手軽に登る北摂の富士〜鴻応山

 平成13年 2月11日(日) 
 天候:晴れたり曇ったり
 同行:単独
歌垣山中腹の高圧鉄塔から眺める豊能富士、鴻応山
 

 北摂で気になる山の一つが鴻応山。歌垣山に登る度にその円錐形の姿を目にしていたの
だが、何故か今まで未踏で取りこぼしていた山である。それに標高が678.9mと面白
い。

 珍しい山名ではある。全国的にコウノトリが山名に冠される山はここだけだという。文
献に依れば、コウノトリにまつわる伝説があり、昔は寺があったそうだ。麓の集落名の寺
田はその名残かも知れない。

 池田からR423を北上する。豊能町に入って牧集落の消防分団前の交差点を右折する
と左手に目指す鴻応山。まずは大歳神社と寺田公民館を目指して進むが見つからない。U
ターン場所を捜す内に、別荘風の寂れた新興住宅地迄来てしまった。再び戻って来て気が
付いた。分からないはずだ。公民館は建物の前に農機具まで置かれていて、木の看板がな
ければそれと分からない。その向かいの大歳神社も間口の狭い神社であった。

 兎も角、目印が見つかった。手前にちょっとした広場があったはずと戻ると、何だ、栗
園の前ではないか。分県ガイドによればここが登山口のはずだ。おりしも4屯車にマキを
積んでいるおじさん。挨拶し、駐車する旨を断わると、
「かまわん、かまわん、誰も来んからねぇ。」
自称、まきを扱う大阪唯一の業者だそうだ。1月以来2度目のマキの引き取りとのことで
あった。

 支度を終えて見廻すと、右の坂道に黄色いテープがある。登って行くと成る程、小屋が
あって南側がテラス風になっている。その横で道が分岐。GPSの示す頂上方向は左とい
うわけで、迷わず栗園のネット沿いの左の道を採る。

 左は雑木、右は檜林。まもなく大きな台場クヌギが現れた。見ると、あちらこちらに台
場クヌギがある。ガス・電気が普及していない頃、盛んに炭にすべく切り出されたに違い
ない。やがて、周囲が雑木の林になる。太い赤松も多い。枯れている木は少なく、手入れ
すればマツタケも良く出るだろうになァ。

 えぐれた船底の様な道には落ち葉が分厚い。色とりどりのテープが巻かれた牧コースと
の分岐。ガイドにあるほどササは繁っていない。右の目立たぬ枝に手製の古い道標プレー
トがかかっている。

 バサッバサッという音が聞こえてきたと思ったらお爺さんが現れた。植林の枝打ちをし
ているのだという。
「山へ登りなさるのか?すぐに行けるで。」の声に励まされて足が軽くなる。

 一部ササが繁った所もあるが、大した事は無い。やがて右側の明るい雑木林が開けて、
湯谷ヶ岳方面が眺められる。

 山腹をトラバースしてT字路風の分岐を左に折れる。赤いプラ杭が現れ、鴻応山の東南
の府境尾根に乗った事がわかる。京都側は植林、大阪側は雑木の疎林。京都側には雪が残
り、沢の源頭らしき部分は一面の雪である。

 尾根上につけられた踏み跡を忠実に辿ると、まもなく「火の用心」の丸い金属プレート
が目に入って、こんもりとした頂上であった。眺望はないが、亀岡市の緑の少年団の登頂
記念の板やプレートが数枚かかる静かな山頂である。ここだけ木が生えないのは、昔、雨
乞いの為に火を焚いた為だという。西北の尾根上の踏み跡は、北側の西別院へ下りる道ら
しい。

 ザックを置いて、落ち葉の絨毯の上に胡座をかき、珈琲を沸かす。小鳥の囀り以外に音
はない。時折射す日の光が暖かい。うらうらとした珈琲の湯気を見ながらサンドイッチを
頬張る。因みに手許のGPSでは誤差5m、高度は677mと正確であった。

広場になった鴻応山山頂の三等三角点

 下山してくると、くだんのおじいさんは未だ山仕事。声をかけたが耳が遠いのか振り向
きもせず、山仕事に精を出しておられた。

 登山口付近に戻って小屋横の分岐。もう一方の踏み跡を少し辿ってみると、竹薮に入っ
ていく。と、夥しいほじくり跡。イノシシだ。タケノコの白い皮が残っていた穴も。人間
が美味いと思うものは、動物にも美味なんですねぇ。

 不思議だったのは、登山口近くに女性らしき方の墓がぽつんと一つ有った事。卒塔婆と
共に石仏も置かれていた。いったい誰の墓なのだろうか?

女性と思しき人の墓の横にあった石仏

 下山後、やはり鴻応山の姿は歌垣山から見ねばなるまいとて、R423を更に北上して、
堀越峠から大阪環状自然歩道を登る。

 聞きしに勝る高圧鉄塔、しかも赤白。目立つことこの上ない。急坂が緩んだ所にその鉄
塔への巡視道が出来ているので辿ってみると、ここからの展望が一番。山を無粋にした張
本人の立つ所が最も展望が良いとは何とも皮肉この上ない。暫し景色を愛でる。

 もとの登山道へ戻る。折角なので歌垣山の頂上にも寄って行くことにする。

 誰もいない頂上。時折、かさこそと落ち葉を鳴らして風が吹く。日が翳った途端に寒く
なってきた。三角点にタッチして早々に引き上げることにした。

 再び通る鴻応山の西麓。葉の落ちた雑木が清清しく西日に映えていました。



【タイムチャート】
11:45自宅発
13:00〜13:05栗園前(駐車地 437m)
13:18牧コース分岐
13:26T字分岐
13:32〜13:55鴻応山山頂(678.9m 三等三角点)
14:05牧コース分岐
14:20栗園(駐車地)



鴻応山のデータ
【所在地】 京都府亀岡市
【標高】  678.9m
【備考】  大阪府と京都府の境に位置し、奇しくもポンポン山と標
      高が同じです。歌垣山から見る山容は秀麗で、赤松滋氏
      は豊能富士と命名しているほどです。西麓にある御手洗
      弁天は御所の尊崇が篤く、「乳の泉」と呼ばれる霊水が
      湧き出しています。尚、山名の由来は、コウノトリ2羽
      が山頂に巣を作ったので見に行くと金色の仏像があった
      ことによります。又、堂島の米相場の状況を知らせる狼
      を上げた場所でもある様です。



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