木ノ実ヤ塚から薊岳〜滴る緑に酔う

平成14年 5月26日(日)
【天候】 晴れ
【同行】 別掲
明神平から眺める新緑の装いの薊岳


 明神平の東に位置する明神岳や桧塚から、明神平を挟んで東西に伸びる2つの稜線があ
る。一方は最高峰水無山から国見山、伊勢辻山へと伸びる北の稜線。もう一つが、前山か
ら薊岳へと続く稜線。前者は去年歩いたが、後者は未踏。とくに明神平から眺める薊岳は
魅力的で一度は歩きたかった山である。この薊岳へは大又の笹野神社から登るのが正攻法
なのだが、標高差が千mもある。ところがジョウブツ山へ向かう麦谷林道を上り詰めた尾
根から登るコースがある。しかし難題はこの林道歩き。七面山の1時間でも嫌気がさした
というのに倍の2時間はかかるという。で、車の登場となるのだが、折良く、木ノ実ヤ塚
から薊岳を経て、尾根沿いに明神平に出て大又林道へ降るというコースが、のりかさんの
提唱で組まれた。起点と終点に車をデポするので林道歩きはカット出来るし、ピストンし
ないで済むし。美味しいとこ取りのコースである。(^^)/

 7時に近鉄榛原駅でのりかさんと待ち合わせ、集合地のやはた温泉の駐車場へ。既に先
着3名。他の参加者が三々五々集まる内に、一人の見慣れない小父さん。訊くとあしび山
荘点検に来た天高OBの方である。あきゆきさんのメールで今日オフがあることを知り、
麦谷林道が工事の為、通行止めであることを知らせに来たという。のりかさんが東吉野村
に問い合わせ、15日に終了したことを確かめたはずだが、念の為、大加茂さんに偵察し
てもらうことにした。他のメンバは取りあえず大又林道終点に車をデポして、あらためて
麦谷林道を上がることにする。

 大又林道を遡る我々の前方を走る1台のバン。先程の小父さんと東吉野村の消防団員が
乗っている。林道終点間近で団員の若い衆が降りてきて「麦谷林道工事終了、通行OK」
のお墨付きをくれた。ほっと胸をなで下ろす面々。

 大又林道終点から数台の車に分乗して再び戻り、道標に従って麦谷林道へ入る。麦谷の
集落を抜け、谷川沿いに遡る道は尾根に近づくと1速に落とさねばならない程の急勾配。
何しろ標高差6百m。千mの高みに上がるのだから仕様がない。ヘアピンの連続をこなし
て「よっこらさ」と尾根に乗ると、すぐに数台が駐車している場所に出た。勿論、大加茂
さんの車も。集合には間に合わなかった佐竹さんもここで合同である。

麦谷林道沿いの登山口

 以前、明神平で車上荒らしが横行したとの噂があったが、それを物語る様に窓ガラスの
破片が散乱している。一寸不安な路駐ではある。

 さて、支度を終え、初見参の方もおられることなので、例によって簡単な自己紹介の後、
スタートである。登山口は東から下がってきた緩い尾根の上に付いており、テープと簡単
なプレートがある。

 明快な踏み跡とテープが巻かれた植林の中の道である。よく見るとギンリョウソウやチ
ゴユリ、花が終わったミヤマカタバミが見つかる。

 東から北へ尾根が方向を変える頃、周囲は雑木の雑木の林に変わる。二階岳はそんな尾
根のこぶの中の一つ。Ca1230mの前衛ピークを越えた後に現れる何となくもっこりと
した感じの丸い頂で、見過ごしてしまいそう。しかもあまり展望も効かない。少々憩った
後、すぐに前進。

 ヒメシャラの赤い木肌が目立つ中を、一旦、鞍部に降る。ヒメザサにコバイケイソウの
群落、朽ちた倒木、タニギキョウの可憐な白い花、ヒロハカエデの新緑に囲まれたたおや
かな気持ちのよい場所である。
可憐なタニギキョウの花

 そこを抜けるとあまり元気のないクマザサの中の急登が始まる。汗が噴き出すが、カラ
ッとしているので心地よい。東側に木の間隠れに笹が峰から池小屋山に続く台高の主稜線
が見えだす。前方には木ノ実ヤ塚が三角型の姿を現した。時折、真っ赤なヤマツツジらし
い花が満開で彩りを添えてくれる。1300mピークを越えて少し降って小さな鞍部。

 再び急登をクリアして行き着いた木ノ実ヤ塚の山頂も円形で適度にブナ、コナラ、ヒメ
シャラ、イタヤメイゲツ等の雑木が生えており、その中央に三等三角点が埋まっている。
静かだ。小鳥の囀り以外は聞こえない。

 木ノ実ヤ塚からはやや西に曲がって数十m降る。ここからは先程とはうって変わって岩
混じりのヤセ尾根も出てくる。とぐろを巻いたマムシの子供も現れて一同ビックリ。そし
てまた急登に変わる。が、振り向けば先程の木ノ実ヤ塚の向こうに大台方面の起伏。山ま
た山が連なる誠に深山の雰囲気である。

振り返れば歩いてきた緑滴る稜線が..。
中央が木ノ実ヤ塚遠くは大台の山並み

 薊岳(雄岳)の山頂はシャクナゲに囲まれ、岩混じりで狭いが、高い木がないので36
0度の大展望。鳥の気分だ。これだけの展望が得られるとあっては人気の山であるのも無
理からず。北は大又の谷を隔てて昨年歩いた伊勢辻山、赤ゾレ山から国見山、水無山が屏
風の様である。奥には一寸傾いで高見山のピラミダルな姿。その右は三峰山らしい。東は
明神岳から笹ヶ峰。南には指呼に木ノ実ヤ塚、電波塔のあるジョウブツ山。遠く大台ヶ原。
その右に大峰の大普賢岳の鋭峰と釈迦ヶ岳、弥山。西南には白屋岳。西に音羽三山、その
奥には遠く金剛、葛城、二上の山並み迄見える。晴天と相まって。いつまでも見飽きるこ
とがない。しかし、楽しみにしていたツクシシャクナゲの花は残念ながら終わっていた。

薊岳から南方向、シャクナゲを通して大峰の稜線
を見る。中央は大普賢岳、左は弥山

 大パノラマを肴にここでの食事も捨てがたいが、他の登山者の邪魔にもなり、明神平へ
の稜線沿いの適地を探すことにして、後ろ髪を引かれる思い(少々大袈裟?)で薊岳の頂
上を後にする。

 明神平への稜線も素晴らしい新緑のプロムナード。木漏れ陽が若緑を輝かせる。遠くで
ツツドリが長閑な鳴き声。またまた帰りたくなくなる。明神平迄の約2qの道のり、良く
味わわねば。(笑)それほどの思いにさせる自然林である。新緑に酔いながら暫く進んで
やや広い尾根で昼食とした。

 なだらかな稜線が続く。ヒメザサ、コバイケイソウ。時折、ヤマツツジ。所々木々の茂
みがポカリと窓の様に開いて、大普賢岳が眺められる。最後の前山への登りをこなすと、
眼前には明神平のスロープ。石灰岩の混ざった白い石が点々と、まるで羊の群れの様であ
る。左手下には天理大学の小屋があり、それを目指してコバイケイソウの群落の中を降っ
ていく。入れ替わりに水無山の斜面を団体さんが登っていった。

若緑に囲まれた明るい明神平。中央は桧塚奧峰
白いのは石灰岩の露頭。モデルは鴨肉隊です

 東屋で小休止。その間に無線で遠く播磨の篠が峰のたぬきさんと交信する人。シロスミ
レの花を撮る人。それぞれの趣味に余念がない。

 大又への下山路は例によって途中の水場で喉を潤し、推量豊富な明神滝下では記念撮影。
壊れたあしび山荘付近の道も随分歩き良くなっている。満開のガクウツギの強烈な香りに
驚きながら、約1時間で林道終点へ出た。

 麦谷林道に置いた車を回収し、やはた温泉で一旦解散。小生は一風呂浴びて帰途に着く。
ハイライトだけを抜き出した今回のコース。滴る緑を浴びながらの尾根歩きを堪能した明
神平のバリエーションコースでした。

【同行】 大加茂さん、かいさん、かっくん、かねちゃん、佐竹さん、のりかさん、
     フェアレディさん、松田さん、みーとさん



【タイムチャート】
5:45自宅発
6:55〜7:10近鉄榛原駅
7:40〜8:10やはた温泉駐車場
8:20〜8:30大又林道終点
9:03〜9:06麦谷林道登山口(Ca1110m))
9:25Ca1230mピーク
9:30〜9:32二階岳(1242m)
10:02〜10:15木ノ実ヤ塚(1373.8m 三等三角点)
10:45〜11:03薊岳(雄岳)(1406m)
11:15〜11:50薊岳北東尾根(昼食)
12:48〜13:06前山(Ca1410m)
13:25〜13:55明神平
14:40〜14:45明神滝下(休憩)
15:07大又林道終点登山口



木ノ実ヤ塚のデータ
【所在地】奈良県吉野郡東吉野村・川上村
【標高】1373.8m(三等三角点)
【備考】 明神岳から西に派生する山稜中にあり、薊岳の南に位置
します。頂上はヒメザサに囲まれ、ヒメシャラ、ブナ、
イタヤメイゲツ等の雑木の自然林が残され、清々しい雰
囲気があります。
薊岳のデータ
【所在地】奈良県吉野郡東吉野村・川上村
【標高】1406m
【備考】 明神岳から西に派生する山稜にある岩峰です。狭い頂上
にはツクシシャクナゲが茂り、また高木が無い為、36
0度の大展望が得られます。登山路は大又、明神平、ヨ
コクラ谷、麦谷のコースがあります。近鉄榛原からバス
がありますが本数が少ないので事前チェックが必要です。
■近畿百名山
【参考】2.5万図『大豆生』エアリアマップ『大台ヶ原』



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