恒例!貴公子超低山巡りA
           〜新夕陽ヶ丘、聖天山

                          平成13年 3月11日(日)
                          天候:晴れたり曇ったり
                          同行:単独


 なにやかやとぐずぐずしていたら、もうお昼。そこで午後から恒例の超低山巡り。二ヶ
月ぶりの今日は新夕陽ヶ丘と聖天山。

@新夕陽ヶ丘

 神戸から明石にかけての「朝霧」「舞子」「須磨」等という美しい名前に較べ、何かコ
テコテした地名の多い大阪。その中にあって「夕陽丘」という地名だけは例外。

 昔の大阪は海がもっと近くにあったという。本来、海の神である住吉大社の辺りまで波
が打ち寄せていたことは想像に難くない。今の様に高い建物がない時代、上町台地から西
の海際に沈む夕陽を眺めるのは、さながら西方浄土を現実に見る思いであったであろう。
それが地名になったと思われる夕陽丘。「新夕陽ヶ丘」も同じ名を持つ限りは、矢っ張り
天王寺近くにあるのではと思っていたのだが、存在するのは意外や大阪湾の人工島「舞洲」
なのであった。

 歌島橋から国道43号経由、北港通を西へ。やがてUSJが左手に見えてくる。本格オ
ープンの4月以降は道路も渋滞で大変なのだろうが、今はまだ仮オープン。スムーズに此
花大橋を渡る。と、左手に奇妙な建物が見えてくる。アラブか、はたまたロシアのギリシ
ャ正教風に先端が膨らんだ金色の塔とだんだら色の建物。実は大阪市環境事業局の清掃工
場なのである。周囲の雰囲気に合わせたのであろうが、お役所仕事としては珍しい、でも
ちょっと異様な感じのする建物ではある。

アラブかロシアの建物?実は大阪市のゴミ焼却場です

 右にオートキャンプ場を見て直線道路を進むと、左前方に芝生の小高い丘が見えてくる。
周囲が平坦なのでよく目立つ。その丘北側の道路の路肩に車を止める。(市営駐車場があ
り、最初の30分が無料とは後で知りました。(^^;  )

 道路の北側はフェンスで囲われた広大な滑走路のような敷地。但し、一部、舗装路が延
びていて「舞洲の磯」と案内板がある。人工磯があるようだ。その向かいに「新夕陽ヶ丘」
と立派な石標があって、芝生のなだらかな丘。重畳には西欧風の白亜の東屋が建っている。

新夕陽ヶ丘全景。頂上に白亜の西欧風あずまや

 1,2分もあれば頂上である。標高は25m。だが、ここからの景観は圧巻。舞洲の西
北端にあることと、出来て間もない人工島だから、樹木がほとんど無い為、360度遮る
もの無し。まず、東には舞洲球場の向こうに天保山の観覧車、WTC。埋め立て中の夢洲
の向こうは野鳥園や魚釣園のある咲洲。遠くに大阪市街から生駒、金剛。南は関西新空港
と和泉山脈、更に加太の突端まで。西に貨物船が浮かぶ大阪湾と淡路島。明石海峡大橋と
横尾山、鉄拐山。神戸から六甲山と続く眺め。北は中山連山から北摂の山々。うーん、下
手な山へ登るよりいい眺め、一等三角点にしても良いくらいだ。海に沈む夕陽が見物出来
るということで、知る人ぞ知る新しいデートスポットというのも肯ける。

 トイレの横に案内板があったので眺めてみると、広大な敷地の中にはヘリポート、舞洲
アリーナ、セレッソ大阪のグラウンド等があり、ミニ運動施設もあって家族連れにも良さ
そうだ。天保山からも「水都」と名付けられた船で15分だとか。今日は寒の戻りもあっ
て、人出は少なかったが、季候が良くなれば混むだろうなぁと思わせる舞洲の新夕陽ヶ丘
である。

A聖天山

 舞洲からR43に戻って天王寺方面へ向かう。R26で南下し、岸里で左折するとその
名もゆかしい松虫通り。暫く行けば、左手にこんもりとした林が見えてくる。これが聖天
山。「天下茶屋の聖天尊」正式には海照山正圓寺の境内地であることから名付けられた山
?で標高は14m。

 ところで聖天、所謂、歓喜天は古代インドの神から仏教に取り入れられた仏で、象頭人
身の男女二体が抱擁した形をしており(単身のものもある)、現世利益の霊験があらたか
とか。また真言立川流の流れを汲むような格別な信仰を得たとも云う。関西では生駒山の
聖天さんが有名だが、ここにもそれがあったとは寡聞ながら知らなかった。

 幾つか登山口?はあるが、小生が登ったのは裏登山口?なのだろうか、行き着いた所は
「奥の院」の標識がある「八本松龍王社」。左手には松虫塚と「白龍神社」、下には弁天
社と「石切劔箭神社」に石造の不動尊。先の戦争の忠魂碑や健康祈願のおタヌキさんまで
あって何とも賑やかな奥の院界隈である。尚、聖天山の北側は公園となっていました。

正圓寺の参道から山門

 失礼して、寺の建物沿いに西に歩いていくと山門前に出る。向かって右手に水掛不動、
左手に十一面観音の優雅な石仏。石段の左右には仁王像の代わりか、多聞天と増長天の石
像がある。水掛不動の横に寺の由緒書きがあったので読んでみると、元を辿ればこのお寺、
天慶年間に創建されたものというから、藤原純友や平将門が活躍した時代だ。大坂夏の陣
に一旦灰燼に帰した後、徐々に復興されてきたそうである。その間には、かの兼好法師も、
この地付近に庵を結んだことがあるそうな。
山門前の石の仁王像。これは阿形像のようです
優美な十一面観音像

 境内をぶらつくと左から大師堂、釈迦堂、歓喜天、不動堂、地蔵堂と小振りな堂宇が並
ぶが、境内真ん中に石鳥居が建っているのが面白い。また、釈迦堂の前には仏足石が置か
れ、更にチベット等でよく見られるマニ車が幾つかあったのが珍しかったので、からから
と廻しておいた。

 地蔵堂内に置かれた石地蔵、大師堂のガラス戸越しに覗けた四天王像を眺めながら、表
参道の石段を降る。下から見上げると、大師堂は斜面に土台を木で組み合わせて造られて
いる事が分かる。山の麓を巡る石畳の参道。赤い幟がはためき、柵の中には兼好法師の藁
打ち石、実はこの地にあった古墳からの出土物が置かれていた。
 
 この後、再び山門前にとって返し、女坂と名付けられた坂を下って松虫通り。腹が減っ
たので、ミニスーパーでパンと缶コーヒーを買って車に戻る。

 これで、「なにわ名物トホホ登山」の7低山の内、6山制覇?。残すは天王寺の茶臼山。
山歩きもいいが、こんな歴史も尋ねての超低山巡りもまた一興。そんな気もする早春の一
時でした。
【タイムチャート】
   計測していません

新夕陽ヶ丘のデータ
【所在地】大阪市此花区
【標高】 25m
【備考】 大阪市此花区の沖合に造成された人工島舞洲にある人工
     の山です。頂上からは四方遮るもののない眺望が望め、
     また日本夕陽百選にも選ばれた夕陽の名所でもあります。
     舞洲にはこの他に、スポーツアリーナ、野球場、人工磯、
     陶芸館、オートキャンプ場などがあり、家族で楽しめま
     す。アクセスは野田阪神、西九条、桜島から市営バスが
     あります。
聖天山のデータ
【所在地】大阪市阿倍野区
【標高】 14m
【備考】 上町台地の南端に位置する小山ですが、元は古墳であっ
     たようです。現在は天下茶屋の聖天さんと呼ばれる海照
     山正圓寺の境内です。
     正圓寺は天慶年間の創建で、付近には徒然草の吉田兼好
     の庵があったとも云われています。
     近辺は陰陽道の安倍晴明の生誕地や南朝の北畠顕家の墓
     があり歴史の宝庫でもあります。


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