石金山〜丹波ミニオフ、迷走登山隊は往く

平成13年11月10日(土)
天候: 雨のち晴れ
同行: 別掲
Ca440mピークより望む石金山


 今回登る石金山は去年の秋の丹波オフの舞台となるはずだった山。ところが、マツタケ
山とのことで中止となった経緯がある。その後の情報に依ると、地元の山南町の方々がマ
ツタケシーズン中にも登っていることが分かり、今年の9月頃だったろうか、久しぶりに
丹波の山にでもと、地元のたぬきさんに石金山の状況をお聞きしたところ、シーズン終了
間近なら登っても良かろうという返事。そして今日がその1年越しのリベンジの日。

 予報は局地的な雷雨。しかもその雷雨がよりによって氷上郡付近。タヌキさんからは集
合時間の1時間延期、そして今激しい雨という悲痛な叫び?が電子掲示板に。しかし豊中
付近は路面は濡れているが、雲に切れ間があり北方向は明るい。回復傾向にあるとの予報
を信じ、7時20分自宅を出る。

 宝塚付近。青空も顔を出し日が射してきた。不安な気分がやや解消。だがそれも束の間。
西宮を抜ける頃、西方にきれいな虹。ということは西は雨?北方一面の灰色の雲。そして
悪い予感は的中して、ついに吉川では篠つく雨に。こりゃ中止かなぁ?でも今年の芦生の
例もあるしと、とりあえず集合地点まではと車を走らせる。

 祈りが通じたのか、滝野町からR175を北上する頃、雨が止む。雲の切れ間が出来、
北西方向には小さな青空も。愁眉を開くとはこの事か。

 集合地の「さんなん仁王の駅」向かいにある「であい公園」の駐車場。既に水谷さん、
もぐさん、しまださんが先着し談笑の最中。雑談を交わす内に、石田さん、WMさん、た
ぬきさん、妙子さん、みやびさんらが到着。

 風が強く少々寒いが北から青空も広がりだした。午前10時、記念撮影の後、早速、駐
車場横の登山口から至山へ向かう。
至山登山口から出発する面々。この後、思わぬ展開が
 ササが刈られた広い道がジグザグに山腹を登っていく。夜来の雨で少々滑って歩き難い
もののさほどではない。足慣らしには丁度良い加減。至山稲荷大社跡の標識を見て、やや
傾斜を増した山道を辿ると、アンテナ施設が頭上に見えてきて、直ぐに頂上であった。ツ
ーカーホンやNHKのアンテナ施設があるだけあって、300m足らずの低山ながらいい
眺め。とくに北から東の眺めよし。今年1月のオフの舞台の蛇山、岩屋山や篠ヶ峰、東に
白山、妙見山。下には佐治川の流れと谷川の市街地に円応教本部の甍。しばし展望を愉し
む。

 三角点はアンテナ施設の東にぽつんとあった。頭にタッチして、石金山へ向かう。

 いい匂いのするシソ科の植物の間を抜け、標識に従って西へ一旦降ろうとしたその時で
ある。先頭から蜂がいるとの声。見れば巣があるのか大型のスズメバチが7,8匹、羽音
を立てながら飛び回っている。近づけば危険と思われ、協議の結果、一旦降って迂回し、
田高坂から縦走を続けることとなった。しかしこれが迷走の序章となろうとは、この時の
誰もが知る由もなかったに違いない。

 公園の奥から川沿いを西に地形図にも記載された林道がある。これを進んで田高坂へ向
かうのが一番早そうだ。登山口に戻った我々は思い思いに雑談しながら林道へと踏み込む。

 左は桧の植林帯。フユイチゴのルビー色の実を摘んだり、鹿の白骨死体に驚きながらの
雑談モードなので単調な林道歩きも苦にならない。やがて林道は川と別れて桧林に入って
いく。暫くする内にY字路。ここで何の疑問もなくやや狭い右の道を選んだのだが、これ
が結果的に大間違い。道は徐々に杣道に変わり、何時の間にやらそれも消えてしまった。
現在位置を確認すると、どうも尾根一つ西の谷に入ったようだ。左下に見えたゴロゴロ石
の沢の遡行や山腹を突っ切る手も無いではないが、傾斜は急で垣間見える高圧鉄塔の立つ
稜線も遠い。ここも一旦撤退と相成った。

 枯れ枝と格闘しながら涸れ沢の右岸に出ると、何のことはない直ぐに平坦な道が現れ、
作業用のヘルメットが転がる荒れた広場が現れた。更に進むと小振りの高圧鉄塔が見えて
きて、右手に何と田高坂←→至山の立派な道標があるではないか。今までの迷走と格闘は
何だったのだろう?(笑)

 1時間近くロスしたろうか。それでも迷走登山隊の面々には、しばし童心に帰って探検
気分を味わえた楽しい1時間でもありました。

 とはいうものの、漸く正規の道に復帰した安堵感が一行を包む。田高坂は植林の中の良
く踏まれた古くからの道。今では関電の巡視道も兼ねているようだ。夜来の雨でじめっと
しているからだろうか、何処から来たのかサワガニが石の間に蹲っているのが認められる。

 傾斜がやや厳しくなってくる。黒いプラスティックで補強された階段を登っていくと、
前方が明るくなり、すぐに寛政8年建立の地蔵さんの立つ田高坂であった。

 良く踏まれた鞍部に立つ柔和な顔の地蔵さんには、一円や十円に混じり、いつ頃の賽銭
なのか錆びた鐚銭まで供えられてあったのには驚いた。

 もう12時過ぎである。ここで昼食の声もあったが風の通り道で寒いので、石金山寄り
に適地を探すべく偵察隊が行くと、まもなく適地が見つかったとの声。306mピークの
南東尾根の辺り。10人程が座れるテラス状の場所があり、ここで大休止とした。

 和気藹々の談笑をおかずに、腹拵えが済んだところで再び歩き出す。一旦降って登り返
すと、北摂長田野線bT7の高圧鉄塔が立つ尾根。迷走時に遙か上方に見えていたのはこ
の鉄塔らしい。下を覗くとかなりの傾斜とヤブ。突っ切って来なくて正解。(^^;

 歩きやすい尾根道をるんるん気分で辿る。1箇所、どちらにもテープのある分岐がある
が、右に採る。しかし次に現れたCa440mピークへの登りは半端ではない。さっきの気
分も何処へやら。雨で地面が緩んでいるから余計に歩きにくい。丁度、北摂堂床山と丸山
の鞍部の下りにも似た、灌木を掴んでの急登である。真新しい鎖までも現れた。と、唐突
に岩が眼前に。太閤岩と呼ばれる岩はこれだろうか。鎖はこの岩を登る為のものだったよ
うだ。岩稜の長さは凡そ10m余り。足掛かりが無く登りにくい所もあるが、何とかクリ
アするとそこに待っていたのは絶景であった。

 東方向の見晴らしが良く、箱庭の様な田園の中を佐治川が蛇行し、橋を渡る車が小さい。
308mピーク越しに至山も顔を出していた。
太閤岩を登るみやびさんと石田さん
太閤岩より望む至山(中央のアンテナの山)と谷川
の町並み。左は佐治川と井原橋
 「滝の方展望台」と書かれた標識のあるCa440mピークを越えると、鞍部を通してよ
うやく目指す石金山が全貌を現わす。山頂には細い灌木が数本あるだけのようで景色が良
さそう。それを楽しみにして再び鞍部へ降り、又登りにかかる。これをこなすと、後はミ
ヤマシキミの赤い実が目立つ、ほぼ平坦な尾根道。小新屋への道との出合はすぐであった。
更に小さなコブを巻いて、少し険しい最後の登りにあえぐと、ようやくススキが生える石
金山の狭い山頂に到着である。山名を記した山南町の標識板の横に三等三角点が埋まる。
まず礼儀としてその頭にタッチした。
石金山山頂で展望を楽しむ。ススキが秋の陽に輝く
 さて、ここでの特筆は何といっても360度の大パノラマであろう。それ程高い山でも
ないのに、付近に遮るものがないことと、2,3の細いコナラの木以外に灌木が切り払わ
れている為に、素晴らしい展望が眼前に展開する。登ってきた甲斐があるというもの。

 まず北には岩屋山、篠が峰、その奥に千ヶ峰、加美アルプス、蛇山。手前には尖った4
06mピークと小新屋の集落。氷上の町並みに五台山に安全山、石戸山。東には三岳を代
表とする多紀アルプス。近くに妙見山、白山。遠くに北摂の深山まで。弥十郎岳、西光寺
山。南は六甲連山から雄岡山、雌岡山。明石大橋の橋脚に薄く淡路島の島影。西方向には
笠形山と七種三山、鎌倉山。丹波、播磨の主だった山が目白押し。各自双眼鏡を取り出し
ては山座同定に忙しい。その間にも妙子さんからの焼き芋に舌鼓を打ち、たぬきさんから
の冷酒の差し入れにほんのりと。飲み食いにも忙しい面々である。

 風も収まりぽかぽかとした秋の陽が降り注ぐ山頂は離れがたい。が、そろそろというわ
けで、後ろ髪を引かれる思いながら下山にかかる。

 帰りは、小新屋の出合から小新屋観音へ降るコース。こちらは植林の中の面白みには少
し欠ける急降下の道。しかも雨上がりで滑るときては、皆さん一度は尻餅をついたのでは
無かろうか。北側の山襞の間に入ると陽が翳って薄暗い。ジグザグ道に変わって沢(観音
谷)の源頭付近から、石が転がる涸れ沢を降るに従って水音が聞こえだす。チョロチョロ
水が湧きだしている辺りを越える。徐々に道がはっきりしてきて、T字路を右にカーブ、
よく手入れされた杉木立の下、崩れた橋を渡れば小新屋観音の登山口の広場はすぐであっ
た。

 今回は体調今一で自重の父たぬきさんが登山口で待機している中、メンバ全員無事下山。
観音方面からはタイミング良く、別コースをMTBで走っていたしまださんも上がって来
る。今日の話題に盛り上がりながら赤い幟が林立する最終地点の小新屋観音境内へと降っ
ていく。

 小新屋観音は戦国期の当地の領主和田日向守の夢枕に、石船に乗った観音様が現れたの
を奇瑞とし建立されたこじんまりとしたお寺。今でも足腰に霊験あらたかとお参りが絶え
ないと云う。本堂横の祠にその石船なるものが祀られていた。境内は全山紅葉には少し早
いかなと思われるが、それでも早いものは深紅に色づき、しっとり静かな秋の風情であっ
た。

 この後、駐車場にデポされたたぬきさん、しまださんの車に分乗し、であい公園まで戻
る。

 公園は釣りを愉しむ親子がいるのみで静かなもの。装備を解いて、たぬきさん恒例の丹
波の黒豆パンと珈琲を頂いた後、解散となった。いつもながら、パンとコーヒー、疲れた
体には最高の甘みでありました。

 解散後はこれも楽しみ、しまださんと山南町の薬草薬樹公園内にあるリフレッシュ館で
入浴、川代渓谷からR176経由で帰途につく。それにしても丹波の山オフでは、蛇山と
いい今回の石金山といい、色々思わぬハプニングが起きるものだ。が、その一つ一つが、
却って印象深い忘れられない想い出となっていく。又一つ心に1ページが刻まれた思い。
コーディネイト頂いたたぬきさん、そして迷走登山隊の皆さん、有り難うございました。
しかし我々以外、誰にも会わなかった静かな山歩きでした。



■同行
 石田さん、妙子さん、母たぬきさん、みずたにさん、みやびさん、もぐもぐさん、
 WMさん、(最初と最後 しまださん) 【五十音順】
■サポート 
 父たぬきさん

【タイムチャート】
7:30自宅発
9:10〜10:00であい公園駐車場(Ca90m)
10:25〜10:30至山(273.8m 三等三角点)
10:54であい公園駐車場
11:50撤退(306mピーク北西の沢)
12:00田高坂登山口
12:15〜12:20田高坂(Ca240m)
12:25〜12:55306mピーク南東尾根(昼食)
13:00306mピーク
13:06高圧鉄塔(北摂長田野線bT7)
13:30〜13:38太閤岩
13:45小新屋コース出合
14:01〜14:35石金山(508.7m 三等三角点)
14:50小新屋コース出合
15:20小新屋登山口
15:30〜15:40小新屋観音
15:50であい公園駐車場(Ca90m)



石金山のデータ
【所在地】兵庫県多可郡中町、山南町
【標高】508.7m(三等三角点)
【備考】 播磨と丹波の境にある山塊の主峰です。周囲に高い山が
無く、また山頂も伐採されており、360度遮るものな
しの眺望が得られます。北に小新屋観音があり、足を伸
ばせば山南薬草薬樹公園リフレッシュ館での入浴が出来
ます。
至山のデータ
【所在地】兵庫県多可郡山南町、黒田庄町
【標高】273.8m(三等三角点)
【備考】 石金山から続く尾根が加古川へ落ちこむ突端の山です。
山頂からは北から東の展望がよく、NHK、ツーカーホ
ン等のアンテナ施設があります。また、石金山への縦走
こーすの始点出もあります。JR加古川線「船町口」か
ら約1.5kmです。
【参考】2.5万図『中村』、『谷川』




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