婦が昼食中である。今日初めて会ったハイカーだ。尾崎から来られたというジモティー。
紀泉アルプス一帯を良く歩かれているようで、昼食中に色々教えてもらう。昔は寺があっ
たこと。石標は元禄9年だから約300年前の物。建立者の大田松軒は、戦国期に織田信
長に滅ぼされたこの一帯を治めていた一族の子孫であること。以前は暗く見晴らしも良く
なかった山頂が、ボランティアのお陰で景色の良い場所になったこと等々。眺望の解説も
していただく。西には深日港、多奈川の発電所から大阪湾を隔てた淡路島。その淡路島に
白く建つのが五色町の大観音像であること。西南には和歌山市街。中央の森の中には和歌
山城。紀三井寺の名草山。新和歌浦の向こうは海南市街や沖の島。左手奧のどっしりとし
た山が生石が峰であること。
雨間、明るくなった大福山山頂の祠と石碑

 海の方向からまた灰色の雲が近づいてくる。もう少し長居をしたかったのだが、追われ
る様に広げた物を片付ける。札立山から南海の孝子駅に降りるというご夫婦に別れを告げ
て井関峠へ向かう。

 すぐに高圧鉄塔の横に出る。左下遥かには鳥取池の湖面と歩いてきた俎石山の稜線。こ
の辺りは和歌山県側と大阪側が交互に眺められる絶好のビューポイントなのだが、天気が
良ければと悔やまれる。と、見る間にバラバラと再び雨がやってきた。今度は本降りのよ
うで、木の葉を叩く音が徐々に高くなってくる。慌てて木陰に入り、ザックカバーに傘を
出す。

 和歌山消防局と阪南市消防団それぞれの火の用心の注意書きが掲げられた稜線道。緩や
かに下っていくと、右の高みに道が分岐していてプレートに籤法ヶ岳とある。すぐそこの
頂上からは、好天なら和歌山市街が一望のはずなのに、残念ながら雨の帳に閉ざされてい
て風も強く、早々に戻らざるを得ない。続いて左に現れたのが「くじ法ヶ岳」。またの名
を「籤法北峰」。こちらは北方向に開けているのだが、その眺めは俎石山と大福山に囲ま
れた谷を中心に低山ながら意外な山深さ。しかし、籤法ヶ岳が二箇所あるとは知らなかっ
た。

 一向に雨は止まず。山腹を巻くようになった道は六十谷方面への分岐を過ごして、やや
広やかな場所に出る。そこが井関峠。十字路になっていてバイク止めのゲートがある。や
れやれ小休止。

 気が向けば雲山峰もピストンする予定であったが、本降りの雨に今回はカット。大人し
く鳥取池へ向かって井関峠を後にすることに決める。だが待てよ。ガイド本にあったなぁ。
井関峠にはお地蔵さんがあるはずだと....。和歌山側の六十谷(むそた)方面が開けてい
そうなのでそちらに20m程歩くみるとありました。祠の中に佇む高さ50pほどの石仏
文化年間の造立。が残念ながらバーミヤンの石窟の仏像のように顔が削られている。近く
で雨宿りされていたジモティーのハイカーご夫婦に尋ねる、永らくほったらかしにされて
いたとか。現在は未だ新しい祠に祭られ、花が供えられていた。

 井関峠から鳥取池に下る道はこぶし大の石がごろごろとある荒れた林道である。左は井
関川の上流の沢で徐々に深い谷になっていく。ここもイノシシの夥しい掘り返し。ふと左
手を眺めると、羽根つきの羽に似た黒い実をつけた植物が目に入った。クサギだ。葉を千
切ると臭気があるが、赤いガクと黒い実がなかなかのコントラストである。

 右手の鉄塔へ向かう関電道の鉄橋や、雲山峰への踏み跡を見る。案内図などにやや険路
と書かれている道らしい。やがて人工林が現れるてしばらく、そこは往路の俎石山登山口
であった。

 車に戻ると皮肉にも雨が小止みになって薄日が射す。晴れ男の面目なしでありました。

 良く整備され地元に愛されている山々なのだと実感する今回の紀泉アルプス周回。でも
アルプスを髣髴とさせる山道は、雲山峰の方なのでしょう、今日歩いたコースにはありま
せんでした。(笑)


【タイムチャート】
9:15自宅発
10:45〜10:50鳥取池手前駐車場
10:52鳥取ダム
11:05紀泉高原キャンプ場
11:09俎石山登山口(Ca145m)
11:41〜11:43ジャンクションピーク(392.1m)
11:55〜12:00俎石山(420.0m 一等三角点)
12:10〜12:40大福山(427m)
12:48〜12:50籤法ヶ岳(ざんぽうがたけ)(Ca360m)
12:55〜12:56籤法ヶ岳(くじほうがたけ)(381m)
13:05〜13:09井関峠
13:27俎石山登山口(Ca145m)
13:47鳥取池手前駐車場


俎石山のデータ
【所在地】大阪府阪南市
【標高】420.0m(一等三角点)
【備考】 大阪府と和歌山県を隔てる和泉山脈の西部、紀泉アルプ
スと呼ばれるエリアのこれまた西部に位置する低山です。
何の変哲もない山ですが、大阪府唯一の一等三角点の本
点が置かれている山でもあります。近年、ボランティア
により頂上部の雑木が伐採され、大阪湾や関空方面、南
の紀州の山々が見晴らせるようになりました。
大福山のデータ
【所在地】和歌山県和歌山市
【標高】427m
【備考】 俎石山の南にある標高点ピークです。昔は本恵寺(千手
寺)が建っていたと云われ、今でも観音の祠があり、葛
城二十八宿の第三番目に当たります。ここも近年、雑木
が刈り払われ、多奈川方面と和歌山市街、紀淡海峡の絶
景が眺められるようになりました。
【参考】2.5万図『淡輪』



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