風がご馳走、梅雨明けの剣尾山

平成13年 7月 15日(日)
天候: 曇り時々晴れ
同行: 単独
関電巡視道近くに新しく立てられていた道標


 梅雨明け早々蒸し暑い。とても低山どころではない。家にいてもへろへろ。とはいうも
のの、何処に居ても暑いのならば、いっそ山の上へ上がったれ。というわけでお手軽、昼
から剣尾山。

 いつものようにキャンプ場手前の舗装路の路肩に車を止める。途中、山辺付近でサーッ
と来た驟雨も、すぐに上がった。だがスッキリした青空ではない。念の為、ビニール傘を
ザックに放り込む。

 市街地よりはよほど涼しいが、雨上がりで蒸し暑い。ブラブラと歩いていくと、左手の
林にクヌギの木。例の酒が発酵したような酸っぱい匂いが辺りを覆っている。見ればカナ
ブンが樹液に群がっているが、カブトムシやクワガタはいない。根元をほじくってみたけ
れど見つからぬので、足で幹を蹴ってみると、体長5pはあろうかというオオスズメバチ
がひっくり返り、起き上がろうともがいているではないか。こりゃいかん!くわばらくわ
ばら、慌ててその場を離れる。

 早くも小さな花を付けた萩何ぞを眺めながら、やがて登山口。やはり夏。木々の勢いが
違う。梢が被さる登山道の丸太の階段を一歩ずつゆっくり登る。その梢に遮られて、直射
日光はそれ程当たらないのだが、蒸し暑さに一気に汗が首筋を滴る。とりあえず大日岩の
前の床几で水補給。

 更に行者堂でも一休み。と、後から何やら動物の気配。犬がやってきてその後からダブ
ルステッキの小父さん。守口から来たというこの小父さん、そのまま先行して行かれた。
犬はと見れば、先刻から休んでいたご夫婦に水をもらっている。なかなか人懐こい犬であ
る。

 行者堂の周辺は摂津大峰と云われ、大岩が散在しているのだが、その大岩を縫うように
上がれば行者山である。ところが、さっきの犬の鳴き声がする。少々通常の鳴き方とは違
うようだといぶかしみながら、あと一曲がりすれば行者山という地点まで来たその時であ
る。ブンブンと何かが膝辺りを飛び回っているではないか。
「んっ?」
なんと10匹ほどの蜂である。こりゃヤバイ。と思うまもなく、シカッと鋭い痛み。ふく
らはぎを刺された。アシナガバチの様だが判然とせず。慌てて足を振ってその場を離れる。
先程、犬が鳴いていたのはこれだったのか。幸いそれ以上追って来ず助かったが、冷や汗
ものであった。

 行者山。やや風が吹いてきたが、小さな鞍部から再び樹林の中となると、蒸し暑さがブ
リ返す。徐々に立ち止まる間隔が縮まってゆく。少々眩暈も感じるほどだ。なんとか南側
が開けた展望地に辿り着いて、手頃な石にへたり込む。
 
 良い風が吹いてくる。この時期、何物にもまして風がご馳走。5分程休んで、やっと人
心地がついた。

 傾斜が緩んでやや平坦になった道は、684mピークの東を巻いて行く。ニホンシカの
説明板や炭焼き窯跡がある辺り。関電の火の用心の赤い標識と、「剣尾山」と書かれた新
しい道標が立っている。剣尾山に新設された高圧鉄塔の巡視道が、右と左に分かれて林の
中に吸い込まれている。

 やがて684mピークと剣尾山との峠を過ぎる。ササの原に赤松が茂り、気分の良い所
だ。ここから六地蔵迄はきつい丸太階段の登り。しかし、標高も600mを越えた為か涼
風があり、先程のような辛さが嘘のように無い。

 大阪府野外活動センターへの分岐を過ぎ、月峯寺跡の台地を抜ける。ウグイスやカッコ
ウの鳴き交わす声。そしてニイニイゼミの声に混じって、ヒグラシの鳴き声も聞こえてく
る。暑さを忘れる一時だ。下界よりは5、6℃気温は低いようで、ここまで来ると湿気も
少ない感じ。

 小さな池を右に見て一登り。すぐに大岩が転がる山頂に着く。
蛙岩に先程の犬連れの小父さんと若いカップルが先客。こちらも岩に登り、まずザックを
置き、Tシャツを脱いで上半身裸に。絞るとボタボタという感じで滴がしたたり落ちた。
どっかと腰を下ろし、持参のペットボトルのお茶。何者にも勝る甘露。水分補給するとや
やしゃりばてに気づく。おにぎり、ついでサンドイッチ。やっと落ち着く。

 剣尾山は深山と並んで、北摂でも素晴らしい展望が自慢の山だが、今日は夏にも関わら
ず、視界が良く延びる。羽束山の向こうに、雄岡山、雌岡山さらに淡路島らしき山影も霞
む。北は長老ヶ岳から弥仙山らしき山影。東は愛宕山から比叡山。来た甲斐があるという
もの。吹き上げてくる涼風とヒグラシの声に時間を忘れる。

剣尾山山頂から南西方向。手前から684mピーク、竜王山
羽束山、右に大舟山。羽束山の奧には雌岡山

 日の光も西に傾きだした。犬連れの小父さんは、又、犬が蜂にやられては可哀想だと横
尾山へ向かわれた。当方も上がって来られた2,3のハイカーに場所を譲るべく、そろそ
ろ下山。

 帰途は少し寄り道して、点名『行者山』の三角点を踏みにゆく事にする。六地蔵から丸
木階段を降り、赤松の明るい峠を降ると、正規の登山道の右、雑木と植林の境目沿いに赤
テープが巻かれた尾根通しの踏み跡がある。だが、手元のGPSは、正規の登山道を降っ
ても、三角点迄の距離が縮まることを示している。そこで縮めるだけ縮めてから直登して
やれと尚も降っていくと、先程の新しくできた関電の巡視道の入口に行き当たった。

 山側の急斜面にジグザグにつけられた巡視道を辿っていくと、まもなく尾根上に鉄塔が
現れた。が、そこからは道はない。鉄塔の右側の方が高くなっているのでそちらかなと登
っていくと、GPSの指示距離は逆に大きくなる。戻って鉄塔の左の雑木の中を押し登っ
ていくと、この辺りにありそうだと思われる辺りに、案の定、落ち葉に埋もれてあった。
小さな四等三角点。うーんGPS様々である。(^_^)/

雑木に囲まれていた点名『行者山』の四等三角点

 点名『行者山』標高684.1mの四等三角点。但し、展望は全くない。好き者のピー
クハンターが訪れる位だろう、字の消えた古いプレート1枚が懸かるのみの静かな場所で
ある。だが、展望抜群の剣尾山山頂に三角点がなく、こんな所にひっそりとあるというの
も面白い物だ。

 往路にたむろしていた行者山の蜂。一寸心配だったが、幸いにもどこかへ消えてくれて
いた。

 下界に近づくに従って暑さがぶり返す。駐車地に着くとそそくさと道具を下ろし、直ち
に着替えを持って能勢の郷の簡保の宿へ向かう。汗を流し、さっぱりとして家路につく。

 因みに水分消費量。持参1リットル。簡保の宿で、入浴前に350ml、入浴後に50
0ml。計1.85リットルでした。



【タイムチャート】
12:00自宅発
13:10〜13:15キャンプ場手前の駐車地
13:22登山口
13:36〜13:39行者堂
13:44行者山(469m)
14:05〜14:10南側の展望地
14:28六地蔵
14:37〜15:25剣尾山(783m)
15:45関電巡視道(176 177)
15:54〜15:55点名『行者山』(684.1m 四等三角点)
16:00関電巡視道(176 177)
16:15行者山(469m)
16:30登山口
16:35キャンプ場手前の駐車地



点名『行者山』のデータ
【所在地】 大阪府豊能郡能勢町
【標高】  684.1m(四等三角点)
【備考】  北摂の名山剣尾山の南の鞍部を隔てて対峙する山で、剣
      尾山の登山道が、その東の山腹を巻いています。ヤブに
      薄い踏み跡のみでしたが、最近、関電の巡視道が出来、
      アプローチが簡単になりました。但し、展望は皆無で、
      ピークハンター以外は訪れる人もいないでしょう。(笑)
【参考】  2.5万図『妙見山』



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