銀山から焼尾尾根で竜王山

平成14年 2月10日(日)
【天候】 曇りのち晴れ時々小雪
【同行】 水谷さん
なかなか重厚な多田銀山の守護神金山彦神社の社殿


 豊臣秀吉の埋蔵金で有名な多田銀山。昭和40年代まで日本鉱業が銅を採掘していたと
云うが、歴史上は東大寺の大仏建立にまで遡ることができるとのことである。その銀山を
中心に発達したそのものズバリの名前を持つ銀山集落の西にあるのが城山。今回は城山か
らその西の『焼尾』と呼ばれる低山の連なりを辿って、西谷の竜王山まで辿る文字通りの
低山徘徊。MLのしまださんに紹介頂いたコースである。

【城山】
 冬型の気圧配置が強まる中、のっけから雪が降り出し、雪嫌いの私めは同行の水谷さん
の車に同乗させて頂く。現代的な猪名川パークタウンの新興住宅地から車で数分。山懐に
入ると、銀山川に沿って延びる銀山集落は隠れ里の雰囲気。いきなりタイムスリップした
様で、先程の現代的なニュータウンとの落差には戸惑うばかり。銀山周辺は猪名川町によ
って整備されていて、ここだけでも一度訪れてみる価値がある。

 金山彦神社の向かい、ソエ谷峠への道との分岐に山陽自然歩道の立派な道標と案内板が
ある。その前の路肩に駐車して準備。ソエ谷方面へ向かう。と、直ぐ右手に大きく口を開
ける穴がある。これが間歩。

 真っ黒い間歩の中を覗いた後、民家の前を右折して暫くすると塀に囲まれた建物。その
手前に関電の鉄塔bQ8・29への巡視路を示す火の用心標識。かねちゃんのHPにある
取り付きはこれだろう。その建物の外周を廻る感じで道が続き、丁度、取り付きから対角
線上の角で山へ向かういい道が現れた。関電が整備した黒いプラ階段もあるが、元来、古
くからあった道を関電が利用したのであろう。途中にはのづら積みの石垣もある。ほぼ平
坦。石がゴロゴロしているが、湿った落ち葉が分厚い。

 チョロチョロと水の音がしていた右の沢から水が消える頃、左へ分岐し、ややきつい斜
面を頑張って登ると尾根。ここにもよく手入れされた山道が走っている。一息ついてbR
0の鉄塔に向け西へ向かう。

 雑木を通してようやく左前方に城山の山頂が姿を現してくる。どんどん近づいて山頂へ
の最後の斜面にぶつかる辺りで、道は左にトラバースしていく。その角の雑木の中にテー
プがあるのを発見。しかし踏み跡は薄い。もっといい道があるだろうとトラバース道を進
むが、徐々に下っていくばかり。戻ろうかと相談していると、さっきの角辺りから奇声が
する。島田一座に違いない。当方も呼び交わすように奇声を発す。他人が見たらまるでサ
ルだろう。(^^;)

 MTBの3人組。しまださんとコンビのMさん、それにTさん。Mさんとは初対面。噂
に違わぬユニークな方でした。島田一座は一旦降って県道から焼尾へ向かうというので、
その焼尾での再会を約し別れる。

 城山への最後の登りは半端じゃない。しかも落ち葉が分厚く積もっているので滑る事こ
の上なし。ハッキリしない踏み跡を雑木に手をかけ上へ上へとひたすら登る。50m程の
高低差を一気に登り切ると山頂。五輪塔かケルンの様に積み重ねた石と二等三角点。アセ
ビ混じりの雑木が茂って眺望は無いが落ち着いた感じだ。山名の由来となる砦の建物でも
あったのか、山頂直下に小さな平坦地があった。しかし暑い。ヤッケを脱いで一息つく。

城山山頂。石が五輪塔の様に積んでありました
元は城の石垣だったのでしょうか

【焼尾(西穴戸山】
 汗が冷えてじっとしているとやはり寒い。水分を補給したところで次の行程を地形図で
確認。焼尾に繋がる鞍部は南西方向なので、南側につけられた赤テープに従って降る事に
する。だが、踏み跡らしきものは有るような無いような。テープもなくなった。だが前方
に高圧鉄塔が見えるのでそれを目印に。再びテープが現れると直ぐに先程のトラバースす
る道と思しき道に降り立った。

 さて、高圧鉄塔に近づかねばならない。巡視道を進んでいくがどうも南の関電宝塚開閉
所方向に降っていくようで様子がおかしい。一旦、城山から降った所へ引き返す。すると
巡視道に出るのとは逆に、シダに覆われた中に細い踏み跡があるではないか。城山の山腹
をへつる様についた細いがしっかりした踏み跡を辿っていくと、小さなザレ場から上手く
鞍部に。そこには予想以上に綺麗な巡視道もある。南小浜線bR4の鉄塔下。暫く巡視道
を辿る。

 地形図を見ると適当なところで焼尾の尾根に乗らねばならない。そろそろかなと思われ
た頃、シダの中に右手の高みに登る薄い踏み跡。テープは無いがこれらしいというので、
登っていくとドンピシャ。宝塚市と猪名川町の市町界標識が現れた。ここからはこれを頼
りに、古宝山を左手に眺めて、複雑であまり明確でない尾根を進むことになる。

 ついさっき掘り返したとしか思えないイノシシの痕跡がある。シダの中に潜んでいるの
ではないかと思うと少々怖い。遠くで犬の鳴き声も聞こえる。そういえば未だ猟期。撃た
れちゃかなわん。声を出しながら歩く。

 シダを抜けると今度は雑木。子供が通り抜けられる程の空間が空いているが、大人は無
理。GPSで西穴戸山方向を確認しつつ、はねる枝や枯れ木に注意しながら進む。唐突に
テープが現れまた消えたり。踏み跡が現れては消えたり。その間、兵庫県の基準点を発見
したりしながら、最後の谷を降る頃、また奇声が聞こえた。呼び返すが反応が消えた。登
り返して小さなザレ場。何故か錆びたバケツ一つ。尾根には明確な踏み跡。と、また人声。
呼び返すと今度は反応有り。カラフルなウェアは島田一座。北方向を見晴るかす展望の良
いザレ場で昼食中であった。

 昼食前、気になるので西穴戸山の三角点探しに行く。東に張り出したシダの生い茂った
尾根がある。GPSはその方向だと指示するので、薄い踏み跡を辿ってみるがハッキリせ
ず。諦めて一旦戻ることにしたが、気がつけばイバラに手は傷だらけ。おまけに隠れた木
株に足を取られてもんどり打ってひっくり返ったりと踏んだり蹴ったりである。

 景色を肴に賑やかに食事。ソエ谷を隔てて、羽束山、大船山、大野山、高岳、堂床山、
剣尾山と北摂のお馴染みの山々が眺められる。高い所は少し雪化粧だろうか。

 食後。このまま済ませてなるものか。今度はMさん、水谷さんも含め、再度三角点探し
に挑戦。しかしやはり腰まで茂るシダに悪戦苦闘、なかなか良い知らせはない。が、そう
する内に、Mさんから赤白ポール発見の声。だが肝腎の三角点はなくこぶし大の石のみ。
「この石、食事前の時にも見つけたがなぁ。」でも念のためにとシダをかき分けると有り
ました、三角点。さっきの石は保護石だったのだ。しかも分からないはず。この三角点、
5cm程度しか頭を出していなかった。勿論、プレート類は一切無し。だが本当はもっと
見つけ易かったはず。測量用のプロペラのような物が付いた機材が側に建っていたのだ。
「灯台頭上暗し」か?でも、GPS無しでは見つけられなかったろう。何はともあれ目的
が果たせた。ほっと一息である。

茂ったシダを払いのけて、やっと
見つけた西穴戸山の三角点

【竜王山】
 再び、市町界標を目印に北西方向へ歩く。こちらは少し歩き良い。途中、先程食事した
付近の焼尾の尾根を見渡せる展望地がある。

北の尾根より焼尾方面を眺める

 小さなアップダウンをこなして、鞍部と思しきところに出ると、「マツタケ入山禁止」
の札がぶら下がる。今でも出るんやろうか?山の荒れようを見ると甚だ疑問ではある。こ
こからはしっかりした踏み跡で間もなく林道に飛び出した。

 飛び出したのはソエ谷峠と玉瀬を結ぶ林道。右に折れて約100mも行けばソエ谷峠で
あった。ここは立派な道標のある三叉路で、銀山への林道の他に竜王山の山裾を伝ういい
山道がある。暫く憩った後、山道に入る。

 今度はイヤと云うほどテープがある。焼尾とは雲泥の差。途中にミニチュア二重山稜も
見られる。ここも最後は少しきつい勾配だが、高低差はさほどない。アッという間に四等
三角点が埋まる山頂。2、3のプレートがあるだけの静かな里山である。やはりここも展
望はない。茂みを通して大船山や大船寺の裏山、ゴルフ場、西谷の家々が垣間見られるの
み。西谷の方から登れば龍神の祠があるらしいが、それはまたいつか。

 ソエ谷峠へ戻る。ここで自転車組は先に降りていく。銀山へ向かう道はこぶし大の石が
転がる歩きにくい道。それも収まって、現れた沢を鉄製の立派な橋で渡ればほぼ平坦にな
る。途中右手に大きな青い一の谷池がある。城山へはここからも登れるらしい。

 突然どこからかラジオの音。と見れば左手の奥にバラックがあってそこから漏れてくる
のだ。誰が住むのか訝しい限りだ。やがて大きく右に曲がれば、往路の塀に囲まれた建物
が見えてきて、駐車地までは直ぐであった。

 銀山川を渡って金山彦神社に詣でる。山の斜面を登っていくと立派な本殿。清浄な雰囲
気漂うなかなか立派な神社である。最盛期には1万人もの人が働いていたというが、周辺
には白金、千軒など鉱山やその賑わいを示す地名もあり、その総元締めの神社。落盤など
命がけの仕事でもあり、さぞかし崇敬も篤かったに違いない。

 銀山橋には昭和初期に架けられた先代の欄干があった。最盛期には2.5トンの銀を産
出し繁栄した多田銀山。そして今は時間が止まったような鄙びた集落。ニュータウンとの
落差に驚いた山歩きでもありました。



【タイムチャート】
8:50自宅発
9:35〜9:45金山彦神社前(駐車地 Ca140m)
9:52関電巡視道標識bQ8・29
10:28〜10:30城山山頂直下T字路
10:41〜10:50城山(404.7m 二等三角点)
10:58関電巡視道出合
11:14高圧鉄塔(南大浜線bR4)
11:18焼尾取付きの尾根
12:10〜12:40西穴戸山西側の展望地(昼食)
12:50西穴戸山(368.7m 四等三角点)
13:10玉瀬への林道出合
13:15ソエ谷峠
13:33〜13:40竜王山(365.6m 四等三角点)
13:58〜14:04ソエ谷峠
14:45金山彦神社前(駐車地 Ca140m)


城山(銀山)のデータ
【所在地】【北摂】兵庫県川辺郡猪名川町
【標高】404.7m(二等三角点)
【備考】 有名な多田銀山の西に聳える山です。戦国時代に城があっ
たのでしょうか、頂上付近は土塁跡か建物跡のような平坦
な場所があります。北側を山陽自然歩道が通っています。
西穴戸山(焼尾)のデータ
【所在地】【北摂】兵庫県宝塚市
【標高】368.7m(四等三角点)
【備考】 城山の西、複雑に入り組んだ尾根『焼尾』の主峰です。基
本的にヤブ山でテープも殆どなく、市町界杭を目印に辿れ
ますが、冬か春以外は歩き難いでしょう。
竜王山(大原野)のデータ
【所在地】【北摂】兵庫県宝塚市
【標高】365.6m(四等三角点)
【備考】 宝塚市北部の大原野集落の東に位置する里山です。西のピ
ークに龍神を祀る祠があります。山頂は展望無しです。
【参考】 2.5万図『武田尾』
エアリアマップ『北摂の山々』




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