サギソウ涼やか雨上がりの地黄湿地

平成13年 8月26日(日)
天候: 小雨のち曇り
同行: 単独
ノリウツギ咲く地黄湿地と木道


 高槻市のNPOの団体が、北摂の代表的なハイキングコースとそこで見られる植物30
0種のガイドを発刊したことを新聞が報じていた。こりゃ手に入れずばなるまいと、電話
で問い合わせて取扱書店を知る。しかしその書店の支店には置かれておらず、本店近くの
支店に出向いてようやく入手する事が出来た。一仕事でした。(^^;
 
 そのガイド。小さな冊子だが、見易く良くまとめてある。それをつらつら眺めている内
に、大阪府内にもサギソウの自生する地域があることを知った。H10に緑化特別保護地
域に指定され、大阪みどりのトラスト協会に保護管理されており、当協会のパンフレット
にも紹介されている知る人ぞ知る能勢の地黄湿地である。妙見奥の院の近くだ。この5月
に妙見奥の院を訪れた際に頂いた住職お手製の地図でも確認すると、湿地という表記があ
るがどうもそこらしい。

 サギソウといえば、この夏、お世話になっているメーリングリストで、篠山市と西脇市
の境界にある西光寺山の麓の自生地が話題にのぼっていた植物。近年、野生種が激減して
いてレッドデータブックにも登録されているそうな。何処かぶらつくつもりで居たのに、
起床すると生憎の天気で、丁度くすぶっていたところだったので、少々時期の遅れを懸念
しつつも、早めに昼飯を食べ、見物に出掛けることにした。

 例によって、途中でサンドイッチと飲み物を仕入れ、R423を北上する。時折、小雨
がフロントグラスを濡らすが、大した降りにはならない。京都府との府県境を越えた後、
左折してひた走ると、再び大阪府に入って堀越峠。いつものように砂防堤が見える少し広
まった路肩に駐車する。

 堀越峠は歌垣山の南の登山口と、最近舗装された奥の院方面への林道が交差する四つ辻。
奥の院を示す石の道しるべと大阪環状自然歩道の標識が立つ何の変哲もない峠だ。今日は
ここから沢に沿って奥の院方面へ向かう。

 雨上がりを待っていたかのような、ミンミンゼミの鳴き声に包まれた杉桧の植林の中の
道は何となくガスっぽい。気温は低いのだがその分湿度が高く、歩いているとTシャツが
肌にへばりつく。そこへ藪蚊の羽音。鬱陶しい。

 能勢町の小さな水道施設を右に見て、しばらくすると妙見奥の院への分岐。ここは左へ。
 
最近出来た高圧鉄塔の巡視道を示す火の用心の標識が所々にある。と思ったら、目の前が
開けて巨大な赤白の鉄塔が出現した。それにしてもでかい。鉄塔に沿って右に道が分岐し
ているが、奥に工事中の標識があり通行止めのようであった。

 左手の土手下には大きなトチノキが数本。荒れ地にはワラビも見られるので季節には収
穫できそう。
 
 ガイドや住職手製の地図通りならばもう着いて良いはずだ。しかしそれらしい場所はな
かなか現れない。小さな尾根を乗越す感じで林道はやや降って、緩やかに右にカーブして
いく。訝しみつつも、もう少し行ってみるかと右カーブを曲がっていくと、左手に木製の
柵が目に付いた。何だろうと柵の内を確かめてみる。最初、密生するツツジ等の雑木に遮
られ判然としなかったが、それでも透けた場所から覗き込むと、白い装飾花が目立つノリ
ウツギや疎らに立つ赤松、雑木のヤブの隙間から、草むらのような空間が認められる。し
かも何やら点在する小さな白い斑点。
 「おおっ?サギソウでは?」

 紛れもなくサギソウであった。数はそれ程多くないが、園芸種でなく自生を見るのは初
めて。大阪にもまだこんな場所があったとは驚きだった。

サギが羽を広げ滑空するさまに似たサギソウの花


 道を先へ進むと右に池が見え、ヒツジグサが繁茂する水面にイモリらしい生き物が蠢い
ている。池の奥の梢が不規則に揺れていると思ったら小鳥の群であった。コナラの幼木の
陰にピンクのママコナを見つける。

コナラの幼木の陰で咲いていたママコナ

 垣根の鍵がかかった入口付近に掲示板があり、地黄湿地の紹介文が貼ってある。標高約
450m、広さ約0.43ha。大阪府最大の自然湧水性湿地で、ハッチョウトンボ、サギ
ソウ、モウセンゴケ、アケボノソウなどの湿地性の動植物が自生、生息しているのだとい
う。マニアによるこれら貴重種の盗掘や、上流からの土砂の流入による湿地の消滅から守
るため、前述の如く、H10に緑化特別保護地域に指定され、現在はみどりのトラスト協
会が保護しているそうだ。H9に設置されたとかで、柵の他、湿地には木道、砂止めが施
されていた。

 しかし、このアプローチの林道。この林道建設が湿地を分断し、土砂の流入や湧水源の
枯渇を招いたのでは。それが一番の環境破壊かも。近くには高圧鉄塔も建設されているし
なあ、なんてことを考えながら、湿地をあとにする。

 シャーッというような音に驚いて、ふと横を見ると側溝に体長50cm程の蛇。側溝に溜
まった枯葉の上を走った音だったようだ。赤い斑紋があったのでヤマカガシの幼蛇だろう
か。この湿気だ。矢っ張り出たなぁ。(笑)

 堀越峠へ戻る。歌垣山へも寄ってみるかと思ったが、登山口付近に勢い良く茂るモミジ
イチゴの棘や雑草。この分だとたっぷりの雨の滴にしとど濡れるのは間違いなさそう。初
めての山でもなし、あっさりと諦める。

 そこで時間もあることとて、一庫ダム上流の田尻川の川原にある個人温泉へでもと思っ
たのだが、聞けば年間会員登録と入浴料込みで1500円必要とのこと。高いので、これ
もあっさりと諦める。(^^); 以前来た時は会員登録なんかなかったのになぁ。

 更にこの後、豊能警察のシートベルト着装検問に引っかかるわと後半は散々。これは早
く家に帰って大人しくした方が無難だとの神のお告げ?。不運?を嘆きながら、脇目もふ
らず一路、家に向かったのでした。

 それにしても、自生のサギソウという思わぬ眼福に預かった半日でありました。

★追記 サギソウの写真を撮せていただきました。ご迷惑をおかけしました。
 

註) 豊能警察管内では休日、シートベルト検問や、R173でのねずみ取りが頻繁に行
   われています。交通ルールを守って運転しましょう。(笑)


【タイムチャート】
12:00自宅発
13:10堀越峠西(駐車地)
13:15堀越峠
13:25妙見奥の院分岐
13:35〜14:00地黄湿地
14:15妙見奥の院分岐
14:25堀越峠
14:30堀越峠西(駐車地)



地黄湿地のデータ
【所在地】 大阪府豊能郡能勢町
【標高】  Ca450m
【備考】  妙見奥の院の南にある約1ヘクタールに及ぶ大阪府最大
      の自然湧水性湿地です。ハッチョウトンボ、サギソウ、
      アケボノソウ、モウセンゴケなど種々の湿地性の動植物
      が見られ、平成10年、緑地環境保全地域に指定され、
      緑のトラスト協会によって保護、管理されています。

      ■大阪みどりのトラスト協会のHPはこちらです。

【参考】  エアリアマップ 山と高原地図『北摂の山々』



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