意外に涼し剣尾山

平成14年 7月 14日(日)
【天候】 曇りのち小雨
【同行】 単独
剣尾山山頂からガスに霞む横尾山(左)と深山(右)


 梅雨明け前だというのに真夏の如き蒸し暑さで、北摂の低山は流石に厳しい。しかし、
出遅れた今日は近場しか行ける所はない。そこで、低山であることを逆手にとって、丸1
年ぶりの剣尾山へ耐寒登山ならぬ耐暑登山しようという趣向。ところが、蒸し暑いものの、
台風の影響で風が強く、次第に灰色を呈した空からは雨粒まで落ちてきて、おまけに猛烈
なガス。山頂で立っていると少し寒いくらい。とんだ耐暑登山になりました。

 そういえば去年もこの時期に登っている。その時の山行記を紐解いてみた。

今日も登山口への林道の路肩や空き地には10台近くの車がとめられ、暑いにも拘わらず登
っている人が多い様子だ。湿気を含んだ大気の中を、ニイニイゼミの鳴き声がじわーっと
広がる曇り空だが、風があるので殊の外涼しい。行者口登山口から右に折れて桧林の中の
丸太階段を登っていく。

 行者堂まではなかなか厳しい葛籠折れの坂道。かつて摂津大峰と呼ばれた修行の場で、
大岩が点在する。その中に宝筐印塔が載せた岩があった。今まで気づかなかったなぁ。彫
られた梵字は「アン」に似ていたが、もとより定かではない。

摂津大峰の行場の岩に載せられた宝筐印塔

 大日岩付近の岩に登って見晴らしていると、下にとめられていた軽四輪の持ち主だろう
か。地元の山仕事の小父さん3人組。「剣尾山登るんか?」と声をかけてくる。続いて大
日岩付近で追い抜いたご夫婦にも声をかけている。「まだ、ここで四分の一や。百里の道
も九十九里をもって一里とせよ云うしなぁ」

 ご夫婦は交野から来られたそうで、最近山歩きを始められたとのこと。岩の上で記念撮
影のカメラマンを務める。

 行者堂の上にそそり立つ岩は大きい。その岩の端で所謂「覗き」の修行がなされたので
あろう。一寸先端に行くのは勇気が要る。

 行者堂から程なく行者山である。ママコナが濃いピンクの花を広げている。前方には鉄
塔のある684mの三角点ピーク「行者山」。その左奥は横尾山からの尾根であろう。簡
保センターからの遊歩道と東屋が見えるのだが、この時期は緑に隠れている。

 水分補給で一息ついた後、やや下って雑木の中へ。時折こぼれていた日差しも消えて、
サワサワと聞こえだした音に立ち止まって耳を澄ませると、雨が落ちてきた様だ。時折吹
く強い風が木々の梢を揺らして大きな音を立てている。

 684m三角点ピークと剣尾山を結ぶ尾根はササと赤松でいつ来ても気持ちの良い場所。
ここを抜けて再び傾斜の増した道は丸太の階段。我慢してササ混じりの中を右に曲がれば
六地蔵と岩陰地蔵で、やがて平坦な旧月峯寺跡である。釈迦堂や鐘楼跡には残された礎石
と石垣のみが往時を偲ぶよすが。大阪府青少年野外センターへの道が合流する付近の広場
に並べられた石仏には新しい赤い前掛け。

 暫く平坦地が続き井戸跡を抜けると再び急登となるが、それも少しの間だけ。まもなく
蛙岩と呼ばれる巨岩の転がる山頂に出る。

 先着は学生風の3人組のみ。ほとんどの人は途中ですれ違った様だ。少し離れた岩で遅
い昼食とした。

 食べている最中。雨は徐々に勢いを増して、小雨というにはやや強い降りとなってきた。
構わず食事を続ける。夏以外の季節なら寒くて早々に避難しているだろうが....。

 灰色の雲が低い。強風に乗ってガスが猛烈な勢いで尾根を乗っ越して、山の間で渦巻く。
何度も剣尾山に来ているが、こんな光景は初めてである。さっきまで見えていた三草山、
竜王山、堂床山の北摂三山、羽束山や大船山がベールの向こうに消え、目の前の横尾山さ
えも姿が消えた。ザックを雨にかからない場所に移す。

 やや小降りになったのを見計らって蛙岩の上に出てみた。時折吹き飛ばされそうな風が
吹いてくる。燕が風に逆らって宙返り。

 40分程も居たろうか。やがて誰もいなくなり、ガスで視界も伸びず、おまけに寒くな
ってきたので下山にかかる。当初、横尾山経由と思っていたが、この雨で濡れたササの中
を歩くのも億劫。時計屋に寄る用事もあり往路を戻る。鮮やかな藤色のノアザミが二輪。

 剣尾山は全山ほぼ雑木の山であるのがいい。その中でウグイスの囀りと、浅学にして名
前も分からず仕舞いの小鳥の美声に混じってホトトギスの声が遠く近く。小鳥は人間が近
くを通るのに驚くふうもなく、最後まで美声で楽しませてくれた。
 
 登山口に降りてくると、もうほとんどの車はない。萩やネムの花を眺めながら林道を下
る。皮肉なもので空もは明るくなってきた。

 結局、当初の目論見の耐暑登山とはいかず。持参の2Lのお茶も1L以上手元に残る。
意外に涼やかな7月の剣尾山。結構な雨だったのに、国道を能勢町森上まで南下すると雨
の降った形跡すらなかった。


【タイムチャート】
10:40自宅発
11:50〜11:53キャンプ地横の駐車地(Ca280m)
12:03行者口登山口
12:15大日岩
12:24行者堂
12:28〜12:30行者山(469m)
13:03六地蔵
13:14〜14:04剣尾山(784m)
14:38〜14:41行者山(469m)
14:48行者堂
15:00行者口登山口
15:09キャンプ地横の駐車地(Ca280m)



剣尾山のデータ
   快晴の剣尾山をご覧下さい。



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