肝を冷やして山歩堪能〜七種山・七種槍縦走

七種槍の南の痩せ尾根から七種山を望む

                           平成13年3月24日(土)
                           天候:晴れ
                           同行:別掲 


 大加茂さん主催の一泊二日温泉オフ。その第一日目の七種山縦走に日帰り参加。当日は
絶好の天気に恵まれ、雑木のプロムナードあり、急降下あり、スリル満点の岩稜歩きあり
と、バラエティに富んだ山歩きが楽しめた充実の一日となった。これはその顛末記。

 久々の7時出発。ぽかぽか陽気の好天の為か、中国池田では6qの渋滞との表示。とり
あえず、電話番号を知っていたもぐもぐさんに「遅れた時は待っててね。」と携帯をお断
りを入れる。だが、それも杞憂に終わって、8時半には集合地の福崎町役場に到着。着い
た旨の報告やら、GPSへの三角点データの入力等に時を過ごしている内に、佐竹さん、
水谷さん、もぐもぐさん、大加茂さんらが集合、9時過ぎに登山口の福崎町野外活動セン
ターに移動開始。

 北上して辺りに山々が迫り始めると、左手に金剛城寺の清雅な建物が見えてく
る。ここは数年前、新西国巡りの際に訪れた所で懐かしい思いがする。

 更に七種川沿いの道を行くと、右手に青々とした池と野外活動センターの建物。駐車場
には見慣れた島田さんの水色のCR−Vが駐車している。

 総勢6名、支度を整え出発。七種滝への風情のない舗装路歩きも、今日一行が持参した
GPSは合計4台等、ワイワイと談笑しながらだと気にならない。右手には今から縦走す
る尾根が所々に岩場を従え、屏風のように畳なづいている。清水・一水と名付けられた水
場や最奥の民家を眺めたり、すぐ側までやってきたウグイスの美声やら、突然飛び立った
ヤマドリに驚きながら、10分程で小滝林道分岐。更に、丁石仏を発見したり、七種川に
懸かる橋のたもとの二本杉の下の石仏見物等と話題は尽きない。

 やがて金剛城寺の旧仁王門。ここからは杉木立が目立ち、所々に残る野面積みの石垣と
共に、かつては一大法城があった事を物語っている。

 鳥居が見えてくる手前に遊歩道があって、そちらへ廻る島田さんとは一旦分かれて、一
行は太鼓橋から虹の滝、八竜の滝と見物しながら、傾斜を増した道を登っていく。まもな
く眼前に、七種神社のご神体である七種の滝が懸かる大きな岩盤が現れた。高さは72m。
兵庫観光百選にも選ばれているが、残念ながら水がほとんど無いのが残念。

七種滝付近から眺める七種薬師
 約10分の小休止の後、神社の裏の道に入る。ここからようやく登山道らしくなるが、い きなりの急登を余儀なくされる。滝の落差分を直登しなくてはならないのだから、なまっ た体にはつらい。それでも背後に見え隠れする周囲の山々の頂が、徐々に低まっていくの が良く分かり爽快だ。  踊り場のような小広い場所に出る。なんと滝の落ち口である。普通なら近寄れぬ様に鎖 でもしてあるのだが何もない。佐竹さんが先端まで進んで写真を撮るが、見ている方が怖 いほどであった。  登山道はここで再び直登コースと迂回コースに分岐する。迂回コースの島田さんと大加 茂さんとは、しばしの別れである。  しかしながら、この直登コースがまたまたきつい。ジグザグを切らずに山腹をほぼその まま登っていく。二本ボソから倶留尊山の道を彷彿とさせるコースである。四月下旬の陽 気と相まって久しぶりに汗が噴き出す感じ。水を十分に持ってきて正解であった。  やがてその傾斜もやや緩んで、ジグザグを切り出した道にホッとした頃に着いた展望台 には、つなぎ岩まで800mの標識。七種薬師が富士山型に見え秀麗だ。  再び歩き出した一行を励ますようにウグイスの声。明るい雑木の中、所々にヤブツバキ の紅が、木々が萌え出す前の単調な色彩にアクセントを与えている。そんな風景を愉しみ ながら高度を稼いでいくと、南側にバルコニーの如く張り出した展望岩が現れた。岩上で は先着のご夫婦が食事中。ちょっと失礼して景色を愛でる。いつの間にか周囲の峰を見下 ろす高さになっている。右方向に七種薬師の鋭鋒。彼方には福崎町や夢前町の市街と市川 が蛇行しているのが望める。イブニング親父風の登山隊のワイワイガヤガヤ、ご夫婦には さぞやご迷惑だったに違いない。ご容赦を。(笑)  ここから頂上はすぐだったが、雑木の為に展望はなし。頂上を降りて数mの所にある「 つなぎ岩」からの展望がいいとのことなので、そちらへ移動する。
七種本峰で記念撮影
 この「つなぎ岩」。弘法大師が修行したという謂われがあるのだが、直径十数mの岩が すっぱりと断ち切れて、こちら側と40p程度の間隙があるのである。これは一寸怖い。 怖いもの見たさに覗いている内に、案の定、シャープペンシルを落としてしまった。トホ ホ。
「つなぎ岩」上で景色を肴にランチタイム
 しかしながら、この岩からの展望は素晴らしい。霞んでいたのが残念だったが、西に雪 彦山、北に松尾山。北東方向、市川町の市街の奥に聳える笠形山が一際大きいのが印象的。 更に、東には七種槍とスーッと伸びたその西尾根。島田さんによるとその尾根を辿って七 種槍に登り、南尾根に向かうのだという。「えーっ?」と小生、心の中で。その西尾根に 取り付く前に、ここからは見えないかなり深い鞍部に降りねばならないではないか。前途 多難。しかも多難はこれだけではなかった事を後で痛感する事になる。しかし、その前に とりあえず缶ビール。目先の誘惑に弱い小生である。 (^^!!
つなぎ岩から望む七種槍。左側の稜線を辿ります
 七種槍へは一旦戻って北へ向かう。七種薬師方面との分岐には、市川町と夢前町が取り 付けた「迷う事有り危険」の布が結わえてある。とはいうものの、町界尾根を示す赤プラ 杭もテープも要所にあり、踏み跡はしっかりしたものだ。だが、まもなく始まった急降下 は洒落ではない。これでもかと云う程の激下りに、立木に掴まりながら三点確保を心懸け ようとするも、ともすれば尻餅を搗きそうになる。  一旦平坦になった所が552mピークで、松尾山への分岐。ここは東に向かう。木の間 隠れに七種山が望めるが、つなぎ岩らしい岩は確認できない。  再び急降下が始まる。又々やや平坦になり、やれやれと思えばあざ笑うかの如くまた急 降下。思わず誰かが嘆く「正露丸く〜れェ〜!」(下り止めをくれの意です)  桧の植林からヤブツバキやサカキなどの常緑広葉樹が増えてくると、ようやく最低鞍部 で、手前に手製の道標が設置されている。「こうじゃが峯」とあり、七種槍の別名の様だ。  ここから暫くは再び明るい雑木林の中のプロムナード。槍への最後の胸突き八丁のつら さも知らぬが仏、一行は息を吹き返し、また冗談を飛ばしながら歩を進める。  狭い尾根上の道は次第に南東に方向を変え、430mピーク等の小さなアップダウンを 繰り返していく。途中に現れた展望岩では遙か下に小滝林道。ここから降りるのも半端な 傾斜では無さそうだ。  やがて七種槍への最後の登りにかかる。この登りもきついアルバイト。幹がツルツルの 雑木がそれを証明している。展望もないから余計に疲労感が強い。ほうほうの体で文字通 り辿り着いた頂上は非常に狭い。ポツンと綺麗な四等三角点。兵庫山岳会の山名板他2, 3のプレートが木に懸かっている。が、尖峰の割に展望はそれ程でもなく、東に市川町か ら笠形山。西に七種山が垣間見える程度。しかしここにはヒカゲツツジが生えていて、花 時は良さそうに思える。時ならぬ闖入者に、好奇心旺盛のタテハチョウがのんびりとまと わりつくのが印象的だった。  しばしの休憩の後、下山は南方向へ。東方向に誘われやすいが、これは市川町へ降りる 道。また南への下山路も最初は七種山からの踏み跡と交錯してやや分かり難い。コンパス、 地形図は必携。  さて南尾根。しっかりした道が続くじゃないかと思った途端である。前方で「ウワーッ! こら大変やで」との叫び声。見れば向かいのピークとの間は岩場の連続。馬の背というよ りもナイフの背といった方が正しい位である。とくに西の福崎町側がスパっと切れ落ちて いて、しかもガレ場。風の通り道なのか下からは吹き上げてくる風。ねじ曲がった丈の低 いネズコの木。雨でも降れば進退窮まりそうで、単独行で初めて歩いていた時なら、遠慮 申し上げたかも知れない。(^^;;
七種槍の南尾根の岩稜を往く面々
 だが、こんな痩せ尾根でもやや幅広になった部分には、鈴なりに花を付けたアセビや松、 ヤマツツジ等の雑木が例外なく生えている。雑木の生える箇所がこんなに安全に思えたこ とはなかった。(笑)
これから辿る「小槍」の鋭い稜線
 小槍と呼ばれるCa480mピークを踏む。下山路のある高圧鉄塔はまだまだ遠い。所々 に現れるスリル満点の岩稜を冷や汗を掻きながら下っていく。左に鹿除けネットが現れ、 420mピークを越えると、まもなく四等三角点の点名「奥山」の埋まる小ピークに立つ。 続いてウラジロシダやコシダの茂る明るい尾根を進んで金取岩。右手に小さく最奥の民家 が見え、活動センターの池もだいぶ近づいてくる。  踏み跡を辿って、左に廻るとなかなか大きな岩で、キレット状に大きく切れ落ちている。 次に現れた岩を今度は右手から捲く。50p幅の道の下は崖で、錆びて分からなくなった 鉄製の標識と鎖が備え付けてあるが、慣れた体にはもうそれ程の恐怖感はない。(^^ゝ  あれだけ遠くに見えた関電の鉄塔がようやく目前となり、左の市川町から関電の巡視道 が現れる。やれやれもう安心だ。(^^ゝ  小さなアップダウンを繰り返したところで関電の火の用心標識は右方向を示す。直進も 可能な様子だが、ここは標識通り右へ。だが、この下降する道も結構厳しいものがあり、 最後まで愉しませてくれる山ではある。  途中の鉄塔で少憩を摂った後、降った所は青く澄んだ水を湛えている田口奥池のほとり。 鴨やアヒルが水面を滑るのを見ながら、ゆるゆる歩いて行くと、つい先程苦闘?した岩稜 が右手に眺められた。  整備中の活動センターの管理事務所。地元の方の行為でトイレと洗面所を貸して頂く。 もぐもぐさん達は今日は泊まり。明日予想される雨がお湿り程度であればいいがと案じな がらの散会。バラエティに富んだ山歩きに満腹の一日。また紅葉の季節にでも来たい七種 山縦走でした。 ■同行:大加茂さん、佐竹さん、島田さん、水谷さん、もぐもぐさん[五十音順]
【タイムチャート】
7:05自宅発
8:30〜 9:05福崎町役場駐車場
9:16〜 9:30福崎町青少年野外活動センター駐車場(Ca150m)
10:03金剛城寺旧山門
10:30〜10:40 七種滝
11:14〜11:20展望岩
11:22〜11:30七種山(683m)
11:30〜12:15つなぎ岩(昼食)
12:27七種薬師分岐
12:39552m標高点ピーク
12:59道標のある鞍部(Ca380m)
13:10430m標高点ピーク
13:20〜13:23展望岩
13:44〜14:00七種槍(577.3m 四等三角点)
14:30小槍(Ca480mピーク)
14:50Ca420mピーク
15:05点名『奥山』(393.4m 四等三角点)
15:12金取岩
15:30関電高圧線鉄塔
16:05田口奥池
16:10福崎町青少年野外活動センター駐車場

七種山のデータ
【所在地】 兵庫県神崎郡福崎町
【標高】  683m 
【備考】  福崎から播但連絡道入った辺りの西方に見える鋭鋒群七
      種三山[七種山、七種槍(577.3m 四等三角点)、七種
      薬師(616.2m 二等三角点)]の主峰です。老僧が稲な
      ど七種の穀物のものなりが良いので、滋岡山から七種山
      に改めたといわれます。中腹に県観光百選の七種滝、南
      麓に福崎町の野外活動センター、新西国札所の金剛城寺
      があります。尚、七種槍から南への稜線は、痩せた岩稜
      でザレ場も多く、注意が必要で雨天時は不向きです。バ
      スの便が良くない為、マイカーやJR播但線福崎駅から
      タクシーが無難です。 
      ■関西百名山
【参考】  2.5万図『寺前』、『前之庄』



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