初夏の地黄湿地を訪ねる

平成14年 7月 7日(土)
【天候】 晴れ時々曇り
【同行】 単独
枯れ草の先に留まったハッチョウトンボの雄


 低徘の仲間にもそれぞれ得意とする専門分野があって、石仏、歴史、文学、生物にと、
それぞれ造詣の深い方々がおられる。その中でも植物好きは多い。季節になると、やれ、
シャクナゲから始まって、やれ、ササユリだ、オオヤマレンゲだなどと喧しい。とりわけ
近頃の話題はトキソウ、サギソウなど湿地のラン科の植物。元々、小生も植物は好きな方
であるから興味がある。そこで去年訪れた能勢の湿地に再びやってきた。

 新しく建設された関電の高圧鉄塔。高さ50mはあろうかという巨大さである。しかも
赤白に塗り分けられているから目立つことこの上なし。北摂の風景を変えたといっても過
言ではない。林道を進んで脇道に入り、その鉄塔の直下に車を置く。

 下界は蒸し暑いのにそれが想像出来ない程、涼しい風が吹き抜けていく。早くもニイニ
イゼミの鳴き声。ワラビ採りに来た時に見つけた水溜まりは今日も健在で、イモリの姿と
共に新しく生まれたオタマジャクシの姿もある。近くで咲くオカトラノオの集合花は白い
猫の尻尾を髣髴とさせる。

 林道に戻って、大きなホウノキを左に見て暫く歩く。カーブを右に曲がると木の柵が見
える。ここからが大阪緑のトラスト協会が力を入れている湿原の保護地域である。柵から
覗くと浅い水面にはヒツジグサが繁茂している。アメンボがその間を滑走する。周囲には
ノリウツギが多いのだがまだ花はない。去年ママコナを見つけた所には当時以上にママコ
ナが生育し、ピンクの花を早くも咲かせていた。その名の由来の白い飯粒が綺麗である。

 湿原には木橋があって、ここから湿原を荒らさずに観察できるようになっている。マム
シが怖い(去年大きなのが居た)ので、おっかなびっくりではあるが、少し入らせてもら
ってその木橋に出る。ふとミズゴケの繁茂した辺りに目をやると、なんだか黄色い花があ
る。目を凝らす。カキランである。一つ気が付くとあちらこちらにある。高さ約20p。
唇弁に赤い模様が入っていてなかなか可憐な姿である。

湿地のランであるカキラン

 写真を撮っていると目の前をスーッと小さな赤い物が横切った。「はて?何者?」 

 それは音も立てずに枯れ草の先に留まった。体長約2p。真っ赤な体。湿原のトンボ、
ハッチョウトンボである。近づいても余り逃げない。よし逃げてもすぐに舞い戻って、近
くの枯れ草の先端に留まる。デジカメを向けたがあまりに細く小さく、焦点が合わずピン
ぼけであった。(^^ゝ  (冒頭の写真)

 湿原の周囲の踏み跡を巡ってみた。顔にへばり付く蜘蛛の糸が煩わしかったが、数は少
ないもののササユリも見つかり、その内の一本には幸運にも大きな花が一輪。

 盛夏を迎える頃には、ここもサギソウやサワギキョウ、ミズトンボと主役が交代する。
その時には又来なければ。

 林道にはいつの間にか地元の方のらしい軽トラ。シキミかヒサカキを採りに来られた様
だ。挨拶して鉄塔下に戻る。台風の影響か雲が速い。林道脇に座って一息入れ、餡パンを
囓る。

 帰途は眺望が良いので妙見山から天台山方面への府道を抜けて。だが、ここにも高圧鉄
塔が新設されている。丁度、光明山へのハイキング路の横だったのでその直下に出てみる。
鉄塔は無粋だが展望は良い。甚だしい矛盾だが、目の前には鴻応山と湯谷が岳がある。遠
く愛宕山らしい山影も眺められる。眼下にはR423(摂丹街道)を走る車が小さい。し
ばし見入る。足許にはラン科のピンク色のネジバナ。これも撮影してと。

ネジバナ。これでも立派なラン科の植物です

 再び車を走らせる。R423への下り道。ここから見る戸知山はなかなかの姿である。
この前の探索でドコモのアンテナがある山と分かったのですぐ同定出来る。その戸知山の
登山口のある豊能町高山では、圃場整備と称して明が田尾山の北東側に重機が入っていた。
またまた自然の姿が失われていく。日々姿を変える危険のある北摂の山々。そーっとして
おいて欲しいというのはやっぱり第三者のエゴだろうか。


【タイムチャート】
    計測していません



地黄湿のデータ
サギソウ涼やか雨上がりの地黄湿地を参照下さい
【参考】2.5万図『妙見山』



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