千刈貯水池周辺の山二座〜布見ヶ岳・天狗松 |
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波豆八幡から千刈貯水池を隔てて布見ヶ岳(中央) 左は祠のあるCa340mピーク(波豆竜王山) |
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暖かい冬の日である。久しぶりに神戸の水瓶、千刈貯水池周辺を歩いてみることにした。 とくにターゲットは決めていなかったのだが、前々から一寸気になっていたのが貯水池の 東に聳える布見ヶ岳。とりあえず、エアリアマップと2.5万図『武田尾』をコピーして 出発。 【布見ヶ岳】 布見ヶ岳は2年前、南側の神戸市の酪農センター方向から一度、アプローチしかけたこ とがあるが、何となく谷筋のヤブっぽい踏み跡に気分が乗らず、池の奥にあるはずの地形 図の破線路も見つからず、諦めて大岩岳へ向かった経緯がある。で、今日は北から。県道 の清之瀬橋から東へ、西谷に向かう車道からすぐ最初の民家の西側にある広場に車を止め て準備を整える。 少し湿った感じの広場。奥へ進むと荒れた雰囲気の小さな沢沿いに路らしきものが続い ている。南の酪農センター方向へ続いているのだろうが、やはり何かもう一つ気乗りがし ない。 一旦戻って、車を止めた西側にある尾根の突端を確かめると、枯れたササの中に吸い込 まれて行く踏み跡が見つかった。辿ってみると案外いい踏み跡。直ぐに左に折れて二筋に 分かれるが、古い白いテープが鳥羽口にある方は、尾根上を南に登っていくようだ。これ だろうと当たりをつけて登りだす。 桧の若木とササ、ツツジらしい雑木、枯れたアカマツが混在する中に、小さなヒト一人 が通れる空間が出来ている。淡い日の光が射し明るいので気分がいい。尾根は緩やかに高 度を上げていく。突然、ガサガサと何かが動く雰囲気。ドキッ。何か動物らしいが正体は 不明。まさかハンターではあるまいが、周囲に判る様に大きな独り言で気を紛らせる。(^^; 漸く傾斜もきつくなってくる。おり敷かれた落ち葉で滑る。手をかけた木の幹に神戸市 水道局のテープが見つかった。 西に振った路を一気に詰めるとCa340mピーク。朽ちかけた祠とやや新しい祠が並ん でいる。今までの路はこの祠の参道だったらしい。昔は良く歩かれていたようだが、今は 神戸市の職員か、若しくは物好きなハイカーが歩くだけのようだ。(地元では波豆竜王山 と呼ばれているピークです) 祠からの踏み跡はやや不明瞭な所も出てくるが、神戸市の設置したコンクリ杭と、適度 にあるテープを辿って尾根を外さず行けば問題なし。尾根が狭いのも助かる。一旦、コル へ降る。 林相はこの辺り、常緑樹が中心となる。ネジキ、アセビ、ヒサカキが多い。日当たりの 良い所ではコシダ、ウラジロ等のシダも繁茂。西側に貯水池の水面も認められる様になる。 貯水池側は傾斜がきついようだ。 前方が明るくなると小さなザレ場。東側からも踏み跡がある感じである。前方に漸くド ーム状の布見ヶ岳の山頂が現れてきた。もう一息。再びコルに降って登り返す。小さな岩 が埋まっている間を急登すると狭い山頂に飛び出す。 赤白ポールと四つの保護石に囲まれた南向きの四等三角点。プレートが2枚、木に引っ かかっている。更に南にも赤テープがあり、酪農センターからの林道へ繋がっていると思 える。少しそちらへ辿ってみると、ポッカリと窓の様に開いた所から、酪農センターから 大岩岳、古宝山が望めた。
こで昼食とした。 食後のコーヒー片手にあちこち眺めてみる。何といっても北西の羽束山が目立つ。真北 には大船山。眼下には千刈の湖面と普明寺橋に波豆八幡の鳥居も眺められる。西遠くには 三田方面。冬なので葉の落ちた雑木の隙間から何とか展望が開けるが、夏や秋は駄目だろ うな。まぁそれ以前にこんな低山に真夏に来る物好きもいまいが......。(^^; 雑木林を愉しみながら来た道を戻る。
さて、まだ少し時間があるので、何処か寄っていこうかと考える内に、エアリアで布見 ヶ岳の北東、西谷の宝山寺の近くに「天狗松」という三角点ピークがあることに気付く。 手軽そうなので寄り道。 車に戻り、東へ。宝山寺を過ぎて、西谷中学校から南下してくる舗装路とのT字路の先、 用水池の横の路肩に車を止める。このT字路一寸面白い。なんと旧西谷村の道路元標があ るのだ。この村には、かつて西谷バスというローカル路線バスがあった(現在は阪急田園 バス)ことと思い合わせると、独立色の強い村であったことを伺わせる。そういえば、農 家も大きな敷地に建つ立派なものが多く豊かそうに見える。元標と並んで立つ石の道標は、 「左 多田院、妙見 右 池田、伊丹」と読めた。 そのT字路の南に神奈備山の様なドーム型をした天狗松がある。山頂に何やらアンテナ 施設が望まれる。近づく為に南へ向かう農道を辿ろうとすると、大きな犬が2頭、小屋か ら出て猛烈に吠え立てる。こりゃかなワン。というわけで少々西に迂回して南へ向かう。 麓に取り付きらしい路。NHKのアンテナ施設云々の白い標識が立っている。山頂付近 のアンテナはNHKのだったか。こりゃしめしめ。山頂までいい道がついているに違いな い。 竹の混ざった植林帯を抜けるとすぐに雑木林。所々、プラスチックで補強された階段。 疎らに小さな松が生えるザレ場を過ぎると、祠のある広場である。
した松がある。これが山の名の由来となった天狗が飛来したり、休んだりする松だったの だろうか。 この付近の山は大概、山頂直下が急登であるが、この里山も例外ではない。祠を過ぎる と道は急斜面となる。コシダ、ウラジロが茂る中を喘ぐと、まもなく小広い山頂。NHK 宝塚大原野中継放送所のアンテナが建ち、傍らに三等三角点があった。 ここからはなかなかの展望。南東におっぱい山の古宝山、六甲に中山から大峰山。北に は羽束山に大船山が木の間越しに。大野山、剣尾山も望めた。
ので山名の由来などを聞いてみる。おばさん曰く、 「ここへ嫁入りしてきたので、詳しい事は知らないけれど、地元では『天狗山』と呼んで ますよ。頂き近くの祠は妙見さんです。大きな松があったけど枯れてしもうて。」との事 だった。 宝山寺は真言宗の寺。奇祭「ケトロン祭」で有名。「ケトロン祭」は、お盆の8月14 日、疫病除けに行われる灯籠会のこと。鐘、太鼓の音がケトロンと聞こえるのでその名が 付いたらしい。藁屋根の山門の仁王さんは阿形、吽形とも裸ではなくて、多聞天の如く鮮 やかな甲冑に身を固めており、長い石段を登ったところのやや荒れた風な本堂横には、大 きな宝篋印塔がひっそりと建っていた。 石段を下って庫裏の横にお邪魔すると、南に「天狗松」が優美な姿で蟠っている。やっ ぱり、こりゃ神奈備山だなぁと得心しながら寺を後にする。
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