雪彦山〜涼しい背筋は風の所為?

平成13年 9月 9日(日)
天候: 晴れたり曇ったり
同行: 大加茂さん、えびたさん
賀野神社付近からの雪彦山。全山、岩の山です


 今年の春にオフが企画されていたが雨で中止となった雪彦山。急遽、リベンジオフをや
ろうじゃないかとの大加茂さんの誘いに乗って、小生とえびたさんが参加。初秋の雪彦山
を堪能してきました。夏の間、お気楽山歩に終始した小生にとっては、下山後の一っ風呂
のおまけもあり、久方ぶりに山らしい山を歩いた充実感に浸った1日でした。

 台風15号の接近で危ぶまれた週末ではあったが、予想外の好天となり、当日も日中は
晴れの予想。五時半に起床すると空はほんのりと青みを帯びて明るい。今回の目的地の雪
彦山は岩場が多いので雨を心配していたのだが、この分では大丈夫。逆に暑いのでなかろ
うかと別の不安。着替えと冷凍したペットボトルの茶+1.5Lの水、合わせて2Lを持
参、代わりにストーブ、コッフェルは置いていくことにした。

 6時半に自宅発。宝塚から福崎迄中国道。意外に早く7時50分頃には集合地点の夢前
町役場に到着した。

 役場の駐車場はフリーマーケットがあるとかでほぼ満車状態。偶々角が空いていたので
停めさせて貰う。公民館でトイレをお借りしたり、夢前川の清流を眺めたりして時間を潰
している内に、大加茂さんが例のスクーターで。その後まもなくえびたさんも現れた。
 
 ドタ参の伝言も無いので集合時間より若干早いけれど、えびたさんの車で登山口へ移動
する事にする。

 大加茂さんの先導で県道を夢前川沿いに真っ直ぐ北上する。徐々に左右の山が迫ってき
て、夢前川も岩がちの流れとなる。途中には雪彦温泉の看板。帰りに入ろうじゃないかと
えびたさんと。

 更に道幅も狭まり、クネクネと曲がり始める頃、前方に大きな岸壁が目立つ三角錐の山
が姿を現す。雪彦山だ。ガイドブックの写真で見たことはあるのだが、やはり実物は迫力
満点である。

 雪彦山は法道仙人の開山した寺があったという修験の山。日本三大彦山の一つで、洞ヶ
岳、鉾立山等の総称である。その洞ヶ岳も大天井岳、地蔵岳、不行岳、三峰岳等の総称と
いうからややこしい。が、岩峰が屹立するその姿に、昔の人は仏や神の姿を彷彿としたで
あろうことは間違いなさそうだ。

 登山口の駐車場には先行車が10台程。係りの叔父さんに500円を支払うと、代わり
に案内図をくれた。今日は出雲岩コースから地蔵岳へ廻って降るという大加茂さん推奨コ
ース。かなりの岩場歩きがあるという。案内図で確認する。その内に後から来たおじさん
が、くだんのおじさんにコースの状況を聞いているのが耳に入る。「滑りまっせ」の言葉
にさっきの岩壁の印象が重なって、ちょっと不安がよぎる。(^^!!

 準備を終えて歩き出す。右の舗装林道は賀野神社から峰山へ向かう道。これを見過ごし
夢前川の清流を渡ると、登山届を出す小屋。「ここはハイキングコースではありません」
の注意書きに身が引き締まる。(^^;) 道はここで又、川沿いの虹ヶ滝コースと出雲岩コ
ースに分かれるが、出雲岩コースは左の山腹道。
 
 のっけから急登。ほぼ直線で山腹を上がる。おまけに丸太の階段だがゴロ石だらけの道
で歩き難い。体のエンジンがかかる前でやや体が重いものだから、直ぐに汗が噴き出す。
周囲を見る余裕とて無い。黙々と高度を稼ぐ。それでも次第に沢の音が遠のき、キャンプ
場の建物が小さくなるのが分かる。不動岩を過ぎる頃には、相変わらず汗はしたたるが、
体も大分慣れたようであった。

 植林の木々を透かして、向こうの山の頂が低まってきた頃、ようやく尾根に乗りあげる。
直ぐに行者堂跡。尾根を削っただけのような5、6坪程度の狭さ。更に登った辺りにも、
広場があったが、そちらの方が広い感じであった。

 傾斜が緩み一息つくと直ぐに次の急登。息もつかせぬとはこの事か。やがて道は山腹を
巻くように左に曲がっていく。

 眼前に累々と重なる巨岩が現れる。出雲岩。オーバーハングした岩は高さ20mは有り
そう。重なり合う岩を乗り越え乗り越え、小さな祠の前で水分補給の為、小休止。

圧倒的迫力の出雲岩。人の大きさと較べて下さい

 出雲岩を巻いた先は最初の鎖場。周囲の木々はどれもつるつる。みんな、幹に捕まって
登っている証。赤ペンキの矢印に従って、よっこらしょと体を持ち上げてクリアすると、
待っていたのは今日初めての展望と涼風。南の方が開けて明神山の特異な姿がよく目立つ。
左には七種三山。残念ながら霞で瀬戸内海や六甲は眺められなかった。しかし、足元直下
は絶壁。ふと見ると雑木の陰に小さな石碑も立っている。大加茂さんによると慰霊碑らし
い。これには涼風以外に背筋を冷やすものがあった。

 次に現れるのはセリ岩。左に胎内くぐりの岩もある。ちょっと小生の体では抜けられそ
うもなくパス。ここも先程の岩と同じく眺望絶佳。岩壁にはギボウシの白い花。岩の間で
咲くなんて、これは結構珍しいんじゃ無かろうか。この後も次々現れる岩のテラスからの
展望とスリルに感嘆しながら歩を進める。

セリ岩から播磨富士とも呼ばれる明神山遠望

 傾斜はやや緩くなった感じだが、狭い痩せ尾根を行くので油断はならず。次いで現れた
馬の背はどちらかというと「ステゴノザウルスの背」と言った方が言い得て妙の険しさで
ある。小生は躊躇無く下のエスケープ路を行く。(^^;)
 
 周囲は雑木で陽射しを防いでくれ、風も吹いて気分良し。浮き出た木の根に躓きながら、
再び現れた急登を喘ぐと、上方が明るくなって、漸くという感じで頂上へ出た。
 
洞ヶ岳の中心、大天井岳である。真ん中に不動明王の石仏が祀られた祠のある10人も立
てば満員の狭い山頂である。岩を越えて北側に廻るとこちらは誰もおらず。野生だろうか
珍しく五葉松。その横でモミかツガの様な針葉樹も梢を延ばしていた。小休止。

 ここからは、七種三山、明神山、笠形山と播磨の名山が指呼。近くは意外になだらかな
北の三角点ピーク、大きな山容の鉾立山。下の深い谷が虹ヶ滝のある夢前川源流だそうだ。
坂根の集落はマッチ箱。羊腸の林道が走っている側に建つ賀野神社は意外に大きな神社で
ある。更に手前には大峰の稲村ヶ岳の前衛、大日山によく似た、針のような尖峰があり、
その頂上にはハイカーが認められる。地蔵岳だそうだ。今日はこの後、そちらに寄るのだ
という。内心「えぇ〜っ?マジでぇ〜?」面白そうだが一抹の不安も。

 未だ11時前と食事にはちと早いので、先へ進むことにする。少し降って、雑木の痩せ
尾根道。左に大きな岩が見えてくる。天狗岩で、大加茂さんは昼寝したことがあるそうな。
そしてすぐに鉾立山と地蔵岳コースの分岐にでる。三角点も踏みたかったが展望もないら
しく、我々はここで右に折れ、本日のハイライトである地蔵岳コースへと踏み込むことに
した。

 一気の急降下である。しかも足場悪し。木々の幹に捕まってでないととても降りられな
い。と、大きな岩場が現れた。ほぼ1枚岩で高度差は20m位は有りそう。えびたさんは
降りていったが、小生はまたまたペンキの矢印に導かれてエスケープルート。ハンドル名
そのままに『君子危うきに近寄らず』です。(^^)ゝ

高さ20mの絶壁を鎖で。隣に迂回路あり、御安心を

 この辺り、小さなママコナに似たピンクの花があちこちに群生している。(帰宅して調
べたところミヤマママコナではないかと思われる)花に気づくとは、少々余裕も出てきた
かな?

 やや登り返して地蔵岳の分岐に出る。岩にとっかかりが少なく足の置き場に少々苦労し
たものの、何とかクリアして頂へ立った。が、そこに待っていたのは中国の桂林にも似た
文字通りの素晴らしい景観。三峰岳を従えた不行岳の北壁は一幅の南画の世界である。そ
の右には大天井岳。南に目を移すとこちらは目も眩む絶壁。直下には赤い鉄骨の砂防ダム
や駐車場も見える。下から上がってくるのは虹ヶ滝の滝音の様である。苦労して登った甲
斐があったというのはこの事であろう。いつまでも見飽きぬ展望に、ここで昼食と衆議一
決となった。
眺望絶佳!岩で出来たパノラマ展望台の地蔵岳
ここへよじ登って昼食です

 最近定番の赤飯おにぎりを頬張っている時である。不意に左手にヘルメットを被ったク
ライマーが現れたのに驚いた。続いて「ビレー解除」の声。そして一人おいて現れたのは、
なんと女性でありました。

 昼食後、いろいろな雑談を交わしていると時の経つのは早いもの。次々姿を見せるクラ
イマー達に場所を譲って、名残を惜しみつつ先へ進むことにする。

 ここからは岩場に水が滲み出ている悪場が続く。鎖、ロープがないと苦労しそう。ここ
で度々事故が起きているのだという。慎重に降る。

 ここをやり過ごすと再び展望のいい岩に出る。岩壁にへばりついたり、懸垂下降するク
ライマーが眺められる。それにしても迫力ある絶壁である。

地蔵岳から不行岳の北壁を見る。
大台の大蛇クラに似ています

 ふと足元に目を落とした時である。足首付近の靴下が円形状に朱に染まっている。おか
しいなぁ。痛みもないしと、靴下を脱いでみると小さな赤い円形の傷。ヒルではないかと
いう。慌てて靴の中や靴下を探るがそれらしい生き物はいなかった。先程の湿った悪場以
外に考えられないが、何ともキツネに摘まれたようであった。

 展望岩を巻いて下山路は続く。一気に水音が高くなってくると虹ヶ滝。苔むした岩を清
水が伝う。その冷水で顔を洗った。蘇生した思い。気持ちがいい。
 
苔むした岩の間を流れる虹ヶ滝

 滝の左岸には峰山からの下山路が合流するが、橋が朽ちて通行禁止の立て札。右岸を歩
いてくる人がいたが、ガイドを見ると、地蔵岳の岩場を迂回する新ルートが記されていた。
滝から少し登り返すと、落ち葉の敷き詰められた自然石の階段道となる。大きなトチノキ
があるなと思ったら、沢山の実が地面に転がっている。初めて見た物だから記念に2,3
持ち帰ることにした。

 やがてユースホステルへの分岐を過ぎる。が、通称『大曲』と呼ばれる分岐は見落とし
た。植林帯の中の道をゆく。ヤマゴボウの実なぞを見ながら林道ののり面に上がる。

 クライマーの車だろうか路肩に沢山駐車している。ここから登山口までは約2kmの林
道歩き、一人では些か退屈であろうが、遠くには明神山も眺められ、だべりながらなので
それ程苦にはならない。道端にはツリフネソウの群落や関西では珍しい白花のゲンノショ
ウコも見受けられる。所々、遊歩道の標識があるが、使われないと見えて少々荒れている。

 法道仙人創建の金剛鎮護寺の跡地を過ぎると賀野神社。山頂から眺めた如く存外立派な
お社だ。出雲系の神社でイザナギ、イザナミ両神を祀るのだとか。

 単調な林道歩きも、木々の間から民家の屋根が覗けるようになると終わり。最後に左に
カーブすると登山口であった。

 帰途は雪彦温泉に立ち寄って汗を流した後、再び夢前町役場。中央公民館の軒先で、缶
ジュースを飲みながら、再び雑談モード。瞬く間に時間は過ぎる。きりの良いところでま
たの再会を約し、ミニオフ散会とした。

 些か肝を冷やす場面もありましたが、雪彦山はまた訪れたくなる名山の名に恥じない山
でありました。これで南播磨で最も気になる三山、笠形山、七種山、雪彦山に足跡を残す
ことが出来たことになる。今回、企画を頂いた大加茂さん、えびたさん、有り難うござい
ました。



【タイムチャート】
6:30自宅発
7:55〜8:25夢前町役場
8:45雪彦山登山口駐車場(Ca245m)
8:56不動岩
9:05〜9:10展望台
9:41〜9:50出雲岩
9:57〜10:05セリ岩
10:13〜10:16覗き岩
10:20馬の背
10:27〜10:42大天井岳(Ca800m)
10:49鉾立山・地蔵岳コース分岐
11:10地蔵岳下
11:20〜12:10地蔵岳(Ca700m 昼食)
12:33〜12:54展望岩
13:01〜13:06虹ヶ滝
13:08峰山・地蔵岳分岐
13:21林道雪彦峰山線
14:10登山口駐車場



雪彦山のデータ
【所在地】 兵庫県飾磨郡夢前町
【標高】  915.2m(四等三角点)
【備考】  播磨の中央部、夢前川の源流部にある鋭峰で、元々越後
      の弥彦山、筑紫の英彦山と並んで三彦山といわれる修験
      の山です。石英粗面岩の岩山でロッククライミングのゲ
      レンデとしても有名です。登山道は道標も整備されてい
      ますが、くさり場や岩場も多く、毎年事故も報告されて
      いますので足元に注意が必要です。神姫バスの便があり
      ますが、便数が極端に少なく、マイカーが便利です。
      ■近畿百名山■関西百名山
【参考】  2.5万図『寺前』、夢前町HPの雪彦山概念図      



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